仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
川内「正義を貫き、悪を滅ぼす!暗夜忍者、川内参上!」
川内「私の刃の錆となれ!とうっ!」
ポコッ!
「うわぁ、やーらーれーたー」
川内「いや、声は出しちゃ不味いでしょ。人間はいないことになってるんじゃないの?」
「あ、ごめん」
時刻は真夜中。
そんな中、僕は頭から黒いシーツを被り、床に伏している。一方川内は、新聞紙を丸めて作った刀を腰に差し、頭巾を被って、僕を見下ろすように立っている。
川内「はぁ、どう考えても十分くらいしか待たないよ、この茶番…」
「それだけやれれば上等よ」
川内「…うーん、もう少しセリフ増やそうかな…」
何をしているのかだって?劇の練習です。
あの時、ライブの出演メンバーを初めて召集した時。
突拍子のない一言に、川内までもが白い目を僕に向けていた。僕は背中に冷や水を浴びたような、そんな感覚に襲われ、本当に嫌な時間だった。
陸奥は怒ってしまった様で、黙って部屋を出ていってしまった。朝潮と加古は、そもそもダンスをどうするかっていうことで那珂を連れて行ってしまうし、神通も「考えておきます」とだけ言い残して、部屋を後にした。
川内が憐れんだ目で僕を見ながら、「一緒に考えよう」と言ってくれた時は、泣きそうだった。
あの日から既に三日は経っている。十日後には、ライブが開催されるというのに、まだメンバーからの音沙汰はないし、下手をしたら早めに切り上げることになるのだけど…。
川内にそれとなく艦娘たちの様子を探ってきてもらったけど、鎮守府の至るところでライブの話題が持ちきりで、さらに駆逐艦に至っては満面の笑みを浮かべ、ライブの開催を指折りで待っているらしいのだ。以前長門から駆逐艦たちの様子を聞いている身としては、ガッカリさせるわけにはいかない。そうなると、やはり時間の短縮は出来れば避けたい。
川内「私たちの劇が約十分、那珂たちので約三十分費やすと考えて…後八十分どうしようか」
「あぁ、そうだね…あ」
「劇の後に川内と僕で踊ろうか?」
川内「は?」
翌日。
神通「考えてきたのですが…特技披露であれば何でもいいのでしょうか?」
「おお!考えてきてくれたのかい!?ありがとう!」
もう正直何でもいいというのが本音だ。焦っていることもそうだけど、自分から言っといてなんだが、もはや僕と川内のやる劇など特技披露の「と」の字もないんだから…。
神通「では、私は居合術をお見せしたいと思います」
「い、居合?あー、刀を使うのね…うん、いいよ…」
この際もう何も言うまい。
神通「では、よろしくお願いします」
「あー、居合はどれくらい時間稼げそう?」
神通「そうですね…恐らく一分くらいでしょうか」
「神通」
神通「はい」
「ちょっと僕が演出加えてもいい?」
神通「何をなさるんですか?」
「それは後日伝えるよ…」
とりあえず、神通には十分くらい稼いでもらうとして…。後、七十分かぁ、先が思いやられるなぁ。
するとドアがノックされる。那珂か?
陸奥「ちょっといいかしら?」
「陸奥か…」
陸奥「…私で悪かったわね?」
陸奥が鋭い目で僕を射抜く。す、すみません。
陸奥「これ、貴方に渡しておくわね?」
そう言って陸奥は一枚の紙を僕に渡す。ん…これは!?
陸奥「私たちは交互に出るわ。二人で何かするよりも時間が稼げるでしょ?」
「陸奥…ありがとう!」
紙には長門と陸奥がするであろう演目の内容が簡潔に書かれていた。なんだかんだ言って、助けてくれる二人。じんわり頬が熱くなるのを感じながら、早速、内容を確認させてもらう。
ふむふむ、陸奥は…………演舞『火炎』?えっと、これは…。ちらりと陸奥を見ると自信に満ち溢れた顔で僕の顔を見ている。
再び紙に目線を戻す。…神通の居合も許容しているんだし、演舞『火炎』も大丈夫だろう(白目)。
で、長門は…に、人形劇?これまた、その…似合わないな。まぁ実は出し物の中で一番まともかも。
「確認した。よろしく頼むよ!」
陸奥「ふふ、感謝しなさいよ?」
そう笑って言うと、陸奥は部屋を出ていった。
案外、乗り気の様で何よりだ。
そしてあれよあれよと時間は経過し、ライブ前日の日になった。