仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
僕は今、ライブに必要そうな物品を購入しようと、いつもの通販サイトを物色している。
「うーん、これも欲しいな…」
ふと思う…果たして、これらの物品を購入した際に、上層部は資金援助をしてくれるのだろうか?この前の壁紙やタイルカーペットもそうだが、明らかに僕が購入しているのは普通に考えれば鎮守府に必要の無いものだ。
一応、鎮守府建て直しの為という名目があるのだが、上層部に指摘されるのは時間の問題だろう。
そんな不安を覚えながらも、通販サイト特有のあの買い物かごをクリックする手は止まらなかった。
川内「とりあえず、那珂に頼まれた内容でチラシ作っといたよ!見て見て!」
「おぉ!チラシなんて早いね、どれ…見せてもらうね」
もうチラシの構想まで出来ていたとは…那珂も川内も仕事が早い。僕は、若干はしゃぎ気味の川内からチラシを受け取り、目を通す。
……え、二時間ライブ?随分長いんだな…。僕のイメージでは三十分くらいかと見込んでたんだけど…。
…まあいいか、朝潮と加古は大変だろうけど。というか、長門と陸奥も出演するのか…何枠で?大道具とか?
正直、長門と陸奥が舞台のセッティングをする姿が思い浮かばない…どちらかと言うと彼女たちは主役っぽい感じだし。
若干不安はあるものの、チラシ自体の出来はとても良い。これを何日か前から配布すれば、ライブ当日は大盛り上がりなはずだ。
「とても良いと思うよ!じゃあ、これを百枚くらい刷るのを頼んでもいい?」
川内「りょーかい♪」
さて、川内が印刷に行っている間に、僕は那珂といろいろ打ち合わせをしないとな。
それにそろそろ那珂も…おっ!来た来た!
丁度川内と入れ替わる様にして入室してきたのは、スーパーアイドル(チラシ参照)那珂だ。何故かデッキプレイヤーを携えている。
「いやー、チラシなんて…すごいね」
那珂「ふっふーん、ありがと♪那珂ちゃん、今最高に張り切ってるからさ!」
そう言うと、クルクルと華麗にターンを決める那珂。さすがスーパーアイドルだ。
「よーし!じゃあ気合いを入れて、打ち合わせといきますか!」
那珂「おー!!」
「そういえば、長門と陸奥も参加するみたいだけど、どんな感じなの?その他って書いてあるけど…」
僕は先程受け取ったチラシの出演メンバーのところを指差しながら尋ねてみた。
那珂「あっ、それ!?長門さんと陸奥さんには司会とか進行役をお願いしようと思っているんだ~!!!」
「へぇ、それならなんか納得がいくよ」
さすがに大道具とか裏方はないよな…と思い、苦笑する。そんな僕を那珂は不思議そうに見ていたが、何かを思い出したように話始める。
那珂「あ、そうそう!!ライブで歌う曲、一回聞いとく!!?」
「お、いいの?」
僕がそう答えるや否や、那珂は待ってましたと言わんばかりにマイクを取り出す。どこから出てきた…。
そして、持ってきていたデッキに電源を入れ、再生ボタンを押すと、軽快な音楽が流れてきた。
那珂「それでは…すぅぅぅぅぅうぱぁぁぁぁぁぁぁあアイドル!!!那珂ちゃんのデモライブ、開催致しまーす!!今日は集まってくれてぇぇぇぇありがとーー★」
なんか始まった。
那珂「それでは聞いてください!!!記念すべき一曲目は『プリティスマイル⭐那珂ちゃん』です!!!」
そう高らかに宣言すると、丁度前奏も終わったようで那珂が歌い始める。
おぉ…。
可愛らしい笑顔を振りまきながら、時折コミカル?な動きをする那珂。やはりアイドルを自称するだけある。
そして、約五分くらいだろうか…僕は那珂の歌声を黙って聞いていた。
那珂「…ふぅ!ありがとう!ありがとう!!!」
那珂の目には沢山の観客が見えているのだろうか、至るところに手を振っている。
「いやぁ、良かったよ、那…」
那珂「続きましてぇ!那珂ちゃんのキュートな毎日を歌にした『那珂ちゃんLife!!!』、お聞きください!!」
今度はデッキからテンポの良い曲が颯爽と流れ、那珂も体を激しく動かしている。その内、頭をブンブンと上下左右に乱暴に振り出した。ちょっと恐い。
そしてポーズを決めると、大きな声で歌い始めた。
お、おう…。
那珂「ふぉぉぉぉぉぉぉう!!!さいっこおおおお!!!」
「・・・」
那珂「ありがとう!ありがとう!!みんな、大好きだよぉぉぉぉぉ!!!」
「あ、あの…那」
那珂「それでは皆のアンコールにお応えして…」
「ちょっ!?ちょっと待った!!!」
那珂「こぉーら!!いくら那珂ちゃんが素敵なアイドルだからってライブに乱入はダメだぞぉ~!!!」
「いや、そうじゃなくてさ!もう大丈夫ってこと!ほら、打ち合わせもしないとだからさ!?」
那珂「むぅ、そっかそっか!ま、那珂ちゃんの持ち歌は全部聞いてもらったし、いいよー!!」
大変ご満悦な表情の那珂さん。よかった…このまま永遠に歌われるかと思った…。
さて、気を取り直して打ち合わせを…………。
あれ?ちょっと待てよ!?
