クロスアンジュ トライブブラザーズ   作:マシンクーガー

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チャプター25 ドラゴンの正体

ある場所に無数の島が浮いていて、その場所に社交場の様な丸くて大きなテーブルが置いてあった、その場所に各国の首相達が集まっていて。

彼らの回りにはアルゼナルを襲撃しているドラゴンの映像が映し出されていた。

 

「ドラゴンが自ら攻めて来るとは…」

 

「それにこのパラメイル、まさかドラゴンを引き連れて?」

 

一人の首相であるエンデラント連合大統領の目に映る映像にはあの不明機が映し出されていた。

 

「シンギュラーの管理はミスルギ皇家のお役目、ジュリオ…いえ陛下。ご説明を」

 

女性の首相であるヴェルタ王朝女王がジュリオにシンギュラーの発生に付いて聞いてきた。

しかしジュリオは頭を傾げながら言う。

 

「それが、アケノミハシラには起動した形跡が全くないのです」

 

「馬鹿な!あり得ん」

 

肥満な首相であるマーメリア共和国書記長がジュリオの説明に納得が行かない事に拳をテーブルに叩き付ける。

 

「直ちにアルゼナルを再建し、力を増強せねば」

 

「だが、そうも行かんのだ」

 

っと年老いた首相であるガリア帝国皇帝がマナで次の映像を映し出す。すると光学兵器を発射する黄金のヴィルキスの映像が映し出された。

 

「この機体…まさか!」

 

「ヴィルキスだ」

 

それにはジュリオを含め各国の元首達は言葉を詰まらせていた。

 

「前の反乱の時に破壊された筈では?」

 

「アルゼナルの管理はローゼンブルム王家の役目。何故放置していた?」

 

それにはローゼンブルム王家の国王は表情を歪めながら黙る。

 

「監察官からは異常なしと報告を受けていた…」

 

「まんまとノーマにあしらわれていたと言う事か、無能め」

 

そう肥満体のマーメリア共和国の書記長は腕を組んで呟く。

 

「これでは一国の王女がノーマごときに誘拐されても無理はない」

 

「むっ?ミスティの事を愚弄するなら、機構とて容赦はせんぞ!」

 

「お二人とも、落ち着いて。」

 

「黙れ小僧!私の娘を拐かしたのは貴様の妹ではないか!」

 

「あれはもう、妹ではありません。」

 

「そんな言い訳が通じるか!この罪人の一族が!」

 

「おやめなさい、今はどう世界を守って行くかを話し合うべき時」

 

ヴェルタ王朝女王が皆にそう言い聞かせ、一人の首相が言う。

 

「ノーマが使えない以上、私達人類が戦うしかないのでしょうか?」

 

っとその事に各国の首相達は思わず戸惑いの声が上がる、そして木の裏で聞いていた一人の男性が立ち上がる。

 

「どうしようもないな…」

 

「え、エンブリヲ様?!」

 

ガリア帝国皇帝が思わず言う。世界最高指導者であるエンブリヲは皆の所に行く。

 

「本当にどうしようもないな…」

 

「し、しかし…ヴィルキスがある以上アルゼナルを再建させるには…」

 

「なら選択権は二つだ」

 

それに皆はエンブリヲに目線が行く。

 

「“一、ドラゴンに全面降伏する”」

 

「「「!!?」」」

 

それには思わず息を飲む元首達、エンブリヲは構わず言う。

 

「“二、ドラゴンを全滅させる…”」

 

「そ!そんな…!」

 

「だから…“三、世界を作り直す”」

 

っとそれにはジュリオが反応する。

 

「え?」

 

「全部壊してリセットする。害虫を殺し、土を入れ替える。正常な世界に…」

 

エンブリヲは肩にのって来た小鳥をなでながら言う。

 

「壊して作り直す…、そんな事が可能なのですか?!」

 

それにエンブリヲは笑みを浮かばせながら言う。

 

「すべての『ラグナメイル』とメイルライダーが揃えばできる。」

 

「素晴らしい!作り変えましょう、今すぐに!そもそも間違っていたのです!忌々しいノーマと言う存在も!奴等を使わねばならないこの世界も!」

 

「馬鹿な!ここまで発展した世界を捨てろと言うのか!?」

 

「では他に方法はありますか?」

 

「それしかない…」

 

「じゃあ、庭の道具を使うと良い。気を付けて、ジュリオ君♪」

 

「お任せ下さい!エンブリヲ様!!」

 

