仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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地下牢4

カーテンに遮られながらも、弱い光が部屋の中へ差し込まれる。そんな中、煎餅布団に大の字で寝ている人物は、眠い眼を擦りながら、大あくびをして上体を起こした。

 

「はぁ」

起きて早々のため息。十分な睡眠は取れなかったようで、部屋の隅をしばらくボッーと見つめているその姿は廃人の様であった。

 

トラウマになりそうな地下牢の全貌を目の当たりにし、そしてあの訪問。精神が崩壊しそうであった。

訪問者は言う、「私たちの姿を見ろ」と…。「人間が作り出した痛々しい姿」を見ろと…。

 

阿武隈「どう、この傷?かっこいい?」

 

鬼怒「いいな~!それに比べて鬼怒は…背中の傷は戦士の恥ってね!!」

 

「・・・」

絶句。彼女たちに言われるがまま、その晒け出された姿を見れば言葉など出てくるはずもなかった。

阿武隈の上半身には、胸部から腹部にかけて、大きな傷痕が幾つも刻み込まれていた。一方、鬼怒の場合は、火傷痕だろうか、その背中はひどく爛れている。

 

阿武隈「おっーと!?沈黙ですかぁ~!!?」

 

鬼怒「あちゃー、鬼怒たち嫌われちゃった!?」

口調こそ、ざっくばらんなものの、目は一切笑っておらず、僕の体を貫く鋭い視線が注がれている。

 

「…そ、その傷は…?」

絞り出すように口を開くが、もう端からその答えが分かっているような問いを投げ掛けてしまったことを後悔した。特に、その問いが人間からであれば、彼女たちは……。

 

阿武隈「ムフフ~!?知りたい~??」

 

鬼怒「どうしよっかな~!!?」

 

「・・・」

 

阿武隈「じゃあ特別に教えてあげるぅ!!この傷はね、あたしがどんなに被弾しても、無理やり出撃し続けた結果残ってしまったものでぇーす!!」

 

鬼怒「おお!!さっすが~!よっ!阿武隈!!」

 

阿武隈「フフフ!そう言う鬼怒は~??」

 

鬼怒「えっへん!この爛れは砲撃を食らって、炎上した時に出来たものでぇーす!!もちろん提督に言ったら、ぶん殴られましたぁ!!マジパナイ!!」

 

「・・・」

ああ、もう前任…お前は人間じゃない。化物だ。

なぜ…なぜここまでの仕打ちが出来る…。正気の沙汰ではない。

 

「すまない…」

消え入るような声で謝る。

 

阿武隈「うへぇ~、謝らないでくださいよぉ!この傷は直そうと思えば直せるんですからぁ~!!?ねぇ、鬼怒?」

 

鬼怒「もっちろん!!」

 

「・・・」

 

阿武隈「・・・」

 

鬼怒「・・・」

沈黙。二人は僕の返答を待っているようだった。きっとその返事は地雷になる、しかしその応えを僕の口から言わなければ、この二人はずっと無言のまま僕を殺意に溢れた目で睨み続けるのだろう。故に言わなければならない。どんな結果になろうとも。

 

「・・・」

 

「……なんで、なんで直さないんだ?」

その応え待っていましたとばかりに二人は僕に近づいてくる。そして、僕の目の前に立つと目を見開きながら僕に言い放った。

 

阿武隈&鬼怒「人間がしたことを忘れないため」

 

 

 

なんとか立ち上がる。今は本当にこの殺風景な部屋が僕の拠り所だ。

 

「とりあえず…やることはやらないとな」

 

僕は執務室から拝借したノートパソコンに電源を入れる。そして通販サイトにアクセスし、目当ての商品を購入した。

 

「費用は……鎮守府建て直しに必要と上層部に伝えるとして…。まずは…掃除からかな…」

巨大な十字架が僕の背中にくっついているのでは…と思うほど体が重いが、まずは行動あるのみだ。

 

コンコン。ドアをノックする音。

思わず身構えてしまったが、その声を聞いて、体の緊張が解かれる。

 

川内「おはよう!昨日は大丈夫だった!?」

元気よく入ってきたその姿。どれほど僕の心を救っただろうか。

 

「ああ!おはよう!!大丈夫さ!!」

僕は自分を鼓舞するように精一杯の声で川内に挨拶を返した。

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