クロスアンジュ トライブブラザーズ   作:マシンクーガー

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OP:「Valkyrie-戦乙女-」(双星の陰陽師 第2話 - 第13話: OP)


チャプター14 暴虐のビヒモス

 

「かぜぇぇ?」

 

翌日、朝のミーティングルームにヴィヴィアンの声が響く。

 

「湯冷めしたらしいわ」

 

「休んだら罰金いくらだっけ?」

 

「一日“百万”よ」

 

厭らしい笑みで呟くロザリーにサリアが応える。別に声に出して聞くまでもないことなのだが、わざわざ口して笑い合う。

 

「かわいそうにねぇ」

 

「破産しちゃえばいいのに」

 

アンジュさんがいないところで随分好き勝手言い合うヒルダ達。その後、パラメイルを使用しての訓練を終えた第一中隊は帰還し、解散となった。アンジュがいないだけで、特に問題も起きず、訓練を終えた。

 

ヒルダ達がアンジュの容態にまるで祝杯でも上げるかのように喜々として引き上げる。他人の不幸は蜜の味というが、あまりの小ささに呆れしかでてこない。

 

「ご苦労様、ヴィルキス…どう?」

 

「あぁ、サリア。アンジュが使うとボロボロになるから、メンテナンス大変。」

 

「大事な機体なのに…全く。」

 

「仕方ないよね、稼ぎも危険も全部独り占めしてるんだから。」

 

「危険もって?」

 

「う〜ん、整備していると感じるんだ…ライダーの気持ちみたいなものを。」

 

メイはそう言いながら、ヴィルキスの装甲に触れる。

 

「“もう誰も死なせない…ドラゴンの攻撃は全部一人で受ける”……なんてね!」

 

「考えすぎでしょ…」

 

「でも、アンジュがヴィルキスに乗るようになってから、誰も死んでないよね……私たちの部隊♪」

 

「?」

 

「【2月14日】本日の死亡者“0”【2月18日】本日の死亡者“0”……考え過ぎよ…」

 

サリアがそう深く考えながらパソコンを閉じたその時、突如警報が轟いた。

 

【第一種遭遇警報発令! パラメイル第一中隊出撃準備!】

 

ドラゴンの出現に緊迫した空気に包まれるアルゼナルの警報が鳴り響くなか、ヴィルキスを除いた第一中隊のパラメイルがフライトデッキにスタンバイする。

 

ライダースーツに着替えた面々が待機するなか、サリアが号令をかける。

 

「総員騎乗!」

 

一斉にバイザーを下ろし、各々の機体へと駆け出し、飛び乗っていく。

 

「隊長より各機へ!アンジュは休み…今回の作戦は10機で編隊を組むわ」

 

ヴィルキスのいない中、火力が落ちるのは仕方ない。その分をカバーするため、サリアは作戦を思い浮かべながら、第一中隊は大空へ舞い上がる。

編隊を組んで飛行する第一中隊は観測されたシンギュラーまで接近していた。

 

《シンギュラーまで距離2800!》

 

今回の観測地点はアルゼナル周辺に点在する無人島の一つだ。そして、周辺の空間が乱れ、空気が淀んでいる。

 

「全機、セーフティ解除! ドアが開くぞ! 戦闘隊形!」

 

『イエス・マム!』

 

戦闘地域に入った第一中隊、そこにゲートが開きスクーナー級が無数出て来て、そしてそこに角が生えた巨大なドラゴンが出現し。それを見たサリア達は驚く。

 

「でか!?」

 

「あらあら大きいわ~」

 

ヴィヴィアンが思わず驚き、エルシャは苦笑いしながらのん気に言っていた。

 

「サリア、アイツのデータは?」

 

「あんなの、見た事無いわ…」

 

サリアはデータのないドラゴンに悩まされる中でロザリーとクリスが驚く。

 

「見なことないって事は!」

 

「まさか…まさか!」

 

「初物か!」

 

ヒルダは思わず喜びの笑みを上げる。

 

「初物?」

 

司令室でジル達と見ていたエマは聞き慣れない言葉を聞いて首を傾げる。

 

「監察官は初めてでしたか、過去に遭遇のないドラゴンの事ですよ」

 

ジルはエマにその事を説明し、納得させる。

一方戦場では未遭遇のドラゴンにヒルダ達は盛り上がっていた。

 

