尚、今回の話で重要なキーワードが出てきます。
三人の会話を聞いていたジルは衝撃の言葉に混乱していた。
時沢アルトとエンブリヲが義兄弟関係だった事。自分の知らない事にジルはマリアンヌに向かって問う。
「おい貴様!お前がエンブリヲの姉だと!?」
「えぇ…貴方は本当のエンブリヲを知らない。いえ…知らな過ぎるのです。エンブリヲ、あなたは何故ここにいるのです?」
「私はここにはちょっとした用で来ている。だが姉さん達がここにいる事に…少し誤算だったがな。」
「貴方の思い通りにはさせないわ。」
「と言うわけだ…エンブリヲ。」
アルトは懐から金属の筒の様な物を取り出すと光の刃を伸長させた。白騎士も無言のままレイピアをエンブリヲに向ける。
「相変わらず義兄さんは怖い人だ♪もしかして…昔の事をまだ根に持っているのか?」
「黙れ…その口で私の事を義兄と呼ぶな。この裏切り者が!」
「おや?裏切ったのはあなた方二人では?」
「私は忘れないぞ…貴様が未来を照らす光であるラグナメイルを…自分の思うようにし、それを使って【調律者】と名乗り始めたあの日から!」
「そう言う貴方こそ…【崩壊者】と言うふざけた渾名は?」
「関係ないだろ…お前には!それに“彼”が本来あるべき記憶を呼び覚ませば、お前は“彼”を怒らせ、この世界は忽ち変革される。例えそれが全ラグナメイルが束になってもだ!!」
光剣を構え、白騎士と一緒にエンブリヲに向けると、ジルがエンブリヲにマグナムを向ける。
「どけ!エンブリヲはこの私が殺す!!」
「無理です。貴女にはエンブリヲは殺せません…何故なら貴女はーーー」
すると何処からか、マナの映像が表示される。
『こちらは、ノーマ管理委員会直属、国際救助艦隊です。ノーマの皆様、ドラゴンとの戦闘ご苦労様でしたこれより、皆さんの救助を開始します』
「これは貴方が?」
「フフフ…その通りだよ。」
「後で現状が露わになりますよ。」
「どう言う意味かな?」
「すぐに分かりますよ…」
マリアンヌとアルト、白騎士とエンブリヲはその場から消える。
「現れたら、後でたっぷりと聞かせて貰うぞ!(確か、アルトと言ったな。奴が言っていた“彼”…ラグナメイルが束になっても勝てない。そのような者が存在しているのか?なら答えは簡単……利用するまでだ!!)」
ジルはすぐに臨時司令部へと向かう。そして大使館の横にある甲板部から海を見上げるアルトとマリアンヌ。
「(エンブリヲ…いい加減現実を受け入れろ。お前が築き上げたものなんて、所詮はこうなるんだ。」
「あなたはクラウドブルースに戻り、この事をアリマ司令と評議会に報告して…ついに『新造人間』達が私達に宣戦布告」
「母様…御意に。」
白騎士はマリアンヌの命令に従い、その場から消える。
「本来なら、ここに来るアルトリウスにこれを渡したいが…。」
アルトは懐からある小型カプセルを取り出す。そのカプセルに入っている水色の液体の中、不気味なゲル状の物体が揺らめいていた。
「それを無理に彼に返していけない。時が来るまで……。」
「そうだな。“調律”、“崩壊”、そして『調和』を齎す運命に導かれし者……私はお前が成すべき使命と6000万年前の“記憶”が蘇るのを待っているぞ、我が友 アーサーよ。」
一方、突然委員会の艦隊が海域からやってきて、その放送を聞いていたアンジュ達、その放送を聞いていたモモカは嬉しながらアンジュに言う。
「アンジュリーゼ様、助けです! 助けが来ましたよ!」
「耳を貸なよ、戯言だ。」
「対空防御体制」
「「「イエス マム!」」」
「アルゼナル 対空兵器を起動!」
「やれやれ…平和的に事を進めたかったと言うのに。」
「旗艦 エンペラージュリオ一世より全艦艇へ。たった今ノーマはこちらの救援を拒絶した。これは我々…嫌、全人類に対する明確な反逆である。断じて見過ごす訳にはいかん!全艦攻撃開始!」
「小娘共、来るよ!」
「え?」
「クソ!遅かったか!無事でいてくれ、アンジュ!」
「攻撃して来やがった!」
「救助だなんて嘘だったんだ…」
『諸君…これが人間だ。奴らはノーマを助けるつもりなどない。物のように我々を回収し、別の場所で別の戦いに従事させるつもりなのだ。それを望む者は投降しろ。だが、抵抗する者は共に来い。これより、アルゼナル司令部は人間の管理下より離脱。反攻作戦を開始する。作戦名は…【リベルタス】。』
『志を同じくする者は、武器を持ち、アルゼナル最下層に集結せよ。』
「お前達はどうする?」
「共に参ります。司令と」
「サリア、アンジュを必ず連れて来い。」
「分かってるわ…」
「いつの間にこんな…」
「パメラ、操縦席に座れ」
「ヒカルはレーダー席、オリビエは通信席。全システム起動、発進準備だ。」
「「「イエス マム!」」」
「反抗ってどういうことだよ!」
声を上げたのはロザリーだった。
「司令に従って死ぬか、人間共に殺されるか選べってことでしょ」
ヒルダがインカムをつけながらそう答えた。そして、
「ヒルダ了解。指揮下に入ります」
インカムに向かってそう告げた。恐らく通信先はジルか、通信席にいるオリビエだろう。その回答に、ロザリーとクリスは驚いてヒルダを見た。
「人間たちには怨みも憎しみもある。反旗を翻すにはいい機会さ。それに、もうすぐ合流するんだ。反る理由なんかないだろ?」
『間もなく敵の第二波がくる。パラメイルで迎撃せよ』
「イエス、マム」
指揮下に入った理由を二人に説明した後で、ジルからの指令を了承するとヒルダは通信を切った。
「私も行くわ、ヒルダちゃん」
声をかけられ、ヒルダとロザリーとクリスの三人が振り返った。
「護らなくちゃね、大切なものを」
そこにいたのは、決意を固めた表情のエルシャだった。そしてその周りには、彼女の言うところの大切なもの…幼年部の子供たちが十重二十重に彼女を囲んでいた。
「人間に刃向かって、生きていけるわけないでしょ!」
そう叫んだのはクリスである。が、
「やってみないとわからないさ」
