仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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スーパーライブ4

朝潮「ちょっと加古さん!どういうつもりですか!?」

私を背後から押してくる艦娘、加古さんに私はそう聞かずにはいられなかった。

 

加古「んー?だから、さっき言ったでしょ。あたしと朝潮でライブに出る…」

 

朝潮「ですから!なんで私まで!!」

私は分かっていた。

もちろん、ヘル・アンカーズの一員として、阿武隈さんたちに何も聞かずに、あの人……人間に手を貸すなんて気が引けたということも間違いではない。それは加古さんの言う通りだ。

 

でも、やっぱり一番なのは、私が足を引っ張ってしまうことが明らかだから。あの日、怯える私の目を優しく見据えながら、穏やかな口調で諭すように話してくれた彼。私の話をしっかりと聞いてくれた彼。そして、こんな役立たずの私を、ライブに誘ってくれた…必要としてくれた。それが本当に嬉しかったのだ。

前司令官から無能と言われ続けた私にとって、彼のような存在は新鮮で、温かく、そして毒の様な存在なのかもしれない。あの人に見られると、胸が締め付けられる様に痛むのだ。胸の鼓動が高まり、破裂してしまわないかと心配するほどに。

 

加古「えー、せっかく誘われたんだし…一緒にやるってのが礼儀じゃない?ま、もう参加決定だけどね~」

 

朝潮「なっ!?わ、私は…」

 

加古「…いつまで囚われてんの?」

 

朝潮「え?」

ふと加古の声のトーンが下がり、冷たく発せられたような気がして、彼女の顔を凝視する。

だが、その時の加古は普段と変わらないような涼しげな顔をしているだけだった。そして、ニコッと笑うと「よろしく!」とだけ言って、行ってしまった。

残された私は…どうすればいいか分からず、ただ彼女の背中が見えなくなるまで見ていることしか出来なかった。

 

 

 

 

翌日。

私は近海の哨戒から帰投し、執務室にいる長門さんに報告を終えると、自分の部屋に戻ろうと鎮守府の廊下を歩いていた。

もう加古さんは阿武隈さんたちにライブ参加の件を伝えてしまったのだろうか…。もし、伝えていたのなら、阿武隈さんたちとは会いづらい。私は、早く部屋に戻ろうと、歩く早さを少しあげた。

 

…とりあえず、ヘル・アンカーズのメンバーと会うことなく自室の前に来ることが出来た。ほっ、と一息、安堵する。

そして、部屋のドアを開けると……なぜか妹たちが部屋の中央に集まっていた。

そして、私が帰って来たことに気が付いたようだ。妹たちに一斉に顔を見られ、思わず私は後退りしてしまった。

 

朝潮「ど、どうしたの?」

意を決して声を掛ける。

すると、霞がやって来て、私の手を取ると、そのまま部屋の中央まで連れていかれた。

そこには、一枚の紙があった。

私はそれを手に取り、そして目が点になる。それは、ライブ開催のチラシであった。そして、出演メンバーのところにバックダンサーとして私の名がはっきりと載っていた。

紙を持つ私の手は震え、呼吸が早くなる。

紙から目が離せない、いや目を離したくない。もしこのまま目線を上げ、妹たちの顔を見たら、私は…。

 

不意に、霞の声が聞こえてきた。

 

霞「朝潮姉…」

私はその声を聞き、居ても立ってもいられなくなった。

早くこの場から逃げ出したい。

 

気が付くと、私は部屋を飛び出していた。

 

 

 

 

 

 

「みんな、特技披露しよう!!!」

部屋を飛び出し、途方に暮れていた私は、川内さんに声を掛けられ、あの人の部屋へ赴くことになった。

 

出来れば今は会いたくない。

 

今や私は完全に妹たちに見限られてしまっただろう。

前司令官が姿を消してから、徐々に鎮守府の雰囲気も良いものへと変わってきていた。だが、それで傷跡が完全に消えたわけではない。今でも妹たちは夜中に急に泣き出したり、震えが止まらず、うずくまってしまったりしてしまうことがある。妹たちは現在進行形で苦しんでいるのだ。

 

それなのに、姉の私がライブに出て楽しんでいたら?

