仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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地下牢7

川内「なんか辛気臭いね…」

 

「ああ、本当にそう思うよ」

 

深夜、鎮守府の地下でうごめく二つの淡い影…僕と川内はお互いに懐中電灯を携え、地下牢へやってきた。

僕はもうこの地下牢も見慣れたものだが、川内は初めてここに来たのだ、驚いたような、嫌なものでも見るかのような顔をしている。

地下牢は相変わらず薄暗い。とは言え、大分掃除したお陰で川内たちを呼ぶことも可能になった、これからやる作業はどうしても人手がいる。だから、これは大きく前進したと考えていいだろう。

それに、この薄暗さの対策もちゃんと考えてきたのだ。

 

「川内、これを」

僕は川内に電球を差し出す。渡された本人は?な顔をしているので、僕は近くの牢へ入り、彼女を手招きした。

 

「川内、ここを照らしといてくれ。……これをこうやって…と、出来た!」

電球を付けるや否や、ピカッと眩い光が牢を明るく照らす。ふぅ、とりあえず点いてよかった~。

 

初めてここに来た時に見た例の発光体は消失してしまった…だけど、各牢の中には大体一つ裸電球が吊るされていて、それを点けられないかと思ってたんだ。

作業中に付ければもっと早く掃除が終わったかもしれないんだけど、思ったより軍の検閲に時間が掛かってしまった。

 

川内「おぉ~!!!」

川内が目を細目ながら感心した様な声をあげる。

 

「とりあえず、手分けして電球をつけて回ろう!…はい、これ川内の」

僕は川内に幾つか電球を渡す。川内はそれを受け取るとニカッと笑って走っていってしまった。

……夜になると川内は元気になるらしい。

 

 

 

 

 

「おぉ!見違えるな~!!!」

 

川内「うん!牢を明るくしていくの、なんだかゲームみたいで楽しかった!」

可愛いらしい笑みを浮かべている川内。とりあえず、川内たち艦娘のトラウマを引き起こしそうな物は大方排除したからな……とは言え、慎重にいかないと!

 

だが、やはり明るくするというのはいいことだな。心なしか、辛気臭さが抜けたような気がする。まぁ匂いはまだするかな?とりあえず、据え置き型の芳香剤を各牢に置いといた。

 

「さて、次は…」

ふと川内を見ると、まるで遠足前の子供のような顔をしている。あの、楽しんでます?

 

「コホン、次はこのマットを牢に敷き詰めていこうか」

僕は正方形のマットを取り出す。所謂、タイルカーペットだ。色は肌色というかクリーム色というか、なんとなく落ち着けそうという理由で購入した。手触りはまあまあ柔らかいという感じで、裸足でこの上を歩けば、気持ちが良さそうだ。

 

川内「えっーと、牢の隅から敷き詰めていけばいいんだよね?」

 

「そっ!牢の数も多いから骨が折れると思うけど…」

 

川内「よーし!じゃあ、どっちが多くマットを敷けるか勝負ね!!!」

僕の言葉を遮るように、川内の嬉々とした声が地下牢に響き渡る。そして言うが早いか川内は再び走って行ってしまう。元気よすぎじゃね?まあなによりだけどさ…。

 

結局、ほとんどの牢は川内がやってくれた。いやはや、艦娘恐るべし。

 

川内「へっへーん!私の勝ちだね♪♪」

勝ち誇ったような顔をしているけど、僕的にはあんまり疲労しなくて大分楽させてもらったんだけどさ。

 

「おうおう…川内は強いな~」

頭をなでなでしてみる。「ひゃっ!」と小さく悲鳴をあげたけど、まさか痴漢で訴えられないよな…。ちょっと、怖くなったので、すぐに手を引く。

俯いてしまったままの川内。どうしよう…。

 

「そ、そうだ!これ要る?」

苦し紛れに取り出したのは、飴玉。リンゴ、バナナ、桃、メロン、それとハッカ味。疲労を癒そうと購入したものだが、ポケットに入っていたので少し生暖かい(もちろん包装されてはいるが)

 

川内「むー」

少し顔をあげ、僕の掌にある飴玉を見定めているようだ。

 

川内「じゃあ、これ!」

川内はそう言うと、リンゴ味の飴玉を手に取った。そしてすぐに口に入れる。

 

川内「おいしー♪♪」

機嫌を直してくれたかな?