ジュリオはそう言い、エンブリヲと他の首相達は消える。そしてジュリオはマナを解いてミスルギ邸の執務室へと戻っていた。

 

「出るぞリィザ」

 

側に控えていたリィザにそう告げると、ジュリオは彼女を伴って自室を後にした。そんな彼の執務机の裏に盗聴器が仕掛けられてあるなどとは、ジュリオは思いもしなかっただろう。

 

 

 

 

 

「随分と勝手出たなぁ…。“全部壊して新しく作り直す”…か、急がないとな。」

 

タスクはそう呟き、アルゼナルへ向かうためにヴィンセクトに乗り込む。

 

「ん?」

 

すると通信機からアーサーからのメールが届く。タスクはメールの内容を見ていく。

 

“タスク、元気してるか?俺たちは突然の事でアルゼナルへ向かう事となった。お前も急いでアルゼナルに向かってくれ…。それと俺、フェリスと結婚しちゃいました〜♪”

 

「えぇっ!?」

 

メールに写真が添付されている画像が表示される。それは白の五つ紋付羽織袴を着たアーサーと白無垢を着たフェリスが一緒に写っていた。

 

“忙しい事かもしれないが、祝ってくれ♪それじゃあ!”

 

メールの内容を確認したタスクは呟く。

 

「後でアーサーとフェリスに何かプレゼントを考えないとな。」

 

タスクはアーサーとフェリスの結婚祝いの品を考えいたその時。

 

『……♪』

 

タスクの背後からFather・Xが不気味な笑顔で微笑む。

 

「っ!!」

 

タスクは背後から突然の畏怖感に気付き、セレモニアル・ダガーを取り出し、振り向く。しかし、そこに誰もいなかった。

 

「今のは何だったんだ……」

 

アルゼナルへと向かうのであった。

 

 

 

 

 

一方、クラウドブルースカタパルトデッキにはアーサー達がいた。任務はアルゼナルへの航行とそこの司令官であるジルやノーマ達との同盟の事であった。アーサーは自分のフラドーラに新たな武装の取り付け準備をしていると、フェリス達が見送りに来ていた。フェリスはアーサーに手作りのお弁当を渡す。

 

「じゃあ、行ってくる。」

 

「アル、気を付けてね。」

 

「うん、ミントもお利口さんで待ってるんだぞ。もし寂しくなったら、これを俺だと思ってな♪」

 

アーサーはミントに木彫りの鳥を渡す。

 

他にも長男 クリストバルと義姉 セレスティアは生まれたばかりであるクリストバルとセレスの息子 『ヤマト・カレトヴルッフ』を抱いた。するとフェリスがアーサーに優しく抱きつく。

 

「フェリス?」

 

「ちゃんと…帰って来て。」

 

「……行ってきます♪」

 

アーサーがそう言うと、フェリスがアーサーにキスをする。アーサーは何事もなくそれを受け止め、フラドーラに乗り込み、フェリス達へ大声で言う。

 

「必ず戻ってくるから!」

 

武装したアーサーのフラドーラが発進し、それに続くかのようにそれぞれの武装をしたライド達の超星神達が発進する。するとアーサーのフラドーラにトウジが通信してきた。

 

『奥さんから“行ってらっしゃいのキス”してただろ?』

 

「見てたんか…」

 

『全く…この幸せ者が!』

 

『ハハハ♪』

 

『分からないことがあったらいつでも相談に乗ってやるぞ。“同士”として。』

 

エミリーとクサビも通信してきて、アーサーは呆れる。

 

「さて、行くか!!」

 

アーサー達は急いでアルゼナルへ向かう。それを見送ったフェリスは空を見下ろしていると、急な吐き気が彼女へ来た。

 

「……っ!?」

 

フェリスは急いで化粧室へと入り、手洗い場で吐く。

 

「お姉ちゃん?」

 

心配になったミントとクレイン、ランスが駆け付ける。

 

「姉さん、どうしたの?」

 

フェリスは落ち着くと、自身の下腹部に触れる。

 

「……まさか。」

 

 

 

 

 

 

その頃、アルゼナルでは先の襲撃によって復旧作業が続いていた。ジャスミンはブルドーザーを動かし、撃退したドラゴン達の死体を大きな穴へ落としていく。メイと整備班達は生き残った部隊のパラメイルの大修理、マギーは看護師達が負傷した人達の手当て、そしてアンジュ達はヒルダ達と共にアルゼナル甲板部におり、ジルの前に集合していた。

 

「生き残った者はこれだけか……。指揮経験者は?」

 

