クロスアンジュ トライブブラザーズ   作:マシンクーガー

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OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


チャプター12 サリアの優雅

『隊長日誌 三月三日ドラゴン出現。我が隊に出撃令が出される。だが、またもアンジュが命令を無視し独断先行。アンジュ単騎にて突撃し目標を撃破』

 

その日の夜、サリアは自室でこれまでの作業内容を記録に残していた。

 

『規律遵守の徹底それが出来ないのであればアンジュをヴィルキスから降ろすべきだと私は考えている』

 

そうサリアはまとめた内容をパソコンに打ち込んで、データを保存しパソコンを閉じた。

そしてまた翌日後…。

 

『隊長日誌、三月四日。アルゼナル外部より入伝あり』

 

アルゼナルの執務室で外部からの入伝をジャスミンがジル達に言う。

 

「“ガリアの南端に到達、しかし仲間の姿は見当たらず。今後はミスルギ方面に移動し、捜索を続ける”。生きてたんだね、あの鼻垂れ坊主” 」

 

「フッ」

 

「タスク…? はっ!」

 

「そうだ」

 

ジルはサリアがある事に気が付いた事に頷く。

 

「アンジュを助けたのがあいつだったなんてね」

 

「じゃあヴィルキスを修理したのはその『騎士さん』だったんだ!」

 

「多分ね。」

 

マギーがそう言うと、サリアがある事を考え、頰を赤くする。

 

サリアは思わず頬赤くして、アンジュとタスクの事を思う描く。

ジルは煙草に火をつけ、一服した後に言う。

 

「ジャスミン、タスクとの連絡は任せたよ。いずれまた『彼ら』の力が必要になる」

 

「あいよ」

 

「で…問題はこちらか」

 

その言葉にやっと本題が来たとばかりにサリアが表情を引き締め、ジルがサリアに向き直る。

 

「アンジュをヴィルキスから降ろせ、と」

 

連日の戦闘でのアンジュの独断専行・命令違反の数々は既に何度も報告しており、遂に我慢の限界にきたサリアはこの招集の前にアンジュをヴィルキスから降ろす旨を議題としてあげていた。

 

ジルの問い掛けにサリアは厳しい面持ちで頷く。

 

「ヴィルキスに慣れてきたことで、最近のアンジュは増長しています。彼女の勝手な行動は以前のような事故を引き起こす可能性もあります。隊の規律と維持の面から考えても、これ以上大事な『ヴィルキス』を任せてはおけません」

 

理路整然とアンジュの解任を要求するサリアにジルはやや考え込み、持っていた煙草の灰が落ちる。

 

「そうなる前に、何とかするのが隊長の役目だろ?」

 

「!!」

 

「お前なら上手くやれる。期待しているよ、サリア…」

 

 

『隊長日誌 三月五日』

 

食堂でエマが何やら叫んでいた。

 

「ありえないわ!人間がノーマの使用人になるなんて!」

 

エマはアンジュがモモカを買い取った事にまだ納得していない様だった。

 

「ノーマは反社会的で無教養で不潔で、マナが使えない文明社会の不良品なのよ!?」

 

「はいはい」

 

アンジュは空になった器を置き、モモカが次の食事を差し出す。

 

「モモカさん! あなたはそれでいいの?!」

 

「はい!わたくし幸せです!」

 

満面な笑顔で言うモモカにエマは思わず呆れかえるのだった。

それを見ていたヴィヴィアンは飲み物を飲みながら言う。

 

「良かったねモモカン、アンジュと一緒に居られて」

 

っとその中でエルシャがため息をする。

 

「ん? どしたのエルシャ?」

 

「もうすぐフェスタの時期でしょ? 幼年部の子供たちに色々と送ろうか迷ってるんだけど…」

 

エルシャが通帳を見て苦笑いしながら言い、それにサリアが聞く。

 

「アンジュのせい? 何とかしなくちゃ…」

 

サリアはそう改めて口にするが、前方から気勢を削ぐような嘲笑が降り注ぐ。

 

「どう、何とかしてくれるのさ、隊長さん?」

 

顔を上げると、前方からロザリーとクリスを引き連れて歩み寄ってくるヒルダの姿がある。三人一緒に行動するのは珍しくはないのだが、恐らく昨夜も三人一緒にいたのだろう。

 

サリアにしてみれば、そこもゾーラの時からの悩みの種なのだが。

 

「どんな罰でも金でなんとかするだろうねアイツ…聞きやしないさアンタの命令なんてさ」

 

アンジュの事を考えているとヒルダがサリアに何やら嫌みそう言い放って。

 

「何が言いたいの?」

 

「舐められてるんだよアンタ。ゾーラが隊長だった時はこんな事なかった筈だけどね現隊長さん?」

 

っと挑発行為の様な発言に何が言いたいの?」

 

遠回しに告げるヒルダにサリアが軽く睨むと、ヒルダは鼻を鳴らす。

 

「舐められてるんだよ、アンタ。ゾーラが隊長だった時はありえなかった筈だけどね、隊長さん?」

 

