仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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運命の日

その日は…その日の朝は本当に静かだった。

 

「悪いね、川内、朝潮!今日の懇談会に必要なものがまさか当日に届くとは思わなかったよ…」

 

川内「…軍の検閲があるんでしょ?しょうがないんじゃないの?」

 

朝潮「はい!それに今から準備すれば全然間に合うと思いますし!」

 

「ありがとう!…おっ、来た来た!あれかな」

 

まだ多くの艦娘は眠っているであろうこの時間帯に僕と川内そして朝潮は、今日の懇談会に必要な物品を受け取る為、鎮守府の門のところでまだかまだかとその到着を待っていた。

 

川内「…にしても、本当に集まるのかな~?一応、神通と那珂は来てくれるみたいだけど…」

 

朝潮「うーん、どうなのでしょうか?私もいろいろと声を掛けてみたのですが…あ、ちなみに霞が来たいということだったので、とりあえず、三人は確保出来たという感じでしょうか?」

 

「え!?大丈夫なの!?朝潮の妹ってことは駆逐艦だよね!?」

 

以前見た睦月という駆逐艦の怯え様。

…駆逐艦の多くは人間に相当の恐れを持っているみたいだし、朝潮が以前話してくれたことや彼女の妹たちに対する想いを考慮すれば、彼女の妹たちは来ないだろうと踏んでいたのだけれど…。

そんな僕の考えを察してか、朝潮が付け足す。

 

朝潮「…もちろん、私としては妹たちを参加させるつもりはありませんでした。私が言い出しっぺの懇談会ですが、もし無理に妹たちを参加させて発狂でもさせたら…と思うと…」

 

「…朝潮」

 

朝潮「でも、霞が私の変わりようを不思議に思っていたようで…今までのこと、ついつい話しちゃったんです。…そしたら、会ってみたいということだったので…ごめんなさい」

 

「いやいや!ありがとう!…僕も慎重に接してみるよ」

 

朝潮「…はい!」

 

川内「っと!オーライ!オーライ!」

 

僕と朝潮が話をしている間に、お待ちかねのものは僕たちの目と鼻の先と言える程の距離まで接近していた様で川内がトラックをしっかりと停車出来るように先導をしてくれている。

 

さて、それじゃあ荷物を受け取って、早く懇談会の準備に取り掛かるとしますか!まずは会場のセッティングと、後は……。

 

だがそう思っていた矢先、突如としてその車輌はアクセルを吹かしたかと思えば、鎮守府の門へと突っ込んで来るではないか。

 

川内「避けて!」

 

川内の叫び声にハッと我に帰るが、猛突進してくる銀の塊を前に僕の足は完全にすくんでしまっていた。

 

朝潮「こっちです!!!」

 

静かな朝に響き渡る大きな衝突音。

元々崩れかかっていた鎮守府の門は、最早見る影もないほどに破壊され、辺りには煉瓦が散乱している。

僕はすんでのところで朝潮に腕を引っ張られ、辛うじて轢死することはなかったが、後少しでもタイミングがずれていたらと思うとゾッとした。

 

川内「だ、大丈夫!?」

 

川内が血相を変えて駆け寄って来る。

 

「大丈夫だ!朝潮が助けてくれた!!」

 

川内が差し出す手を取り、起き上がる僕と朝潮。

 

「助かったよ、朝潮!」

 

朝潮「いえ、無事でよかったです…」

 

その場に居る全員が、お互いに無事であったことにホッと胸を撫で下ろす。

だが、これは一体!?

 

「…そうだ!トラックは!?」

 

…見ればトラックは、門を突き破って進んだあげくに鎮守府の一角に突っ込むという形で停車している。

事故か!?

僕は急いでトラックの潰れた運転席の方へ向かうと、必死で声を掛ける。

 

「大丈夫ですかーー!?」

 

返事はない。

 

川内「どういうこと!?事故!?」

 

朝潮「…とりあえず私、長門さんたちに知らせてきます!」

 

そう言って、朝潮は駆け出す。

僕と川内は共にその場に残り、生存は絶望的とも思える運転手に呼び掛け続けるが、反応はやはりない。

 

返事をしてくれ!