 

あの時、妹たちの顔を見れなかった理由はそこにある。

霞はあの後何と言おうとしていたのだろうか?

それを想像するのも恐い。

…とそうこう考えているうちに、私はあの人がいる部屋まで来てしまった。

 

そして、あの言葉を言われたわけだが…。

 

特技披露なんて、そんなもの私には無いッ!

私は内心そんなことを思いながら、あの人を見つめる。

顔面蒼白とまでは言わないが、彼の顔からは不安が読み取れた。どこかで見たことのあるようなその顔。

 

力になってあげたい。

 

そんな想いがふと頭をよぎるが、そんなこと出来るわけがない、余計に事態を悪化させてしまうのが関の山だ。

…陸奥さんが、黙って部屋を出ていってしまった。

私は何か彼に声を掛けるべきかと迷ったが、何を言うというのか。

結局、私は那珂さん、加古さんに連れられるままその場を後にした。

 

 

 

 

 

那珂「全く!那珂ちゃんが歌ってれば素敵な二時間が過ごせるのにな~!!!」

 

加古「あははは!さすがに二時間も同じ曲を聞き続けたら、頭おかしくなるよ!!」

 

那珂「さりげなくディスってる!?加古ちゃん!!」

私たちは今、中庭の方へ出てきている。どうやら、ここでダンスの練習をするらしい。

 

那珂「じゃあ、とりあえず振り付けから教えるよー!」

那珂さんはそう言うと、一から懇切丁寧に教えてくれた。

 

偶発的にライブに参加することになったとは言え、ここまで親身になって教えてくれる那珂さんに失礼な態度をとってはいけない。

私は懸命に四肢を動かした。

 

 

 

 

 

那珂「・・・」

 

朝潮「…すみません」

誰が見ても分かる。私のダンスは壊滅的だった。

あれから時間を見つけては、那珂さん、加古さんと共に練習を重ねてきたわけだが、一向に私の動きはぎこちなく、下手っぴのままだった。

ああ、自分が嫌になる。こんなに手取り足取り教えてもらったというのに、私は…。

 

那珂「朝潮ちゃん、ちょっといい?」

 

朝潮「はい…」

いつになく真剣な那珂さんの表情を見て、遂に呆れられてしまったかと覚悟したが、次に聞こえてきたのは意外な言葉だった。

 

那珂「朝潮ちゃんはどうして踊っているの?」

 

朝潮「え?」

一体どういうことだろうか?そんなのライブに参加する為に決まっている…。

私の困った顔を見て、那珂さんは少し表情を緩めると、優しく言う。

 

那珂「前にも言ったけど、ダンスで重要なのは心だよ?もしかしたら、ダンスが上手く出来ていないと朝潮ちゃんは思っているかもしれないけど、那珂ちゃんはその事を気にしているわけじゃないんだ!那珂ちゃんが気になってるのは…」

そこで一呼吸置く那珂さん。私はその後に続く言葉を待っている。

 

那珂「朝潮ちゃんは誰の為にダンスを踊っているの?」

 

朝潮「・・・」

誰の為…。そんなの、ダンスを教えてくれている那珂さんの為………本当にそれだけ?

 

あの人の足を引っ張りたくない。あの人にも見捨てられたくない。

 

朝潮「わ、私は…」

 

那珂「那珂ちゃんは誰かの為に踊るっていうのも素敵だと思うよ?それだけその人のことを想っているってことの証拠だろうし。…だけど、そう思うあまり自分を追い込んで、ダンスを楽しめなくなってたら意味ないと思うんだ。自分が楽しめていなかったら、きっとその想いさえも意味がなくなっちゃうと思うし!」

そこで那珂さんはニカッと笑うと、私を抱き締めてくれた。

 

那珂「朝潮ちゃんは頑張ってるよ。那珂ちゃんが保証する」

あれ?あんなに地下牢で泣いたのに…また溢れ出てくるものがある。どうしよう。

 

朝潮「う、あああぁぁぁ!!」

 

私が泣いている間、ずっと那珂さんは寄り添ってくれていた。

私の中で、何かが変わろうとしていた。

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