ヒルダが無言のまま手をあげる。

 

「全パラメイル部隊を再編成する。暫定隊長はヒルダ、エルシャとヴィヴィアンは補佐に付け。」

 

「はぁ!?コイツ脱走犯ですよ!脱走犯が隊長って!?」

 

「サリアで良いじゃないですか!」

 

尚も食い下がる。余程ヒルダの裏切りが許せないのだろう。

 

「アイツには…命令違反で反省房だ。」

 

「文句あるなら、アンタがやれば?」

 

それまで大人しくしていたヒルダが、気だるい感じでロザリーやクリスに振り返った。

 

「し、司令の命令だし、仕方ないし認めてやるよ。な、クリス?」

 

「う、うん!」

 

慌ててそう言い繕うロザリーにクリスが同調する。こうなるだろうことは予想していたとはいえ、ヒルダは面白くなさそうにそっぽを向いた。

 

「パラメイル隊は部隊編成の後、警戒態勢を張れ。」

 

「《イエス マム!》」

 

総員敬礼を返すと、解散する。命令を下したジルは一服するためだろうか、いつものようにタバコに火を点けた。そして、懐から一枚の紙を取り出すとそれに目を走らせる。

 

「“壊して作り直す”…か。」

 

「ねぇ、私の謹慎……終わったのよね?」

 

不意に、声がかけられる。振り向くと、そこにいたのはモモカを従えたアンジュであった。アンジュは確かめるようにジルに問う。

 

「…あぁ。」

 

「じゃあ全部教えて……約束でしょ?」

 

「このクソ忙しい時にか?」

 

ジルが鬱陶しそうにタバコの煙を吐いた。

 

「皆んなが助かったの…誰のおかげ?」

 

少しの間その場を沈黙が包んだ。が、すぐに、

 

「良いだろう…但し“侍女”は無しだ。」

 

そう切り捨てられ、モモカが「あうぅ〜…」と本当に悲しそうな声を上げた。そしてアンジュはジルの後をついていく。

 

「おい!どこ行くんだ!?このクソ忙しい時に!」

 

そんなアンジュに、ヒルダが毒づく。が、二人の歩みを止めることにはならなかった。

 

「あれ?ヴィヴィちゃんは?」

 

ヒルダの横にいたエルシャがその時始めて、この場にヴィヴィアンがいないのに気づいたのだった。

 

 

 

大破した居住区にあるサリアとヴィヴィアンの私室。ヴィヴィアンがいつも寝床にしているハンモックがグラグラ揺れると地面に落ちた。

 

「(いったい〜!落ちてる、何で?……うわぁ!寝過ごしんぐ!)」

 

寝惚けた様子でヴィヴィアンが呟く。招集がかかっていたにもかかわらず私室で寝ていたらしい。いい加減というか大物というか、流石はヴィヴィアンであった。

ゆっくり目を開けながら、まだ完全に覚醒してないためか周囲を見渡す。と、時計が目に入ったのだろうか、慌てて起き上がったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

アンジュがジルに連れられ、行き着いた場所はシャワールームが崩壊した浴場であった。

 

「何でお風呂?」

 

「秘密の話は曝け出してするもんだ。で、何から聞きたい?」

 

「最初からよ。『ドラゴンとあの女』『私のパラメイルとお母さんまの歌』『あなたとタスクの関係』『“グランセイザー”と名乗る12人』…全部よ。」

 

アンジュは確かめたい事を言い、ジルは話す。

 

「分かった……“昔々、あるところに神様がいました。繰り返される戦争とボロボロになった地球に神様はうんざりしていた…。”」

 

「は!?何の話!?」

 

「初めから全部だろ?」

 

ジルはそう言い、話を続けていく。

 

 

“平和、優愛、平等…口先ではビジネークを謳いながら、人間の歴史は戦争、憎悪、差別の繰り返しです。

それが人間の本質、何とかしなければ、いずれ滅んでしまう…そこで神様は、新しく創ることしました…【新しい人類】を。

争いを好まない、穏やかで賢い人間…あらゆる物を思考で操作する高度情報化社会テクノロジー 『マナ』 凡ゆる争いが消え、凡ゆる望みが叶い、凡ゆる物を手にすることが出来る理想郷が完成したのです。

あとは、新たな人類の発展を見守るだけのはずでしたが、生まれてくるのです。神様が何度操作しても、何度創り直しても、何度システムを変えようとも、マナを使えない女性の赤ん坊が古い遺伝子を持った突然変異が現れた。突然変異の発生は、人々を不安に駆り立てました。

