仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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いきなり頓挫

「落ち着いたかい?」

僕は川内の背中を軽くさすりながら話し掛ける。

 

川内「はい。大分落ち着きました」

川内は先程よりもいくらか気持ちが安定したようで、目元は少し腫れているもの、笑顔を見せてくれた。

 

「それはよかった」

僕達は今、執務室に向かっている。

川内と話をするにもここ(トイレの入り口)は最適ではない。

執務室に入ると陸奥から激しく問い詰められた。それはそうだ、川内が目を腫らして、僕は彼女と肩を組むようにして入ってきたのだから。こういう時も長門は海図から目を離さない辺り、さすが提督を今まで代行してきただけある(何様)。

なんとか誤解を解いた後、僕は川内に聞いてみた。

 

「川内さ、僕に敬語使ってるけど、普通に喋ってくれていいんだよ?」

 

川内「そんな!とんでもありません!」

 

「僕は気にしないんだけどな~。むしろ普通に喋ってくれた方が友達らしくていいと思うのだけど…」

 

川内「……提督はそちらの方がよろしいですか?」

 

「うん、無理にとは言わないけどね。後、僕は今提督じゃないって!」

 

川内「…それならお言葉に甘えて、敬語は使いません」

 

「うん…(使ってるやん)」

 

「よろしくね!川内」

 

川内「はい!……よ、よろしく」

川内はぎこちない様子だった。

うーん、一番最初に会った時の姿とは程遠いな。まあ、あんな感じで話し掛けてくれるようになったら、仲が深まった考えるとして、今はゆっくり仲良くなっていけばいいか!

 

長門「少しよろしいか?」

うん?長門?いつの間にか彼女は僕と川内の隣に来ていた。

 

長門「貴方に聞きたいことがある」

真剣な眼差しが僕の目を捉えている。あれ、なんか怒ってね!?

 

長門「貴方は一時的に提督になることを放棄し、艦娘には見えない存在として、この鎮守府の建て直しに努める…。その気持ちに偽りないか?」

 

「あ、ああ…もちろん。だけど、前にも言ったけど、例外もある。今、僕の隣にいる川内みたいに仲良くする艦娘だっている。そこは慎重にいくつもりだけどさ…」

 

川内「///」

 

長門「・・・」

 

長門「それは構わない。私も陸奥もそれを了承して、貴方を追い出さなかったのだから…」

 

長門「ただ…」

 

「ただ?」

なんか長門の顔色が先程より曇ってきてる気がする。

 

長門「ここからは川内も関係のある話だ」

 

川内「私もですか?」

 

長門「ああ。単刀直入に言うと何名かの艦娘が私の元に来てな、川内が人間に危害を加えられていると報告してきたのだ」

 

「な、なんだってぇぇぇぇぇぇ!!」

僕はつい叫んでしまった。隣にいた川内が目を丸くしている。あ、陸奥がじっとこっちを見てる、やめて、長門と一緒に睨まないで。

 

「そんな!僕は危害なんて…」

 

川内「そうです!この人は私を…」

 

長門「慌てるな。私達はなにもこのことを責めているのではない。貴方と川内が今ここで仲良く隣り合わせに座っているのが報告が誤っている証拠だろう」

 

川内「なっ!///」

川内が顔を真っ赤にしてる。あれ、頭から煙出てね?

さてと、冗談はさておき。

 

「では、一体何が長門の顔を曇らせているんだい?」

 

長門「! 私の顔が曇っていたか、そうか」

そう言うと長門は少し笑って、いくらか柔和な顔で話す。

 

長門「このことが艦娘たちの間で噂になっていてな。駆逐艦たちが怯え始めている。また一部の艦娘が貴方に危害を加えようとしているという情報も耳に入ってきている」

なんてこった…。いきなり事態は最悪じゃないか。見えない何でも屋、無理があったか?

 

長門「…だが、貴方が川内とそれだけ仲良くなっているのを見て、私は少し安堵しているんだ。貴方が少なくとも前任とは違うと分かったからだろうか」

長門は微笑みながら言う。

 

「・・・」

 

「そう言ってくれると僕も嬉しい。だけど、駆逐艦が怯え始めているのは、かなりまずい状況だよね?どうしたらいい…」

川内が不安そうな顔で僕の顔を見つめている。

 

長門「そこでだ。私は全体に提督の着任は無くなったと伝えようと思う」

全体に?別に構わないが…。というか、まだ僕の着任が無くなったことを言ってなかったのか……。なんでだ?

…………あ!そうか!提督が着任しないと全体に伝えるってことは、人間がこの鎮守府いてはいけないんだ。

つまり、見えない存在なだけなら問題はないけど、艦娘と仲良くなるってことは不可能になる。姿を見せずに、話もせずに仲良くなるのは絶対無理だ…。長門はそのことを気にしてくれたのか…。

僕はしばらく考えていた。長門も陸奥も黙って、僕の返答を待っている。そして…。

 

「ああ!構わないよ」

 

長門「…いいのか?」

 

「もちろん。長門と陸奥には気を遣わせちゃったね。元より無謀な話だったのかもしれないしさ」

 

長門「・・・」

 

陸奥「・・・」

 

「とは言え!僕も諦めるわけにはいかないからね、別の方法を模索するさ!」

僕は満面の笑みで言った。そうさ!別のやり方がきっとあるはず。今はとにかくこの事態を収集するのが先だ。

 

長門「…すまないな」

 

陸奥「・・・」

 

川内「な、なんだかよく分かんないけど、協力するよ!」

「ありがとう」

大丈夫だ、きっと。今は一人じゃないんだから。

 

陸奥「貴方に危害を加えようとしている艦娘について詳しく話を聞かなくていいの?」

陸奥が唐突に口を開いた。

 

「まあ、知っておいて損はないね」

僕は聞いてみることにした。

 

陸奥「駆逐艦が人間に怯えている…これは前にも話したわね?」

 

陸奥「逆に言えば、駆逐艦以外は怯えよりも強い憎悪を抱いていると言えるわ。もちろん、怯えが全くない訳じゃないと思うけど…」

うーん、深刻な状況だ。

 

陸奥「軽巡、重巡、戦艦、空母。これらの艦種の娘たちは貴方に危害を加える可能性の高い娘たちよ」

ワーオ!………リンチされるかも。

 

陸奥「気を付けなさい。貴方、ボーッとしてるから」

陸奥…。

 

「陸奥、ありがとう。心配してくれて」

 

陸奥「///」

陸奥は僕が礼を言うと、そっぽを向いてしまった。怒ったのだろうか?

 

川内「大丈夫!私が皆と仲良くなれるように紹介するよ!」

 

「川内もありがとう」

 

川内「ッ~~~!!!」

また顔を赤くしている。可愛い。

 

川内「ま、まずは私の大事な妹たちを紹介してあげる!」

そう言って川内は僕の手を引く。

僕達は執務室を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

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