仲良くなりたいっていう気持ち、忘れちゃダメだよね   作:雨降り

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増援

―――ここを訪れるのは本当に久々な気がする。

 

僕の前には古びた扉が―――心地のよい懐かしさを感じさせながら佇んでいる。そして僕はドアノブを握るとゆっくりとそれを開け、一歩一歩を噛み締めながらその先へと進んでいく。

 

「…だ、誰ですか!?」

 

すると僕の瞳には、驚きの表情を浮かべながら、眼鏡越しに僕の顔を見る娘の姿が映っていた。僕はその娘の顔に見覚えがなかったので、自分の後に続いて執務室に入ってきた艦娘…睦月にそっと耳打ちする。

 

「…えっと、あの娘は?」

 

「あ、あぁ…この娘は大淀さんなのね!」

 

突然名前を呼ばれた大淀という艦娘は、背筋をピンと伸ばすと綺麗な直立を見せる。そしてそのまま固まってしまった。

 

でも今の状況を考えれば、それは無理もないだろう。見知らぬ人物が急に現れたら警戒するのは尤もなことだ。

 

「…あ、あの」

 

「もしかして貴方は…長門さんが言っていた…」

 

―――そんなことを考えていると、大淀は僕の顔を見ながら恐る恐るといった感じで声を掛けてきた。そして今は亡き大切な人の名前に、思わず顔が熱くなるのを感じた。

 

「…大淀さん!急だけど…この人に放送器を使わせてあげて!」

 

睦月の叫ぶような声に僕は我に帰ると、そのまま彼女に背中を押され放送器の前へ。大淀は特に放送器を使うことについては何も言わなかった―――おそらく何が起きているのか分からないのだろう…落ち着かない様子でアタフタしている。

 

この放送器のスイッチを入れることには、大分因縁があるが…状況が状況だ。

気付いたら僕は、放送器の電源を入れ、マイクに向かって語りかけていた。

 

「敵襲!敵襲!!!鎮守府に所属する艦娘は直ちに避難して下さい!繰り返します―――敵襲!敵襲!!!」

 

スピーカーを通して、僕の声が鎮守府内にこだまする。

 

「ただ避難しろだけじゃダメにゃ!どこに逃げるのかもちゃんと言及するのね!」

 

後ろから睦月の声がする。

確かに…その助言は尤もだ―――だけどどこが安全なんだろうか。

僕は繰り返し避難を呼び掛けながら、考えられる限りの安全地帯を模索した。だがあるのか!?そんな場所!?

 

鎮守府は火の海だ…となると海上へ逃げてしまった方がいいのだろうか?そうだ、彼女たちは艦娘なんだから彼女たちが真価を発揮する環境へ誘導しよう。

ならば…避難場所は鎮守府の母港か…!

 

早速僕は必死で考えた避難場所を伝えようとマイクに顔を近付ける…が。

 

「…避難場所はどこにしたんですか?」

 

僕は不意に肩を掴まれ、放送器から離される。そして訳も分からず振り返るとそこには、眼鏡をクイッと上げる大淀の姿があった。

 

「…へ?」

 

突然の出来事に僕は思わず固まった。

だがそんな僕に、彼女は容赦なく避難場所について問い掛け続ける。

 

―――というか彼女の眼鏡が光を反射しているせいなのだろうか、瞳…表情が見えずなんか怖いんですけどお!

 

「ど、どうしたにゃ!?大淀さん!」

 

すかさず睦月の援護が入ってきたのは救いだ。そしてその言葉が大淀の真意を吐露するきっかけとなる。

 

「…正直何が起きているのかさっぱりですが―――この異常事態、私もなんとかしなければと思っていました。そして今しがた貴方が避難を促すのを見て、思ったんです」

 

そこまで言うと、彼女は僕を押し退けて、放送器の前へと歩み出る。

 

…お、大淀さん?