ですが神様は、この突然変異を逆に利用することにしたのです。彼女達は世界を拒絶し、破壊しようとする反社会的な化け物である『ノーマ』だと、人々に植え付けたのです。

マナを持つ人々は、差別できる存在がいることに安堵し、彼らの社会は安定しました。”

 

“こうしてマナの世界は安定し、今度こそ人類の繁栄の歴史が始まるはずでした…しかし、それを赦さない者達がいました。

『古の民』と呼ばれる者達です。彼らは突然世界から追放された『マナ』が使えない古い人類の生き残りの事です。彼らは何度も反乱を起こした。自分達の居場所を取り戻すために、何度も神様に挑み、その度に神様の怒りに触れてしまい、古の民は虫けらのように殺されました。それでも彼らは諦めることなく、仲間達の死を乗り越え、永きに渡る戦いの末、遂に手に入れたのです。破壊と創造を司る機械の天使『ラグナメイル』を。”

 

 

ラグナメイルと言う言葉に、アンジュは気がつく。

 

「それがヴィルキス…」

 

 

“これで神様と対等に戦える…古の民はそう喜び、ヴィルキスに乗り込んだ。だが、彼らにはヴィルキスは使いこなせなかった。『鍵』がかかっていたのさ.....虫けら如きが使えないようにな、古の民は絶望し、ヴィルキスを封印した。残された仲間もあと僅か…このまま滅びようとしていたまさにその時、世界の果てに送られたノーマが、パラメイルに乗ってドラゴンと戦わされていると知ったのは。

そして出会った。”古の民”と”ノーマ”…捨てられた二つの人類が。彼は手を組み、鍵を開く者の出現を待った…そして、ヴィルキスを扱えるノーマがついに現れた…アレクトラ・マリアフォン・レーベンへルツ…王族から生まれた初めてのノーマだ。”

 

「アレクトラ・マリアフォン・レーベンヘルツ…聞いたことがあるわ、確かガリア帝国第一皇女だった。でも、10歳で病死したって…」

 

「バレたのさ…ノーマとね。」

 

“アルゼナルに放り込まれ、自暴自棄だったアレクトラ。彼女の高貴な血筋と指輪が、ヴィルキスの鍵を開いた。彼女の元に、多くの仲間が集まった…・ヴィルキスを導く紅蓮の聖騎士、ヴィルキスを守る紫電の騎士、ヴィルキスと戦う琥珀の戦士、ヴィルキスに知らせる紺碧の諜報員、ヴィルキスを治す深緑の甲冑師、ヴィルキスを強くする漆黒の巨人、ヴィルキスと駆け巡る純白の天馬、医者、武器屋、犬。始まったんだ。捨てられた者達の逆襲…『リベルタス』が。”

 

ジルは過去の出来事を話し終える。

 

「地獄のどん底で、私は使命を得た。“この作り物のクソッタレな世界を壊す”と言う使命をな。だが、私には足りなかった…。全部吹っ飛んでしまった…右腕も仲間も全部…。だが、復讐を終わらせるわけにはいかない…死んでいった仲間のためにも…。そこにアンジュ、お前が現れたんだ。」

 

「っ!?」

 

ジルはアンジュを見る。その一方、反省房で悲しき表情でヴィルキスに選ばれなかった事で悔やむサリアは呟く。

 

「ジルの嘘つき…私じゃ…ダメだったのね…。」

 

 

 

 

「そして…“アーサー”と名乗る者。アイツの乗っていた赤い機体はかつて、『ヴィルキスの聖騎士』であった者が使っていた。あの時は分からなかったが、西十郎やヒルダを運び込んでくれた黄と青の機体がこのアルゼナルへ来て思い出したよ。フラドーラ…元の名は『ガルーダ』。覚えていないか?」

 

「!!」

 

アンジュは最初の出撃でであった赤い機体を思い出す。

 

「(あの赤い機体…私を助けたのは、アーサー!?)」

 

「ヴィルキスの鍵は開いた。お前が壊すんだ、アンジュ…あの歌でこの世界を。」

 

アンジュは全ての話の辻褄が合わさったかのように、指輪を見る。

 

「この指輪を戻したのは…あなただったのね。」

 

「そうだ。」

 

「私を生かしたのは…あなたの復讐の復讐のため…。そのリベルタスのため…」

 

「その通りだ。お前には強くなって貰わなければならなかったからな」

 

「皇女 アレクトラ…か。あなたには感謝してるわ。」

 

「?」

 