ヒルダが不敵な笑みを浮かべた。もう随分、いつもの調子が戻ってきたようである。
エルシャが同意すると、子供たちが喜んだ。
「そーゆーことさ。そうだろ、アンジュ?」
ヒルダが同意を求めるように振り返った。が、
「あ…?」
そこには先程まで確かにいたはずのアンジュの姿はなかった。
「ヴィルキスが最優先だ! 弾薬の装填は後回し! 非常用エレベーターに載せるんだ!」
整備デッキ、メイの指示が飛ぶ。その指示の下、整備班の隊員たちは一丸となってパラメイルの修理と補給を行っていた。
「メイ、発進準備は!?」
そこに、ライダースーツに着替えたヒルダたちがやってきた。
「えっ? ああ、いつでもいけるよ!」
メイが答える。ここでもヒルダ復帰の好影響か、メイの表情は先程までと違って非常に明るかった。声にも張りがある。と、
「あたしらもね」
彼方から声が上がった。ヒルダたちが視線を向けると、生き残った第三中隊の面々が同じようにライダースーツに着替えて、ヒルダたちに向かって敬礼した。
「ヒルダ隊長。ターニャ以下五名、出撃準備完了です!」
「よし」
頼もしい援軍に、ヒルダが満足げに頷いた。一方その頃、姿の見えなくなったアンジュはと言うと、サリアに後ろからライフルを突きつけられ、地下へと下りているところだった。
『第一中隊、出撃!』
オリビエの号令の下、オールグリーンとなった整備デッキで第一中隊が出撃し始める。まずは、新たに編入された五名が空へと舞い上がった。
「マジで人間と戦うのか?」
ロザリーが不安を口にする。パイロットスーツに着替えてここまで来たものの、やはり不安は拭いきれないのだろう。と、
「何、あれ?」
半壊している整備デッキから空を見ていたクリスが何かを見つけて指差した。ロザリーも視線を向けると、青い空を埋め尽くすかのように小型の何かが無数に浮かんでいたのだ。
円盤状のそれは暫く浮遊していたが、遠隔によるスイッチでも入ったのか上下が展開し無数の刃が飛び出た。そしてそれが高速回転して嫌な機械音を上げる。まるで空中浮遊する丸のこのようだった。
と、それが次の瞬間には降下してきてアルゼナルの地表に次々に突き刺さって削っていく。その影響で、整備デッキの一部が爆発、炎上した。
「!…退避!」
ヒルダが慌てて指示を出してその場から離れる。そのため人的被害はなかったものの、噴煙が収まった後の整備デッキには瓦礫が散乱してすぐには仕えない状態となってしまっていた。
「チッ!」
思わず舌打ちするヒルダ。
『た、隊長!』
そんなヒルダに通信が入った。
「どうした、ターニャ」
ヒルダが応答する。と、
『空に、空一面に未確認機が!』
先に出て迎撃に当たっているターニャたちが件の小型円盤と戦闘しながら、応援を要請するかのように叫んだ。そのうちの一機、イルマの乗るパラメイルが小型円盤から発射されたワイヤーに絡め取られて自由を奪われる。
「た、助けてー!」
恐怖に顔を引きつらせながらイルマは助けを求めたが、それは実ることなくイルマは無理やり空域を離脱させられたのだった。
『隊長! イルマが、イルマが連れて行かれた!』
「連れて行かれた…? どういう」
詳しい状況をヒルダが聞こうとしたその時だった。周囲が一瞬で真っ暗になったのだ。何が起こったのか…それは一足先に艦に乗り込んでいたジルたちが把握していた。
「発電システム、反応消失。基地内の電源、全てダウンしました」
「補助電源機動。攻撃による損傷か?」
「侵入者による攻撃です!」
状況確認のために尋ねたジルにオリビエが答えた。遂に到着してしまったのだ、人間たちの先鋒隊が。そしてそれによって、惨劇がそこかしこで繰り広げ始められた。
ジャスミン・モール。
つい先日までは大勢の隊員たちの憩いの場として賑やかだったここも、今では瓦礫の山に埋もれかけた廃墟になっていた。その中で、逃げ遅れた隊員たちが一箇所に集められ、跪かされて両手を頭に置かされている。そんな彼女たちを抑え込むように、何人かの武装した兵士たちがその周囲を囲んでいた。隊員たちは強要されているのか皆一言も喋らないものの、その表情は恐怖で満ちている。
そんな中、武装した兵士の一人がウインドウを開きながらそこに記された情報を滑らせていた。そこにあったのは、メイルライダーたちの一覧表だった。
「該当者、ありません」
その兵士がウインドウを閉じる。メイルライダーたちにとっては幸いだったが、兵士たちにとっては不幸なことにお目当てのメイルライダーはその隊員たちの中にはいなかった。
「本当に、殺すんですか?」
ウインドウを閉じた兵士が傍らの兵士に尋ねる。言葉遣いから、恐らく上官なのだろう。
「第一目標、アンジュリーゼ。第二目標、ヴィルキス。第三目標、メイルライダー数名。それ以外は処分だ」
何の慈悲もなくその兵士はそう告げると銃を構える。そして何一つ躊躇なく発砲し、処分して行く。するとそこに西十郎が現れ、閃光の如く煌めきで兵士達を無残な姿へと変えた。
「……ん」
すると西十郎が海の方を向く。
「やっと来たか。」
『敵がアルゼナル内部に侵入! 襲撃目的は、人員の抹殺! 総員退避! 逃げてーっ!』
パメラの悲痛な通信がアルゼナル全域に響き渡る。その間も、火炎放射や銃撃などで隊員たちが次々に若い生命を散らしていった。
「エルシャ!」
整備デッキでは通信を耳にしたエルシャが慌てて走り出した。その彼女をヒルダが呼び止める。
「ゴメン、すぐ戻るから!」
一瞬だけ足を止めて振り返ってヒルダにそう答えると、エルシャはすぐに再び走り出した。
「ったく!」
不満げな表情になって吐き捨てるヒルダ。と、
『デッキ上の各員に告ぐ!』
ジルからの管内放送が響き渡った。
『敵の狙いはヴィルキスだ。対象の地下への運搬を最優先事項とせよ!』
「整備班集合!」
ジルの通信を聞いたメイが整備班に集合をかけた。
「ヴィルキスは手動で降ろす!」
『イエス、マム!』