 

そんな思いから叫び続ける僕だったが、依然として沈黙を貫く運転席。

だが突然、そんな必死な僕たちを嘲笑うかの様な笑い声が、ぺしゃんこになった運転席側からではなく、荷台のコンテナ付近から発せられる。

 

僕も川内も何事かとコンテナのところを凝視するが、次の瞬間、大きな音をあげ、その銀に輝く扉が乱暴に開かれる。

かと思えば、見知らぬ者達が満面の笑みを浮かべながらコンテナから降りてくるではないか。

 

「な、なっ…」

 

言葉が出てこない。目の前で何が起きているのか把握することが出来ない。

直立不動、機能停止となってしまった僕に対し、川内は緊迫した表情を浮かべ、その者達を睨み付けている。

 

???「あー!やっと出られたっぽい!!この中は暗いし、臭いし…もう二度と入らないんだから!!!」

 

???「…ふふ。同感♪でも夕立!見てよ!壊し甲斐のある鎮守府だよー!?そ れ に!いきなり戦える相手が目の前にいるじゃない♪♪村雨頑張っちゃうぞー!!」

 

夕立「あーダメダメ!!!アイツは夕立がやるっぽい!!村雨はあそこの人間をやるっぽい!!!」

 

村雨「だ~め!」

 

夕立「ズルい~~!!!」

 

お、女の子…?な、なんで…?

 

川内「…ッテ」

 

そんな訳の分からない二人の訳の分からないやり取りを呆然と眺めている僕に川内が何か言っている。

だが、何と言っているのかを聞き逃してしまったので、聞き返そうとしたその時。

 

川内「走って!!!!!」

 

気付いた時には、川内……川内が普段見る姿とは異なる姿に変身し、その得体の知れぬ者達に突っ込んでいたのだ。

…おそらく、これが彼女を含め、艦娘が深海棲艦と戦う時に見せる姿なのだろう。

だが、その交戦している敵は昔テレビで見た深海棲艦なのだろうか。

…むしろ、その姿形からして人間もしくわ艦娘と瓜二つと言っても過言ではない様に思える。

 

「せ、川内!!」

 

僕は震える声でその名を呼んだが、もちろん返事は返ってこない。

代わりに聞こえてくるのは、普段聞いたことのない川内の怒声。それを嘲り笑う者達の気味の悪い笑い声。そして、激しくも鈍い、金属と金属がぶつかりあう音だけだった。

 

今すべきことは…この事を誰かに知らせることだった。

 

あの時…雲龍に川内が組伏せられていた時とは比べられない程の状況。

あの時の様に、僕が加勢すれば、おそらく待っているのは二人の死だけだろう。

 

僕は走り出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝潮「長門さん!陸奥さん!!大変です!!!」

 

私は執務室に転がるようにして駆け込む。息をするのも一苦労だが、そんなことを気にしている場合ではない。

すると今まさに、この執務室を出ようとしていたのだろうか…緊迫した顔の長門さんと陸奥さんがいて、もう少しのところで衝突しそうだった。

 

長門「どうした!?一体あの音は!?」

 

陸奥「敵襲!?」

 

朝潮「…いえ!とら…っ、トラックが鎮守府の門を破って、それから…と、とにかく来てください!!!」

 

私は長門さんと陸奥さんを無理やり引っ張る様にして、あの場へと急ぐ。

長門さんと陸奥さんが居れば、あるいは…。

 

そして、私は驚いた。

 

二人をあの場へと急かす私は、執務室を出たすぐの廊下の角で危うく誰かとぶつかりそうになった。

私達も急いでいたが、相手も相当急いでいた様で、肩で息をしている。

そして、その人物は私達を見るなり、こう叫んだのだ。

 

「敵襲だ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

川内「くっ……!!」

 

夕立「あーあ!つまらないっぽい!全然、相手にならないよ」

 

村雨「そう?村雨は少しずつ痛めていくの好きだな~♪ま、もう飽きちゃったけどね!」

 

強い…強すぎる!!

アイツを逃がすだけじゃなく、敵を鎮圧することが出来たら…というのは私の甘えだったようだ。

敵の懐に痛烈な打撃を何度打ち込んだことか…私の格闘術は全く通用しなかった。

とりあえず、間合いを取る為に、敵の服を掴んで、勢いに任せて背負い投げをしてみる。

敵は投げ飛ばされ、地面に叩きつけられるが、すぐに立ち上がり、ニコリと微笑んでくるので、私が戦慄したのは言うまでもない。

今まで戦ってきた深海棲艦が可愛いと思える程に相手は強かった。

そして分かるのだ。悔しいけど相手は…手を抜いている。

最早、近接格闘でどうにかなる相手ではなかった。

それなら…もうこれしか!!

