仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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朝潮インパクト5

金剛「川内!!恋人ってどういうことデスカ!!?」

 

川内「・・・」

…聞いた話によれば、昨夜、私は宴会でお酒を飲んでしまった様だ。なるほど、それなら確かに今朝から少し具合が悪かったのに合点がいく。それで、私はアイツにいつもの様に朝ごはんを届けて、少しここで休ませてもらうことにしたんだ…うん、ここまでは特に問題はない。

 

…で、起きたら何故か朝潮や吹雪、さらには金剛が居て、それを「なんで?」と疑問に思ったわけだけど…。

目を丸くした金剛が私の方へ詰め寄ってきて、金剛は神妙な顔で……その、と、とんでもないことを私に言ったのだ。

 

金剛「もう一度聞きマース!!恋人ってどういうことデスカ!!?」

 

川内「・・・」

私が聞きたい…。

 

吹雪「…川内さん、そこまで落ちぶれましたか」

へ?なんでそんな冷たい顔を私に向けるの?

 

朝潮「・・・」

 

「・・・」

私が起きてから一言も発しない二人。しかも、私が目を合わせようとすると朝潮は目を伏せてしまい、アイツは黙って一礼してきた。

 

状況が読めない。いや、吹雪がいるから何かあったと考えるべきか…?

 

金剛「…黙っているのは、ナゼ?ま、まさか……本当なのデスカ!?アンビリーバボー!!!」

…一人で興奮している金剛。そんな彼女を尻目に、私はとりあえず、何があったのかを聞こうと口を開こうとした。まさにその時だった。

 

朝潮「川内さんは…この人のことどう思っているんですか!?」

 

川内「うぇ!?」

思わず変な声が出てしまう。朝潮が顔を真っ赤にして、アイツのことを指差しながら、叫ぶように言う。

…指差された当の本人は、何かを悟ったような顔をしている。

 

川内「な、ど、どうって…そんな、私は…」

おかしいな、上手く喋れない。

少し深呼吸でもすれば落ち着くだろうか…。

でも朝潮はそんな暇を与えてくれず、更なる爆弾を投下してくる。

 

朝潮「川内さんは好きなんですよね!?…分かります!分かりますよ!分かりますとも!!!」

朝潮は目を閉じ、胸に手を充てながら、まるで朝潮本人が自分を納得させる為かの様に繰り返す。

 

朝潮「…自分の気持ちにちゃんと向き合って下さい!」

あれー、朝潮ってこんな感じだっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・」

おかしい!おかしいぞ!!!なんか展開がおかしい!

 

朝潮が金剛を押し退け、僕を窮地から救ってくれた。

これは非常に助かった。九死に一生を得た。

 

…で、どうしてそうなった!?朝潮。

 

朝潮のとんでもない爆弾発言により、その場が時間が止まったように凍りついたのは言うまでもない。

川内が起きていなかったのは、幸いか…?

 

な、なんで?どうしてそんな嘘を…ハッ!?

いや!これは朝潮の策略か!?…そうか!そうに違いない!

ふぅ、朝潮……君は見かけによらず策士だな。

 

おそらく、これは朝潮のはったりだ。大分、川内が被弾することになるけど、それは尊い犠牲ということで…。

…少なくとも、この発言によって僕が川内にいかがわしいことをしていた不届き者というレッテルは剥がれたはずだ。

まぁ一時しのぎにしかならないけど、それをどうにかするのは僕のやるべきことだし…。

ありがとう、朝潮!!!ここからは任せてくれ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…って思ってたんだけど、なんか思っていたより、朝潮に熱が入っているんだよな。

それこそ、リアルに川内が僕と付き合っていると朝潮が思っているのではと疑うほど……………え?

 

ま、まさか、本当に僕と川内が恋人同士だと思っているわけじゃないよね!?

 

朝潮「私はあれ以降思ったんです!!ちゃんと気持ちを伝えなきゃって!!!ちゃんと向き合おうって!!!」

それはそれは饒舌に語る朝潮。えぇ…。

川内は硬直しているし、あの吹雪や金剛でさえも朝潮に圧倒されている様だった。

あの、朝潮…君、そんな感じだったっけ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝潮「やりましょう!やるしかないんです!!出来るかな?じゃない!やるんだ!!!」

 

もはや朝潮の独壇場。

あー、朝潮が暴走しているよ。誰か止めて…。

すると、不意に手を握られる。へ?