その指摘にサリアはグッと奥歯を噛み締める。

 

「代わってあげようか? 隊長?」

 

嫌味を向けつつニヤリと笑うヒルダだったが、サリアは憮然とした面持ちのまま席を立つ。無視するようにその横を過ぎり、食堂を後にするサリアをヴィヴィアンとエルシャは心配そうに見ているが、ヒルダはどこか愉しげだ。

 

ヒルダにしてみれば、サリアをからかったことで少しはストレスが発散できたかもしれないが、サリアは逆に心労を重ねるばかりだった。

 

 

 

その後、サリアはジャスミンモールを訪れていた。

 

(みんな、好き勝手ばかり……私だって好きで隊長をしてる訳じゃ…)

 

隊の現状に不満を持ち、サリアにばかり負担がのし掛かる状況にストレスは大きかった。元々クセの強いメンバーに副長として手を焼いていたのに、急に隊長に昇格し、今度はすべてを面倒みなければならなくなった。そればかりか、アンジュとセラがあまりに自分勝手な行動を取ることに、もうストレスの限界に達したサリアは、少し気分転換をしようとある物を持ち出してジャスミンモールに来た。

 

入口で煙管を手に座るジャスミンにキャッシュを無造作に放り投げ、顔を上げると憮然とした面持ちでボソッと告げる。

 

「…いつもの」

 

「一番奥のを使いな」

 

サリアの現状を知っているが故に、ジャスミンも深く聞かずに告げると、サリアは荷物を持って試着室の方へ歩いていった。

 

数分後、ジャスミンモールにアンジュとモモカが来た。

 

 

「いつまで下着で寝かせるわけにはいかないでしょ?」

 

「私は別に構いませんが…」

 

「私が構うのよ」

 

アンジュはそう言い、選んだ服のサイズとモモカの体のサイズを合わせる。

 

「ジャスミン、試着室借りるよ」

 

「一番奥のを使いな」

 

キャッシュを数えるのに忙しいのか、投げやりに応えるジャスミンに小さく肩を竦め、そちらへ向かう。ジャスミンがキャッシュを数えている途中、ハッと思い出す。

 

「…………あっ!」

 

その頃、その試着室にはサリアの姿があった。

 

「愛を集めて光をギュ☆ 恋のパワーでハートをキュン♪ 美少女聖騎士プリティー・サリアン☆ あなたの隣に突撃よ♡」

 

一言で形容するなら異様な光景が狭い試着室の中で繰り広げられていた。魔法少女のコスプレをしたサリアの足元には、彼女が愛読している少女漫画があり、サリアが着込んでいるのは、その主人公の服装だった。

 

サリアは度々、こうやってコスプレをして少女漫画のヒロインになりきることで、ストレスを発散していた。ここ最近は特に過度なストレスを溜め込んでいたので、余計に没頭していた。

 

姿見に映る自分の姿に思わず見とれ、魔法少女の衣装を着こなしてポーズを決めて、悦に入っているように笑う。

 

「シャイニングラァブエナジーで、私を大好きになぁれ♡」

 

テンションが最高潮に達し、姿見の前で決めポーズをするサリアの眼に、試着室のカーテンが開かれた。

 

「………」

 

「………っ!!」

 

アンジュは無表情のままカーテンを閉めた。

 

「姫様?」

 

「使用中だった。」

 

「あ〜…」

 

「み…見られた!」

 

そんなジャスミンにダメだしし、アンジュは下着代のキャッシュを投げてその場を後にした。

 

そんな中、試着室に取り残されたサリアは口をパクパクさせながら混乱していたが、やがて状況を理解し、頭を抱える。

 

「(こんなこと、みんなに知られたら……)」

 

混乱する思考のなか、バカにするように笑うヒルダ達から『コスプレ隊長』というレッテルをはられ、ゾーラからは噂を吹きかけられ、さらにはジルの呆れた面持ちで失望する光景がそれこそ鮮明に過ぎる。

 

ヴィヴィアンとエルシャの生温かい視線―――ココやミランダのどこか引かれる顔………現実になれば、サリアは身の破滅だった。

 

なにより、アンジュにまでこの事が知られるのだけは絶対に避けたい。

 

「……こうなったら」

 

項垂れていたサリアが顔を上げると、鬼気迫る――いや、まるで仇敵を狙うほど思いつめた顔を浮かべるのだった。

 

 

 

 

「力加減どうですか?」

 

「良いんじゃない」

 

風呂場でモモカがタオルでアンジュの体を洗っておると、不意に背後のドアが開く音がし、サリアが現れる。

 

「「「?」」」

 

制服姿のまま、サリアが無言で俯きながら佇んでおり、明らかに不自然だった。アンジュを睨みつけ、腰からアーミーナイフを抜き、一気にアンジュに襲いかかる。

 

「殺すっ!」

 