 

私は敵に砲門を向け、構える。

ここで砲火することの意味。それはこの鎮守府を戦場に変えるということだ。

ここはいつもの大海原ではないのだから…。

 

でも、それをしなければいけない状況なのだろう…。

 

川内「いっけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

私は叫びながら、相手に砲弾を撃ち込む。

爆発音。大きな大きな耳をつんざく様な爆音が辺りにこだまする。

砂埃が舞い散り、まるで煙幕の様だ。

私は一時的に視界不良になるが、その砂埃が次第に落ち着き、その目に映ったのは…。

 

夕立「…本当につまらないっぽい!」

 

村雨「ふぅ…そろそろおしまいにしてあげるね♪」

 

多少艤装が剥がれた程度、これだけの至近距離で砲弾を受け、痛がる様子も見せずにその者達は立っていた。

 

ここまでくると、笑いが込み上げてくる。

 

その一人が、一体どこから出したのだろう…錨の様なものを携え、私を狙っているのが分かった。

 

私は大きく息を吐くと、静かに目を閉じる。

 

頭に浮かぶのは、神通に那珂、そしてアイツの顔。

 

川内「ごめん…ここまでみたい」

 

静かに呟くと、生を諦めるという考えが私の中に溢れだした。

 

そんな私の耳に聞こえてきたのは、敵の笑い声…ではなく…。

 

『『敵襲!敵襲!!総員、戦闘用意!!繰り返す…』』

 

鎮守府内にけたたましいサイレンの音と長門さんの必死の呼び掛けがこだまする。

 

村雨「お!いいね~!待ってましたぁ!!!」

 

夕立「やった!やったぁ!!遊べるっぽい!!!」

 

あぁ、アイツか朝潮が長門さん達に伝えてくれたんだな…。

そっと目を開けると、敵が先程よりさらに嬉しそうな顔をして、ハイタッチをしたりと喜んでいる様子が目に飛び込んでくる。

 

村雨「じゃ♪村雨と夕立どっちが多く破壊できるか勝負ねー!ここは夕立に譲ってあげるー!!」

 

夕立「ふん!負けないんだから!」

 

そう言って、村雨という奴が鎮守府の正面玄関のところから堂々と入って行こうとする。…なめるな!!

 

…ここで逃がしたら、皆が殺されてしまうかもしれない。なら、私のやることは………!!!

 

川内「行かせるかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

私は最後の突撃を仕掛ける。体がどうなろうと構わない、ただせめて少しでも時間が稼げれば…。

 

川内「うおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

夕立「貴方の相手は夕立っぽい!」

 

川内「ぐぁっ!?」

 

私は横から強い衝撃を受け、鎮守府の壁に叩きつけられた。

きっと夕立に蹴られたのだろう…脚を蹴りあげたまま笑っている夕立をかすれる目で見る。

 

蹴られただけでここまで飛ばされる、普通!?

 

…衝撃のあまり口からは血が出てくるし、全身が痛い。

うずくまる私を笑顔で見つめる夕立。諦めて、このままうずくまっていたい。でも…私は立ち上がる。

 

たとえここで死んでも…私は!!!

 

陸奥「川内から離れなさい!!!」

 

朝潮「大丈夫ですか!?川内さん!!!」

 

そこへ聞き慣れた声が聞こえてくる。

声がした方を向くと、霞んだ目ではぼんやりとしか見えないのだが、何人か私の方へ駆け寄ってくる姿が見えた。

そして、私もその方向へ歩みだそうとすると、体が言うことを聞かず、倒れ込みそうなる。

 

「大丈夫か!?」

 

私は誰かにそっと抱き抱えられた様だ。でも、もう目が霞んでその姿を見ることは叶わない。そして、瞼が重くて、目を開け続けることが出来ないのだ。

 

「もう大丈夫だ」

 

そんな声を聞いたところで、私の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸奥「貴方は川内を連れて、入渠施設へ行きなさい!」

 

朝潮「…行って下さい!」

 

「…頼む!」

 

僕は川内を背負うと、そのまま入渠施設へと走る。

ここに辿り着くまでに、朝潮からざっと入渠の意味と入渠施設の場所は教えてもらった…入渠、それは傷ついた艦娘を治療することらしい。

情けないことに、僕はその存在を今日初めて知ることになったのだが、とにかく走らずにはいられなかった。

とにかく一刻も早く川内をそこへ連れていかなければ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

陸奥「…なかなか手強そうね」

 

朝潮「陸奥さん…」

 

陸奥「…大丈夫よ、朝潮。貴方は私が戦っている間に逃げなさい」

 

朝潮「なっ!?…だ、大丈夫です!私だってこの鎮守府の一員なんですから!ちゃんと戦います!!!」

 

陸奥「何を言っているの!?川内がやられたのよ!?早く逃げなさい!」

 

