仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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度重なる爆発によって、すっかり鎮守府の東側は見る影もないほどに崩壊。
チラホラ火災が発生している様で、黒煙が燻る中、再び爆発…また一つ瓦礫の山が出来てしまった。
そんな中で、爆風に前髪が煽られることを善しとしない艦娘が、今しがた砲撃を行った赤髪の艦娘に「髪が乱れるでしょう!?」と場違いな不満をぶつける。それに対して、「どーせ前髪なんか崩れるでしょ!?」と、からかう様に言う赤髪の艦娘。


「二人は仲が良いのか悪いのか分からないわね」


鎮守府の窓辺に立って、クスリと優しく笑いながら、ウットリする様な美しい純白の髪を潮風に靡かせる艦娘。
…もし彼女が生きていたら、そんな風にあたし達言ってくれたのだろうか。


鎮守府防衛戦2

村雨「村雨は!無視されるの嫌なのっ!!!」

 

鐵の大小異なる錨が地面に突き刺さる度に、辺りには耳障りな鈍い音が轟き、おそらく出鱈目に放たれているであろうそれらを軽い身のこなしで避ける二人の艦娘。

そして、避けながらも各々の砲門をしっかりと村雨に向けている。

 

阿武隈「それっ!」

 

鬼怒「よっと!」

 

息がピッタリとはこのことを言うのだろうか。

ほぼ同時に放った二人の砲弾は村雨に真正面から直撃し、轟音と共に爆発した。

 

村雨「もー!ちょこまかと鬱陶しいんだからぁ!!」

 

吹き飛ばされることもなく、村雨は頬を膨らませ、わざとらしく怒った様な顔をしているが、今の攻撃はほぼ効果が無かった様子でピンピンしている。

そして、村雨が両手を上に挙げたかと思えば、そこに黒い靄が沢山集まり始め、次第にそれは形を成し、遂には先程よりも一際大きい錨になったではないか。

不気味さを放ちながら宙に浮かんでいるそれは、闇を思い起こさせる様な色合いをしている。

そして村雨が手を振り下ろした瞬間、一直線に阿武隈に向かってそれが突っ込んできた。

その巨大さに似合わぬスピードで落下してきた為、阿武隈もギリギリのところでそれを回避する。

 

村雨「さすがに村雨もこれをやると疲れるんだ!だ か ら!早く壊れてよ!!!」

 

そう言って再び複数の錨を放ち続ける村雨。

しかし、その発言とは裏腹に村雨はこの戦いを苦だと思っているわけではなく、むしろ楽しんでいる様だ。

まるで、いつ当たるか分からない錨当てに胸を踊らせている…という感じか。

 

だが、阿武隈も鬼怒もそんな嗜好に付き合うつもりは毛頭ない。

涼しい顔をしながらも、二人は村雨の動きを冷静に分析し、大きな損傷を与えられないかと思考を巡らす。

そして先程の砲撃で何かを確信した阿武隈は、鬼怒の方をチラリと見ると、鬼怒もそれを察して小さく頷く。

 

阿武隈「やーい!こっこだよぉ!!当ててみなー!」

急に立ち止まったかと思えば、阿武隈は村雨を挑発する様な仕草を見せる。

 

村雨「ムカッ!村雨、馬鹿にされるのも嫌!」

村雨も本気で嫌悪しているという感じではない様だが、挑発にのったところでどうというのだという慢心があった様で、無数の錨を阿武隈の居るところへ落としまくった。

 

村雨「えっへん!どう?村雨の錨は?」

 

鬼怒「甘いね~!鬼怒のこと忘れてた?」

勝ち誇った笑みを見せる村雨。

そんな彼女の背後から聞こえてきたのは、鬼怒の声だった。

…鬼怒は村雨が阿武隈に気をとられている間に、村雨の背後を狙い撃てる場所へ移動、そして、村雨が攻撃を終え、隙を見せる時を虎視眈々と待っていたのだ。

 

