仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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役割分担

阿武隈「・・・」

 

「「・・・」」

 

きっと阿武隈は困惑している。

そんな中、僕は彼女が目を丸くして固まっているのを静観し、最終的な彼女の反応を伺っていた。しかし、当の本人は依然として反応を示さず、ただこちらを凝視するのみ。

まるで物言わぬ木偶人形の様だ。

 

…そんな沈黙に耐えかねて、僕が口を開く。

 

「これが……僕たちの仲間だ」

 

その言葉に阿武隈がハッとした様な顔になり、何かを決心したのか凛とした…いや、凛とはしているがどこか優しさを秘めたような顔を僕に向け、近付いてくる。

 

そして手を差し出した。

 

その手をまるで予期していたかの如く、僕も手を差し出し、固い握手が交わされる。

 

先生…!やったよ、僕たち!!

 

そして、ようやく阿武隈は今まで固く閉ざしていた口を開き、労いの言葉を…………言うはずがなかった。

 

阿武隈「どーいうことなの~~!!!」

 

先程の柔和な顔はどこに行ったのだろうか、凄まじく険しい顔で僕の顔を覗き込む阿武隈。

…手がガッチリ握られているので、僕はその迫力満点の顔を間近で見ることになったのだが、正直彼女のその様な反応も致し方ないと思った。

 

出撃して事の顛末を知らない彼女にとって、新規着任組を見事に勧誘した僕たちあるいは勧誘に失敗した僕たちが出撃後の彼女を迎え入れる…その二択が彼女の想定内だったと思われる。

 

しかし、蓋を開けてみれば……。

 

大井「あぁ!早く北上さんに会いたいなぁ!」

 

島風「わーい!かけっこだ、かけっこだぁ!」

 

雪風「うわぁ!早いです!」

 

時津風「待てぇ~!」

 

キャッキャウフフが溢れる部屋の中。

 

…カオスだね、こりゃあ。

 

僕がやれやれと首を振り、阿武隈を見る。

 

阿武隈「なに悟った顔になってんのよー!!!」

 

「ぶるああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

…急に肩を掴まれたかと思えば、激しく僕を揺する阿武隈先生。

 

僕だって、分からないよ!なんでこうなったのかなんてさ!!!

 

 

 

 

 

 

 

時は遡る。

 

川内「…なんか付いてきたんだけど」

 

大井とのリアル鬼ごっこに出ていった島風がなかなか戻らないのを心配して、僕は川内に様子を見てくる様に伝えたのだが、川内が連れて帰ったのは島風……と見知らぬ艦娘二人だった。

 

へ?

 

島風「…ううぅ、ケーキが」

 

そういえば、ケーキを持って行ってたもんね。

どこかでなくしちゃったのかな??

 

???「わ!誰ですか、このおじさん!」

 

???「キャーー!!!」

 

は?

 

…おじさんだと!?ふざけんじゃねぇよお前ら!お兄さんだろぉ!!

 

…と冗談はさておき(おじさん呼ばわりはかなりきついが)、僕は川内の連れ帰った二人の艦娘をそれぞれ一瞥すると、そっと川内に耳打ちする。

 

「…え?この娘たちは…?」

 

川内「うーん、それが私もよく分かんないんだよね。なんか島風と一緒に倒れてた」

 

えぇ…、どういうことなんだ?

川内も戸惑っているし、これは……。

 

???「あ!美味しそう!」

 

???「あー!雪風ズルい!!時津風も食べるー!」

 

…名前、分かったわ。

雪風と時津風…ねぇ。いや、僕たちが用意したお菓子とか紅茶、勝手に飲み食いしないで。

 

と、とりあえず…。

おやつを勝手に摂っている二人に僕は声を掛けようと試みる。

 

しかし……。

 

金剛「ヘーーイ…ワタシ殺されちゃうヨォ…」

 

大井「北上さんは?どこ?」

 

…唐突に部屋の扉が開き、そちらに目をやれば、そこには巫女服と巫女服の首を今にもへし折ろうとしている大井が立っていた。

 

あばばばばばばばばば…。

 

 

 

 

 

…結論から言えば、お祭りの協力者は増えた。

こんな混沌とした状況で川内は機転を効かせ、雪風と時津風にそっと耳打ちする。するとお菓子を頬張っていた彼女たちは先程お菓子を見つけた時よりも目をキラキラさせ、「わーい!」と手を挙げて喜んでいる。

そして「お~まつり!お~まつり!!」と言っているところを見るに……どうやら川内はとんでもない奴らを味方に率いれた様だ。

 

うん…もうその娘たちの面倒は川内に任せます。

 

…で。

 

金剛「オ~タ~ス~ケ~~!!!」

 

大井「北上さんは?」

 

徐々に手の平に力を込める大井に怯える巫女服。

…やるしかねぇな。

意を決して、大井に話し掛けることにした。

 

「…あのぉ、大井」

 

大井「・・・」

 

「なんだ?」と言わんばかりの顔を僕に向ける大井だったが、こちらを向いたのはかなり大きい。

 

「北上については……この僕が保証しよう。僕は上層部と深い繋がりがあってね、僕が一言言えば北上なんてすぐここに着任させられるよ(大嘘)」

 

大井「本当ですか!?」

 

…やけっぱちの僕の一言に大井は飛び付いた。

巫女服はそのまま座り込む(本日二度目)。

 

大井「北上さんに……北上さんに会えるんですね!?」

 

「お、おぉ…」

 

大井「早く会わせてください!!!」

 

…息を荒くし、瞳を目一杯開けて喜ぶ大井。

あ、やめて。胸ぐら掴まないで……。

 

大井「早く!早く北上さんを……」

 

「条件がある!」

 

大井「条件……?」

 

「その条件さえ呑むなら、直ぐにでも北…」

 

大井「呑みます!!!」

 

…フッ、終わったな。いろいろな意味で……。

 

 

 

 

「…以上だ!」

 

阿武隈「意味分かんないわよ~~~!!!!」

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