Neptune~蒼海の守護者~ 作:R提督(旧SYSTEM-R)
今回は終章の後篇、ついに最終回となります。前回、海軍からのまさかのヘッドハンティングを受けた蒼。その決断とはいかに…!?それではどうぞ。
「失礼します」
執務室のドアを、司はいつもよりは少し慎重にノックした。
この日、司は蒼と同様、やはりはるな艦内で勤務中に、肥後に呼び出しを受けていた。蒼とは違い、司には呼び出しをくらった理由についての心当たりがあった。「ふそうを第2護衛隊群に加えるべきだ」と長崎の修理ドックまで具申しにいった、あの行動だ。
あの時、他ならぬ肥後はこう口にした。「貴官のこの度のやり方は主席幕僚の言う通り、日本国防海軍の軍人としては決して褒められたものではない。いくら艦長や副長から上陸許可を得てのこととはいえ、規律違反とのそしりは免れんだろう」と。もちろん、実際にそう言われることも、後からそれを理由に処分を受けることも、覚悟の上での行動だ。
(艦長は降任処分ば受けて、結局中佐で依願退職ん希望ば出した…。おいはそこまでにはならんかもしれんばってん、きっと何かしらは言わるるんやろう。減給か、それとも謹慎か…。始末書だけで済むんやったら相当ラッキーやろうなぁ)
内心、そんな思いを抱えながら、司は扉の向こうに向かって名乗りを上げた。
「真行寺少佐、入ります」
「入れ」
中からの声に従ってドアを開けると、既にそこにはデスクの向こう側に腰かけた肥後の姿があった。丁寧にドアを閉め、まっすぐに肥後の方へ向かい、デスクの前できびきびと一礼する。
「群司令、呼び出しばあったけん参上しました。どがんご用件でしょうか」
「あぁ、お前に伝えないといけない大事な件があってな。お前のその、時々発動する暴走癖に関係する話だ」
肥後の言葉に、司はより一層姿勢を正した。やはり、その件か…。
「あの、群司令。長崎まで群司令と主席幕僚んこつば追いかけて行った件ん話やったら、おいはどがん処分でん受くる覚悟ば出来とります。何なりと仰ってください」
全力で腹をくくって、一礼しつつそう口にしたのだが、顔を上げると何やら様子がおかしい。そう言われた当の肥後の方が、きょとんとしているではないか。
「おい少佐、何の話だ。俺はそんなことでお前を呼び出した覚えはないが?」
「…、へっ…?」
司は目を丸くした。あれ?どういうことだ、話が違うぞ。
「いや、暴走癖ん話て仰ったけん、てっきりそん話かと…。それにあん時群司令、仰ったやなかですか。規律違反とのそしりば免れんって…」
「あの時はな。だが、後で調べさせた結果、指揮系統的にお前の行動には何ら手続き上の不備はなかった。そして、結果的にもふそうを第2護衛隊群に加入させるべきという、お前の判断は正しかった。つまり、あの件ではお前に対する処分事由は特にない。まぁ、俺個人としてはあのような猪突猛進は慎むべきだとは思うが、俺の感情で懲戒処分を食らわせるわけにもいかんだろう」
えらい暴れ馬だとは思ったが、どうやらただの暴れ馬ってわけでもなかったらしいな、と肥後は付け加える。今度は司が目を見開く番である。
「え、じゃあ猶更今日は何のために…」
恐る恐る口を開くと、肥後は真面目な表情でこう続けた。
「お前がその生来の猪突猛進な性質を持ちながらも、30歳の若さで海軍少佐の階級と、イージス艦はるな砲雷長の職責を与えられている理由は、お前のその類稀なるタクティカル・ピクチャー構成能力だという話は聞いている。例の首都ミサイル攻撃未遂事件の時も、あれが『未遂』で済んだのはお前の力が大きかったそうだな」
司はその言葉に、あの日のCICでの様子を思い出していた。あの時、対空戦闘用意が下令される直前に、たまたま艦内の廊下で「地下鉄六本木駅が爆破されたらしい」というニュースを下級兵から聞いていたおかげで、すぐに頭の中で情報を統合し、予測を立てることができた。司にとっては、普段からやっている頭の回し方ではあるが、それがあの時ドンピシャで役に立ったことは、自分の中では今でも誇るべきことではある。