メイが判断を下すと整備班はすぐさま手動降下の準備に入り始めた。が、そうしようとした整備班の一人が不意に横から発砲されて絶命する。とうとう、整備デッキにまで攻めてきたのだ。そして時を同じくして医務室前。そこでも銃撃戦が繰り広げられていた。
「重傷者の搬送が最優先だ! ちょっとぐらい内臓が出てても我慢しろ!」
瓦礫に身を隠してライフルで兵士たちを牽制しながらマギーがそう指示を出す。その指示に従い、ここに身を寄せていた隊員たちは重傷者から搬送していた。
『(ったく、きりがないね!)』
ドンパチをしながらマギーが内心で悪態をついた。こちらは一人で向こうは数人。状況が不利なのは誰の目にも明らかだった。
今更弱音を吐くわけにもいかず、マギーは辛抱強く応戦を続けていた。と、
「助けて私、ノーマじゃない!」
パニックになっているのだろうか、助けを求めてエマが銃弾飛び交う中、兵士たちに駆け寄ろうとする。
「バカ!」
マギーが飛び掛ってエマを押さえ込む。その直後、その拍子に宙を舞った、いつも彼女が被っている帽子の中心を弾丸が正確に撃ち抜いた。
「殺されたいのか!」
マギーが吐き捨てた直後、その穴の開いた帽子が目の前に転がり、エマは顔を引き攣らせた。
「チッ!ここはもうダメか」
状況の悪化でマギーはそう判断すると、マシンガンを構えたまま医務室内へと滑り込んだ。
「撤退する!ヴィヴィアン!」
医務室で未だ意識を失っている彼女を起こそうと、マギーがヴィヴィアンの名前を鋭く叫んだ。が、
「該当あり。メイルライダーです」
いつの間にやってきたのか、医務室内部にも数人の兵士たちの姿があった。
「その子、どうする気だ!」
マギーがマシンガンを兵士たちに向ける。だが、僅かに兵士たちの発砲のほうが早かった。
「ヴィヴィアン!」
慌てて医務室を出たマギーがヴィヴィアンに呼びかける。だが、ヴィヴィアンの意識は戻らなかった。
「ヴィヴィアン!」
室外からもう一度叫ぶものの、やはりヴィヴィアンの意識は戻らなかった。数名の兵士たちが銃を発砲してマギーを牽制し、残りの兵士がヴィヴィアンを拘束して窓面から室外へと連れ去っていったのだった。
他方、整備デッキ。
乗り込んできた兵士たちと第一中隊は他の場所と同じように銃撃戦を繰り広げていた。と、当たり所が悪かったのか、一機のパラメイルの一部分が爆発して装備が吹き飛ぶ。
「あーっ! おニューの連装砲が!」
悲鳴を上げたのはロザリーだった。全く運のないことである。
「この野郎!」
この恨み晴らさでおくべきかとばかりにロザリーがマシンガンを発砲した。ヒルダも同じようにマシンガンをぶっ放す。
「もうダメだよ。私たち、死ぬんだ…」
一人、悲観的なのがクリスであった。彼女の場合は、もともとの性格に起因しているというのもあるのだろうが。
「死の第一中隊が、こんなところでくたばってたまるかってんだ!」
「今更隊長ヅラしないで!」
「はいはい」
激高したクリスを軽く受け流すヒルダ。と、その視界が正面に、こちらに向けてライフルを構えている兵士の姿を捉えた。
「危ない!」
思わず身を挺してクリスの盾になるヒルダ。
その頃、崩壊していくアルゼナルを見て、ジュリオは嘲笑っていると…。
「へ、陛下!」
「どうしたのだ?」
「左舷から高熱原体多数がこちらに接近しています!モニターで映します。」
マナのモニター画面が表示される。そこに映し出された物はそれぞれ色が違う11機の機体であった。
「何だあれは!!?」
水飛沫を上げ、アルゼナルへと向かうアーサー達。煙と爆炎に包まれているアルゼナルを見て、ライド達が叫ぶ。
「クソ!遅かったか!」
「襲撃者は神聖ミスルギ皇帝 ジュリオ・飛鳥・ミスルギだ!」
「アイツか…アイツのせいでフェリス達は辛い目にあってきたんだ。その分の苦痛を味あわせてやる!!」
大切な妻やその義兄弟達を苦痛へと追いやった張本人に怒りを露わにするアーサーはフルスロットルでアルゼナルへと向かう。
「アーサー!」
「我々が同行します!」
「主君よ!早まってはいけません!」
ヤトウとリュウのフラドーラ・リヴァイヴとフラドーラ・サヴァイヴがアーサーのフラドーラと編隊を組む。
「ライド!エクエス!アルゼナル内に行って皆んなを助けろ!序でにタスクと会ったら一緒に行動してくれ!」
『『分かった!』』
「トウジ、ミクモ、ミュリエーナとガイは俺と来い!上空の円盤を殲滅するぞ!」
「《おう!!》」
一方、旗艦 エンペラージュリオ率いる艦隊の南南西上空に光学迷彩でカモフラージュしている穢れ騎士ゴリアテ級七番飛行戦艦『ガニメデ』
「ようやく現れたか…待ちわびたよ、アーサー!!」
背部にフロートパックを装備させたユーティス専用邪星神『バジリス』がガニメデのカタパルトから発進する。それに続くかのように量産型邪星神『ウィンミラー』も発進する。そして穢れ騎士ゴリアテ級八番飛行戦艦『マルドクス』の格納庫にあるX専用邪星神『ダイロギアンX』のコックピット内で乗り込んだXが過去を振り返っていた。
「あ〜…懐かしいなぁ、あのガキがあそこまで成長するとは。」
12年前ーーー彼はfarther・Xの命によりトリト村を襲撃、殺しては強姦していく最中、穢れボスキートとして覚醒したばかりのアーサーに挑み、敗北した。そんな彼が目の前で戦っている姿に身体中にある傷が疼いていた。
「負けた分……千倍にして返してやるぜ!!!!」
Xは裂けた口で笑みを浮かばせながら、ダイロギアンXを起動し、マルドクスから発進した。
上空に飛び回るピレスドロイドの大群、アーサー達は迎撃を開始していた。
「クソ!キリがない!」
アーサーはビームガンを構え、ピレスドロイドを撃破していた時、左から緊急アラームが鳴る。
「っ!?」
アーサーは早くもフラドーラの左腕に装備されていた機動防楯を展開し、左からの攻撃を防ぐ。攻撃してきたのはユーティスの乗るバジリスがライフルを持って飛来してきた。
「ユーティスか!!」
