仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね 作:雨降り
金剛「Hey!なんか所々、ワタシの口調おかしくありまセンカ!?」
翔鶴「そうですね…。作者はいろいろWik○とかを見ている様ですが…」
金剛「む~!ちゃんと書いて欲しいネ!!このままじゃワタシ、片言のペテン師になっちゃうヨー!」
翔鶴「…あんまり文句をつけると作者が…あ、ほら!」
金剛「ヘ?う、うわあああぁぁぁぁぁぁぁ…」
???「巫女服はお姉さまだけじゃないんですよ?ただでさえお姉さまは、喋り方が独特な上、語尾をカタカナにしないといけないんですから…手間がかかるんです!それに作者には編集という裏技があるんですよ?つまりは大丈夫ってことです!!!」
翔鶴「(強引だなぁ)」
目は口ほどに物を言うという言葉があるが、もちろん目だけに限った話ではない。要は、わざわざ口に出さずとも自分の感情を伝えることは概ね可能ということだ。
それこそ鈍感な者でなければ、目を見開き、歯を剥きだしにしている姿を見て、どんな感情を相手が抱いているかなど、容易に理解できるはずだ。
…最も、それをあまりに敏感に感じすぎると、どこかの誰かさんのように自分の伝えたいことを伝えられなくなったり……おっと話を元に戻そうか。
僕の眼前には、艦娘が四人いた。
一人はよく見知った顔だ。
…やっと見つけた獲物をようやく仕留められることに興奮を覚えながらも、それをなんとか隠そうと口に手を充てているが、やはりその高揚感を隠しきれないようで、溢れ出す笑みを堪えきれず、小刻みに震えている様だった。
そして顔見知りというわけではないが、ライブの際に見掛けた例の巫女服の艦娘は、カッと目を見開き、歯を剥き出して明らかな敵意を僕に向けている。
…長門の人形劇を子どものように楽しげに見ていた者と同一だとは思えないほどに。
そして、もう一人の艦娘は巫女服ほどではないが、嫌悪感を抱いていることは、まず間違いないだろう。
まるで汚物を見るかのような蔑んだ顔をし、その背には誰だろうか…その者を庇うかのように立っている白髪の艦娘。
川内「ZZZ…」
川内ィィぃぃいいい!!!たーすーけーて!!!
金剛「…川内に何をしていたネ?」
鋭い目付きで睨まれる僕。
「・・・」
分かっているさ、こんな時に何を言っても無駄だということは…。沈黙は金な…。
金剛「答えるネ!!!」
「…えっと、あの、その」
前言撤回。あまりの迫力に押され、僕はしどろもどろになりながら何とか弁解しようと試みる。だが口が乾いて、上手く喋ることが出来ない。
吹雪「…不審者ですね!!捕縛して、痛めつけてやりましょう!!?」
もはや隠すのを止めたのだろうか、場に似つかわしくない爛々とした表情を浮かべる吹雪。
翔鶴「…睦月ちゃん、とりあえずこの部屋から出ましょう?」
睦月「・・・」
…巫女服と吹雪の後方では、何やら白髪がその背に隠れる睦月?という艦娘に話をしている。
そして、ガクガクと肩を震わせながら、白髪の娘に支えられる形で睦月という艦娘が部屋を後にした。
一瞬見えたその顔は、恐怖に怯え、悲痛に満ちている様だった。
…やはり、これがこの鎮守府における駆逐艦の現状なのかもしれないな。吹雪や朝潮が例外だった感は否めない。あ、ってことはこの巫女服もそうなるのか…。
金剛「ブッキーの言う通りダヨ!!Hey!!オマエは何者ネ?」
「・・・」
…やばい。
ここ最近まで艦娘たちと仲良くしてきただけに、ここまで敵意を向けられると、なんだか虚しくなる。
…そして、怖い。
金剛「…まあイイヨ?これからじっくり聞かせてもらうから!!!」
一向に無言を貫く僕に痺れを切らしたのか、そう言って巫女服が僕の方へ突進してきた。
怖い!怖すぎる!!ヒエー!!!
「せ、せせ川内!!起きてくれ!!!」
川内「んん~まだ眠いんだからぁ……」
どこの隻眼だ貴様!!!