鬼怒「そーれ!一丁あがり!」

何故、阿武隈達が背後を狙ったのか。

それは単に背後は隙を生み易く、こちらの被害を最小限もしくわ無傷で、攻撃を加えられるから…というだけではない。

 

…背中のみがダメージを与えられる唯一の箇所である。

 

阿武隈達は、のっけの攻撃からその仮説を立て、その村雨の背中に強烈な一撃を加えようとずっと狙っていたのだから、すごいものである。

 

砲弾は村雨の背後で爆ぜ、阿武隈も鬼怒もやっとこれで戦闘狂との戦いを終えられたと確信する。

そして、阿武隈が鬼怒の元へ歩みよると、「これで少し痩せるんじゃない?」という鬼怒の言葉。

阿武隈は顔を赤くして、「だから、太ってないもん!」と反論する。

 

二人のいつものやり取りに、鎮守府の日常が帰ってきた様にも思えるが、そんな二人の期待を裏切る様に、煙が晴れた時、そこには余裕の笑みを浮かべ、立っている村雨の姿があった。

 

村雨「村雨達の弱点が背中だって見破ったこと、褒めてあげるぅ!!けどー、それを知ってて何も対策しないのはおバカさんにも程があるでしょ!?ちゃーんと、村雨は対策してるんだから!!!」

 

阿武隈「…ふぅ、ホントに厄介ね!」

 

鬼怒「あちゃー、あのまま終われば鬼怒達、めちゃくちゃかっこよかったのになー!」

 

ふざけた口調で村雨を見る二人だったが、その顔には先程までなかったものが見てとれる。

 

焦りだ。

 

二人の視線の先には、その背中にピッタリと合わさる様にくっ付いている白色の錨があった。

…今までの黒い錨とは違った雰囲気を醸し出すそれ。

ご丁寧に村雨はそれについて言及する。

 

村雨「フフ!この白妙の錨はね~、強靭さで言えば最高なんだよ!!村雨だけの最強の矛でもあり、盾でもあるの!『純潔の錘』って名付けてくれたのは…おっと!ちょっと喋り過ぎちゃったぁ!!」

 

阿武隈「凄い自分語りだわ!!!」

 

鬼怒「鬼怒もビックリの自由人だよ!!」

 

村雨「(* `ω´ *)」

 

村雨は渾身の自分語りを侮蔑されたことに怒りを覚えた…わけがあるばすはない。

ただ、なんとなく目の前の二人が親しげに話し合っているのを見て、心からどす黒いものが溢れてくる気がしていた。

 

鬼怒「ふぅ…アブ」

 

鬼怒は深く息を吸うと、静かに吐き出し、阿武隈に声を掛ける。その目はいつになく真剣で、阿武隈の表情もその目に呼応するように厳しいものになる。

 

阿武隈「…なに?」

 

鬼怒「多分、この相手は本気でやらないとダメだよ」

 

阿武隈「……そうね」

 

二人は村雨に向き直る。

すると、村雨は背中の錨を手にし、満面の笑みを見せ、こう言った。

 

村雨「この『純潔の錘』が最強の矛たる理由、身をもって知ってね?」

 

次の瞬間、村雨は白い錨を振り上げながら、大きく跳躍する。

阿武隈と村雨の間合いは充分あったはずだった…だが、阿武隈が気付いた時には、もうその錨は阿武隈の頭を目掛けて凄まじい勢いで振り下ろされようとしている。

咄嗟に手に着けた砲で頭を守ろうと防御の構えをとったが、その衝撃たるや戦艦の砲撃を思わせる程の威力があった。

 

阿武隈「…っぐ!!!」

 

錨が直撃した方の腕はどうやら使い物にならなくなってしまった様だ。

ダランと力なく垂れ下がる阿武隈の腕。

もちろん、激痛が走っているのだが、果敢にも阿武隈はすぐに立ち上がる。

 

鬼怒「…落ちろっ!」

 

鬼怒がそんな重い一振りをした村雨のガラ空きになった背中を狙って砲撃する。

 