アーサーはすぐさまガルクローを展開し、ユーティスに突撃しようとした直後、何かがアーサーとユーティスの前に現れる。
高笑いを上げるX。その声を聞いたアーサーは声の主に驚く。
「っ!!?」
『俺様も混ぜろよ』
「お前は!!?」
「そうだよ。もっと面白くする為にお師匠様は…コイツを再生させた!!」
『久しぶりのシャバの空気だ!!!!さぁ!楽しい女狩りを始めようか!!!!』
XはダイロギアンXの両腕に装備された3連装大型ビームガトリング砲を展開し、敵味方問わず全方位に向けて乱射し始める。
「ヴィルキスがまだ整備デッキに…」
アルゼナル施設内のどこか。インカムで通信を受けながら、サリアが通信先の相手にそう返した。誰と通信しているのかはわからないが、その内容から恐らくジルかメイのどちらかであろう。
「アンジュを届けたら、私もデッキに戻るわ」
その言葉通り、サリアはアンジュの背後に回って後ろから銃を突きつけながら進路を誘導していた。先程から構図は全く変わっていない。そして彼女の前には先導するかのように、モモカを抱えたジャスミンとバルカンの姿があった。
「…ここ、危ないんでしょ? 逃げる準備なんてしてる場合?」
不満げな表情でアンジュがサリアに言葉をぶつける。
「言ったでしょう? あんたには、大事な使命があるの」
そう返すサリアも、アンジュに負けず劣らずの険しい表情だった。
「あんたとヴィルキスは必ず無傷で脱出させる。…それが私の、多分、最後の使命」
最後の方は自嘲気味になってサリアが呟いた。
「そのためには、仲間の生命も見捨てるってこと?」
「…仕方ないわ」
サリアの返答を聞くと、アンジュは歩みを止めた。そして、
「あの女そっくり」
サリアに向かって振り返ると、侮蔑したようにそう吐き捨てたのだった。そう言われ、サリアは思わず息を呑む。
「わけのわかんない使命感や、無意味な絵空事に酔いしれてるだけの偏執狂。巻き込まれて死んでいく方は、堪ったもんじゃないわね!」
そこまで言ったときサリアから平手が飛んできた。
「あんた何もわかってないのね! 自分がどれほど重要で、恵まれていて、特別な存在なのか!」
「わかりたくもないわ…」
「では、息を止めてください。アンジュリーゼ様!」
アンジュが吐き捨てた直後、今までされるようにジャスミンの肩に担がれていたモモカがそう言うとジャスミンから飛び退った。恐らく今までは機会を伺ってタイミングを待っていたのだろう。
「せい!」
着地の寸前、何か缶のようなものを地面に投げつける。すると、その缶から粉状の中身が一気に周囲に飛散した。
「何だいこりゃ!」
ジャスミンが悲鳴を上げ、バルカンも同様に苦しそうに吼えた。
「アンジュ! 何処に…くしゅん!」
口元を押さえながらアンジュを探すサリアだったが、思わずくしゃみが出てしまう。そう、モモカが叩きつけたのは塩コショウの缶だったのだ。
モモカの指示に従ったアンジュは寸でのところで息を止めていたので、被害は最小限に抑えられ、何とか脱出できたというわけである。
…それにしても、実にやり方がレトロな上に都合のいい展開であるが、まあそこは突っ込まないのがお約束であろう。
「いつでもお料理できるように…くしゅん! 塩コショウを用意しておいて良かったです…くひゅん!」
今来た道を戻りながらモモカが嬉しそうにそう言った。
「随分大胆なことするようになったわねえ…はっくしゅ!」
後ろを走るアンジュは随分嬉しそうだった。被害は最小限とはいえ、サリアたちと同じようにくしゃみをしているのはご愛嬌だろう。
「アンジュリーゼ様の影響で…くしゅ!」
モモカも微笑みながらくしゃみをした。
「サリア、何があった?」
インカムの先にいるサリアの様子がおかしいことに気づいたジルが通信を通じてサリアに尋ねた。やはり先程の通信の相手はジルだったようだ。
「アンジュに、逃げられた」
「連れ戻せ!」
回線の先で何故かくしゃみをしているサリアにそう命令する。と、そのとき、何かのコールが鳴った。
「指令、外部から指令宛ての通信です」
オリビエがジルへと振り返る。
「外部?」
その報告にジルが怪訝そうな表情になった。
「周波数、1・5・3」
「私の回線に回せ」
周波数を報告したヒカルにそう命じ、自分の回線に通信を回させる。
『久しぶりだね、アレクトラ』
回線の先から聞こえてきた声は、その通り久しぶりで彼女も良く知る人物の声だった。
「タスクか」
『アンジュは無事か?』
アルゼナルにようやく辿り着いたのだろう、いの一番にアンジュの安否を確かめる。
「たった今逃げられたところだ。捕獲に協力してくれるか?」
とりあえずアンジュが無事なことにタスクがホッと一息つく。そして、
『わかった』
そう、返した。一方、整備デッキから立ち去ったエルシャは、こちらもまた銃撃戦を繰り広げていた。通路の曲がり角部分を遮蔽物としながら、マシンガンを連射して敵兵士を倒していく。
(皆、無事でいて!)
そして食堂に付いたアンジュとモモカ、モモカはマナの光で灯りを照らしていた。
「こちらですアンジュリーゼ様、ここから行けそうです」
灯りを前に向けた途端二人は息を飲む、そこには焼け焦げた人が沢山いた。それにアンジュはまたしても嘔吐し、それにモモカは駆け寄る。
「アンジュリーゼ様! み!水!!」
すぐさま食堂のキッチンに向かったモモカ、アンジュはあたりを見渡していると。
「大切な物は失ってから気づく、何時の時代も変わらない心理だ。全く酷い事をする、こんな事を許した覚えはないんだが。(まさかアイツの言う通りになるとは、こんな事なら早急に処分しておけば良かった。)」
そこに謎の男が居て、それにアンジュは振り向いてみる。その男こそエンブリヲであった。
「君のお兄さんだよ、この虐殺を命じたのは」
「えっ?!」
その事にアンジュは驚き、エンブリヲは言い続ける。
「北北東14キロの場所に彼は来ている、君を八つ裂きにする為にね。この子たちはその巻き添えを食ったようなものだ」
バン!!
