仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
吹雪「まぁ万が一にもないと思いますが、もし人間がこの扉を開けて逃げようとしたら止めてくださいね?まぁ絶対ないと思いますけどね!」
???「んー、わかったよ…」
朝潮「本当にやるんですか?阿武隈さん達に聞いてからの方が…」
吹雪「わざわざ阿武隈さん達に報告しなくてもいいよ!むしろ人間をとっちめるんだから、褒められるんじゃないかな?」
朝潮「・・・」
吹雪「朝潮ちゃんはなにもしなくていいよ?私が人間なんかコテンパンにしちゃうからさ」
???「なんでもいいから、早く終わらせてきてね…」
吹雪「はい!じゃあ行こっか、朝潮ちゃん!」
朝潮「はい…」
???「あー、眠いなぁ~」
目の前にいる艦娘は、静かに目を閉じ、ドア横の壁に寄り掛かるようにして立っている。まるで誰もこの部屋から出さないとでも言わんばかりに。
前門の虎、後門の狼。
…名前は分からないが、おそらく吹雪たちの協力者だろう。焦る気持ちを押さえ、なんとかこの場から上手く逃げだせないものかと頭を捻るが、時間はあまり無いのが事実だ。
今にも吹雪が階段を上って、僕を始末しに来る。かと言って目の前の艦娘は僕を易々と通してくれるだろうか?
伸びた前髪が片方の目を隠し、凛とした表情を浮かべながら佇む姿はまさに熟練の兵士。全く隙を見せていなかった。
しかしもう覚悟を決めないといけないらしい。地下から物凄い勢いで追ってくる狼に食われるよりは、目の前の虎の尾を踏む方がまだいいだろうか?隻眼が吹雪より狂暴だったら、もう終わりだが…まあもう一か八かだ。
先手必勝。僕は全力疾走でドアを開け、走り去ることに全てを賭けた。
息を整え、いざ突撃!
元々なかった隻眼との距離、それはほんの一瞬で詰まり、正にその横を駆け抜けようとした、その時だった。
???「ZZZ…」
は?
吹雪「あれ!?人間は!?どこいったんですか!?」
???「ZZZ…」
吹雪「加古さん!!!」
加古「んっ~~!!ふわぁ、よく寝た…」
吹雪「人間は!?人間はどうしたんですか!?」
加古「?」
朝潮「・・・」
私は吹雪ちゃんの人間に対する執着が少し恐いと思った。
もちろん人間を擁護するわけではない。だけど、力で屈服させるやり方はどうにも腑に落ちないところがまだ私の中にある。
ヘル・アンカーズは阿武隈さん、鬼怒さん、そして雲龍さんを祖に誕生した謂わばレジスタンスの様なもので、そこに私を含めた有志のメンバーが加わって現在に至るわけだけど、実を言うと本格的にヘル・アンカーズが動き始めたのはごく最近なのだ。前司令官はヘル・アンカーズが結成されてからまもなくして姿を消してしまったので、手を下すことは叶わなかった。
そして、あの人がこの鎮守府にいると知って、私たちは彼を鎮守府から追い払おうとした。
……ただあの人が私を優しく見つめながら話してくれたこと、そして吹雪ちゃんが実際にあの人を暴行しているのを見て、私は何かとんでもない過ちを犯しているのではないかと思い始めていた。
しかし、私は無力だ。吹雪ちゃんを制止することも出来ず、ただあの人がやられる姿を傍観していたのだから。
吹雪「朝潮ちゃん!早く探しに行こう!?まだ遠くへは行ってないだろうし」
朝潮「えっ!?あっ…はい」
加古「あたしも探すよ」
吹雪「お願いします!」
私は大きな罪悪感を感じながらも、吹雪ちゃんに急かされるままあの人の捜索を開始した。