「だが、その上でだ」
肥後の表情は、そこでよりシリアスになった。思わず、司がつばを飲み込む。
「お前はここまでは、その能力を使って順調すぎるほど順調に昇任を重ねてきた。ただ、ここからは今のお前のままだと厳しくなる。何故なら、中佐以上に上がればDDの艦長、あるいはDDGの副長を筆頭に、より多くの部下の命を預かることになる職責を与えられる可能性も当然出てくるからだ。だが、艦を預かる身分である艦長や副長が猪突猛進であっては困る。艦隊の一員として協調した行動を常にとれなければ、多くの部下の命を危険に晒すことになるからな。お前もそれは薄々気づいているだろう?」
流石群司令である。痛いところを突かれたな、と司は内心呟いた。確かに、日頃艦内で勤務する中で津軽や日向の姿を見て、「どがんしたらあん人たちんように、常に冷静で的確な指揮ば出来るんやろうか」と、司はいつも考えていた。自分は頭の回転が非常に早く、自分の中でタクティカル・ピクチャーを瞬時に完成させられてしまうため、ついつい身体が動いてしまう。それを自分で制御しきれていないのが、司の弱点と言えるだろう。
「もちろん、今までのお前を思えば、30歳少佐で頭打ちなどというのは極めてもったいない。だからこそ、お前のその暴走癖は何とかする必要がある。同時に、お前の良さである『戦場を一つの絵として捉える能力』も、もっと拡張して成長させなければならん。そのための妙案として、お前に一つ命令を下すことにした」
肥後はそう言うと、まっすぐに司の目を見据えた。司の心臓が高鳴り、血流が早まる。次に肥後が口にしたその言葉に、司の目は大きく見開かれた。
「真行寺司少佐、人事発令だ。貴官に、MOSAD派遣に伴う沿岸警備艦ふそうでの勤務を命じる。派遣期間は来年1月1日より一年間。配置についてはふそう艦長以下、沿岸警備隊側の指示に従い、その指揮下で勤務すること。以上だ」
「お、おいが、ふそうにMOSAD派遣!?」
司は、思わず素っ頓狂な声を上げて叫んだ。あまりの声量に、たまたま廊下を通りがかった他の将兵は、驚いて飛び上がったかもしれない。
「沿岸警備隊は、我々海軍とは似て非なる戦域で戦う軍種だ。当然、我々にはない概念がタクティカル・ピクチャーの中にも入ってくる。お前の強みをさらに拡張する上でも、ピッタリの環境だろう」
肥後はそう言うと、一度大きく息を吐いた。
「それに、沿岸警備艦ふそうは単に『巡視船に乗り込むよりは、環境が我々と近い』というだけの艦ではない。お前にとっても、色々な意味で馴染みや思い入れがある特別な艦のはずだ。そこを一年間、お前の第二のホームグラウンドにして来い」
司は、思ってもみなかった命令に驚きと興奮が隠せなかった。自分が、第2護衛隊群への加入を処分覚悟で具申した船。オペレーション・イーグルの前日、士官学校の同期だった河内をはじめ、三人の仲間が乗り込むのを見届けた船。そして、自分の実の姉が指揮し、オペレーション・イーグル本番では異軍種の船にもかかわらず、海軍の戦域で大活躍。帰投の際には自ら登舷礼実施を具申した船でもある。そこで、今度は自分が勤務することになるとは。あの登舷礼の日、海の上で両艦の間に築かれていた、見えないながらも確かに存在していた壁を、今自分が乗り越えようとしているという事実は、司にとって重いものだった。
だがそこで、司の脳裏にはふとある噂話が浮かんだ。その沿岸警備艦ふそうに関して、この数日海軍内を駆け巡っていた、ある話。
「群司令、そん命令ばありがとう拝受いたします。ばってん、そん上で一つお伺いしたたかこつばあっとばってん、よろしかですか」
「なんだ?」
「姉貴……いや、ふそう艦長の真行寺蒼一佐に、群司令が海軍への転官ば打診したっちゅう噂、本当ですか?」
恐る恐る尋ねたにもかかわらず、肥後の回答は実にあっさりしたものだった。
「あぁ、事実だ。そして、その話ならもう決着もついている」
「えっ…?」
その時、初めて肥後が口元に「ふっ」と笑みを浮かべたのを、司は見逃さなかった。