朝潮「嫌です!!!」

 

夕立「あー!ごちゃごちゃうるさいっぽい!行くっぽい!!!」

 

そんな陸奥と朝潮のやり取りに痺れを切らしたのだろうか…夕立はその緋色の目を爛々と輝かせ、二人の居るところへ凄まじい勢いで突っ込んでくる。口角を少しあげ、これから始まる戦いを楽しみにしているのだろうか…。

 

陸奥「…食らいなさい!!!」

 

陸奥は自身の艤装を展開すると、直ぐ様そんな夕立に砲門を向け、一斉に砲弾を撃ち込む。

かなり早急に撃ったので、標準はでたらめだが、威嚇くらいにはなったはずだ。

轟音が響き渡り、辺りにはもうもうと黒煙が舞う。

 

陸奥「これくらいでは…倒されないわよね?」

 

陸奥の読み通り、立ち込める黒煙の中から勢いよく飛び出してくる夕立。

その目は見開き、笑っている口からは犬歯が剥き出しになっている。

 

陸奥「化け物ね…!」

 

朝潮「…っ!それなら!」

 

標準はでたらめで直撃はしていないとは言え、戦艦の砲撃を受けながらも、よろめくことなく突進してくるその姿は正に化け物だった。

そこで威力は劣るものの、しっかりと標準を夕立に合わせた朝潮が追撃を加えるべく砲撃を行おうとする。

 

夕立「…無駄だよ?」

 

 

ほんの一瞬。

おかしい、今の今まで捉えていたはずの夕立の姿はどこにもない。辺りを見回す陸奥と朝潮。

そして再びその姿を目に捉えた時には、朝潮は目を見張った。

なんと夕立はもう朝潮に触れられる位の距離にまで接近していたのだから。

 

朝潮「こ、このっ!!」

 

夕立「遅いっぽい♪」

 

夕立の両手にはいつの間にか、黒い鉤爪の様なものが装着されている。

そして、その鉤爪が漆黒の靄の様なものによって作り出されていると気付いたのは、朝潮の体に夕立の鉤爪が食い込んだ瞬間でもあった。

 

朝潮「あぁっ!!!」

 

ブスリ。

肉に食い込む、耳を塞ぎたくなるような音。

既に朝潮の艤装はズタズタに引き裂かれ、特に腹部からは血が溢れ出していた。

 

陸奥「朝潮!!!」

 

陸奥はそんな朝潮から夕立を遠ざけようと、夕立に掴みかかろうとする。だが、不敵に笑う夕立。

 

陸奥「朝潮から離れなさっ……!?」

 

夕立「こっちっぽい!」

 

腹部を抑え、うずくまる朝潮の側に夕立の姿は既にない。

そして、背後から声がしたかと思えば、振り向く間もなく陸奥はその背中に大きな爪跡を残すことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか!」

 

走り続けて数十分。ようやく僕は朝潮の言っていた入渠施設と呼ばれる場所に辿り着く。

重い扉を開けると、そこには所謂、浴槽の様なものがズラリと並んでいた。各々の浴槽には緑の液体が満杯と言っていいほどに入っていて、ほんのりと湯気がたっている。

この様な緊迫した状況で、その場所の雰囲気には拍子抜けしそうになるが、とりあえずここに川内を入れればいいのだろうか?

 

「川内!頑張ってくれよ!!?」

 

考える時間が勿体ない!僕は川内をそのまま一番手前の浴槽に浸ける。

 

川内「うぅ…」

 

苦しそうに呻き声をあげる川内をただ見ることしか出来ないのは本当に心苦しい。

苦悶の表情を浮かべ、「痛い…」と呻く彼女。

それを見て、僕は決意した。

 

やってやる!

 

僕は入渠施設を飛び出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨「ほらほら~!!逃げないと死んじゃうよ~!?」

 

辺りには悲鳴、悲痛な叫び声がこだましている。

その理由は明らかだ。村雨が幾つもの禍々しい形をした漆黒に輝く錨を投げつけ、その目に入る者を蹂躙しているのだから。

 

「なんなのよ!?こいつ!!…うわぁぁぁ!」

 

「嫌!嫌嫌嫌!!!まだ死にたくない!!!…ガッ!」

 

村雨「張り合いがないな~!…それ!」

 

「くそ!もうこうなったら撃つしかない!!」

 

「…バカな!?ここで撃ったら…!?」

 

「どっちにせよこのままじゃ殺されるだけだ!!!」

 

「……ぅう。クソぉぉぉぉー!!!撃てー!!!」

 