 

川内「次は何するのー?」

 

「次は壁紙を貼ろうと思ってるんだけど…今日はもう遅いからまた明日」

 

川内「えー!!?夜はまだこれからだよー!?」

むくれる川内。やっぱ楽しくなってたのね…。

 

「明日も手伝ってくれる?」

 

川内「もっちろん!」

笑顔で快諾する川内に心が洗われた気がした。

 

…………その後しばらく川内は今敷き詰めたばかりのマットの上で寝転がって遊んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

 

本日は川内が非番ということもあって、朝から作業をすることにした。今回は神通と那珂も一緒だ。

うーん、昨日の夜と違って川内が眠そうだ…。うつらうつらとしている。

 

「川内、昨日は遅くまで頑張ってくれたし今日はいいよ?」

 

川内「う~~~~~!!大丈夫ぅ~」

眠い目を擦りながら、これまた眠そうな声で返事をする川内。

 

「川内。ちょっと床にゴロンとして?」

 

川内「えぇ~~、なんでぇ~~」

 

「ちょっと、これからの作業に必要なことなんだ。頼むよ」

 

川内「別にいいけどさ…」

そう言って床に横になる川内。神通と那珂は何事かと見守っていたが、すぐにその意図が分かったようだった。

 

川内「ZZZ…」

床に転がって、数秒。川内は夢の中へ旅立ってしまった。

とりあえず、上着を川内に掛ける。

さてと………、神通と那珂を見ると、やっぱりまだ警戒心が抜けたわけではなないようで、じっと僕の顔を見ている。

 

「えっと、来てくれてありがとう。とりあえず、川内は昨日も手伝ってくれたから寝てもらうとして、二人には壁紙を貼って欲しいんだ!頼みます!」

そう言って頭を下げる。

 

神通「まぁ、手伝うと姉さんに約束しましたから…」

 

那珂「アイドルに手伝ってもらうなんてこの幸せ者め~!」

反応に差はあれど、どうやら手伝ってくれるらしい。

 

「ありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神通「そこ!しっかり持ってください!!那珂ちゃんは下の方!剥がれてますよ!!」

 

那珂「うへぇ~~」

 

「オォン、アォン」

うん、壁紙貼りも順調だ。すごい激を飛ばされながらだけど。

 

神通「ちゃんと手で伸ばさないと!!シワが出来てます!!」

 

「あ、あの~。とりあえず、貼れればいいかな~と…」

 

神通「何言ってるんですか!!?やるからにはしっかりやらないと!!」

 

那珂「那珂ちゃん疲れた~!休憩~!!」

 

神通「後もう少しです!これだけやって、小休止しましょう!!!」

神通……鬼教官かな?

 

神通「手が止まっていますよ!!しっかりと伸ばして!」

 

「は、はい~!!」

僕と那珂はこうして神通の鬼指導の元、壁紙貼りをやり続けることとなった。

熱が入ってしまったようで、神通は一つ終わらせると僕たちを鼓舞し、結局最後の牢の壁を貼り終わるまで休ませてはくれなかった。

 

 

神通「頑張りましたね!」

 

「・・・」

 

那珂「・・・」

一人、清々しい顔で言う神通。僕と那珂は沈黙。そして、スヤスヤと寝息を立てている川内。

多分、今だけは那珂といい酒が飲めそうな気がする。那珂飲めるかしらんけど。

 

 

だがとりあえず、地下牢の雰囲気は大分変わった。

仕上げに各電球にスイッチ付きの傘を付けといたのだが、その暖かい光に照らされる、お洒落な壁紙、そして柔らかな床マット。

後はちょっとしたインテリアを置いたりすればより良くなるかな?

 

まあ、なにはともあれ。ひとまず、ここまで地下牢を変えられたのは、川内たちの協力の賜物だ。

川内は寝ているので、神通と那珂に改めて礼を言う。

 

神通「いえ、姉さんのためですし…」

 

那珂「ふぅ~~疲れたぁ~」

神通は伏し目がちに、那珂はそもそも僕の声が聞こえていないくらい疲れていたようで、違った態度を見せている。

 

川内「ZZZ…」

 

そろそろ起こすか…。

 

 

 

 

 

 

 

川内「いやー、ごめんね?ぐっすり寝ちゃったよ!!」

 

神通「姉さん…」

 

那珂「川内ちゃんが言い出しっぺでしょー!!」

 

「いや、川内は昨日遅くまで頑張ってくれたしさ…神通と那珂も本当にご苦労様!」

とりあえず、労を労うには心許ないけど、ジュースを三人にご馳走する。美味しそうに飲んでくれたのが幸いか。

 

そして、地下牢の今後の運用について考える。まあ、まずは長門と陸奥に相談だな。僕の手には余るし。

 

 

地下牢を後にした僕たち。川内たちはこの後風呂に入るようだ。僕も入りたいのだが、今のこの時間だと入るのは無理だろう…、いつも真夜中にこそこそと入っているんだから…。

ひとまず、川内たちと別れ、僕は執務室へと行くことにした。

 

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