「コイツの情報持ち帰るだけでも大金持ちだぜ!」

 

「どうせなら初物喰いして札束風呂で祝杯といこうじゃないか!」

 

「アハハ!良いねぇ!」

 

「こちらサリア!アルゼナルから増援を要請する!」

 

『はぁっ!?増援なんて呼んだら取り分減るんだろうが!』

 

「ゾーラなら初物相手でもビビったりしなかったのにね」

 

「キッ!」

 

ヒルダの行動にサリアは舌打ちする。

 

「付いておいで!ロザリー、クリス!」

 

「よっしゃあ!!」

 

「ま、待って!」

 

ヒルダはロザリー、クリスと共にホーンドラゴンへと向かう。

 

「報酬は私達で山分けだよ!」

 

「何か…髪の毛がピリッピリッする」

 

「え?」

 

突然のヴィヴィアンの言葉にサリアは不思議に思う。

 

「ファイア!!」

 

ヒルダ達は襲い掛かるスクーナー級ドラゴンを撃破して行く。

 

「ファイア!」

 

サリア達も一斉にスクーナー級ドラゴンを撃破していく。

 

「思ってたより動きは鈍チン、背中は重装甲…てことは、ビンゴ!ぷよぷよじゃないか!」

 

ヒルダはホーンドラゴンの周りを確認し、露出している腹部を見て弱点を確認する。

 

「狙いは腹だ!一気に決めるよ!」

 

「よっしゃ!」

 

【ピィギヤヤヤヤァァァァァ!!!!!】

 

ホーンドラゴンが雄叫びを上げるとスクーナー級ドラゴン達が一斉にホーンドラゴンから離れる。

 

「どうしたのかしら?」

 

「ピリッピリッ……ピリッピリッピリッ」

 

「貰ったよ!」

 

そしてヒルダ達が大型ドラゴンに突撃しようとしたその時!

 

「っ!! ヒルダ戻れ!!」

 

ドラゴンが咆哮を上げたと同時にと角が光りその瞬間周囲が何かに包まれた。

ヴィヴィアンが警告を促したが時既に遅くヒルダ達の機体が囚われてしまった。

 

それにヒルダ達は苦しむ。

 

「なっ!?」

 

「う…動けねえ…」

 

「一体何なの…コレ!?」

 

三人が混乱している中、サリア達が上空で見ていると。

 

『新型ドラゴン周囲に高重力反応!』

 

「重力!?」

 

オペレーターからの解析結果に驚く。

更にドラゴンが角を光らし、重力範囲を広げ始めた。

 

「まさか!」

 

サリアが驚くと、重力波の紋章が広くなり、サリアを捉える。

 

「各機駆逐形態!防御体制をとれ!」

 

重力によってサリア、ヴィヴィアン、エルシャ、ココ、ミランダの機体が落下していき、地面に着陸してしまう。するとヴィヴィアンが重力の中、ホーンドラゴンの光っている角を見る。

 

「その角だな!皆んなを離せ!」

 

ヴィヴィアンはレイザーの超硬クロム製プーメランブレードを角に向けて投げるが、重力波の影響でブーメランブレードが落ちる。

 

「あぁっ!」

 

さらに重力が上がり、皆んなの機体が地面にめり込んでいく。

 

「う、動けねぇ!」

 

「うっ!た、助けて!ロザリー、ヒルダ!」

 

「う、動けよ!いくら金掛けたと思ってんだ!とっとと動けよサリア!」

 

「だから言ったのに…部隊の全滅はいけない、最悪…我々の機体だけでも捨てて……っ!?」

 

サリアが必死に考えていると、ヴィヴィアンのレイザーが立ち上がる。

 

「ヴィヴィちゃん!?」

 

「皆んなを…離せ!」

 

ヴィヴィアンは仲間を助けようと落ちたブーメランブレードを拾う。

 

「皆んなを…離せぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

ヴィヴィアンはブーメランブレードを投げようとした瞬間、ホーンドラゴンの角がさらに光だし、重力を上げる。ブーメランブレードを投げようとしたレイザーの腕が外れてしまう。

 

「グッ!」

 

「ヴィヴィアン!」

 

【ピィギヤヤヤヤァァァァァッ!!!!!!】

 

ホーンドラゴンは勝利に間近なのか、雄叫びを上げる。

 