「えっ、な、那珂!!」
那珂「なーに~??」
「持ち歌って、二曲しかないの!?」
那珂「うん、そうだけど?」
ぴゃああああああああああああ!!!
「え、えっ?えぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!??」
那珂「わぁ、どうしたの?」
「だって二時間やるってここに!!」
僕はチラシを那珂に突き付ける。
那珂「うん!最高のパフォーマンスをするには最低でも二時間欲しかったからね!!那珂ちゃん頑張っちゃうよ~!!」
「いや、どうやって間を持たせるのよ!?」
どちらも五分くらいしかなかったぞ!!?
那珂「もっちろん!!ちゃんと考えてるよ~!!!」
得意気な那珂。そ、そうか…トークで場を持たせるつもりなんだな…那珂はコミュニケーション能力高そうだし…。安心し…。
那珂「アンコールに応えてまた歌えばいいんだからさ!!!」
へ?
「あ、あんこーる?と、ということは…さっきのにきょくがくりかえされるということですか?」
那珂「そっ!まあ、皆が何度でも聞きたくなるような名曲だし、二時間なんてあっという間なんだろうな~!」
「・・・」
川内「おー、那珂も来てたんだ!あ、とりあえず印刷終わったよー!」
衝撃の事実を知り、愕然としている僕に印刷を終えた川内が声を掛ける。
那珂「おー!川内ちゃん!ご苦労ご苦労♪」
残念ですが、その印刷物は訂正しないといけないみたいですよ…。
仕方ない、資源が勿体ないけど、ライブ時間を訂正したものをもう一度作り直すか?
…いや、手間がかかるけどライブ時間のところだけをペンで書き直せばいいのか!?それなら紙の無駄にはならない!大丈夫、まだ慌てる時間じゃない!そうと分かれば…。
「ありがとう、川内!早速で悪いんだけど刷ったチラシを見せてくれ!」
すると、川内は自信たっぷりな顔をして言った。
川内「えへへ、ちゃーんと配ってきたよ!!どう?やるでしょ!」
ニカッと歯を見せ笑う川内。さぁ、褒めろ!と言わんばかりの顔をしている。かわいい、かわいいんだけど、これだけは言わせてくれ。
ぴゃああああああああああああ!!!(本日二度目)
川内「渡す娘、みーんな楽しみにしてるって言ってたよ!二時間も楽しめるなんてって!頑張んなきゃね!?」
那珂「よぉーし!!やる気満タンだぁ!!!」
「・・・」
川内「・・・」
「・・・」
那珂「……きゃは☆」
川内「ちょっと神通呼んでくるね…」
那珂「ちょっ!?川内ちゃん、顔が恐いよ!?」
「もし可能であれば、朝潮と加古、長門に陸奥も呼んできてくれないか?」
川内「うん…」
那珂「お、おぉ勢揃いだね!」
川内「・・・」
「・・・」
那珂「うへぇ~」
かくして部屋に神通、朝潮、加古、陸奥がやって来たわけだけど…加古を除いて皆一様に不安そうな顔をしていた。そう言う僕もだけど…。
「えっと、集まってくれてありがとう…。もしかしたら、もう川内が事情を話してくれているのかもしれないけど、今回来てもらったのは知恵を貸して欲しいからだ」
陸奥「…待って。川内から話を聞く云々の前に私と長門がライブに参加してる事、さらに言えばライブを開催する意図も私たちは聞いてないわ…。どういうことか説明してくれる?」
あー、那珂。二人に了解とらずに進行役に設定してたのか。僕もライブの事、報告していなかったし、それは那珂だけのせいには出来ないけどさ。
「あ、あぁじゃあ大まかに説明するね…」
僕はとりあえず朝潮、加古と仲良くなるきっかけとしてライブをしたい事、チラシを作り配布したが内容に無理があって今困っている事を簡潔に伝えた。
陸奥は頭を抱えている。そして、大きなため息を一つつくと、呆れたような顔でこう言った。
陸奥「…それで、知恵を貸して欲しいというのは?」
「うん…。正直、いろいろ迷っているところはあるけど、今回のライブはそのまま二時間、やり遂げようと思う。だけど、那珂の歌はアンコール含めて三十分が限度だと思うのね。だからその…裏方だけじゃなくて、あの…皆にもライブに参加してもらいたいというか…なんというか…」
陸奥「要は…私たちにどうして欲しいわけ?」
陸奥が厳しい口調で言う。まぁ怒りますよね、そりゃ。
あぁ、もうダメだよな!萎縮しちゃ!ここに来てくれただけ、ありがたいんだから、ちゃんと伝えないと!
僕は息を吸い、はっきりと言ってやった。
「みんな、特技披露しよう!!!」