仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
「こうなったら自力で行くか…」
鎮守府内を歩き回って、精魂尽き果てた僕はそう思った。
「行けるのか、執務室…」
うーむ、執務室に行かないことには、この鎮守府のことも艦娘のことも何も分からない。
ではなぜ最初無闇にこの鎮守府内を歩き回ったか?艦娘を探したか?
「鎮守府内の案内図が無いんだよな…」
まず手元に鎮守府内のどこがどんな場所なのか記した案内図は無い。案内役(艦娘)もいない。
だからこちらから案内役を頼もうと艦娘を探したのだが…結果はご覧の有り様だ。
くぅ…最初から執務室を探しとけばよかったのだろうか?まさか艦娘と会えないなんて想定していなかったしな。本当に想定外だ。というか、門のところに案内役の艦娘いると思ってたのだが…え、この鎮守府、相当ブラックだったのか!?歓迎されてない!?
そんなことをぶつくさ考えながら鎮守府内の廊下を歩いていると、廊下の先…突き当たりに誰かいる?
いた!やったー!
電気が点いていないから、非常用に持ってきた懐中電灯で辺りを照らしているので、しっかりとは見えないが、多分艦娘だろう。
ああ、でもこちらに背を向けて顔が見えないな…
どのみちこれだけ薄暗くて、この距離じゃこちらを向いていても顔までは分からないかもしれないが…
ふふ、どんな感じで声を掛けようか、フランクな感じでいくか?いや、初対面だし、元ブラック鎮守府だからな、礼儀正しくいこうか……などと考えているうちにその艦娘との距離は縮まっていく。
そして、その艦娘との距離がもう一メートルもないって位になった時。
え?なんで振り向かないんだ!?
確かにまだ声は掛けてはいないが、足音聞こえてるはずだぞ!?というか、懐中電灯の光当たってるし…
なんか気味が悪くなってきた。まさか精巧な人形とかじゃないよね!?
落ち着け…。まずは声を掛けよう。相手も警戒しているんだろう。刺激しないように刺激しないように…
恐る恐る僕は彼女に声を掛けてみた。
「あっ、あの…あの~、こんばんは」
???「・・・」
「本日からここでお世話になる者です。えっと提督が来るみたいな話…聞いてるかな…?」
???「・・・」
「え、えっと…」
???「・・・」
何だこれは!?え、無視されてるのか!?
え、もしかして死んでるのか、立って!?
???「・・・」
依然として喋らない彼女を前に僕は恐怖を覚えた。
異質だ。逃げた方がいい。直感的にそう思う。
だけど……
「何か喋れない事情があるのか…?もしそうならすまない。ただ自分もここに来るのが初めてで何も分からなくてな…。よければ、執務室まで案内してくれないか?」
やった!言えたよ、僕!恐怖に負けず、しっかりと提督らしい口調で話せたぞ~
僕はこんな状況だが、自分の言いたいことを言えて内心喜んでいた。
???「ここに人間はいりません」
冷たく無機質なその声を聞くまでは。