「このままじゃ三人が…」

 

サリアはヒルダ達やヴィヴィアン達を助ける方法を深く考える。すると通信機から誰かが咳する音を聞く。サリアはその咳する音に聞き覚えがあった。

 

「ヴィルキス!?……アンジュなの!?」

 

 

 

 

数時間前、アンジュはモモカをアルゼナルに養う為、風邪のままキャッシュを稼ごうとしていたのであった。そんなアンジュにモモカは仕方なくアンジュに暖かい服を着させる。

 

『どうしてもとおっしゃるなら!この格好で行ってください!』

 

なんともライダースーツの上に上着と言うカッコ悪い姿。

そして現在に至りながら、アンジュはヴィルキスを動かしていた。

 

「う〜〜、フラフラする。とっとと終わらせよ…」

 

「来るなアンジュ!重力に捕まるだけだ!」

 

「大丈夫よ…いつも通り私一人で充分だから…」

 

しかしアンジュはサリアの命令を全く従おうともしなかった。そんなアンジュにサリアは歯を噛みしめる。

 

「……全く、どいつもこいつも」

 

サリアはそう呟き、機体のコンソールに拳を当て、アンジュに怒鳴る。

 

「いい加減にしろ!!この馬鹿女!!」

 

「っ!?」

 

「アンタ一人でできるほど、このドラゴンは甘くない!!どいつも勝手なことばかりして!!死にたくなければ隊長の命令を聞きなさい!!」

 

「!?…はい!?」

 

「そのまま上昇!」

 

アンジュはサリアの命令に従い、ヴィルキスを空高く上昇させる。

 

「修正!右3度、前方20!」

 

「え〜っと、右ってどっち?」

 

「逆!」

 

高度を修正しながら、ホーンドラゴンの頭上へと向かう。

 

「そこで止まって!」

 

そしてホーンドラゴンがヴィルキスを睨み、重力波でヴィルキスを落としていく。

 

「何か…落ちてない?」

 

呆けているのか、アンジュは落ちている事に疑う。

 

「やっぱり落ちてる…」

 

「熱でそう感じるだけ!!」

 

「サリアちゃん、まさか!?」

 

「今よアンジュ!蹴れぇっ!!」

 

「ほえ…?」

 

「蹴るのよ!私を蹴ったみたいに!!」

 

サリアの命令にアンジュはヴィルキスの脚を動かす。そしてヴィルキスの蹴りがホーンドラゴンの左角に直撃し、角が折れる。

 

「うぅ!うわぁぁぁっ!!」

 

同時にヴィルキスの右脚が破損し、地面に不時着する。そして角が折れた事により、重力で捕まっていたヒルダ達が解放される。

 

「やっとかよ!」

 

「もう!やってくれちゃって!!」

 

「速攻で仕留めるわよ、突撃!」

 

サリア達がライフルを持って突撃するのであった。

 

 

 

戦闘を終え、基地へと帰還した第一中隊は、戦闘後の収支結果を受け取るべく事務へと駆け込み、報酬として支払われたキャッシュは、予想以上の額だった。

 

「うひょお! こんな大金夢みたいだ!」

 

「ううん、夢じゃないよ!」

 

基本的に収入の少ないクリスとロザリーは眼を輝かせて与えられた給料を凝視している。今まで持ったこともないような札束に感極まっている。エルシャはこれで幼年部の子供達にいろいろと用意してあげられると満足気な表情を浮かべ、ヴィヴィアンは言うまでもなく新しい装備を買おうとはしゃいでいる。

 

「本当、私見たことないよ…夢だったら覚めないでほしい――たたっ」

 

「夢じゃないでしょ?」

 

「なんで私の頬を引っ張るの!」

 

じゃれあいながらも、ココやミランダも両手に抱えるキャッシュの束に興奮を隠せずにいる。ヘタをしたら、一生かかっても稼げないほどの額に思えるのかもしれない。

 

サリアはそんな彼女達の様子を見ながら、自身も与えられた莫大なキャッシュにどこか満足気だった。

 

「……少ない」

 

周りがはしゃぐ中、アンジュは不機嫌気味に呟いた。アンジュに支払われた額は、サリア達に比べて極端に少なく、サリアが苦笑を浮かべる。

 

「仕方ないわね。角折っただけだもの……でも、助かったわ。アンタが来てくれたおかげで」

 