「きゃあああああああ!!」
その瞬間キッチンから銃声がし、モモカの悲鳴が聞こえてアンジュはすぐに向かう。
向かうと二人の特殊部隊がモモカを狙っていて、モモカは左肩を撃たれていたが、動ける右手でマナの光を出して防御をしていた。
アンジュは銃を取り出し、一人を撃ち殺して、もう一人は両肩を撃ち抜く。
「あなた達がやったの? お兄様の命令で?」
「貴様…アンジュリーゼ!」
すぐに銃を構えるも、アンジュに手を撃たれてしまう。
「う、撃たないでくれ…我々は…隊長とジュリオ陛下の命令で『バン!!』
問いにアンジュは撃ちまくり、弾切れになっても引き続けていて、それを見たモモカは慌ててアンジュを止めた。
「大丈夫です!モモカはここに居ます!!」
アンジュはすぐに後ろを見る、あの場所に居たエンブリヲの姿は無く、それにアンジュは決心する。
「行かなきゃ…!」
「えっ?」
モモカはその事に意味が分からずだった、っとそこに…。
「アンジュ!!」
アンジュは横を見るとヴィヴィアンを背負ったタスクとライド、エクエスがやって来た。
「タスク!」
「銃声が聞こえてすぐに向かったんだ。でも良かったよ君が無事で…、アーサーが待っているから───」
タスクが一安心して話していると、アンジュが言う。
「タスク、行かなくちゃいけない所があるの」
「え? 何処に?」
「いいから!一緒に来て!」
アンジュはそう言ってモモカと共に格納庫へ行き、それに慌てるタスク。
「ああ!ちょっと待ってアンジュ!!」
タスク達は慌ててアンジュを追いかけて行き、ヒルダ達が待っている格納庫へと向かって行った。
そして格納庫ではヒルダ達が特殊部隊と交戦しており、一方的に不利な状況へとなっていたその時。
「マタドール・バースト!」
別の扉から雷撃を纏った破壊光弾が発射され、特殊部隊を吹き飛ばす。
「ヒルダ!無事か!?」
「ライド!?本当にライドか!?」
「あぁ!後は俺らに任せろ!」
ライドはブルキャノンを構え、ヨーコとクサビは鉤爪とドリルを展開し、次々と特殊部隊を倒していく。
「モモカをお願い!」
アンジュはモモカをヒルダに任せ、ヴィルキスに乗り込む。そして再び格納庫、敵が投げたグレネードがエレベーターシャフトに直撃して、シャフトが崩れる。
「エレベーターシャフトが!」
「これではパラメイルを下ろせません!」
部下の言葉にメイは歯を噛みしめ、不味い状況になって来る事にロザリーが問いかける。
「どうするんだよ!ヒルダ!?」
「くっそ~…!」
「アンジュ!俺に任せろ!!」
「サーベル・ファング!!!!」
「道を開けてやっ!!」
その時、ライドの頰に特殊部隊が撃ってきたマシンガンの弾丸が直撃し、倒れる。
「ライド!」
ヒルダが心配する中、ライドは起き上がり、風穴が空いた頰を触れる。手は赤く染まっており、頰から多量の血が流れる。しかし…。
「ペッ!!この…糞共がああっ!!」
ライドが怒りを込み上げ、口に入って歯で受け止めていた弾丸を吐き出し、白き虎…純なるボスキートへと変身し、特殊部隊に襲い掛かる。悲鳴が聞こえる中、アンジュは急いでヴィルキスを発進させる。
「ヴィンセクト!」
タスクはナックルライザーを掲げると、ヴィンセクトが自動的にタスクの所へ飛来し、ヴィンセクトに乗り込む。怒りの余り、甲板を血の海に染め上げたライドは苦しい表情で荒い呼吸をしていた。
「ライド!無理するな!」
「うるせぇ!!グランヴェ!」
ライドはそう言い、グランヴェを呼び出す。ライドはグランヴェに乗り込むと、ヒルダが駆け寄る。
「待てライド!」
「心配するな!ヒルダ!もうお前を一人にはさせない、今度は俺が一緒にいる!」
「アタシも行かなきゃね」
っと肩を抑えながら向かって行く。
そして後からやって来たサリアが辺りを見て、外の方を見てヴィルキスが出た事に表情を歪ませる。
「行かせない…!」
サリアは舌打ちし、アーキバスに乗り込み、アンジュを追う。
その頃、特殊部隊に確保されたヴィヴィアンの方では輸送機に乗り込もうとした直後、何かに斬られ、その時、水の弾が激しく特殊部隊の眉間を貫いていく。その正体はクリストバルとギルバートであった。
「コイツ等め、人をなんだと思ってやがるんだ。」
「落ち着け、今は爺様が乗っていたヴィルキスの確認だ。そして早急に彼女も守るべき対象だ。」
「兄さん!あれ!」
『《ヴィルキス!》』
「くっそーっ! 放せ、放せーっ!」
未だ戦闘中の空では、新たな犠牲者が生まれようとしていた。メイルライダーの一人、ターニャが先程のイルマ同様、小型円盤に拘束されて何処かに攫われようとしていたのだ。
「メイルライダー定数確保! 基地内でも、確保完了との報告あり!」
未だアルゼナルへ向けて推進中の艦隊の中で、ジュリオが報告を受け取っていた。だが、その報告を受けても満足した表情にはなっていない。
「…アンジュリーゼは」
一番の標的のことに言及されていないのだから当然だろう。今は家族としての縁を切った妹の名を呟く。
「第一目標がアンジュリーゼ! 第二目標がヴィルキスと言った筈だろう!」
思わず身を乗り出してジュリオが語気を強める。と、不意に警報が鳴った。
「本艦に急接近する物体あり!」
それを捕捉した兵士がそれをモニターに映す。そこには、ヴィルキスを駆るアンジュの姿があった。
「第一目標と、第二目標です!」
「アンジュリーゼぇ…」
目標が二つ、わざわざ自分たちのところに来てくれることに満足したのか、ジュリオは椅子に深く座り直すと、下卑た笑みを浮かべながらアンジュの名を呟いたのだった。
フライトモードのヴィルキスが空を舞い、華麗に小型円盤を撹乱する。そしてその隙を見つけてアサルトモードに変化すると、ライフルを乱射して次々に目標を墜としていった。と、全く予期せぬ方向から援護射撃があり、幾つかの小型円盤を落としていく。
「!」
思わずその方向に振り返る。そこには、
「戻りなさい、アンジュ!」
爆炎の中から姿を現したサリアのアーキバスがあった。
「戻って使命を果たして!」
サリアがそう訴えるものの、アンジュは一向に従う気配もなく、ライフルで小型円盤を掃討していく。
「何が不満なのよ!」
一向に変化の見られないアンジュに業を煮やしたサリアが、正対して再度訴えかける。
「あんたは選ばれたのよ、アレクトラに!」
「……」