「彼女の決断は、とても単純明快で判断も早かったよ。彼女が出した結論はな…」
「か、海軍からのヘッドハンティングを断ったぁ!?」
柳田は、蒼の一言に素っ頓狂な声を上げていた。今日は、蒼が紺野と約束をし、ずっと延期になっていた「第六十二円竜丸事件の論功行賞兼柳田の快気祝い」の日。そこに、今回は「ふぶき乗員救出作戦お疲れ様会」の意味も加わっている。天津号作戦の折、撃沈されたふぶきの乗員たちを自ら短艇を駆って、救出に向かった灰原も、蒼の提案で「あなたも来なさい」と強引に(?) 巻き込まれた形である。
というわけで、ここには蒼と紺野の他、出撃前夜のドッキリで長門を綺麗にハメて大爆笑していた、灰原と柳田の「6分隊の仲良しコンビ」も勢揃いしていたのだが…。当然、蒼以外の三人は顎が外れんばかりに驚いていたのは言うまでもない。
「えぇ、そうよ」
「な、なんでそんな名誉な話断っちゃったんですか!?流石に勿体なさすぎますって」
「そうばい、柳田ちゃんの言う通りばい。それに艦長、たまたま防大ん採用試験に落ちたけん結果的に沿岸警備隊に入っただけで、元々は海自志望やったんでしょう?そん海自ん後継組織である海軍自ら『大佐で来ちゃり』なんて、とつけむなか話やなかと。なんで断ってしもうたとですか、そげん破格んオファー」
灰原も目を丸くする。その様子に、思わず蒼は小さく吹き出した。
「あら、まさかそんなこと言われると思わなかったわ。もしかして、私を厄介払いするいい機会だなんて思ってた?」
「そがんこつ言うとるんやなかですよ!!艦長んこつばみんな大好きやけん、厄介払いやなんて露ほども思うとらんですばい」
灰原はすかさずそう言い返すと、「ばってん…」と付け加えつつ力説した。
「海上自衛官ばなるんが、艦長ん本来ん夢やったとでしょう。もちろん、海上自衛隊が今はもう消滅しとー以上、そん夢そのものはもう叶わんです。ばってん、そん後継組織である日本国防海軍で、『海上自衛官になっとったら、しよったはずの仕事』ばすることはでくる。そん海軍自ら誘うてくれたとに、それば断った理由が分からんっちゃ」
柳田も紺野も、その言葉に真剣な顔で頷く。蒼は三人の部下の顔を見回すと、柔らかな笑みを浮かべた。
「ありがとう、ちゃんと私のことを気遣ってのその反応だったのね。嬉しいわ」
その言葉に、なおも硬い表情を崩さない三人。そんな部下たちを前に、蒼は語り始めた。
「私が断ったのは、まさに防大に落ちて海保大に入ったという自分のキャリアが理由よ。私はそこで自分の運命が変わってから一貫して、海保大時代は海上保安官になるための、海保大が沿岸警備隊士官学校に改組されてからは、軍人と特別司法警察職員を兼務する、沿岸警備隊の指揮官となるための教育を一貫して受けてきた。現場に出てから成し遂げてきた成果や私のキャリアは、全てその延長線上にあるものよ。そしてそれは、純粋な海上軍事組織たる海軍の一員として培うそれとは違う」
海軍と沿岸警備隊では、同じような格好をして同じ現場に出ていても、判断基準や現場の回し方が全く違う。それは蒼自身が、今回の海軍とのいざこざで痛感した部分でもあった。
「今の私は、沿岸警備隊の環境があったからこそ、この若さで一等海佐という異例の階級にまで上り詰められた。ただ、それは私の実力だけで勝ち取れたものだとは思ってないわ。戦後の人手不足で、どんどん若い隊員を上に上げていかなければいけないという、現実的な理由だってあったんだから。それを、額面だけ一佐から大佐に付け替えて、すぐに向こうが期待するような仕事ができるかは、現実的に未知数だと考えたの。まして特例人事なんて、周りの見る目も自ずと厳しくなるに決まっているんだしね」
「それが、断った理由だったんですか…?」
柳田が問いかけたのに対して、蒼は首を振った。
「正確には、断った理由の一つよ。これだけが理由じゃないわ。それ以上に大きかったのは、沿岸警備隊の一員としてのプライドよ」