殺気を剥き出しに襲い掛かるも、アンジュは予測済みとばかりに、突き出されたナイフを持っていた洗面器で刀身を防ぎ、動きを拘束する。歯噛みするサリアと冷静に見やるアンジュやモモカは訳が分からずあわあわと混乱する。

 

「何の真似よ!?」

 

「見られた以上、殺すしかない!」

 

「ただ見られただけで、何でナイフ突きつけるのよ!!それに何で殺されなきゃならないのよ!関係もないのに!」

 

「っ!?…関係…ない!?」

 

アンジュはアーミーナイフが刺さっている洗面器を風呂場に投げ捨てる。

 

「関係ないですって!?私達はチームなのよ!なのにあんたが勝手なことばっかりするせいで!」

 

「後ろから狙い撃って、機体を墜とそうとするような連中の、なにがチームよ!」

 

アンジュはサリアの腕を掴んだまま、湯船へと投げ飛ばした。

 

湯船から起き上がるサリアだったが、投げ飛ばされた拍子に剥ぎ取られたのか、上半身が裸になっていることに思わず胸元を隠す。

 

そんなサリアを一瞥し、剥ぎ取った制服を捨てると、アンジュは鼻を鳴らして言い捨てる。

 

「連中を止めないってことは、あなたも私に墜ちてほしいんでしょ?」

 

その指摘にサリアは一瞬詰まり、アンジュはそれみたことかとばかりに言葉を続ける。

 

「あなた達に殺されるなんてまっぴらよ。だから私は、あなたの命令なんてきかないわ」

 

「いい加減にしなさい!!」

 

その自覚はあったのか、僅かにアンジュを動揺させ、サリアは再度掴みかかり、アンジュも反撃しながら力を入れるも、その反動で足元がおぼつき、縺れ合ったまま湯船に落ちる。

 

顔を出すアンジュにサリアは鼻声で罵倒する。

 

「私が隊長にされたのも! みんなが好き勝手いうのも! 秘密を見られたのも! ヴィルキスを盗られたのも!」

 

アンジュの胸を掴み、強く握り締めるサリアにやり返そうと手を伸ばすも、アンジュの手は空を切り、手応えがないことにアンジュは戸惑う。

 

客観的に…それでいて致命的な言刃にサリアは一瞬にして羞恥と怒りで顔を真っ赤にし、胸元を隠す。ワナワナと震えながら、眼に涙を浮かべ、アンジュを睨みつける。

 

「全部あんたのせいよ!」

 

「はぁぁぁぁ?」

 

あまりに支離滅裂な言いがかりにアンジュも思わず上擦った声を上げる。サリアは悔し涙を浮かべながらアンジュに掴み掛かり、アンジュも反撃する。二人が争っていると、背中から別の声が聞こえた。

 

「およ、なんじゃこりゃ?」

 

「あら、大変」

 

ヴィヴィアンとエルシャが眼前で繰り広げられている光景に眼を丸くする。

躊躇うモモカが縋るようにエルシャに頼んでくる。

 

「あ、あの!アンジュリーゼ様を止めてください!」

 

「ここはお風呂場だもの、溜まっていた汚れは全部洗わないとね♪」

 

おおよその事情を察したのか、エルシャは何かを思いついたように室内に戻り、すぐに戻ってきた。

 

「は〜い♪」

 

手に二本のデッキブラシを持っており、戸惑う面々の前で、エルシャはデッキブラシをアンジュとサリア目掛けて放り投げた。

 

突然降ってきたデッキブラシを何の疑問も抱かずに二人はキャッチし、それを構えると今度はデッキブラシを使用しての激突に変わり、よりヒートアップしてしまった。

 

「あとはお二人で〜♪」

 

エルシャはそう言いながら、モモカを連れてヴィヴィアンと一緒にシャワー室へと行く。

 

「あ!アンジュリーゼ様〜!」

 

モモカが叫ぶ中、二人は暴言を吐く。

 

「このド貧乳がぁっ!!」

 

「黙れ!筋肉豚!!」

 

 

 

 

その後、アンジュとサリアは指令室に呼ばれ、エマ監察官に説教されていた。

 

「基地の中ですら、争わなければ気が済まないの!?」

 

エマ監察官が怒鳴りながら呆れ返ってしまう。

 

「はぁ〜これだからノーマは!」

 

「らしくないなサリア…」

 

「…別に」

 

サリアは呟くと、反省文がサリアとアンジュに渡される。

 

「反省文50枚!明日の朝までに!!」

 

「何で私まで?……っくしゅん!」

 

 

 

 

 

翌朝、寝ているアンジュの所に朝食を運んできたモモカ。

 

「おはようございます、アンジュリーゼ様。朝ごはんのお時間ですよ、反省文なら夜のうちに私が全て書き終えましたので御安心を♪」

 

何とモモカはあの反省文ですら書き終えていたのであった。

 

「?」

 

するとモモカは寝ているアンジュの様子がおかしい事に気づく。

 

「あ、アンジュリーゼ様!?」

 

モモカは直ぐに医務室に運びだし、アンジュが風邪をひいた事に急いで看病するのであった。




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)

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