 

朝潮「やりましょう!」

そこには目をキラキラと輝かせている朝潮がいた。

手は…すごい力で握られている。

ごめん、途中から何を言っていたのか分からなくなっていたけど、何を?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝潮「懇談会、やりましょう!!!!」

 

 

 

 

あ…ありのまま、今起こった事を話すぜ!

「僕は、朝潮が川内に自分の気持ちに素直になれと説いていたと思ったら、いつのまにか懇談会を開くことになってしまっていた」

な…何を言っているのかわからねーと思うが、僕も何が起きたのか、わからなかった…頭がおかしくなりそうだった…川内の忍術だとか吹雪の謀略だとか、そんなチャチなもんじゃあ断じてない。もっと恐ろしいものの、片鱗をry




誰も居ない薄暗い部屋。
そこにこの部屋の主であろうか、一人の艦娘が帰ってきた。一人で生活するには、あまりに広いこの部屋。
元々は一人部屋ではなかったのだろう…それを物語るように室内には複数の布団が敷かれていた。

突如として、バァンという音が室内にこだまする。

吹雪「クソッ!!!」
…どうやら、彼女が部屋の壁を力いっぱい拳で殴り付けた様だ。よくよく見れば、壁の至るところに陥没したところが見受けられ、血痕が付いている。
彼女は今、怒りに体を震わせている。
ふと壁にあの人間の顔が映ったように錯覚した彼女は、再びそこを目掛けて渾身の力で拳を叩きつける。

陥没した壁に、真新しい血液が付着し、その殴った手は痛々しく血を流していた。

吹雪「…なんで、なんでなの」
彼女はその瞳にうっすら涙を浮かべているが、それは痛みによるものなのだろうか。

…彼女は今朝早くから複数の艦娘を引き連れ、あの人間の部屋を訪れていた。理由はもう言うまでもない。
当初の思惑に反して、摩耶や鈴谷が離脱してしまったが、結果としては金剛や翔鶴、睦月といった艦娘にあの人間の存在を知らせ、しかも幸運なことに、その人間は川内の寝ている布団の中に居たのだ…これによりあの人間を危険人物として金剛らに認識させることが出来た。

やっとこの鎮守府から人間を葬ることが出来る。そんなことを考えると、彼女は胸の高まりを押さえ込むことが出来なかった。
そして、いよいよ金剛があの人間に襲い掛かる。
全て終わる。彼女は勝ち誇った笑みを浮かべるが、残念ながらきっとあの人間には見えていないだろう。
金剛がその拳をあの人間に叩きつけようとしている。

さようなら、愚かな人間。

…だが、事態は急展開を迎えた。
朝潮が部屋に入ってきたのだ。そして朝潮はとんでもないことを暴露する。
その内容は衝撃的だったが、更なる衝撃を受けることになるとはこの時の彼女は思っていなかった。


吹雪「なんで私が懇談会なんか!!」
彼女は困惑した。
朝潮曰く、あの人間と艦娘の懇談会を開くそうだ。
朝潮は元より、あの人間と川内、そして金剛も何故だか乗り気になっている。
もちろん彼女は反対した。だが、鬼気迫る顔の朝潮に熱弁を振るわれ、そして金剛にも「楽しそうネ!」と言われる始末。
彼女は襲撃メンバーの人選を誤ったと内心後悔しながらも、断固として応じない態度を見せる。
だが、彼女にとっては本当に理不尽なのだが、「懇談会楽しみましょう!」という無慈悲な言葉によって、強制参加をすることになってしまった。

こんな奴らと話をしていても埒があかない。

彼女はそう考えると、部屋を飛び出し、あるところに助けを求めた。








阿武隈「ふーん、懇談会ね…」

鬼怒「案外、楽しそ~!?」

阿武隈「…美味しいもの食べられるかしら?」

鬼怒「また食べ過ぎて、太っても知らないよ~!?」

阿武隈「んなっ!?あたしは太ったことないもん!!」

鬼怒「チッチッチ!鬼怒が気付かないと思ったの!?この前…」

なんで?なんでそうなるの?なんでそんな風に楽観的でいられるの?

