仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
???「あ、おい!待てよ!」
吹雪「どうしたんですか、摩耶さん?」
摩耶「…まさかドッキリとかじゃねぇだろうな」
吹雪「ち、違いますよ!」
金剛「Ohー!摩耶は案外怖がりネー!」
摩耶「なっ!?金剛テメー!違うわ!!」
???「二人とも落ち着いてください」
鈴谷「ふぁあ…早く帰りたいなー」
…どうやらドアの向こうでは吹雪たちが揉めている様だ。この間になんとか身を隠せる場所はないかと、部屋の中を見渡す。
だが、この部屋…多少の生活感は出てきたものの、未だに殺風景、つまり物があまりないのだ。
巨大な真っ青の鬼に追いかけられたら隠れる定番のクローゼットはおろか、机さえないのだ。こんな場所に身を隠せる場所なんて………。
川内「ZZZ」
あ。
吹雪「大丈夫ですよ!ドッキリなわけないじゃないですか…」
摩耶「ほ、ほんとだな?信じるからな!?」
金剛「ハァ~~。怖がりは帰ったらいいネ!!」
摩耶「…テメー」
???「…埒があきません。開けてください、吹雪さん」
吹雪「はい!」
そう言われ、勢いよくドアを開ける吹雪。
いるはずだ、ここにはあの人間が…。
吹雪の考えでは、ここにいるであろう人間を金剛たちに見せ、不審者としてボコボコにしてもらう作戦だった。
摩耶、鈴谷、翔鶴、金剛は度合いは違えど人間に憎しみや怒りを抱いている。そんな彼女たちが人間を見つけたら、あの人間が何を言ったところで間違いなくやっつける事が出来るだろう。
吹雪は勝ち誇った顔を浮かべていた。だが、その表情は次第に曇り始め、焦りへと変わる。
吹雪「な、なんで…!?」
居ないのだ。ここにいるはずであろう人間が。
摩耶「なんだよ!川内が寝てるだけじゃねぇか!」
鈴谷「川内のサボり部屋を見つけたってことー!?んー、なら鈴谷も今度ここでサボらせてもらおうかな…」
翔鶴「そんな事を言うものではありませんよ?…それに川内さんも別にサボっているわけではないのでしょう」
金剛「そうダネー!今は出撃の時間じゃないし……ブッキーはこれを見せたかったんですか?」
吹雪「ち、ちがっ…」
摩耶「あーあ!なんだよ!!朝早く起こしやがって!!もう帰るからな!!」
鈴谷「鈴谷もー。早く帰って二度寝決め込もーっと」
吹雪「ま、待って…」
吹雪の呼び掛けもむなしく、摩耶と鈴谷は部屋を出ていってしまった。翔鶴と金剛も残ってはくれているが、何故川内の寝ているところを見せられたのか不思議に思っているようだ。…吹雪の親友である睦月が心配そうな顔をして吹雪に声を掛ける。
睦月「…大丈夫?吹雪ちゃん?」
吹雪「・・・」
失態だ。先に自分一人で下見をしてから皆を呼びに行けばよかった。吹雪は自分の浅はかさを悔やむ。
しかし、あの人間はどこへ???