 

「貴方の言葉では響かないんです!!!ここを追放された貴方の言葉では―――すると避難の遅れに繋がる…救える命も救えません!ですから!!」

 

「ここは私…軽巡大淀にお任せ下さい!!!」

 

ドーンと胸を張って彼女はそう言い放った。

 

…というか僕が追い出されてたこと知ってたのね。

 

口を開け、呆然としてしまう僕と睦月。

そんな僕たちを尻目に、大淀は眼鏡を再びクイッと上げる。

 

―――でも確かに…その通りかもしれない。

 

ここを追放した者と追放された者の間には、残念ながらどうしても溝というものが存在するわけで―――それが避難の遅れに繋がって最悪の事態を招いたら…。

 

時間はない…僕は即決した。

 

「大淀さん!皆に鎮守府の母港へ避難するように伝えてくれ!そして状況に応じては海上へ避難することも!」

 

「…承知しました!!!」

 

大淀ははっきりとした声で返事をすると、すぐに放送器の方へと向き直り、避難を呼び掛け始めた。

 

僕はその様子を一瞥すると、すぐに次の一手を打つことにした。

 

―――あの時と一緒だ。自力で避難出来る娘ばかりじゃないだろう…誰かが支援しなければ!

 

僕は口を開けたまま直立不動している睦月の肩を揺さぶると叫んだ!

 

「…にゃしい将軍!台車を取りに行くぞ!」

 

「…にゃしいッ!?」

 

 

乱暴に引き抜かれた剣―――それを滴っていた血液が辺りに飛び散った時―――野分は血反吐を吐きながら、よろよろと歩き出した。

 

「…ッあぁ!な、なにが…何が―――!?」

 

彼女の胸からドバドバと流れ出る血は、大地を真っ赤に染め、錆びた鉄の匂いを想起させる。そして必死で胸を抑える野分だったが、血の流れは一向に止まる気配がない。

 

野分は己の肉体にこのような傷を負わせた者の顔を拝もうと、ゆっくりと振り返る。するとそこには眼帯を着けた顔に笑みを覗かせ、自分を貫いたであろう剣を携えながら悠然と構える者の姿。

 

野分は怒りを露にした。

 

「―――おのれ!おのれおのれおのれえ!!!私たちの至高の戦いに水を指すとは―――許せん!許せん!!」

 

口元からどす黒い血を垂れ流しながら野分は叫ぶ。

しかしそれに負けじとその者は大きな声を張り上げた。

 

「…至高の戦いだぁ?バーカ、戦いに至高も最低もねぇよ!戦っつうのは生きるか死ぬか…ただそれだけだろうが!!!」

 

そしてそれを言い終わるや否や、その者は勢いよく踏み込むと、一気に野分の懐へと肉薄する。

そして野分が自身の胸を庇うように置いていた手もろとも剣で突き刺すと、彼女はジリジリとその手に力を込める。

 

「…がああああぁぁぁぁぁぁッ!!!!」

 

絶叫を耳に、尋常ではない量の返り血を浴びながらも剣を握る力が緩まることはない。

 

しかし野分はその身を貫かれながらも、その眼にまだ絶望を灯さず…むしろ彼女の翡翠色の瞳は、電撃が走ったように爛々と輝く。そして苦悶の表情がフッと消えたかと思えば、彼女は一度は弱まった光の束を手に、それを大きく上へと投擲した。

 

「―――!!!」

 

上空へと投げ出された光…それはその形を―――刀から氷柱(つらら)のような形に変貌させ、瞬く間にその数を増殖させた。そして幾つもの閃光がまるで円を描くように宙に並列する。

 

「……フフ、フフフッ――ククッ…クククッ!…ッアーーハッハッハ!!!いいだろう―――いいだろういいだろうォ!!!生きるか死ぬか…か気に入ったァ!!!そこまで言うのならこの無数の光の刃を掻い潜り――生き残ってみせろオオオオ!」

 

黄金の煌めきを伴った光の刃―――それは宙を埋め尽くす程の数で…そこから想像される破壊力、展開範囲は標的に後退という選択を与えない。

 

――尤も彼女たちが後退を選択をするということは…。

 

 

「てめぇ!何しやがったぁ!」

 

剣を突き刺したはずなのに…ソイツは全く死への恐怖というものを感じさせないどころか、大声で笑い始めやがった。だからソイツの胸ぐらを掴むと、俺は大声で叫んだんだ。

 