アンジュは答えず、ただジッと鋭い視線でパラメイルの中にいるサリアを見据える。
「私の役目も、居場所も、全部奪ったんだからそのぐらい「好きだったの」えっ…」
アンジュの返答の意味がわからず、思わずサリアが呟いた。
「私、ここが好きだった。最低で、最悪で、劣悪で、ごく一部の例外を除いて、何食べてもクソ不味かったけど。好きだった、ここでの暮らし」
主人の感情に呼応するかのように、アンジュの左手中指に嵌められた指輪が光り輝き始め、その光を増してゆく。
「それを壊されたの、あいつに!」
そしてアンジュはいきなりサリアに突っ込むと、ブレードを展開した。
「はっ!」
突然のことに驚いたものの後の祭り、サリアのアーキバスは反応することも出来ず、振り上げられたブレードで片腕を切断されてしまった。
「だから、行くの!」
返す刀でブレードを振り下ろし、もう一方の腕を切断する。故障した…というわけではないのだろうが、バランスを失って機体の推進が崩れたのか、サリアのアーキバスは真っ逆さまに墜落してゆく。
「邪魔したら…殺すわよ! …それに、さっき選ばれたって言ったけど、私が頼んだわけじゃない!」
真紅の瞳が鋭さを増した。その言葉通り、邪魔者は全て殺すと言わんばかりに。
「アンジュ、アンジュ!」
他方、今しがた排除されたサリアは墜落しながらしきりにアンジュの名を叫ぶ。
「許さない…勝ち逃げなんて、絶対許さないんだから!」
目尻に涙を浮かべ、まるで呪うかのようにそう吐き出した。
「アンジュの下半身デブーっ!」
アンジュが飛び去っていくのを背景に、まるで子供の喧嘩のような幼稚な言葉を叫びながら、サリアはそのまま海に着水したのだった。
コックピットの中、海水が迫り、アンジュに何もかも奪われたサリアは絶望していた。するとモニター画面にエクエスのゼーアが助ける。
「やれやれ、目標を失って絶望か…無理もない、お前が乗りこなそうとしたあのヴィルキスは……。」
エクエスはそう言い、サリアを海中から引き上げる。
同じ頃、整備デッキでは第一中隊の四人が発進するための準備を終えているところだった。
「ヒルダ、発進準備完了!」
「了解」
メイのゴーサインにヒルダが頷いた。
「行くよ、お前たち」
「あぁ」
「分かったわ」
ヒルダ以下二人の返答にこれまた満足そうに頷くと、ヒルダは正面を向く。
「ヒルダ隊、出撃!」
『イエス、マム!』
三人の返答を受けるのを待っていたかのようにヒルダが発進し、その後を、ロザリー、クリスと続く。が、不吉なことにそんな彼女たちから少し離れたところに瓦礫に潜んだ一人の兵士の姿があった。
兵士は銃を装填し、その時を待つ。まずヒルダが通り過ぎ、そしてロザリーが続き、最後にクリス。
そして最初の二機をやり過ごし、最後のクリスが飛び立とうとしたところで兵士が銃を発砲しようとしたその時、マナコが現れ、特殊部隊を切り裂く。
「行け、クリス…」
マナコはそう呟き、エミリーとライドと共に特殊部隊の残存と交戦するのであった。
その頃、一人第一中隊の全員と別行動を取っていたエルシャは、ようやく自分の邪魔になる最後の一人の兵士を倒したところだった。
「ぐわっ!」
アサルトライフルに撃たれて兵士が吹き飛ばされる。手向かってこないことを確認したエルシャは、すぐに目的地へと向かって走った。目的地の部屋は程近く、そこからは聞き覚えのあるオルゴールの音色が奏でられている。負の感情に責め立てられるように、エルシャは走った。
「っ!!」
そこには特殊部隊の死体が転がり、辺りが血の海に染まっていた。部屋の奥に怖がる人達、聖双剣ダブル・クレッセントを持って全身血の色で染まったトウジが立っていた。
「エルシャ…!?」
トウジはやってきたエルシャを見て驚く。
「もしかして…トウジ君?」
その頃、アーサーは一人でユーティス達を相手していた。しかし、フラドーラの各関節がギシギシと音を鳴らしており、アーサーの操縦テクニックの速さに機体が悲鳴を上げていた。
「おいおい!いい加減に諦めたら?君は過去で最悪な悲劇で、友達を殺したじゃないか。今も仲間を見殺しにするのか?」
「確かにな…絶望し、死にたいと思った。だが、それはもう過去の事だ。俺には新しい仲間や家族もいる、だから!!」
「俺はここで負けたりはしない!!」
「《っ!?》」
突然とフラドーラが光りだすと同時に、コックピット内にいるアーサーの身体が光り始める。
「何だ?この不思議なひか……ッ!!!!」
「っ!?」
「俺達の穢れボスキートが!?」
「停止する!?」
突然の事に驚くモルドゥレイス達。その時、フラドーラのバイザーが割れる。
「《っ!?》」
フラドーラの頭部がゆっくりと前を向く。その時、モルドゥレイスやユーティス、X、ネフティ、バレンティーヌ、カイム、アラマシラが恐怖する。フラドーラのバイザーの中に獣のような目があり、モルドゥレイス達を睨んでいた。そしてコックピットの中、アーサーの目が赤から翠色に輝く獣の瞳へと変色し、前方にいるアラマシラとバレンティーヌを睨み、呟く。
「स्पेस को ट्विस्ट करें…。」
低い機会音でいじったような言葉、人間でも発音できないそれを呟くと、アラマシラとバレンティーヌの身体が二つへと別れる。
「え……やられたの?」
「一体…何……」
二人の機体が同時に爆発し、炎上しながら海へと墜落する。
「《っ!?!?!?!?!?》」
「奴の目を見るな!!見ている対象物を睨んで殺されるぞ!!」
「くっ!!」
「マジかよ、おい!?」
「(アーサー、まさかここでヤバい物へと覚醒しちゃったと言うことか?こりゃヤバい……今のままじゃ、多分…勝てないな。)」
「撤退するぞ!」
「ハァ!?冗談だろ!これから面白いことになるってのによ!!」
「X、ここはモルドゥレイスの命令に従った方が良いよ。何か…ヤバいよあれ。」
「チッ!」
『“偽りの天使”が…俺の“同胞”のテクノロジーの一部を好き勝手に使いやがって。』
「っ!?」
「(何だ今の!?あの言葉は何だ?あの力は何だ?俺……“前に何処かで使っていた言葉だった”ような…。)」
「何をしている!相手はたったの一機だぞ!」
っとそう言った途端にブリッジの半分が割れて、ジュリオの前にヴィルキスに乗ったアンジュが現れる。
その隙にリィザはその場から離れて行く。
「あ!アンジュリーゼ!」
バン!!
