仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
状況を整理しよう。
今、僕は袋のようなものに入れられていて、どこかへ連れていかれようとしている。
恐らく話し声から察するに三人の艦娘が周りにいて、助けを呼ぼうにも無線が取り上げられていると…。
うーむ、艦娘一人くらいなら暴れてどうにかなるかもしれないが、三人となるとな…。全員手練れなら、もうこの場でリンチにあうかもしれない。
…というか、日々深海棲艦とやりあってる彼女たちに力で挑むのは、無謀にも程があるか…。
ただ、話が通じる相手とも思えない。吹雪?という艦娘は僕に手を出そうとして諌められていたし、雲龍?っていう艦娘も声からは落ち着いた雰囲気を醸し出しているけど、それは冷静というより冷酷という感じだ。
となると、朝潮?という艦娘が残るわけだけど、妹が酷い目に遭ったという過去を持っている以上、迂闊には話しが出来るとは思えないし…。
雲龍「さぁ、運びましょう」
朝潮「お任せください!」
吹雪「はい!」
……唯一の救いは僕が寝ていると思ってくれていることだな。もし起きていると知られたら吹雪という艦娘にボコボコにされるかもしれないし…。
コンコン
ん?ドアがノックされた!?これは…。
吹雪「…誰でしょうか?」
雲龍「分からないわ。ただ少々厄介ね」
吹雪「無視しますか?」
雲龍「それは良い策だと思えないわ。ノックされている以上誰かに会いに来たと考えるのが妥当でしょうね…」
朝潮「つまり…」
吹雪「この人間にですか!?」
雲龍「ええ。この空き部屋に用があるという時点で、その可能性が一番高いわ」
雲龍「中に人がいると知っているからノックをした…。さて、どうしましょうか」
朝潮「フフフ、この朝潮にお任せください!!!」
雲龍「何か策があるのかしら?」
朝潮「いいえ。ですが、いざという時はこの朝潮を切り捨てて頂いて構いません!」
吹雪「そ、それって…」
雲龍「なるほどね…。分かったわ、ここは貴方に任せます。ただ貴方を犠牲にするつもりはないわ、忘れないで」
吹雪「朝潮ちゃん…」
朝潮「この朝潮、ご期待に添えるよう行って参ります!!」
その後、ドアを開ける音がした。
あのさ……………。
この娘たち気付いてないかもだけど……………………。
今の会話、ドアをノックした人物に聞かれてるんじゃない?
最初こそ、静かに会話をしていたようだけど、朝潮(たしかこの娘だよな)がその流れを一気にぶった切ったからな…。
お任せくださいの一声、めちゃくちゃハキハキしてて、聞いてて惚れ惚れしたけど、バレるよ、それ。声、大きすぎよ。
朝潮「どうされたんですか?川内さん…」
私がドアをノックして、しばらくすると私の思っていた人物とは別の者が部屋から出てきた。
いや…………思っていた人物が出てきたと言うべきかな。
川内「……朝潮、この部屋で何してたの?」
私は静かに尋ねてみた。朝潮の顔をじっと見ながら。
朝潮「な、何もしていませんよ…」
川内「・・・」
神通「・・・」
那珂「・・・」
彼女は直立不動で、目を見開きながらそう言った。
朝潮、あなたは隠し事をするには純粋で正直すぎる。
私たちはドアの前でアイツを待っていた。
そして、中から聞こえてきたのだ。朝潮にお任せくださいと…。私たちは聞き耳を立てた。ドアも分厚いわけではないので、中の会話など容易く聞けた。
朝潮と、恐らく二人別にいる…。私は、少し胸騒ぎがした。
川内「他に誰かいるの?」
朝潮「いいえ!私一人です」
耳を真っ赤にしながらそう言う朝潮。
川内「そう…」
朝潮「はい!」
川内「那珂!」
那珂「…えっ!?私!?」
川内「うん、朝潮を抱き締めてあげて?那珂のアイドル活動を応援したいんだって」
朝潮「な…何を……」
那珂「あー、そういうことね!川内ちゃん!」
那珂「ふふ、朝潮ちゃん!ちょっと私と遊ぼうか!」
朝潮「け、結構です」
那珂「謙虚だね~。私のファンならドーンと来なよ!!それっ!」
朝潮「ひゃっ!!」
那珂が朝潮を抱き締め…いや羽交い締めしてくれているうちに……。
川内「行くよ!神通!」
神通「はい!」
私たちはドアを開け、部屋に勢いよく入っていった。