仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
朝潮「満潮!?霞!?どうしたのその傷!!?」
私が妹たちに問い掛けると、妹たちはいつも決まってぶっきらぼうに「大丈夫」とだけ言う。無論、大丈夫なはずはない。頬が赤く腫れ、瞳にうっすらと涙を浮かべながらも私の前で気丈に振る舞う健気な妹たち。そんな姿を見て、何と声を掛けたらよいか分からず、私はただその場に立ち尽くした。
朝潮「少しは何か食べないと元気が出ませんよ?」
任務から帰投して直ぐに部屋に戻ってきたのだろうか、見るに耐えない生傷を体の至るところにつくった霰が自室の布団に横になっていた。何か欲しいものはないかと問うが、「要らない…」と小さなで返事をすると霰は眠ってしまった。貧相な布団に体を横たえ、休息をとる私の大切な妹。体が冷えぬように布団を掛けてやるが、残酷なものでまた直ぐに出撃命令が掛かる。「いってきます…」とだけ言うと、霰はその小さな体を再び戦場へさらした。
朝潮「大潮!荒潮!止めなさい!!!」
私が部屋に戻ると、大潮と荒潮が掴み合っていた。なんとか間に割って入るが、両者とも引く気がないようでお互いに激しく罵りあっている。その後、二人を他の妹たちと協力して引き離し、揉めた理由を聞いてみたが、どちらも「姉さんには関係ない!」としか答えず、埒があかなかった。
大潮や荒潮に限った話ではない。ほぼ毎日妹たちの怒号が昼夜を問わず、部屋に響く。顔を合わせれば、口から飛び出る刺のある言葉…仲睦まじい姉妹関係など既に破綻していた。
きっと度重なる出撃、振るわれる暴力に妹たちは限界だったのだろう。
「お前の妹共は使えないやつばかりだな」
そう言われて、なにも言い返せずただ頭を下げる無能で頼りない姉。
私ももう限界だった。
朝潮「・・・」
私は吹雪ちゃんや加古さんと手分けして、あの人を探している。
……あの人はなぜここまで出来たのだろう。
私は疑問に思った。なぜ敵視されることはあれど、歓迎されることのない相手にここまで向き合い、行動出来るのかと。なぜそんな意味のないことを…。
だが、それは誤りだった。
長門さんや陸奥さん、そして川内さんたちの変わり様、それこそが正にあの人が出した結果だろう。
地下牢へ初めて行ったが、噂に聞いていた雰囲気とは全然違う印象を受けた。それはあの人が作ったものだと吹雪ちゃんは言う。そして、「こんな紛い物!」と彼女は言うが、私は凄いと思ってしまっていた。
私とは大違いだ。何も出来ず、ただいるだけの私とは…。
朝潮「はぁ、戻ってきてしまいました…」
私は再び地下牢へ降り立つ。
ここならあの人と会うことはないだろう…とりあえず今日だけは。
朝潮「私って何の為にいるんでしょうか?」
気付くと私は涙を溢していた。そして、止めようにも頬を伝う涙は次から次へと流れ出てくる。
終いには声をあげて泣いてしまった。
ここなら聞こえないだろう。愚かな私の声なんて。
だから、せめて今だけ…。
地下牢に惜しげなく泣く声が響き渡った。