「沿岸警備隊は、海軍の二軍ではない。あくまで、異なる責任を担い、異なる役割で日本の海を護る使命を持った、別軍種にすぎません」
あの肥後と但馬を前にした会談の場で、蒼は堂々とそう口にした。
「もちろん、お二人がそのような意識で、私に今回お声がけしてくださったわけではないことなど、重々承知しております。恐らく、過去に私が海自志望であったことなども加味してのご提案だったのでしょう。しかし、過去の経緯はどうあれ私はあくまで沿岸警備隊員として教育を受け、沿岸警備隊員としてキャリアを積んできた身です。だからこそ、私は日本国沿岸警備隊の一員として、この日本の海を護ることを今の自分の使命としています。そしてそんな私の経験は、同じ沿岸警備隊の後進のためにこそ、還元されなければならない」
「それに…」と蒼は付け加えた。
「私がありがたくも、異例の内部昇格人事によりふそう艦長の任を拝受してから、まだあいにく8か月しか経っておりません。まだまだ、この艦の仲間とともに成し遂げなければならないことが山ほどある。それを投げ出して、自分だけ海軍に転官するわけにはいきません。だからこそ、このお申し出をお受けするわけにはいかないのです」
「あくまで、沿岸警備隊員としての自分を貫く、ということかね」
肥後の言葉に、蒼は頷いた。
「はい。日本国沿岸警備隊の一員として、この日本国の『蒼海の守護者』となること。これこそが今の私の夢ですから」
自信に満ちた笑みを浮かべながら口にしたその言葉に、肥後と但馬は顔を見合せた。なるほど、どうやらこの女は一筋縄ではいかないらしい。やはり、袖の4本線を身にまとうだけのことはあるようだ。
「蒼海の守護者、か…。その若さでずいぶん大きく出たものだ。ある意味、貴官らしいな」
肥後は呟いた。次の瞬間、その口元には笑みが浮かぶ。
「貴官の考えはよく分かった。だが、沿岸警備隊の一員として誇りを持つからと言って、これ以上縄張り争いはよしてくれたまえよ。我々としてもいらぬ火種を作らぬよう十分配慮するが、もうあんな揉め事はごめんだぞ」
「もちろんです。お互い所属は違っても、同じ日本国防軍の仲間には変わりありませんから。私もいずれ、配置転換で陸に上がることもあるかもしれませんが、自分の船を率いる身である限りは、我が上官の命令とあらばいつでも部下とともに馳せ参じます。それもまた私の使命と心得ています」
その言葉に、会議室の空気は一気に和やかになったのだった。
「そんなやり取りがあったんですか…」
柳田は、予想もしていなかった蒼の独白の内容に、驚きを隠せなかった。灰原も紺野も、ずっと黙りこくったままだ。
「測量長はさっき、私の夢が『海上自衛官になること』だと言ったわね。厳密には少し違うわ。あの時の私の本当の夢は、『日本国民の一人として、日本の海を護ること』よ。海自を志したのは、あくまでもその手段に過ぎない。だから、ある意味その夢はもう叶えてるのよ。やり方が少し違うってだけでね」
蒼はそう言いながら、三人の顔をもう一度見回した。部下たちの表情は、先ほどまでとは全く違う。その眼差しには驚きだけでなく、自分たちの艦の最高指揮官に対するリスペクトの感情が、明らかにこもっていた。
「まぁそういうわけだから、私は海軍には行かないわ。あっちとしては、事前に播磨司令やこっちの人事にも根回しするくらい、本気で迎え入れようとしてたみたいだけどね。私はこれからも、新たな人事発令がない限りは、沿岸警備艦ふそうの艦長よ。安心しなさい」
蒼はそう言うと、一度「パン」と大きく手を叩いた。その音に、思わず灰原たちが目を丸くする。
「はい、それじゃ私のキャリアについての話はここまで。今日はみんなでご飯食べに行くんでしょ?ここからは楽しい話にしましょ。さて幹事、今日はどこの店に行くか決まってるのかしら?」
そう言うと、蒼はそれまでずっと言葉を発していなかった紺野の方に、茶目っ気のある悪戯っぽい視線を向けた。灰原と柳田もそれに倣う。急に自分に向いたフォーカスに、22歳の海士長は一瞬ドキッとしながらも、すぐにスマホの画面を開いて見せた。幹部三人が一斉にのぞき込む。