ジュリオの足に銃弾を撃ち込むアンジュ、それにジュリオはもがく。
「今すぐ虐殺をやめさせなさい!! 死にたくなければ!!」
それにジュリオはすぐにマナの通信で部下達に虐殺をやめるように指示を出す。
命令を言ったジュリオはすぐにアンジュに言う。
「辞めさせたぞ!!早く医者を!」
するとアンジュはヴィルキスに乗り込み、ラツィーエルを上に構える。
コックピットが開き、アンジュが姿を現す。
「あ、アンジュリ…」
ジュリオがその先を言う前に銃声が響き、自身の左足が撃ち抜かれた。
「ああーっ! あっ! ああーっ!」
悲鳴を上げ、傷口を押さえてのた打ち回るジュリオ。図に乗った上に勘違いし、パンドラの箱を開けた愚か者には相応しい巡り会わせだった。
「今すぐ虐殺を止めさせなさい!」
対するアンジュは銃を構えたまま鋭い視線をジュリオに向けている。その表情は怒りに満ち満ちていた。
「今すぐ! さっさとしなさい!」
アンジュへの恐怖心からか、痛みに顔を歪ませながらもジュリオはマナの力で通信を開いた。
「神聖皇帝ジュリオⅠ世だ。全軍、全ての戦闘を停止し、撤収せよ!」
『撤収!? ノーマたちは!?』
通信の内容を聞いた兵士の一人が尋ね返すものの、それには答えずジュリオは自分の言いたいことだけ言って即座に通信を切った。
「止めさせたぞ! 早く医者を!」
その瞬間、今度はラツィーエルを掲げる。だが尚も、アンジュはジュリオから離れない。
「ま、待て、話が違う!」
腰砕け、激痛に耐えながらもジュリオは両手を開いて前方に差し出し、アンジュを制止しようと努める。
「早まるな! 要求は何でも聞く! そうだ、お前の皇室復帰を認めてやろう! アンジュリーゼ! どうだ、悪くない話だろう! だから、殺さないでくれーっ!」
神聖皇帝の称号が大笑いするほどのみっともない命乞いをするジュリオ。対して、アンジュは何処までも冷徹だった。いや、目の前の愚物がそうすればするほど、どんどん冷めていく。
「言うことはそれだけ?」
冷たく吐き捨てると、アンジュは銃口の照準を静かにジュリオの額に合わせた。
「生きる価値のないクズめ…くたばれーっ!」
懇親を込めてラツィーエルを振り下ろした。それに力をかける。ジュリオはアンジュの殺意の前に何ら抵抗も出来ず、悲鳴を上げて最期の時を待つしか出来なかった。そして、もう少しで終わろうとしたその時、目の前に謎のパラメイルがビームシールドで受け止める。
それにアンジュは目の前の光景に驚く。そのパラメイルの肩にエンブリヲが乗っているのだ。
「貴方…さっきの!」
「エンブリヲ様!! こ、こいつ等を!アンジュリーゼやソイツをぶっ殺してください!! 今すぐ!!!」
「エン…ブリヲ?」
アンジュはその男がエンブリヲだと知って呟く。
「アンジュ、君は美しい…。君の怒りは純粋で白く何よりも厚い。理不尽や不条理に立ち向かい…焼き尽くす炎の様に、気高く美しい物。つまらない物を燃やして、その炎を燃やしてはいけない」
アンジュはエンブリヲが何を言いたいのか意味が分からず、ただ唖然としていた。
「だから…私がやろう」
「え?」
「君の罪は…私が背負う」
その機体を上昇させて、エンブリヲは何かを歌いだす。
「♪~♪」
その歌にアンジュとジュリオは聞き覚えがあった、その歌は『永遠語り』だった。
「あれは…!?」
「永遠語り!?」
アンジュの元に向かっているアーサー達は聞こえて来る歌に驚く。
「ん!? この歌は!!」
「あれって!?」
「あれは…まさか!!」
同時の外に出ているリィザは【謎の翼】を出して飛んでエンブリヲを睨む。
「エンブリヲ…」
そしてエンブリヲの機体の両肩と翼が露出展開して、ヴィルキスと同じものが出て来る。
「ヴィルキスと同じ武器…!?」
アンジュが驚いてる中でその機体は光学兵器を発射て、ジュリオが乗っている旗艦へと直撃する。
「う!!うう!!うわあああああああああああああああ!!!!!!」
アンジュが目の前の光景に驚きを隠せず、ただ跡形もなく消え去った旗艦を見て唖然する。
その頃、アルゼナル最下層では、あの戦艦が今まさに発進しようとしていた。
「注水、始め!」
「注水、始め!」
ジルの号令にパメラが復唱する。それと同時に、アルゼナルの生き残りを収容したこの戦艦に注水が始まった。ジルの大嘘により、本来辿るべき歴史よりもかなり多くの人員が無事にこの艦に収容されているのは、喜ぶべきことなのだろう。
「アルゼナル内に生命反応なし。生存者の収容、完了しました」
「メインエンジン臨界まで、後10秒」
「水位上昇80%」
「防水隔壁、全閉鎖を確認」
「交戦中のパラメイル各機には、合流座標を暗号化して送信」
「了解」
ブリッジでは、次々と報告や指示が飛び交う。
「フルゲージ!」
「拘束アーム解除。ゲート開け。微速前進」
エンジンに火が入る。そして、
「アウローラ、発進!」
ジルの号令と共に戦艦…アウローラはアルゼナルを後にして発進したのだった。
そしてアンジュがエンブリヲに問う。
「何なの! 貴方一体何者!?」
っとエンブリヲは横からの攻撃に気付き、すぐさまかわすとタスクのヴィンセクトとアーサーが直ぐにアンジュの元へ向かって来る。
「アンジュ!! そいつは危険だ!! 離れるんだ!今すぐ!!!」
「タスク!?」
「無粋な…!」
するとエンブリヲは目標をタスクに向け、それに歌いだす。
「!? 行けない! タスク!アーサー!」
「アンジュ!?」
「だめええええええ!!」
その時、アンジュの指輪が光だし、ヴィルキスの色が青へと変わる。エンブリヲはまたしても光学兵器を発射させる、だがすでに遅しアーサー達の機体はその場から消えていき、海へと直撃して巨大な渦が出来る。