「あなたのおかげで私がどれだけ世間知らずで、甘ったれで、人生をなめていたのか、思い知ることが出来たわ。だから…答えはノーよ。」

 

「ほぉ…?」

 

「神様とかリベルタスとか百歩譲って本当だとしても、私の道は、私が決める。」

 

「それがどんなに崇高な使命でも、自分で見て、自分で決める。誰かにやらされるのは御免なの」

 

「では…リベルタスには参加しないと?」

 

「そうか…」

 

アレクトラが分かったかのように、浴場から去ろうとした時、アンジュは肝心な事がまだ話されていない事に気づく。

 

「そういえば、今の話…ドラゴンが出てきてないけど…。」

 

 

 

 

「何か…背が伸びた気がする? 成長期かな?」

 

しかしその時に自分の身体に異変が起きている事にまだ気が付いていない。

そこにエマが通り過ぎて、ヴィヴィアンは気づく。

 

「あ!エマ監察官だ! おーい!」

 

「っ!? え!エマ監察官だ〜〜〜〜!!!」

 

悲鳴を上げながらエマはそのまま気を失い、慌ててヴィヴィアンは駆け寄る。

 

「うわ!大丈夫…って!うわ!」

 

ヴィヴィアンは自分の手を見て驚く、それは全く自分の手じゃない何かの手だった。

 

「何じゃこりゃ?! …うえ!」

 

っとヴィヴィアンは目の前にあった鏡を見て驚く。今のヴィヴィアンは人ではなく『ドラゴン』だったからだ。

 

「これあたし~!!?」

 

「なに?今の」

 

偶然に近くに居たパメラ達が駆け寄り、ドラゴン態のヴィヴィアンを見て悲鳴を上げる。

 

「「「うわあああああああ!!!」」」

 

『(うわ~~~!!!)』

 

ヴィヴィアンも慌ててその場を離れて行き、パメラがすぐに無線で基地内に知らせた。

 

そして今の時間帯となり、臨時司令部で指揮を暫定副隊長のヒルダは各自に指示を与えていた。

 

「ロザリーとクリスは居住区、ココとミランダは整備区、エルシャはサリアを出してジャスミンモールを捜索」

 

「イエス・マム」

 

「他は此処で警備、ヴィヴィアン?ヴィヴィアンは何処?」

 

ヒルダはヴィヴィアンが居ない事に問い、エルシャはそれに答える。

 

「それが部屋にも居なくて…」

 

「何処に行ったんだろう」

 

それに皆は頷いて動く。

 

その頃ヴィヴィアンは何とか食堂の方に逃げ切っていた。

 

『はぁ~お腹空いた~…、う~…何でこんな事に?』

 

すると厨房からなにやら良い匂いがし、それにヴィヴィアンはつられて行く。

目の先には土鍋にカレーが入れてあった。

 

『やっぱりカレーだ~! いっただっきま~す!』

 

っが土鍋を持った瞬間につぶれてしまい、それにヴィヴィアンは頭を傾げる。

 

『あれ?、どうなってるの? あっアタシ今この状態だった』

 

自分の今の姿を忘れる所だったのか頭をかきながらつぶやいてる中でアーサーが見つける。

 

「見つけた!」

 

それに突然の声にヴィヴィアンが振り向く。

 

「いたわ!」

 

食堂に来たサリアとエルシャがライフルを構える。

 

『(サリア!エルシャ!)』

 

ヴィヴィアンは悲鳴を上げながら食堂の外へ飛び立つ。

 

「追うわよ!」

 

ヴィヴィアンは慌てながらアルゼナル上空を飛んでいると、

 

『(アンジュ)』

 

『♪〜♪〜』

 

「これって…!?」

 

「♪〜♪〜(どうしてこの歌を…?)」

 

「何やってんだ、あの馬鹿!」

 

バアァンッ!!

 

「うわぁっ!!殺す気か!あの糞アマ!」

 

「♪〜♪〜」

 

「アンジュ!離れなさい!」

 

「ジル…!?」

 

「ここでクイズです。“人間なのにドラゴンなのってだ〜れだ?”あ!違うか…“ドラゴンなのに人間”…?あれ…あれれ?意味…分かんないよ」

 

自分がドラゴンだった事に戸惑うヴィヴィアンは泣いて混乱している中で、アンジュは優しく声を掛ける。

 

「分かったよ私は…、ヴィヴィアンだって。おかえり、ヴィヴィアン…。」

 

「あ、有難う…アンジュ、分かってくれたの…アンジュだよ」

 

