仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
もう見慣れたこの空き部屋…今では僕の自室として使用しているその質素な部屋は、僕の疲れた体を優しく出迎え、そして僕はそのまま煎餅布団に倒れ込んだ。
疲れた。僕は瞳を閉じる。おそらくそのまま目を閉じていれば朝まで泥の様に眠っただろう。
コンコン。
時刻は大分遅いはず…。しかも僕がこの部屋に帰って間もなくしてのこの訪問、おそらく訪問者は僕の帰りを待っていたのだろうか。いや、もしくわどこからかつけられていた?
どちらにせよ、このドアの向こうにいる者は得たいが知れず不気味。その一言に尽きた。
コンコン。再びノック音がこだまする。
僕は無線機を手に取り、ゆっくりとドアの方へ近づく。
深く息を吸い、ゆっくりと吐きだすと幾分か心が落ち着いた。
「はい、どちら様ですか?」
???「・・・」
返答はない。これはつまり訪問者が川内や陸奥たちではないことを裏付ける。心臓が激しく鼓動し始め、呼吸が早くなったのが自分でも分かった。
正体不明の何者かがたった一枚のドアを隔ててそこにいる。
部屋の明かりを点け、無線機で助けを呼ぼうとする。だが、少し遅かった。
???「とぉーーーう!!」
???「とっつげきぃ~!!!」
二人の見知らぬ艦娘が部屋に飛び込んできたのだ。
???「フッフッフ!やっと会えた!」
???「よっ!阿武隈!握手して一!!!」
???「もぉ~、おだてないでよ、鬼怒!!」
……阿武隈と鬼怒と言うらしい。
かなり面食らったが、先程より不安は和らいでいた、というのも地下牢の圧倒的な絶望感に対してこの娘たちの感じは正反対のものであったからだ。
「こんばんは、阿武隈に鬼怒。はじめましてだね?」
一度安心すると、再び眠気が僕を襲うがなんとか話す。
阿武隈「なっ!?なんで名前知ってるの??」
鬼怒「人間!どこで鬼怒たちのことを知った!?」
驚いた顔をして僕の顔を見つめる二人。
「いや、今自分達で呼びあってたよね?」
阿武隈「んなっ!?」
鬼怒「なぁああああ!?」
「あの、それで何かようかい?」
正直、こんな風に艦娘の方から来てくれるのは嬉しいことだが、何しろあの地下牢に行ってきたばかりだ、しかも物凄く眠い。出来れば、早々に用件を済ませたかった。
阿武隈「むむむ…やるわね!」
鬼怒「くやしい~」
「・・・」
阿武隈「・・・」
鬼怒「・・・」
「・・・」
阿武隈「・・・」
鬼怒「・・・」
「……えっーと」
阿武隈「人間かぁ」
鬼怒「はぁ」
先程のテンションとは違う二人に異様さを感じた僕は、次の言葉を紡ごうと口を開こうとする。すると、阿武隈は衣服を捲り胸部から腹部を晒す。鬼怒は鬼怒で衣服を脱ぐと背中を晒した。
「なっ!!?」
既視感の拭えないこの光景。咄嗟に目を瞑ろうとするが、ひどく冷たい声が発せられた。
阿武隈「ちゃんと見て?」
鬼怒「目を背けないでよ?」
その声の主たちの顔を見ると、目は怒りに満ち溢れており、僕が気圧されるのには十分すぎるものだった。