仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
何が起きている?
暗く閉じられた袋の中。目から入る情報は皆無。それ故、耳から入ってくる情報は平素より鮮烈なわけだが、どうやら川内たちと雲龍たちが揉めているらしい。
川内たちがなぜここに?と思ったが、これはチャンスだ。
僕の十八番、悲鳴を出そうと息を深く吸い込んだ瞬間、おそらく雲龍だろうか…彼女の一言が僕の耳から体の髄にまで染み渡るように浸透してきた。
「茶番は終わりよ」
その一言が僕の呼吸を一時的に止めるのはあまりに容易だった。
重圧に身も心も押し潰されそうになる感覚が襲う。
「……ッ」
お得意の悲鳴など出せるはずもなく、時間がゆっくりと流れているような気がする。
場が膠着したのだろうか、静けさが辺りを支配していた。
もちろんその静寂は心地よいものではない。
そんな静寂に凛とした声がこだまする。そして聞こえるいくつかの駆け出す足音。
まもなく激しい息づかい、怒声、呻き声、そして部屋全体が揺れているんではないかと錯覚に陥るほどの騒音が僕の耳に一気になだれ込んできた。
川内たちが戦っている……。
彼女たちの戦う理由は分からない。
いや、この状況においてそれはあまりに無責任だろう。本当は分かっているはずだ。雲龍の一言に怖じ気づいて、また大切なことを忘れるところだった。
川内たちは僕を守ろうと戦っているんだ。
そう思うと僕はいてもたってもいられなかった。
やっと、やっと友だちになれたんだ……!!!
大きく息を吸い込む。
「川内!!僕も戦うぞ!!!」
私の声を合図に私たちは雲龍と吹雪に突っ込んだ。
疾風のごとく神通は吹雪の懐に入り、当て身を食らわせる。そのまま吹雪は伸びてしまったようだ、仰向けに倒れそうになるのを神通が抱え、そっと床に寝かせた。
先手は取れた……。これで二対一になったわけだが、何故かちっとも不安は晴れない。
そんな不安に一瞬でも駆られた私は雲龍にとって隙だらけだったのだろう…私の腹部を雲龍の痛烈な一撃が襲う。
「うぐっ!!」
私はそのままえずく。内蔵が体の中でひっくり返ったといっても過言ではないくらいの痛み。
もちろん相手は手を緩めてくれるはずもない。次々と私の腹部や顔を狙って雲龍の激しい攻撃が繰り出される。
私は痛みを堪えながら、なんとかカウンター出来ないものかと考えていたが、防戦一方であった。
神通「姉さん!」
いつのまにか雲龍の背後をとっていた神通が雲龍の横腹を蹴りつける。そのまま雲龍は壁に叩きつけられ、床に伏した。
川内「ありがとう……危なかったよ……」
神通の強さはやはり目を見張るものがある。
もちろん砲雷撃戦でもその強さは健在だ。だが、なんといっても彼女の力は近接格闘で真価を発揮する。
部隊が追い込まれても、旗艦であった神通の白兵戦で何度その状況が覆されてきたか、姉の私が一番知っている。
神通「大丈夫でしたか?姉さん?」
川内「うん、少しお腹をやられたくらいだよ…」
神通「くっ!よくも姉さんを!!!」
川内「大丈夫だってば!これくらい……!?」
私がチラリと雲龍の方を見ると、なんと雲龍が立ち上がっているではないか。まるで痛みを感じていないのではと思わせるような表情をこちらに向けている。
神通「まだ……終わらないみたいですね」
川内「うん、かなり手強いね」
雲龍……この娘は相当の実力者だ。
神通の一撃を受けて立ち上がった、こんなことは未だかつてなかった。このことが意味すること、それはこれから今までにない激しい戦いが待っているということを指す。
私と神通は覚悟を決め、お互いに顔を見合わせる。
呼吸を合わせ、再び雲龍に攻撃を仕掛ける。
はずだった……。
「川内!!僕も戦うぞ!!!」
その声が聞こえるまでは。