そんな悪態を心の中でついている合間に、巫女服は僕の懐に突っ込んで来たかと思えば、思いっきり僕を押し倒し、馬乗りになる 。
あれ、この光景、どこかで……。
金剛「さぁ!吐くネ!!…もしかしてスパイかなんかデスカ!!?」
そう言って胸ぐらを掴まれる僕。
頼みの川内は一向に起きる気配はない。巫女服の迫力に押され、叫ぶことも忘れてしまっていた。
そして不意に、足に痛烈な痛みを感じる。
吹雪「ハァ~、愚かですね!本当に愚か!!!こんなところで虫けらの様にコソコソして恥ずかしくないんですか!?」
…巫女服のせいで足元が見えず、断言することは出来ないが、おそらく吹雪が僕の足を蹴ったのだろう。
「う、ぐぅ…!」
どうする!?どうしたらいい!!?
金剛「…一発、ぶん殴った方がイイ?そしたら吐くカナ?」
おい!いくらなんでもやり過ぎだろ!!!
金剛「それが嫌なら早く喋るネ!!?オマエは誰で、何が目的ネ!?」
吹雪「聞くだけ無駄ですよ!!早くぶっ飛ばしちゃいましょう!!?」
おお、神よ…。願わくは川内を目覚めさせ給へ。
川内「ZZZ…」
ぴゃあああああああああああ…。
金剛「……覚悟するネ」
そう言って、僕の胸ぐらを掴む手に力がこもる。
ま、待ってくれ、待ってください!!!ちょっと誰かー!!
コンコン
突然のノック音。今にも殴りかかりそうだった巫女服は、扉の方を凝視している。
そして、誰かが部屋に入ってきた様だが、例の如く巫女服が邪魔でそれが誰なのかは分からない。
朝潮「おはようございます!!」
この部屋の空気に似合わない、元気な声がこだまする。そして、その声にどれだけ僕が安堵したことか。
吹雪「…朝潮ちゃん」
朝潮「…え!!ふ、吹雪…ちゃん!?それに、金剛さんも…一体どうしたんですか……ッ!!」
朝潮「何をしているんですか!?金剛さん!!」
金剛「へ?朝潮?どうしたネ!?」
朝潮はそう言って、金剛を押し退ける。…と言うかこの巫女服は金剛と言うのね…。
朝潮「大丈夫ですか?」
朝潮は僕の手を取ると、心配そうな顔をしていたが、僕が大したことはない事を伝えると安堵した様だった。
だが、その穏やかな表情は厳しいものに変わり、金剛たちの方を見る。
朝潮「どういうことですか!金剛さん!吹雪ちゃん!」
吹雪「あ、朝潮ちゃん…」
吹雪が驚いたのは無理もない。今までに見たことのない朝潮の怒りに満ち溢れた顔。しかもそれがあの人間にでなく、吹雪に向けられているのだから。
金剛「ど、どうもこうもないヨ!!」
そう言って金剛は朝潮に事の経緯を説明した。
そして、大雑把に説明し終わった金剛はこれで朝潮も納得しただろうと思った様で、勝ち誇った顔をして、再び僕の方へ向き直る。
金剛「さぁて、どうしてやろうカナ…」
朝潮「何を言っているんですか!!!」
朝潮がこれでもかというくらいに顔を真っ赤にして言う。
金剛はビクリとし、朝潮の顔を怪訝な顔で見つめる。
そこには凛とした顔をする朝潮がいた。…ほんの一瞬、本当に一瞬だったが、寂しげな表情を浮かべていた様にも思えたのだが、気のせいだろうか…。
そして朝潮は言い放ったのだ。
朝潮「この人は川内さんの恋人です!!!」
???「・・・」
とある艦娘が自室で何をするわけでもなく、静かに椅子に腰を下ろしている。その目は虚ろで、何を思っているのだろうか。
すると不意に部屋のドアが開けられる。
一瞬、体をこわばらせながらも、その艦娘は急に開かれた扉の方に驚いた顔を向ける。だが、突然の訪問者が誰か分かるとすぐにその顔は怒りとも悲しみとも取れるような複雑な表情に変わった。
???「…ノックくらいしてよ」
加古「なんで?ここはあたしの部屋でもあるんだよ?」
???「…今までどこにいたの?」
加古「えー?内緒!」
はにかむ加古だったが、そう言われた張本人…古鷹は何ともヤキモキした気持ちでいっぱいになる。
…と言うのも古鷹と加古は、同室に住まう謂わばルームメイトの様なもので、ある時期までは恋人同士と周りで噂されるほどに親しくしていたのだから。実際、恋人同士とまではいかなくても、それこそ前任の理不尽な扱いを共に耐え忍んだ大戦友と言ってもよかった。
それが……今では見る影もない。
加古「ライブどうだった?」
加古は久々に帰って来た自室を懐かしむように眺めながら、以前使用していた布団に横になり、羽を伸ばしている。