サリアは素直に礼を述べたのだが、そんな情緒もぶち壊すようにアンジュはジト眼で手を差し出し、憮然と言い放つ。

 

「迷惑料…貴女の命令に従ったせいで、取り分減った挙句ヴィルキスが壊れたんだから」

 

事実、アンジュのキャッシュがここまで減ったのは、ヴィルキスを破損させた分の修理代も差っ引かれてのものだっただけに、横で聞いていたナオミは表情を引き攣らせる。

 

「……さっきの感謝取り消しよ」

 

サリアは全力で後悔した。やはり反りが合わない

 

「変な趣味…皆にバラすわよ」

 

「!?一生寝込んでなさい!」

 

「何て酷いことを!」

 

そしてサリアは盛り上がるヒルダ達に声を掛けた。

 

「どう、満足したかしら?」

 

サリアの問いに、ロザリーやクリスはやや躊躇いながらも頷き、ヒルダは憮然と睨む。

 

「色々あったけれど私達はこのチームでやっていかなくちゃいけない。アンジュを後ろから狙うの…もうやめなさい。

そしてアンジュも報酬独り占めやめなさい。アンタは放っておいても稼げるんだから。これは隊長命令よ」

 

「へっ、誰もアンタの言う事なんか聞きやしないって『良いわよ別に』!?」

 

「私の足さえ引っ張らなければね」

 

っとアンジュは予想外に肯定する。

 

「私も良い…かな。今回はティアやアンジュ達が来てくれたお蔭で助かったし…」

 

いつも隠れがちなクリスがそう言う。

 

「ま、まぁ~…アタシはしばらく金がある内は…良いかな」

 

クリスに釣られるようにロザリーも続けて言う。

 

「アンタ達何言いくるめられてるのよ!?」

 

「そ、そういうワケじゃないけど…」

 

「チッ…! 裏切り者」

 

ヒルダは納得できないのか立ち去る。

 

「それじゃあ!行きましょうか!」

 

っとエルシャ達はアンジュを連れて何処かに行ってしまう。グレイスは置いてきぼりになってしまう。

 

女子全員でお風呂に入ろうと提案する。今までのことを全部お湯に流そうという魂胆らしいが、ヴィヴィアンも楽しげにのり、アンジュを捕まえて連行していく。

 

元々アンジュに対しての蟠りも少なかったこともあり、ようやく気兼ねなくできるということかもしれない。その後、アンジュを巻き込んで全員でのお風呂タイムとしゃれ込むことになる。

 

 

 

 

 

翌朝、アンジュはモモカにお召し替えされていた。

 

「全く、酷い目にあったわ。」

 

「でも熱も下がって無事で何よりです……ん?」

 

 

 

「え?これって……」

 

「どうしたの、モモカ?」

 

突然のことに戸惑うアンジュの前で、モモカは空中にウィンドウを浮かばせる。

 

「マナの通信です。でもこれって…これは、皇室の極秘回線です!」

 

ウィンドウに繋がったラインに驚くモモカだが、アンジュの驚きはそれ以上だった。息を呑み、思わずウィンドウを覗き込む。モモカはウィンドウを大きく表示させ、回線を繋ぐ。

 

《モモカ、モモカ聞こえる!?》

 

「シ、シルヴィア様?」

 

ノイズ混じりに聞こえてきた声に、アンジュは眼を見開く。

 

「シ、シルヴィア……!?」

 

久しく聞いていなかった大切な妹であるシルヴィアの声。震える声で呼びながら、回線に近づくと、向こうから切羽詰まった声が響く。

 

『アンジュリーゼお姉様とは逢えた?そこにお姉様はいるの!?』

 

自分の名を呼ばれ、アンジュはビクッと身を震わせるも、声が出ない。だが、その間にも回線から聞こえるシルヴィアの声が上擦ってくる。

 

『あ、離して!助けてお姉さま、アンジュリーゼお姉さまぁぁぁぁ―――』

 

「シルヴィア…!」

 

ウィンドウに手を伸ばそうとするアンジュの前で、回線がシャットアウトされ、掻き消える。伸ばされた手は虚空を彷徨い、モモカは事態に慄きながら口を押さえ、アンジュは妹の悲鳴に呆然と佇んでいるのであった。




ED :「きみをつれていく」(超星神グランセイザー: ED)
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