仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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睨まれた4

???「黙れ!」

 

「むぐっ!?」

艦娘が僕の口を手で塞ごうとする。でもここで黙って塞がれるわけにはいかないと、非常に申し訳なかったのだが、その艦娘の手を噛んだ。

 

???「痛ッ!!」

よし!まだ叫べそうだ!

 

「たす…」

 

神通「ッ! よくも姉さんを!!」

そう言って神通はさらに締め上げる力を強めてくる。

痛い痛い痛い!折れる折れる折れる!

 

「ッカ…ア」

僕は痛みのあまり声が出せなくなっていた。ああ、あとちょっとで助かるんだ!頑張れ僕!

 

「あああああああ!痛い痛い痛い!!!」

最後の力を振り絞って悲鳴をあげた。

 

???「この!黙れって!!」

黙るもんか!こちとら生死懸かっとんじゃ!

 

???「何をしているの、あなたたち!?」

 

???「ヤッバ!逃げるよ!!」

 

神通「え、でも…」

 

???「いいから!!」

艦娘はそう言うと僕の上に馬乗りになっていた神通を連れて、走り去っていった…。

た、助かった~。うう、腕が痺れてる…。

 

???「あ、こら!待ちなさい!」

 

???「貴方、大丈夫?」

おそらく艦娘だろうが、僕のことを心配してくれているのか!?この艦娘なら!

 

「は、はじめまして!今日からここに着任することとなりました!どうぞ、よろしくお願いします。」

僕はなんとか立ち上がり、声を掛けた。

 

???「・・・」

あ、あれ!? なんか黙っちゃったぞ!ウッソだろ、お前!

 

???「貴方が提督ね。よろしく。」

ふぅと一息ついてからその艦娘は答えた。 心なしかその声が震えているような気がする…。

 

???「それで、何があったのかしら?」

うーむ、なんか絞り出すように喋っているな…。だけど、この艦娘を逃したら本当に終わりだぞ。なんとか突破口にしなければ…。そうだな、まずは…。

 

「うん。いろいろ聞きたいこともあるけど、まずは場所を変えない?ここだと、その、暗いし、立ち話もなんだからさ…」

 

???「そ…そうね。場所を変えましょう。執務室でいいかしら?」

 

「もちろん!」

僕は即答した。するとその艦娘はビクッと体を震わせた。声、大きかったかなあ。ああ、それと…。

 

「君の名前を教えてもらってもいいかな?」

 

???「陸奥よ」

 

 

 

 

 

私は提督と思わしき人物を執務室まで案内している。

おそらくこの男が提督なのだろう。今日ここに来た人間は彼一人。そもそもこの鎮守府に滅多に人間は訪れない。

ただ確証は持てない。なぜなら、提督着任に関しての書類の諸々は全て長門が管理しているから。まあ執務室に連れていけば分かることだ。

 

 

 

 

 

 

 

うーん、気まずい!この陸奥という艦娘、執務室に連れていってくれるらしいが、名前を聞いてからその後は全然話が続かない。たとえば…

 

「そういえばなんかこの鎮守府電気ついてないよね?」

 

陸奥「ええ」

 

「なんか理由あるの?」

 

陸奥「節電の為…よ」

 

「そっかあ、節電かあ…」

 

陸奥「・・・」

あ、あれ~??気さくに会話出来ると思ったんだけどな…。

 

陸奥「着いたわよ」

うわっ!? 急に喋ったからびっくりした。

というか、ここが執務室か。

 

なんとなくだが、僕はここに入るのがとても怖いと感じた。多分、直感的に。だけど、入らないと埒あかないよな。よし!覚悟を決めよう。

執務室に入ると、陸奥とは別の艦娘が机の上で海図を睨んでいた。そして、入ってきた陸奥に気が付いた。

 

???「おお、陸奥か。どうした?こんな時間に?今日の任務は終わったはずでは………。陸奥、そちらの人は?」

 

陸奥「今日からここに着任する提督よ。というか長門。提督着任に関しては貴方の管轄じゃない。」

 

「は、はじめまして!こんばんは。今日からここに着任することになりました。よろしくお願いします!」

僕は第一印象を大切にしようと、丁寧に挨拶をするよう心掛けた。

 

長門「貴方が……提督か。」

すると長門は机の引き出しから書類を取り出し、こちらを一瞥するとそのまましばらく書類を睨んでいた。

 

長い沈黙が流れた。そして、長門がふいに顔をあげ僕の顔を見た。

 

長門「確かに貴方は今日ここに着任する提督だ」

ふぅ~、やっと正式に提督として認められたか…。ここまで長かった。

 

長門「ただ、」

あれ、なんか凄い目付きで睨まれているのですが…。

 

長門「貴方がここですべきことは何もない。申し訳ないが、お引き取り願いたい」

は?は??はあああああああああ??

ええ、ワケワカメ。

 

「そんな、なんでだ!」

こちらもつい語気が強くなる。

 

「上層部からここに着任しろと言われたんだぞ!」

 

長門「それについてはこちらも知っている。だがな、ここがブラック鎮守府であったことを聞いているか?」

 

「ああ、もちろんさ。具体的な内容についてまでは聞いてないが…」

あー、余計なこと言ったかも。

 

長門「ならば話が早い。ここの艦娘の多くが人間を憎み、人間に怯えている。人間不信ということだな。それは前提督らによる産物だ。そしてその原因が排除され、やっとほんの少し落ち着いてきたのだ。」

つまり何が言いたいんだよ………。

 

長門「人間が再びこの鎮守府にいることになれば、そのささやかな安寧がまた崩れるだろう。私は貴方が着任することを全艦娘に伝えた時、その時の艦娘たちの様子を見て悟ったのだ。この鎮守府に人間は一人もいらないと。」

 

「・・・」

 

長門「せっかくここまでお越し頂いたのに申し訳ない。ただ、分かって欲しい。上層部の方には私から伝えよう。もちろん貴方にこれ以上迷惑のかからないように伝えるつもりだ。」

 

「・・・」

 

長門「すまないが、お引き取り願いたい。陸奥に門まで案内させよう。陸奥、頼まれてくれるか」

 

陸奥「え、ええ」

 

「・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

執務室を出た後、僕はなにも考えられず、ただ陸奥の後を追うことしか出来なかった。

そして僕は再び鎮守府の門のところまでやって来た。

 

陸奥「それじゃ、ここまでだから…」

 

「・・・」

陸奥はそう言って、今来た道を戻っていった。

僕はその姿が見えなくなるまで………見えなくなってもそこに立っていた。

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