村雨「させないよ!!!」

 

もちろん、村雨は分かっている。

この『純潔の錘』を矛として使用すれば、弱点をさらけ出すことになることくらい。

だからこそ背後の気配には細心の注意を払うし、最悪砲撃されてもこの錨を盾にすればどうということはない。

 

村雨「今度はこっちの番だよ!!!」

 

村雨はそう言うと、自身の体から鎖が付いた小型の錨を複数、空中に待機させると一斉に阿武隈目掛けて解き放つ。

阿武隈もまだ撃てる砲で迎撃を図るが、その砲撃を掻い潜り、二つの錨が阿武隈の足を捕らえる。

 

阿武隈「……っうわぁ!!」

 

そして、すごい力で村雨の方へ手繰り寄せられていく阿武隈。

鬼怒が援護射撃を行うが、背中以外に砲弾を撃ち込んでも、村雨は意に介さないし、かと言って弱点である背中に撃ち込もうとすれば、巨大な錨が霰のように降り注ぐことになる。

 

阿武隈「…く、くぅ!!!」

 

必死で抵抗を試みる阿武隈だったが、白い錨を阿武隈の体に無慈悲にも振り下ろそうとほくそ笑む村雨の方へとどんどん手繰り寄せられていく。

 

鬼怒「アブ!!!!!」

 

村雨「さぁ!これで終わりだよー!!!」

 

今、その白い錨が阿武隈の血で赤色に染まろうとした瞬間。

大地を揺れ動かす程の爆発が遠くで起こる。

 

村雨「…おっとっと!!」

 

その場にいた三人は地震かと思われる程の揺れにバランスを崩すが、その一瞬の隙を鬼怒は見逃さなかった。

 

鬼怒「おりゃあ!!!」

 

阿武隈と村雨を繋ぐ鎖に鬼怒はありったけの弾を撃ち込んだ。そして、バキッと音をたて、鎖は断ち切られる。

 

阿武隈「…よし!」

 

阿武隈はその瞬間に体勢を立て直すと、一旦村雨から間合いを取ろうとした……が。

 

村雨「この一撃で沈めぇ!!!!」

 

阿武隈の眼前には巨大な純白の錨が迫ってきている。

村雨の俊敏さを侮ったな…と静かに悟る阿武隈。

彼女は目を閉じ、静かに死を待った。

 

グシャッ!!!!!

 

肉と金属が潰される様な音が辺りにこだまする。

…彼女は疑問に感じていた。なぜ、痛みがないのだろうと。もしかして、痛みを感じる間もなく死んでしまったのだろうか。だが、自分が目を開けることが出来ると分かった時、彼女はすぐに目を開け、理解したのだ。

 

鬼怒があたしを庇った…。

 

鬼怒「…っ、ぅあぁ」

 

崩れ落ちる鬼怒の姿、それがしっかりと彼女の目に焼き付けられる。

 

阿武隈「あ、あぁ…」

 

言葉にならない。言葉が出てこない。

 

村雨「…フフフ、まずは一人ね!さて、お次は…」

 

村雨は潰れた肉塊から『純潔の錘』を引き抜くと、その血に濡れた錨を阿武隈に振り下ろそうと構える。

 

村雨「じゃあねー♪なかなか楽しかったよ!」

 

そんな台詞を吐き、いざ阿武隈を潰そうとした時。

今度はさっきよりさらに強い揺れと、眩い閃光が先程夕立と別れた場所辺りから襲ってきた。爆発だろうか。

 

村雨「…うぅ!」

 

思わず目を瞑る村雨。

だが、しばらくするとその爆発の余波も収まり、村雨も目を開ける。

 

村雨「…全く!夕立ったら、派手にやってるのね!こっちも負けてられな……!」

 

阿武隈の姿がない。

バカな!?なんで!!?……ま、まさか!?

