仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
川内「よくもおおおおおおお!!!!」
私の発した怒号が室内の隅から隅まで響き渡る中、私は雲龍を押し倒していた。
雲龍の顔を見ると、軽蔑したような表情を浮かべていて、直ぐに私から離れようと痛烈な打撃を私の腹部や顔めがけてお見舞いしてきた。
だが、私はそんな痛みを忘れてしまうほど、アイツを傷つけられたことに怒り狂ってしまっていた。
川内「よくも!よくも!!おおおおおおおお!!!」
私の全身に力が込められる…それは先程まで私の心に巣食っていた不安をなぎ払い、目の前の雲龍を絶対に許してはならないと体の底から溢れ出てきているようだった。
雲龍も先までの私と違うと感じたのだろうか、初めて雲龍の顔に焦りが見られた。
神通「姉さん!!!」
神通が雲龍の両腕を床に押さえつけ、私への攻撃は止んだのだが、私は依然として力を抜くことが出来なかった。このままだと私は雲龍のことを…………。
「川内ッ…、どこだ!?今、行くからな!?」
私はその声を聞いた時、ハッと我に帰る。
そして、ようやくそこで私は両手を雲龍の首にかける寸前のところまでいっていたことに気付き、直ぐに手を引いた。
川内「神通!雲龍のこと一人で抑えられる?」
神通「はい、お任せください」
川内「お願い!アイツを早く出してあげないと…」
私はそう言って、神通に雲龍のことを任せ、麻袋の方へ駆け寄る。もちろん、雲龍からは目を離せない。チラチラと様子を見ながら、私は麻袋を開けた。
「ッ!!眩しい!!誰だ!?」
川内「私だよ!大丈夫?さっき踏まれたところ痛くない!?」
「せ、川内か!?大丈夫!!こっちは平気だ!川内こそ、大丈夫か!?」
川内「私も平気!!」
私はそこで急に力が抜けてしまい、その場にへたり込んでしまった。でも、よかった……。無事で……。
でも油断は大敵なわけで。
神通「きゃあ!?」
しまったと思った。安心のあまり、雲龍から目を離しすぎてしまった。
直ぐに立ち上がろうとするも、足に力が入らない。神通の方を見ると、形成逆転とまではいかないものの、雲龍が立ち上がり神通を押さえ込もうとしていた。
川内「神通!!!」
私は床を這いつくばって、なんとか雲龍の足にしがみつく。雲龍は振り払おうとしてくるが必死で食らい付いた。
雲龍「さっきまでの馬鹿力はどうしたのかしら?」
少しずつ、少しずつではあるが雲龍は神通のことを押し退けようとしている。つまり、神通が力負けしているのだ。
神通「くっ!強いッ!!」
川内「うぅぅぅ!」
雲龍「なぜ人間に加担しているのかしら!?そこまでする理由は何!?弱味を握られた?洗脳された?フッ、どちらにせよ、貴方たちは私には勝てない!!!人間に簡単に手懐けられるような臆病者に私が負けるはずない!!!」
神通「姉さんは臆病者なんかじゃない!!」
必死の形相で叫ぶ神通。
雲龍「いいえ!貴方たちは臆病者よ!!!人間に尻尾を振って喜ぶ雌犬よ!!!どうせ、また体でも差し出すんでしょ、川内?そうしないと生き残れない弱者が!!」
神通「お、お前えええええええぇぇぇぇ!!!!」
神通の咆哮。私はそんな中でなぜ私がアイツに迫ったのかを雲龍が知っているのか疑問に思った。
雲龍「いつも出撃後に執務室に残っては、提督に体を差し出していたわよね!?私もあの人間に犯されてはいるけど、決して自分から差し出すような愚かな真似はしていない!!!川内、何を見返りに求めたのかしら?あの人間の愛人にでもしてもらおうと思ったの?」
雲龍が嘲笑うかのように言う。
なるほど、前任のことを言っているのか…そう言われると私は妙に納得してしまった。確かに私は自ら体を差し出したんだ。汚れた存在…。
神通「姉さんを悪く言うな!!何も知らないくせに!」
雲龍「ええ、知らないわよ!?こんな足にまとわりつくことしか出来ない無様な存在!知るに値しない!!!」
うん、そうだ。私は気付いていた。私は他の艦娘からしたら汚れている。自分から差し出したのか、そうでないのかで大きくその印象は分かれるだろう。
私はみんなと同じ立場にないんだ…。みんなと肩を並べられるわけないんだ…。
そう思うとどんどん力が抜けていく。
雲龍「フフッ、貴方も汚いのだから人間とお似合いよね!?すぐそこで棒立ちしてるゴミと一緒にこの鎮守府から捨ててあげるわ……………ッ!?」
雲龍が言い終える前に雲龍の足が大きくバランスを崩す。足にしがみついていた私は一瞬何が起きたのか分からなかったが、どうやら雲龍は再び床に倒れたらしい。
神通…?そう思って神通を見ると、どうやら神通も驚いているようだ。だが、答えは直ぐに分かった。
「友だちのことを悪く言うなああああぁぁぁ!!」
アイツが雲龍に思いっきり体当たりしたのだろうか、彼は雲龍に覆い被さるようにして、そのまま雲龍の腕をがっちりと抑えこんでいた。
雲龍「何をする!?離せ!!!」
雲龍は激しく抵抗する。だが………。
「三人に勝てるわけないだろう!!?」
雲龍「くっ!!」
「雲龍!!僕のことが憎いんだろ!?なら僕だけ馬鹿にすればいい!!!同じ艦娘同士でいがみ合ってどうする!?」
雲龍「黙れ!!!」
「雲龍!!僕をこの鎮守府から排除したいんだよな!?なら、そうすればいい!!だけど、その前に川内にちゃんと謝れ!!!」
雲龍「うるさい!!黙れ黙れ!!!」
「川内のことなんも知らないくせに知ったような口を聞くなっ!!!」
もういい…。
雲龍「お前のような人間に何がわかる!!!」
もういい…。もう……。
「川内は友だちなんだ!!分かるに決まってる!!」
川内「もうやめて!!!」
私の叫びが室内に響く。
川内「雲龍、あなたの言いたいことは分かった。私は汚いよ、自分でも分かってる………」
雲龍「ふーん、それなら…」
「汚いはずないだろう!!全部、前任のせいだ!!川内は何も悪くない!」
雲龍「騒ぐしか出来ないの?」
「アンタもだろう!?」
川内「聞いて!!!」
私の声に辺りが静まり返ったところで、私は口を開く。
川内「一つ提案があるの!!」