「つまらない筋書きだが、悪くない(あの男…何処かで会ったような。まぁいい…)。」
エンブリヲはそう言い、その場から消えた。崩壊したアルゼナルの海が見える丘の上に立つアルトとマリアンヌ。マリアンヌは先のアーサーの力に驚く。
「アルト…今の見た?」
「あぁ見た、間違いない。アーサーよ、ついに本来の力の一部が戻った!【外使徒 アルファリオン】!!」
燃え盛る山、枯らされた泉、枯れる草花、地獄へと変わっていく大地の山の奥深くにある神殿らしき建造物の奥の間に二人の人物が戦っていた。一人はアーサーに似ており、背中に片方の赤い翼を広げた青年とフェリスに似た背中に白い翼を広げた少女が剣と杖を構えていた。
「लेकिन क्यों! ! उसके पिता को क्यों मारा! ?《何故だ!何故こんな事を!?》」
「होहो…यह इसलिए है क्योंकि राजा और भेड़िया आपसे प्यार करने के तरीके में थे। इसके अलावा, मैं केवल एक हूँ जो तुमसे प्यार करता हूँ, मैं तुमसे बहुत प्यार करता हूँ ...《私は…貴方を愛していた。それで気づいたの、私達の愛を邪魔する者がいつか出ると…だからまた気づいたの!私を邪魔するお父様とお母様、そして衛兵や民、国の全てを血の海にしたの!だって私は……》」
「मैं हूँ… एक सच्ची दुल्हन…।《私こそが…真の花嫁って…。》」
その狂気に満ちた瞳と心に男性の心に深い傷ができ、彼女がやった行為と真意に怒りを露わにする。
「ऐसे ... इस कारण से आप हैं! ! एक देश! लोगों को! पिता और माता! मेरी बहन! फियोना! !《そんな…そんな理由でお前は国も民を!シェザール王と王妃!父と母!仲間を!“フィオナ”を!!》」
そしてその悪しき少女は黒く帯びた禍々しい短剣を手に、アーサーに似た男性に斬りかかってきて、そして眩い閃光が大地を包み込み、生命の無い星へと変えた。すると地面からゆっくりと芽が生え、時が進むかのように草花、水が生き返り、人類が誕生し、今の現在へとなる。だが緑溢れる大地の地下奥深くにある古の遺跡、光の左腕と不気味な仮面が女のミイラの顔を覆い隠していた。すると仮面の目から赤黒い瞳を動かし、指と指の間から血涙を流し、呟く。
||थैंक यू ... आई विल ... अल्फा रियान ... ...♡《おしたえ…します…アルファリオン様…♡》
ドス黒く濁った野心と禍々しい手がアーサーの精神を蝕みながら触れようとしたその時、何処からともなく光が差し込み、禍々しい闇を祓う。それは赤と白の二体の神々しい竜と純白の鎧と黒い機械と融合した紅き竜の射手が闇を祓い、アーサーを包み込む。
その頃、コールブランド邸の台所ではフェリスが帰ってくるアーサーの為に料理を作っていた。
「(アル、早く帰って来ないかな〜?)」
楽しみに待っているフェリスは料理をテーブルの上に置くと、お座敷の掛軸が大きく揺れる。
「ん?」
掛軸が動いた事にフェリスは掛軸に触れる。すると掛軸の後ろに下へと通じる階段が存在していた。フェリスはマナの光を使って辺りを照らし、下りていく。すると目の前に黒い扉があった。フェリスはドアを開こうとするが全く開かなかった。
「どうしよう…あれ?この形…」
よく見ると、鍵穴の形が勾玉の形であり、フェリスはもしかしたらと、アーサーから貰った黒い勾玉を差し込む。
すると勾玉が翠色に光、扉にその色と同じ光る流動回路が浮かび上がる。すると扉だったのがジグソーパズルのように変形し始め、向こうの道を開けてくれた。
「!?」
フェリスはそれを見て思わず言葉を失う。彼女が目にしたのは大量の金塊、黄金に輝く金、それぞれの色で輝く宝石、陶器、黄金像、泉から湧き出ている砂金、見たこともない古代の貨幣、工芸品、美術品、高麗茶碗、聖遺物、三種の神器、埋蔵金が現実の山程積み重なったそれは財宝の山と言うより“海が全て金に染まる物”であった。
「何?この……宝の海は?」
フェリスが金の海に足を踏み入れる。足から貨幣や金の冷たさや感触が伝わり、こ等全てが本物だと確証する。そして彼女の目の前に一つ大きな肖像画が飾られていた。高貴な服装した七人の男女、その中に思いもよらぬ人物まで描かれていた。
「アル…?」
アルに似たその人物は高貴な服装をし、勇ましい姿、赤い翼をしていた。さらにその肖像画にはタスク、ライド、エクエス、マイラ、ランスに似た人物も描かれていた。
「全部見てしまったのだな…」
「っ!?」
背後から突然の声。フェリスは思わず振り向くと、シェレザールとセレスティアがいた。
「お義母さんに、お義姉さん…?」
「お義母様…言うのですか?」
セレスティアがおどおどしながらシェレザールに問う。シェレザールの心は既に覚悟の目をしており、フェリスに近づく。
「何を…ですか?」
「私は、あの肖像画に写っている者達を知っている。勿論…“貴女の一族と母親が何者”も…。」
「え……?」
この後、フェリスはシェレザールから語られる真実に驚愕し、この後に絶望になる程の恐怖を感じるようになり、最後には悲しむ。
今回のキーワード…アルトとマリアンヌが呟いていた【外使徒 アルファリオン】と邸の地下に眠る宝の山とアーサー達の“肖像画”。そしてフェリスの事。
果たして、この三つがいつ、何処でまたキーワードとして出てきて、何を意味し、アーサー達を翻弄していくか、ご期待ください。