今、僕は布団の中に息を潜めている…それも生暖かい温もりを肌に感じながら。
もうここしかなかったのだ。僕は吹雪がドアを開ける前に、川内のいる布団の中へ滑り込む。しかし布団も大きいわけではないので、かなり川内に密着しないと体がはみ出してしまいそうなのだ。
言い争っている声が聞こえ、誰かが部屋を出ていった様だが……まだ人の気配がする。
もう少しこのまま…と僕が思っていた時に川内が寝返りをうった。
川内「…ん!」
……………………………。
手の平に柔らかい感触。こ、これは…………。
しかも寝返りを打たれたせいで、先程より、その、なんと言うか…密着度が増したのですが。
川内「…ッ///」
さっきから川内の体と僕の体が触れあう度に、川内が喘ぎご……色っぽい声を出すので、僕は自分の理性を保つのに必死になっていた。
金剛「……なんか、川内、変じゃないデスカ??」
翔鶴「具合が悪いのでしょうか?心なしか顔が赤いような…」
吹雪「川内さん…」
金剛「もし熱があったら大変ネ。様子を見てみた方がイイヨ!!」
翔鶴「そうですね…。体を冷やすといけませんから、しっかり布団も掛けてあげましょうか」
絶体絶命のピンチが今、まさに僕の目前に迫ってきていた。
秋の夕暮れが哀愁を漂わせる中、南のとある鎮守府では、艦娘たちと提督がまるで仲睦まじい家族の様に肩を寄せ合いながら、今にも水平線の向こう側に沈みそうな夕陽を静かに眺めていた。
提督は、それはそれは穏やかな顔を浮かべている。一方で、艦娘たちの顔は夕陽に照らされていないはずなのに赤みを帯びている娘が多く、まるで淡い恋心を抱いている乙女の様であった。
その中でも一際目立つのが、この鎮守府で幾度となく旗艦に任命され、誰の口からでも、この鎮守府で最強且つ可憐と謳われるであろう艦娘……村雨だ。
そして村雨の隣には、提督に構ってもらいたいという気持ちが押さえきれず、落ち着きのない艦娘……夕立が緋色の瞳をキラキラさせていた。
戦場での活躍さえ見れば、この夕立と呼ばれる艦娘も村雨に引けを取らない…むしろその面においては村雨をも凌駕していると言えるかもしれないのだが、提督に甘えたい気持ちが先行する余り、周りをおざなりにしてしまう為、この鎮守府で最強且つ可憐の代名詞と言えば、村雨となるのだ。
だが、この所属する艦娘も少ない小規模な鎮守府にとっては、どちらもかけがえのない存在であったことは間違いないだろう。
提督はそんな二人を寵愛し、また村雨と夕立もそんな提督に全幅の信頼を置いていた。
そんなある時、村雨と夕立は提督から執務室に来るように召集を受けた。きっと次の作戦について命令が下されるのだろうと意気揚々と提督の元を訪れる二人だったが、彼女らが入室するなり提督は深々と頭を下げる。
突然の事に驚きを隠せない二人だったが、話を聞くに、どうやら彼女たちは、この鎮守府から別の鎮守府へ一時的に異動しなければならないらしい。提督も泣く泣くそれを呑んだのだとか…。
もちろん、村雨も夕立も提督の元を離れるのは嫌だったが、本当に申し訳なさそうな顔をして二人にすがる大好きな人の顔を見て、二人は一時的に異動することを受け入れた。
二人の返答に、はち切れんばかりの笑顔を見せる提督。
村雨も夕立もそれを見て、自分たちの選択は誤っていないと確信したのだが、それは大きな誤りだった。
異動させられた鎮守府は、今までの時間が全て夢だったのではないかと思わせるほどに悪辣、まさに現世の地獄だった。
所属する艦娘は多いものの、皆死んだような顔を浮かべ、新しく来た村雨や夕立を見ても挨拶の一つも掛けてはこない。
目の前で暴行される艦娘を見て、止めに入らなくなったのはいつからだろうと二人は考える。
そしてもちろん、この鎮守府が剥く牙から彼女たちが免れることなど当然あり得るはずもない。
悔やんでも悔やみきれなかった。
そんな二人の今にも壊れそうな心をなんとか繋ぎ止めていたのは、前の鎮守府、そして大好きな彼だった。
そしてなんとかギリギリのところで耐え忍ぶ二人は、この日、この鎮守府の主にして諸悪の根源である提督に地下牢へ誘われる。
そこで二人は聞かされたのだ。
この鎮守府への異動は取引によるもので、彼女らの救いとなっていた彼が自身の栄光の為だけに二人を差し出したことを。
「鎮守府をより強大で、大規模なものにしたいんだとさ!!お前らはその為の捨て駒さ!」
信じることなど出来ようか、二人は激しく抗議する。