「…、焼肉食べ放題?」
「はい。ここからちょっと行ったところにあるお店です。この間、たまたま割引クーポンが当たったんです。ちょうど期限も近いですし、この機会に使えたらいいなと」
紺野はそう答えると、蒼の方に視線を向けた。
「今日のこの会、元々は艦長が私一人に奢ってくださるという話だったのに、結果四人分の支払いを引き受ける形になったじゃないですか。だから、少しでも負担軽減できる方がいいなと思って。食べ放題なら、お腹いっぱい食べられますし」
紺野の言葉に、蒼は思わず口元を抑えた。一等海佐という上級幹部である自分にとって、四人分の食事代をまとめて払うことは、そこまで金銭的に苦ではない。だからこそ、「どうせやるなら」と自分から灰原も巻き込んだのだ。だがそれを知ってか知らずか、紺野のこのチョイスはあまりにも人としての配慮が出来すぎている。
「…、紺野。気持ちはとてもありがたいけど、『一番のおすすめを考えておくように』が私からあなたへの艦長命令だったはずよ。その点に関しては忘れてないでしょうね?」
一度呼吸を整えると、敢えてわざと指揮官らしい威厳のある声で問いかける。だが、紺野からの返答はそれにも怯まなかった。
「大丈夫です、忘れてません。ここ、外出許可頂けた時は詩音…、じゃなかった、桜井ともよく行くんです。二人とも大好きなんですよこの店。それもあって選びました」
あぁ、これはもうだめだ。そこまで言われたらもう決壊するしかないじゃないか。紺野の言葉に、蒼は沿岸警備艦ふそう艦長ではなく、一人の「優しく面倒見のいい30歳のお姉さん」へと逆戻りしていた。そしてそれは、どうやら灰原と柳田も似たようなものだったらしい。
「全くもう、この子って子は!!本当にいい子なんだから」
「あー!! 紺野ちゃんってこげなところが本当あいらしかとよね!!」
「いや、いい子過ぎるでしょこの子。そりゃ、艦長や測量長が気に入るのも分かりますわ」
「わ、わー!!三人同時は勘弁してくださいよぉ!!」
幹部のお姉さんたちから、三方向から一斉に頭をわしゃわしゃされて、紺野は思わず声を上げた。輪が解けると、すかさず蒼が追撃する。
「この三人と一緒になったのが運の尽きね、紺野。あなたも知っての通り、うちの幹部はプライベートじゃ別に怖くないけど、あなたみたいないい子に構うのは大好きなの。今日のあなたは単に慰労されるだけじゃないわ。幹部のお姉さんたちから死ぬほど可愛がられる会だから、覚悟しときなさい」
艦長のウインクに、紺野は「は、はいぃ…」と恐縮しきりである。そんな彼女を尻目に、蒼は声のボリュームを上げる。灰原と柳田も笑みを浮かべた。
「さぁ、というわけでせっかくの焼肉食べ放題よ。店員の皆様方に、沿岸警備隊員の胃袋の力、見せつけてやりましょう!!」
「おー!!」
「お、おー…」
再び平和な日常を取り戻した日本の空に、若き乙女たちの元気な叫び声(?) が響き渡ったのだった。
完
【朗報】真行寺蒼の海軍転籍ルート、回避される。
まぁ、ここで蒼一人だけ海軍に行かせてしまうと、他の乗員が全員置いてきぼりになってしまうので、個人的にはこれでよかったんだと思いますね。
警察機関である現実の海上保安庁とは違って、国防軍の第四軍種となっている沿岸警備隊は、同じ海を護る軍隊としてどうしても海軍とは比較されがち。だからこそ「沿岸警備隊は海軍の二軍ではない」という言葉が、この世界では重い意味を持つんだと思います。
さて、いかがだったでしょうか。全26話にわたってお届けしてきた「Neptune~蒼海の守護者~」、今回で完結となります。最後に蒼を艦長のまま留任させ、さらにそこに司も派遣されてくるという展開を作ったので、続編展開の余地も残してあります。まだ骨組みは一部しか作れてませんが、時間が取れれば連載したいですね。
それではお付き合いいただきありがとうございました。また次の作品でお会いしましょう。アディオス!