彼女の思いとは裏腹に真剣さを微塵も感じられない阿武隈と鬼怒の対応。彼女は開いた口が塞がらなかった。
…やることなど一つだろう。懇談会などやらせない!潰してしまえばいい!
そんな彼女の考えとは程遠い阿武隈たちに苛立ちが募る。そしてついつい彼女はとあることを口走ってしまったのだ。

吹雪「忘れたんですか!?人間が私たちにしたこと!?阿武隈さんや鬼怒さんも覚えているはずです!!…なのに、なのに!!!なんでそんな態度を取れるんですか!そんなお二人を見たら、由良さんだって……」

そこで彼女は言葉を切った。いや切らざる得なかった。
なぜなら、彼女を射殺す様な殺気だった鋭い視線…それが阿武隈と鬼怒から向けられているのだから。

鬼怒「吹雪」

吹雪「はい…」
消え入る様な、か細い声で返事をする彼女。

鬼怒「そのことは言わない約束だよね?」

吹雪「・・・」

阿武隈「…はぁーい!今日はこれでおしまい!とりあえず、今日はもう戻りなよ?」

鬼怒「・・・」

吹雪「はい…」

阿武隈「ごめんね、あたし達もしっかりと話を聞くべきだったね…」

鬼怒「…うん。ごめんね?また今度ちゃんと聞くからさ?」

吹雪「…すみませんでした」
彼女は逃げるようにその場を後にした。









あの後、彼女はあてもなく鎮守府をさまよっていた。
阿武隈と鬼怒のあの様な視線を見るのは、本当に久しぶりだ。その事がショックだった様で、彼女は辺りが大分暗くなってから、こうして自室に戻ってきたのだ。

目からこぼれ落ちそうになるものを拭い、自身の手から滴る赤い液体を呆然とした様子で見つめる彼女。
そして、今しがた帰って来たばかりの部屋を何かを思い立ったかの様に飛び出した。















この場所は二つの意味で忌々しい場所だ。
どちらも人間が関係しているのだが、一つはこの鎮守府の指揮官でもあろう人間が、艦娘の尊厳を踏みにじった場所であるから。
そして、もう一つはこの鎮守府にいる必要のない人間が艦娘に媚でも売ろうと思ったのか、紛い物でこの場所を覆い尽くしてしまった。

彼女は今、地下牢に来ている。

理由は、腹いせにでもこの場所をめちゃくちゃにしてやろうかという、最早チンピラ同然のものだったが、彼女自身はこの選択に間違いなどというものは一切感じていなかった。そして、意気揚々とここまで来たわけだが…。

不思議なのだ。いつの間にこの様なオレンジ色の照明を取り付けたのだろう。正直言って、気味が悪い。

彼女が以前ここを朝潮と共に訪れた時には、照明と言えば各部屋に吊るされた電球くらいしかなかったはずだ。
それが今はどうだろう。
階段を降りる時にも、そして地下牢に降り立った今も、ぼんやりと怪しげに光る橙色が複数目に入る。

彼女は不安を覚える。何故だか分からないのだが、その橙色を見ると気分が悪くなるのだ。
だが、彼女も頑固なもので、そんな不安を振り払うと、早速破壊活動でもしようかと牢の中へ入る。

吊るされた電球を割ってやろうか?それとも、床に敷き詰められたマットを全部引き裂いてやろうか?
そんな想像に胸を踊らせる彼女だったが、不意に声を掛けられ、心臓が止まりそうになる。

???「何をしているのです?」

吹雪「んなっ!?」
声のする方を見ると、吹雪よりも小さい娘が笑顔を浮かべて立っているではないか。何がそんなにおかしいのかと思えるほどの満面の笑み。

吹雪「あ、あなたは誰?あまり見たことないけど…」
彼女もこの鎮守府に所属して長い部類に入るのだが、目の前の艦娘に見覚えはなかった。

???「…内緒、なのです♪」

吹雪「・・・」
怪しい。明らかに怪しい。人間ではない様だが、艦娘なのだろうか…?とにかく、この状況はあまり好ましくない。
…というのも、先程から背中に誰かの視線を感じているのだ。冷や汗が止まらない。
だが、その艦娘が呟く様に言った言葉に彼女は驚いた。