それこそ自分がどれだけ傷つき辱しめられようと何も言わず、ただ耐えてきた彼女たちが初めて反抗するのだ、どれほど彼を大切に思っていたかが伺える。
それを嘲笑しながら男は胸元のポケットから小型の機械を取り出すと、スイッチを押す。
何事かと困惑する二人だったが、その顔はすぐ絶望の色に染まった。
愛するあの人の声で、あれほど懐かしく聞きたいと渇望していた声で自分たちが捨てられたことを知ったのだから。
自分の体であるはずなのに、自分のものではないかのようだ。全てが止まった様に立ち尽くす二人。
そんな村雨と夕立の腕を強引に引っ張り、地下牢のさらに奥底へと誘う男。
そして、二人は……。
どれだけ時間が経ったのだろうか。
村雨も夕立も気付いた時には巨大な講堂の様なところに立っていた。そして思い出そうと頭を捻るが、彼女らはその生い立ちさえ思い出すことは出来なかった。
ただ、何も覚えていないはずなのに激しい憎悪と全てを破壊したい衝動に駆られる二人。
気が付くと、村雨も夕立もお互いに顔を見合せ、笑いあっていた。なぜ初対面なのにここまで笑い合えるのか二人には分かってはいなかったが、とにかく笑わずにはいられなかった。力がどんどん湧いてくる感覚に二人は最高の快感を感じていたのだから。
そして周りを見れば、血の気の多そうな者やまるで獣のように咆哮し、たぎっている者、笑いながら艤装を展開し、今にも砲弾を放ちそうな勢いの者…と気が合いそうな者が大勢いた。
村雨も夕立も艤装を展開し、暴れようかと思い立つ。
だが、その時。
彼女らから見て前方。講堂の壇上から一人の人間が語りかけてきた。
「ごきげんよう、諸君」
夕立「いいなぁー村雨!!!また鎮守府を潰しに行ったっぽい!?」
村雨「えへへ、いいでしょー!?」
夕立「羨ましいっぽいー!!!」
村雨「ふふ、村雨のちょっといいところ、見せてあげたかったなぁ~!」
夕立「ずるい!ずるいずるいずるい!!!」
村雨「ふふ~。あ、そういえば…なんか面白い娘たちがいたよ!」
夕立「面白いっぽい?」
村雨「なんか槍と薙刀を持った……」
夕立「あーー!!!聞いてたらウズウズしてきたっぽい!!!早く戦いたいなぁ!!」
村雨「もぉ!まだ話の途中でしょ!」
???「やぁ、村雨、夕立!」
村雨「おー!松風!」
夕立「久しぶりっぽい!!」
松風「久しぶり。あ、村雨。また鎮守府を潰したんだね、おめでとう」
村雨「ありがと♪」
松風「南の砦と謳われる程の鎮守府…楽しめたかい?」
村雨「ぜーんぜん!だって最初の時点で、大体壊滅させちゃうんだもん!」
夕立「あーー!聞いてるだけで暴れたいっぽい!!!」
松風「落ち着いてよ、夕立。…ま、空母の人がほとんど手柄は持ってちゃうしね。しょうがないさ」
村雨「あ、でも楽しめそうな相手とは会えたかな♪」
松風「へぇ。それは何より。…でも南の砦かぁ。あそこは元々小規模の鎮守府だったんだけど、いつからか軍備が拡張されてね…僕も一度戦いたかったんだけどな~」
村雨「だから、そんな大したところじゃなかったってばぁ!」
松風「…戦い足りない?」
村雨「あったり前じゃん!!!」
夕立「村雨は戦ったでしょー!!?夕立の方が足りないっぽいーー!!!」
松風「実はさ…今度襲撃しようかなと思ってるところがあるんだ。僕が目をつけたところだから、あの方は知らないと思うんだけど…間の抜けた男が司令官をやってるところだよ」
村雨「ふ~ん。で、それを村雨たちに話したってことは…」
夕立「ぽい~」
松風「そ!一緒に潰しに行かない?」
村雨「もっちろん~♪」
夕立「ぽいー!!」
松風「じゃ、決まりだね!それに今回は海からは攻めないよ?」
村雨「?」
夕立「じゃあ、どうするっぽい?」
松風「そこの司令官さ、よく変な物買い込んでるんだよ!それこそ電球やタイルカーペット、巷で流行りのCDとかね!全く、何をやってんだかさ。まぁ、でもこれは利用できると思ってね…今度、僕がまた荷物を届けることになってるから、その時に攻め込もうかなって」
村雨「…それなら空母の人に邪魔されず、遊べるじゃない!?」
夕立「ぽいぽい~♪♪」
松風「…分かってるみたいだね。空母の人に邪魔されないってことは、最初から最後まで僕たちが遊べるってこと!…この事は他の娘には内緒ね?僕たちだけの秘密」
村雨「分かった♪」
夕立「素敵なパーティーが楽しめそうね♪」
松風「詳細はまた後日にでも…ね?」