古鷹「……見てないよ」
加古「えー?せっかく机にチラシ置いといたのに~!」
加古がわざとらしく頬を膨らまし、古鷹の顔を見る。
古鷹「…勝手に部屋に入らないで」
加古「だ~か~ら~!あたしの部屋でもあるんだよ…」
俯きながら言う古鷹に対し、加古は横になっている為か、欠伸をしながら気だるげに言う。
古鷹「…どこ行ってたの?」
先程無かった事にされてしまった問いを再び投げ掛ける古鷹。
加古「ん~~、いろいろ転々としてたんだよ…。阿武隈んとことか、鈴谷のところとか……少し寝てもいい?」
余程眠いのか、面倒臭そうに答える加古…そう言って、彼女は目を閉じてしまった。
古鷹「・・・」
時は前任がいた頃に遡る。
本日も激務を終え、鉛のように重く感じる体をなんとか引きずりながら、自室に帰る古鷹。
あまりに短く、粗末としか言えない休息時間を少しでも謳歌する為に帰って来た古鷹を迎えたのは、同じ様に戦いで傷付いた体を休めている加古だった。
加古「お、古鷹!おかえりー」
古鷹「加古!遠征から帰ったのね!?ご苦労様。……今回も大変だったみたいだね」
加古「おう!…そっちも、ね」
お互いに擦りきれた体を見て、不思議と笑みがこぼれる二人。
また無事にこの部屋で再会できたこと…これがどれだけ幸せなことか。
いつ死んでもおかしくないこの状況の中で、一緒にいられる僅かな時間を噛み締める。
いつまでもこんな時間が続けばいいのに…。
…少なくとも私はそう思っていた。なのに……。
古鷹「どういうこと!!加古!!!」
加古に激しく詰め寄る古鷹。加古はそんな古鷹を一瞥すると、俯きながら「なんの事?」と呟く。
古鷹「なんの事!?加古、自分が何をしたか分かっているの!!?」
加古「知らないよ!!」
古鷹は他の艦娘から聞いたのだ、加古が提督に解体を申し出たという話を……。
それを聞いた時、古鷹は自分の体から力が一気に抜けていくような感覚に襲われる。だが、ここで本当に脱力してしまうわけにはいかない、そう思うと古鷹は直ぐにある場所を訪れた。
古鷹「加古が解体って……どういうことですか!?」
古鷹は執務室に赴き、普段なら怖くて目も合わせられない前任の顔を見て、必死の形相で訴えるように言う。
「あいつが勝手に言い出したことだ」
返ってきたのはその一言だけ。
それでは納得出来ないと、私は食って掛かる。
しかし、それ以上の応えをもらうことは出来ず、飛んできた拳によって赤くなった頬を擦りながら、私は加古の元を訪れる。
そして今、こうして加古に激しく詰め寄っているわけだが…。結局、その真意を知ることは叶わなかった。
そして、この日を境に加古は部屋を出ていってしまった。
もちろん、今までだってずっと一緒にいられたわけではない。同じ部屋に住んでいるのに、過ごせたのは僅かな時間だ。でも、でも私は……。
それで結局、あの人間が消え、長門さんがこの鎮守府の指揮を取るようになってからも加古は帰ってこなかった。
風の噂で、加古がまだこの鎮守府に居ることは知っていたが、あれ以来古鷹はどう彼女に向き合えばいいのか分からなくなっていたし、こちらから会いに行ったこともしばしばあったが、その度に加古の姿を拝むことは出来なかった。
もう、前のような関係には戻れないのだろうか……そんな諦めの気持ちが芽生え始めた頃に、ライブのチラシに加古の名を見たのだ。
見に行かないわけないじゃない…。
寝息を立て、気持ち良さそうに寝ている加古。
今、こうして加古の顔を間近で見ることが出来ると、あの時に戻ったように感じる。
古鷹は「おかえり…」と小さく呟くと、加古の髪を優しく撫でる。
そして、しばらくその髪をいとおしそうに撫でると、何か思い立ったのか、古びた収納棚から一冊のノートを取り出す。
『加古はやっぱり大切な人。私がしっかり守らないと』
古鷹はそうノートに書き込むと、それを元あった場所に戻す。
そして、加古の顔を覗き込む位置まで戻ってくると、その頬に軽くキスをしてから、再び彼女が目覚めるまでその髪を優しく撫で続けた。
きっと彼女以外は知らないだろう。
今日彼女が書き記したページを除いて、以前書いたであろう他のページには全て同じ内容が、同じ言葉がまるで呪いをかけるかのようにびっしりと書かれているということに…。
『殺してやる』