―――そして気が付いた。

 

投擲された光の塊があっという間に空に展開したのに気を取られて気が付かなかったが…ソイツの翡翠色の瞳は血がまじったからだろうか―――深紅の色を映していた。

そしてソイツの息が途絶えていることを知った俺は、眩い光を前にどうするかを考えていた。

 

―――いや、考えても仕方がなかったのは言うまでもない。

 

宙を漂う幾つもの閃光が一斉にこちらに射出されれば、まず逃げることは不可能だ―――ならば。

 

「…上等だ、やってやろうじゃねえか!!!」

 

俺はソイツの体から引き抜いた剣を大きく横に薙ぎ払った。それに伴って血が辺りに飛び散る。

 

―――俺は覚悟を決めた。

 

―――この猛攻、全部受けきってやる。

 

無謀なのは分かっていたが、やるしかなかった。

この剣が(こぼ)れようとも、そして本末転倒だがたとえこの命が尽きようとも…俺はソイツの言った言葉に立ち向かわなければならなかった。

 

そしていざ閃光が一斉に地に降り注ぐかどうかというところで俺はその背に暖かさを感じた。

そしてそれが誰かが俺の背にぴったりと背をつけているんだと認識した時には―――宙に浮かんだ幾千の閃光が大地を覆っていた。

 

―――まさに一閃だった。

 

俺は無我夢中で剣を振るった。

 

そしてふと我に返った。

 

見ると俺の体は血だらけで、辺りもすっかり先程とは地形が変わってしまっている。

 

ただ痛みを感じることで生きていることを実感した。

 

そして―――

 

佇む俺の隣には…静かに横たわっている一人の艦娘の姿があった。艤装は激しく損傷し、粉々に砕け、露出した白い肌からは赤色の液体が止めどなく流れている。

 

そして俺が跪いてまだ息のあった彼女を優しく抱き寄せると、彼女は虚ろな瞳を浮かべながら、弱々しい声で語った。

 

―――俺が耳元で聞いたその言葉は…おそらく俺は忘れることはないだろう。

 

そしてその言葉を向けられた者はつくづく幸せ者なのだと思った。

 

「…あ、青葉ちゃんに………伝えて……………貴方は足手まといなんかじゃない………………素敵な艦娘よ…って……お、ね………がい……」

 

俺は血だらけの手で彼女の冷たくなった手を握ると、無意識のうちに叫んでいた。

 

「…ああ、絶対に伝える。だから―――」

 

―――もう休め…。

 

俺が最後までその言葉を続ける前に、その艦娘は微笑むと「…ありがとう」と言って静かに息を引き取った。

 

名前も知らない艦娘だが―――ボロボロな体で必死に強大な敵に立ち向かう姿は俺の胸を打つには十分だった。

そして同時に俺たちの鎮守府を救ってくれた恩人を失ったことは激しい喪失感を俺に与えた。

 

「…名前くらい聞いとけばよかったぜ」

 

俺はそう言って、静かに目を閉じている彼女の髪を撫でる。そして砕け散った艤装の一部を手に取った…彼女が最期に望んだ想いを届ける為に。

 

「…ッと、俺も少し…休ませてもらうか」

 

もう一歩たりとも動けない体を地につける。

そして穏やかな表情を浮かべて眠る彼女の隣で、さっきまで光に包まれていたはずの蒼天を眺める。

 

そして朦朧とする意識の中で、名も知らぬ彼女に言い様のない想いを寄せながら、その瞳を閉じた。




(おまけ)

???「私の親友、キャラ崩壊凄すぎィ!」

???「しかもなんか刀なんか持たされて、パチもんの○具解放させられてるしィ!」

???「しかも私との絡みなし!まさかの登場さえしない!名前さえもひっくり返されるっていう!」

???「…のわっちぃぃぃぃ~~~~」

???「とりあえずのわっちがこっちの世界に来たら」

???「夜通し私と踊ってもらうんだから!」

???「ベッドの上で(意味深)」

???「…というわけだから朝潮ちゃん!」

朝潮「はい!」

???「撮影よろしく!」

朝潮「はい!」
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