その場にいた多くの艦娘が一斉に村雨に向かって砲火する。…もちろんそんな無茶にこの鎮守府が耐えられるはずもなく、間もなくしてその艦娘たちがいたところは大きく崩れてしまった。

 

「うぁあああああああああ!!!!!」

 

沢山の絶叫が聞こえ、そして一瞬にしてその場に静寂が戻る。…鎮守府の東側は完全に崩壊してしまった。

だが……。

 

村雨「あーあ!勝手に居なくならないでよ!」

 

もちろん村雨もその崩落に巻き込まれたはずだ。

だが、当の本人はピンピンしているのだから、恐ろしい。

そして、村雨は見つけたのだ。瓦礫の陰に隠れ、怯えきっている駆逐艦たちの姿を。

 

村雨「…いるじゃない♪見ーつけた!!」

 

「ひぃぃ!!」

 

不意に現れた村雨を見て、目に涙を浮かべる駆逐艦たち。中には震えながら、その砲門を村雨に向ける者もいるが、多くの者は戦意喪失し、泣き叫んでいる。

 

村雨「よーし!これなら夕立に負けなさそうね!!」

 

そう言って村雨は掌を空に掲げる。

すると、先程よりもさらに巨大な錨が突如として空中に現れたではないか。

 

村雨「さーて、一気にやっちゃうね!」

 

駆逐艦たちは、空に浮かぶ自分達の命を刈り取るその錨をただ見つめるだけで、逃げることも叶わない。

そして、村雨がその掲げた手を駆逐艦たちに向けようと振り下ろそうとした時、村雨の背中が激しい爆発音と共に破裂し、村雨は吹き飛んだのだ。

 

駆逐艦たちは何が起きたのか分からなかったが、これはチャンスとばかりに震える足を懸命に動かし、その場から撤退し始める。

 

村雨「イタタ~!もう!誰ぇ!?」

 

背中から黒煙をあげ、瓦礫の山から這い出る村雨。

そんな村雨に、艤装を取り出した二人の艦娘が各々の砲門を向ける。

 

阿武隈「…なんだか騒がしいと思ったら、とんでもないことになっているのね!」

 

鬼怒「今のアブ、最高に輝いてるよー!!」

 

阿武隈「…フフフ!決まったわね!」

 

鬼怒「よっ!!阿武隈!世界一!!!」

 

村雨「……なになに~!混ぜて混ぜて~!!!」

 

鬼怒「ややっ!!あの攻撃を受けてまだ立てるのか!」

 

阿武隈「いやー、マジパナイわね…」

 

鬼怒「それ鬼怒のセリフだよー!取んないでぇ!!」

 

村雨「あぁ!!村雨のこと無視してるーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門「・・・」

執務室にて、長門は冷静に情報の収集を行い、負傷した艦娘の救護そして敵の迎撃の指示を事細かに無線を通じて出していた。

とは言え、事態があまりに急だったこともあり、今のところ後手後手に回ってしまっているのが現状だ。

 

そこへ弓を携えた一人の艦娘が颯爽と現れる。

 

???「…長門さん、この状況は一体!?」

 

長門「赤城か…。敵襲だ。しかも、敵はかなりの手練れな様だ」

 

赤城「…陸奥さんは?」

 

長門「陸奥は今、川内救出に向けて正面玄関の方へ出向いている。…陸奥なら大丈夫だと思うが」

 

そう言う長門だったが、その顔には不安や焦りが感じられる。赤城もそれを見て、事態の深刻さを改めて感じた。

 

「…報告します!長門さん!」

 

そんな時、執務室に傷ついた艦娘が一人、転がるように入ってきた。

 

長門「…戦況は?」

 

「正体不明の敵が確認出来るだけで三人!そして、一人は正面玄関にて陸奥さん、朝潮ちゃんと交戦中。増援部隊が早急に向かっているとのこと!それと、東側でもう一人の敵の目撃情報有りですが、東側が崩落してしまった為、その後の敵の足取りは不明!もう一人は鎮守府の母港にて破壊活動を行っている所を三銃士のお三方が発見し、只今交戦中とのこと!」

 

長門「…分かった。引き続き、情報の収集を頼む」

 

「はい!」

 

そう言ってその艦娘は足早に執務室を後にする。

 

赤城「…私はどこへ向かった方がいいかしら?」

 

長門「赤城は他の空母たちを連れ、近海の哨戒にあたってくれ。…もしかしたら、今回の敵は尖兵の可能性もあるからな」

 

赤城「分かりました」

 

 

 

 

鎮守府防衛戦が今、始まった。

 

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