???「…由良さんに会いたくはないですか?」

























とある艦娘が机に山積みになった資料を一枚一枚丁寧に読んでいる。
すると、そこへお茶を持った別の艦娘がやって来て、お茶を置こうとするのだが、いかんせん机は紙の束で埋め尽くされているので、どこにお茶を置こうかと辺りをウロウロしていた。

???「ごめんなさい!鳳翔さん!そこ空けますね」
そう言うや否や、その艦娘は紙を押し退け、机に無理矢理スペースを作る。

鳳翔「いえいえ!こちらこそお節介を焼いてすみません!」

???「いやー!ちょうどお茶が飲みたかったんですよ!ありがとうございます!!」

鳳翔「フフ、そう言って頂けると嬉しいです」

「あんまり根を詰めないで下さいね?」と鳳翔はお茶で渇いた喉を潤している艦娘に声を掛けると、そっと部屋から出ていこうとする。

???「鳳翔さん!」

鳳翔「はい?」

???「…叢雲さんと龍田さんから話聞きました?」

鳳翔「…黒い艦娘のことですよね?」

???「そうです。どう思いましたか?」

鳳翔「…まだまだ分からないことが多いですが、相当の実力者と聞いています」

???「……お二人の話では、黒い艤装に身を包み、圧倒的な力を持っていたようです。六艟の武闘派であるお二人が言うのですから、驚きますよね」
そこでその艦娘はお茶をすすると、一枚の紙を手に取り見つめる。

???「…とは言え、少しずつですが情報も集まってきているんですよ!?お二人が言うには、その黒い艦娘の正体が誰か分かった様で…」

鳳翔「そうなのですか!?」

???「ええ…戦っている最中に敵の特徴を把握してたみたいです!いやはや頭が上がりませんよね!?それで、その姿に面影もあったそうで、断定は出来ませんが、お二人が交戦したのは村雨さん、そして野分さんだったそうです」

鳳翔「・・・」

???「…それで青葉は、村雨さんと野分さんが所属している鎮守府を洗っているというわけです!!」

鳳翔「…それでこの資料の山ということですね」

青葉「はい!」

鳳翔「ご苦労様です、青葉さん。…でも仲間を疑わないといけないなんて…悲しいですね」

青葉「ありがとうございます!まぁ、まだこのやり方でいいのか分かりませんが、そこら辺は青葉の腕の見せどころですから!!」

鳳翔「…後で私も手伝いますね」

青葉「おぉ!!ありがとうございます!」

鳳翔「青葉さんも無理をなさらずに…」

青葉「フフフ、お任せください!!!」

鳳翔はそれを聞いて、笑みを浮かべながら部屋を出ていこうとする。すると、青葉から呼び止められた。

青葉「あ、鳳翔さん!」

鳳翔「なんでしょう?」

青葉「鳳翔さんは轟沈についてどう思いますか?」

鳳翔「轟沈ですか…?」

青葉「うーん聞き方が変でしたね!…何を持って轟沈と判断する、と言ったら鳳翔さんならどう答えますか?」

鳳翔「難しいですね…。鎮守府のレーダーから消えたとしても沈んだとはまだ判断できませんし、共に出撃していた者がその沈み行く姿を目撃していて報告してくれたりしたら轟沈したと断言出来るのでしょうか…?」

青葉「そうですよね!いやー、変なことを聞いてしまいました!!すみません!!!呼び止めてしまって申し訳なかったです!」

鳳翔「いえいえ!」
そう言って鳳翔は静かに部屋を出ていく。
青葉は、その姿が見えなくなると、先程手にした紙に視線を落とす。

青葉「…つまり轟沈したと判断することが出来るのは、沈んだ本人、もしくわそれを目撃していた僚機だけということか…」

青葉「単機出撃……ね」

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