っとヴィヴィアンはアンジュに抱き付いて泣きつき、後からやって来モモカ達今の光景に目を奪われる。

 

「アンジュリーゼ様…」

 

「どうなってんだよ?」

 

「今、ドラゴンからヴィヴィアンが出て来た様に見えたけど……」

 

そこにマギーがやって来て、ヴィヴィアンに麻酔を撃ちこみヴィヴィアンを眠らせて、マギーはヴィヴィアンを抱いてその場から去って行く。

 

見送ったアンジュはアルゼナルの抉られた場所に捨てられているドラゴンの死体の山を見る。その時、アンジュはヴィヴィアンの言葉を思い出す。

 

 

『“人間なのにドラゴンなのってな〜んだ?”……“ドラゴンなのに人間…?”……』

 

 

「っ!? 」

 

「アンジュリーゼ様〜!」

 

そしてジャスミンが死体を集めた所でガソリンをまき、ライターに火をつける、っとバルカンがアンジュ達に向かって吠え、それにジャスミンは振り向く。

 

「来るんじゃないよ!」

 

そう言ってジャスミンはライターを死体の山に投げ、死体を燃やし始めた。

アンジュ達は燃えている死体に驚きの光景を目にする。ドラゴンの死体の中に人間の姿も紛れていた。

 

「何…これ?」

 

「ドラゴンが…人間に」

 

その光景に皆がくぎ付けられてる中で煙草を持っているジルが来る。

 

「よくある話だろ?『化け物の正体は人間でした』…なーんて」

 

それにアンジュは息を飲み、再びドラゴンを見る。そして今までの事を思い出す。自分がドラゴンを殺し……そして倒していく光景に。

っとアンジュは思わず口を抑え、地面に向けて嘔吐する。

 

「う!うえぇぇぇぇ!?!」

 

「!!? アンジュ!!」

 

「アンジュリーゼ様!!」

 

タスクとモモカが心配する中でアンジュの頭の中は混乱していた。

 

「私…人間を殺していた…? この手で?…この手で…!?」

 

タスクと出会った島で、ドラゴンをナイフで刺した光景……本来ドラゴンのイメージが血まみれの人間へと変わっていく。

 

それにジルは煙草を吸い、吹かしながら言う。

 

「気に入ってたんだろ?ドラゴンを殺して金を稼ぐ…そんな暮らしが。」

 

そしてアンジュはジルを睨みながら怒鳴る。

 

「くたばれクソ女!!!もうヴィルキスには乗らない!!ドラゴンも殺さない!!! 『リベルタス』なんてくそくらいよ!!!」

 

その事にサリアはアンジュが知らないリベルタスを知っている事に思わず反応する。

 

「『神様』に買い殺されたままで良いなら、そうすればいい」

 

そう言い残してジルは去って行く。この時アンジュはこの時に決心した、アルゼナルの司令であるジルを信用する事は出来ないと…。

 

 

 

 

 

ジルが臨時司令部に戻って行く所だった。

 

「『神様』か…」

 

っと誰かの声が聞こえ、ジルは足を止めて振り向くと、そこにはエンブリヲが立っていた。

 

「私は自分から名乗った事は一度もないぞ? 『創造主』と言う意味であれば…正解かもしれんが」

 

世界最高指導者がアルゼナルに居た事にジルはすぐさまマグナムを取り出してエンブリヲに撃ちこむ、しかし弾丸はエンブリヲの身体をすり抜ける様に後ろに木に当たり、ジルはエンブリヲを睨む。

 

「エンブリヲ…!!!」

 

「怒った顔も素敵だなアレクトラ…、今は司令官のジルか? ん?…おやおや、まさかあなた方来るなんてな…」

 

っとエンブリヲは違う方向を向いて笑みを浮かべ、それにジルはその方向を見ると西十郎の他に、全身をローブとフードで覆われた二人の男性と女性がやって来た。

 

「お前らは…!?」

 

「お久しぶりですね…“魔王 時沢アルト”」

 

「お前もな…エンブリヲ。」

 

「マリアンヌ様も……相変わらず凛々しくお美しい。」

 

「その声で私に褒め言葉を聞かせないで…。」

 

するとマリアンヌと名乗る女性の後ろから赤いマントを羽織り、仮面を付けた白騎士も現れる。白騎士は懐からレイピアを抜き、二人を守ろうと構える。

 

「何故です?せっかくの【弟】が実の姉と話しているのに?」

 

三人の衝撃的な会話にジルは驚きの表情を現すのであった。

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