村雨は振り向く………ことが出来なかった。

 

阿武隈「…敵に気付かれない様にするの、あたしの十八番なんだ」

 

そう呟いたかと思えば、阿武隈はまだ生きている砲でありったけの砲弾を村雨の背中に撃ち込む。

 

村雨「っあぁぁぁあああぁぁああああ!!!!」

 

断末魔…まさにその表現が正しいだろう。

絶叫しながら倒れ込む村雨に、阿武隈はその砲弾が尽きるまで砲火を止めなかった。

 

そんな容赦ない阿武隈の頬を涙が伝う。

 

 

 

 

 

 

 

 

村雨「……て、提督ぅ、村雨…頑張ったよ?だから、褒めてよぉ……」

 

絶叫をあげ続けた村雨が最期に残した言葉はそれだった。

阿武隈はそんな村雨に自身の服を被せてやると鬼怒の元へ。

 

そこには、普段と変わらぬいつもの鬼怒の姿があった。

 

…阿武隈はそれを見て、優しい笑みを浮かべ、鬼怒のことを抱き抱える。

 

阿武隈「…鬼怒、あたし達って英雄かな?」

 

鬼怒「…うん」

 

阿武隈「そっか…。じゃあ、もうあたし達はこの鎮守府最強ってことよね!?」

 

鬼怒「……うん」

 

阿武隈「あ、そうだ!!あの人間もとっちめなきゃ!!吹雪の話も聞かないとだし!!!」

 

鬼怒「……………うん」

 

阿武隈「…ヘル・アンカーズも新たにメンバー募集しなきゃね?…鬼怒の言うとおり、あたしの強がりだったみたい」

 

鬼怒「…………………」

 

阿武隈「………………」

 

深い眠りに落ちているのだろうか、鬼怒は静かに目を閉じていた。

 

…そうだよね、あたし達、ここまで頑張ってやって来たんだから、報われたっていいよね?

 

鬼怒はとても穏やかな顔をしている。

 

 

 

《鬼怒…おやすみなさい》

 

 

 

阿武隈はずっとその赤髪を優しく撫でていた。

 

 

 

 

 

 

 




金剛「ま、待つネ…オマエは…一体?」

???「安心して欲しいのです!貴方たちに危害を加えるつもりはないのです!」

金剛「…よくそんなことが言えマスネ!?こんな状況で、大したジョークダヨ!!」

金剛がそう叫ぶのも無理もない。
彼女と対峙しているその小さな女の子の周りには、艦種を問わずして、何人もの艦娘が倒れているのだから。
この鎮守府の貴重な戦力である戦艦や空母まで床に伏しているというのは、由々しき事態だ。

金剛「…何をしたネ!?答えろ!!!」

???「…眠ってもらっただけなのです!ほら、こんな風に!」

そう言うと、少々の背後から巨大な真っ黒い手が現れたかと思えば、金剛はその手に捕まり、握り締められる。

抵抗する間もなく金剛は気を失ってしまった。

???「全く!やれやれなのです!!!」

そして、その少女は自分の胸ポケットから小型の機械を取り出すと、話始めた。

???「…とりあえず、さっきそちらに送った娘たちは無事届いたのです?」

???「おー!届いてますよ、ちゃんとね!!」

???「それなら良かったのです!!」

???「…それにしても、大変ですね。まさか松風さん達がそこを襲撃するとは…」

???「本当に困ったのです!!ここは大事な芽が沢山ある宝庫だと言うのに、とんでもないことをしてくれたのです!」

???「…はぁ、そうですよねー。今回は二人だけですからね…」

???「仕方ないのです。帰ってあの方に謝るのです!それに…」

???「それに…?」

???「…上手くいけば、もっと沢山の芽を芽吹かせることが出来るかもしれないのです!」

???「はぁ…。そうですか…。私は夕立さんと村雨さんを失ったショックでしばらく立ち直れそうもありませんよ…」

???「…松風は持ち帰るのです!」

???「くれぐれもよろしくお願いします!私の最高傑作達をこれ以上壊されるのは堪りませんから!!!」
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