仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
「・・・」
神通「・・・」
「・・・」
神通「・・・」
「・・・」
いや、デジャブかよ!
僕はあの後、川内に案内されるがまま彼女いや彼女達の部屋まで来た。そして入ったまではよかったのだが…。
僕は神通と目が合った瞬間、再び床に仰向けに倒されていた。そして、いとも簡単に馬乗りになられてしまった。
川内「神通!」
神通「姉さんに何をした!お前!答えろ!」
かなり頭に血がのぼっているように思える。初日に彼女に会った時は敬語使ってたのに…今は激しい憎悪を目に宿し、僕の目を見据えながら怒鳴っているのだから。
川内「神通!止めて!」
川内が神通を押し退けた。
川内「大丈夫…?」
川内がそっと手を差しのべる。
「平気よ!」
僕はその手を握って立ち上がると、わざとらしくガッツポーズをしてみせたりと川内たちに気を遣わせないようにした。
川内「神通!いきなり何するの!」
神通「ね、姉さん、何を…」
神通は困惑しているようだ。そりゃ、僕を追い出そうとしてた姉の態度が一変してるのだから無理もないが。
神通「おのれ!人間!姉さんに何をした!」
再び僕に掴みかかろうとする神通とそれを止めようとする川内。僕はこの修羅場の中で、どうしたらこの状況を変えられるか必死で頭を動かし考えていたが、なかなか妙案が思い浮かばない。
那珂「はーい!ストップストップ~~!川内ちゃんも神通ちゃんも落ち着いて?」
すると、今まで口を閉じていた、恐らく那珂という艦娘が二人の間に割って入った。
那珂「川内ちゃん、どういうことかちゃんと説明してくれるんでしょ?神通ちゃんもまずは話を聞こう?」
神通「でも…」
那珂「大丈夫だよ」
とびきりの笑顔で神通に諭すように語り掛けるその姿は、この修羅場において誰よりも冷静であった。
神通「・・・」
川内「私がちゃんと話すね?」
僕にそう言うと、川内は今までの出来事を妹たちに丁寧に話していた。神通や那珂が途中から悲しそうな顔をしていたので、僕はそれを見ないように下を向いて黙って聞いていた。川内も話の最中に声が上ずる場面もあったが最後までしっかりと話していた。
長い沈黙が流れる。しかし…。
那珂「川内ちゃん!」
静寂を那珂の元気な声が破った。
那珂「川内ちゃんにはいっぱい無理させてたんだね。ごめんね」
川内「那珂…」
神通「姉さん、ごめんなさい…。姉さんが私達のためにそんなに苦しんでいたなんて知らなくて…」
川内「神通…」
那珂「だからさ、これからは川内ちゃんだけに無理はさせないよ!」
神通「はい!姉さんだけにはしません!」
そして、神通と那珂が川内のことをそっと抱き締めた。
那珂「これからはちゃんと頼ってよ?艦隊のアイドルの本気、見せちゃうんだから!!」
神通「姉さんのこと、しっかりとお守りします!!」
川内「じんつう~~!なか~~!」
川内は顔をくしゃくしゃにして泣いていた。神通も那珂も同じように泣いていて、三人とも抱き合いながらわんわんと泣いている。でも、とても幸せそうだ…。
ここで話し掛けるなんて、野暮なことはしない。僕はそっと部屋を後にした。
???「やっぱり噂は本当だったみたいね!」
???「人間とか…マジパナイわ~~!」
???「川内さんたちはどうして人間なんか部屋に入れたのでしょうか?」
???「洗脳?脅し?やっぱ人間がやることはパナイわ~!」
???「下劣な!人間とはやはり相容れないですね」
???「ちょ、ちょっと~!あたし抜きで話さないでよ~!除け者にしないでぇ~!」
???「! も、申し訳ございません!」
???「あ~!駆逐艦のことイビってる~!!姑だぁ~!」
???「な、なんですってぇ~!!」
???「お二人とも、落ち着いてください!!!」
???「何をしているの…?人間の動きは…?」
???「人間なんて直ちにこの鎮守府から追い出すべきです!」
???「ああ、お二人とも!任務、ご苦労様です!」
この時、僕をこの鎮守府から追放しようと五人の艦娘たちが動き出し始めていたのを僕はまだ知らなかった。
そして、五人とも艦種も背格好も喋り方も様々だか、一つだけ共通点があった。全員、首からネックレスをかけているのだが、その首飾りのデザインは逆さの頭蓋骨、それの下顎から頭頂部にかけて錨が突き刺さっているという異様なものだ。
彼女たちが身動きする度、その逆さドクロは怪しげに揺れ動いていた。
???「さぁ、ちゃんとあたしの指示に従ってくださいよぉ?」
???「え~!やだなぁ」
???「もぉ、締まらないでしょー!!!」
???「はーいよ!」
???「それでは……人間の排除のために~」
???「ヘル・アンカーズ、始動…ってね!」
???「あたしのセリフ取んないでぇ~!!」