クロスアンジュ トライブブラザーズ   作:マシンクーガー

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チャプター28 アンジュとタスク

アーサーは真実の地球でであった少女 サラマンディーネの姉であるファイに連れられ、前方にアウラの都が見えてきだした。都に着いたアーサーは大破したフラドーラを格納庫に入れる。

 

「アル!」

 

突然の声にアーサーが振り向くと、誰かが抱きついてきた。

 

「フェリス!?」

 

アーサーは偽りの世界にいるはずの愛する妻 フェリスやランス達がいる事に驚くのであった。

 

「何でこの世界にフェリスが!?」

 

「西十郎さんとアリマさんがアーサー達が消えた事に察知して、クラウドブルースごと『緊急転移』って言うのが発令して、そしたらこの世界に来たの!」

 

「て事は……クラウドブルースはこの世界の上空に!?」

 

「えぇ!それと邸もこの大地に引っ越して……あ、それと助けて!」

 

「え?」

 

そう言うとフェリスはアーサーの背後へと隠れる。すると向こうから金髪の青年が目をハートにし、気持ち悪い顔で走ってきた。

 

「待ってくれよ〜!フェリスちゃ〜ん♡」

 

金髪はどうやらフェリスに一目惚れしたらしい。しかし、彼女は既婚者であり、アーサーの妻、幾ら歳が離れて見知らぬ存在だが、アーサーにとってはフェリスを困らせている事に変わりはなかった。金髪の青年が迫る中、クレインとランスが通せんぼする。そしてアーサーは金髪の青年に向かって言う。

 

「誰!?」

 

「何なのですか!?」

 

金髪の青年は突然現れた青年に怒鳴る。

 

「お前!邪魔をすんな!その子は僕と結婚するんだ!ボヘッ!!?」

 

青年の言葉にアーサーの頭の中のネジがポロっと落ち、アーサーの平手打ちが青年に頰に炸裂した。アーサーは無言のまま、青年を叩きまくる。

 

「お!落ち着いてアル!」

 

フェリスはアーサーを落ち着かせようと彼の動きを止めようとする中、青年は悲鳴を上げる。

 

「うわあああぁぁん!!」

 

「あれ!?その悲鳴…お前『アイン』か!?」

 

「え?ひょっとして……アーサー!?」

 

彼の名は『アイン』。かつてアーサーの故郷であるトリト村の超星寮ではA組とB組と言った班に分かれていた。彼はその寮のB組の候補生の一人でもあった。悲劇が起こる2日前、B組は街と言うより、国の社会化見学を含めての2泊3日の研修旅行に行っていた。だが彼等が帰ってきた頃に故郷は焼け野原になっており、彼等の家族も失った。そして現在はーーー。

 

「うわぁぁぁっ!!アーサー!」

 

アインは再会したA組の旧友に会えた事にアーサーに抱きつこうとするも、アーサーに怒鳴られ、さらには穢れボスキートで怒りの拳骨が彼の頭部に炸裂した。

 

「ブベッ!?」

 

「ふっざけんじゃねぇ!何勝手に俺の奥さんに手ェ出そうとしてるんだ!ゴラァ!!」

 

「えぇっ!?ええええぇぇ!!!???お前結婚してたん!?よりによってそんな美人な少女を!!」

 

「お前こそ何だ!再会と思ったら人の嫁に手ェ出そうとしてやがるし!お前の女好きは14年前から変わらないな!!」

 

「良いじゃないか!そうだ!お前!紹介しろ!」

 

「何を?」

 

「女の子だよ!行ったんだろ!アルゼナルに!ノーマの女の子ちゃん紹介〜〜!!!」

 

アインの願望、それは女の子にモテたいと言う事だ。14年も前、アーサーと一緒に女子の風呂を覗こうとしたりしたが、今はそんな事はどうでも良いとアーサーは変わったのであるが、等のアインは全く変わってもいなかった。その事にアーサーやフェリスは別の生き物を見るかの様なドン引きな表情をする。

 

「「……」」

 

「何そんな別の生き物見るような目で見るんだよ!やめろ!!!」

 

アインが叫ぶ中、向こうから別の人影が走ってきた。そして人影はアインに思いっきりのドロップキックをかます。

 

「アイン!またあなた他の女の子を引っ掻き回したね!?」

 

現れたのは赤い髪でポニーテールの女性であった。彼女の名は『ナツキ』ーーーアインと同じB組の候補生である。昔は活発な性格であったが、今では凛々しく美しい女性に変わっていた。

 

「お前……ナツキか!」

 

「え!?まさかアーサーなの!?」

 

ナツキはアーサーを見て驚く。すると今度はB組の候補生達が一斉にアーサーの元に駆け付けてきた。

 

「《アーサー!》」

 

「……お前達!」

 

「ナタリア!ポーラ!ネス!ニック!ツカサ!皆んな!」

 

超星寮の候補生達、B組の皆んなが生きていた事にアーサーは嬉しさのあまり、涙を流す。

 

「久しぶりだな!アーサー!」

 

「お前達も、この世界に来てたんだだな!」

 

ネスはアーサーが生きていた事に驚き、再会に喜ぶ中、眼鏡を掛けた二人の男女がやってきた。

 

「アーサー…」

 

「生徒会長に生徒副会長…」

 

「それは昔の話だろ。」

 

「そうよ、今の私達はもう夫婦であり、名前で呼びなさい。」

 

「あ、そうだったな……「オルト」に「ネーラ」」

 

その後、オルト達はアーサー共にアーサーの邸で話し合う事になった。(因みに彼等の住む場所はアーサーの豪邸となる結果になった。理由は至って簡単、邸の部屋や間が広過ぎて使い分けができなくなってしまったと。)

 

「そうか、生き残ったのはお前とマイラだけか…。」

 

「あぁ…お前らが社会人になる為の研修の修学旅行に行った翌日に起こった事だったんだ。見たんだろ?」

 

「あぁ…帰ってみれば辺りは焼け野原、多くの焼死体、俺達は家族を失った。そこで西十郎さんと東護ノ介さんから聞いたら、アイツが起こしたっと。お前ももう分かるな?」

 

「……ユーティス。」

 

「もし俺達もアイツの本性に気付いていれば……クソ!!」

 

ネスが12年前の悲劇の張本人の本性を気づかなかった事に拳を壁にぶつける。(この時のアーサーはネスの行動に嫌気が差していた。理由は自分の家を壊されるで無いのかと心配しているからだ。)

 

「ところでオルト、お前達は一体何処へ行ってたんだ?」

 

「あぁ、その事だが」

 

「私が話そう。」

 

すると戸が開き、父であるオリヴァルトと母のシェレザール、義姉のセレスティアと二人の甥っ子達が登場する。

 

「あ、父さん、母さん、義姉さん。」

 

「《父さん!?》」

 

「え?アーサー…お前、この人達って…まさか。」

 

「俺の父さんと母さん、義姉さんに甥っ子達。それが何か?」

 

「えぇぇぇ!!?」

 

皆は驚く。アーサーに家族がいた事に。

 

「それで、お前達はこの世界で何してるんだ?」

 

「俺達は作っているんだ…【人工島 アークス】」

 

「人工島 アークス?」

 

「クラウドブルースの半分の大陸。クラウドブルースが軍事施設ならアークスはその両方、環大西洋合衆国【ARUS】と女人国【蓮峰国】そしてこのアウラの都から援助されている。」

 

「へぇ〜、もしかしてトリト村の再建?」

 

「それも含めてな。」

 

アーサーとオルト、互いの知っている情報を話している中、B組の女性陣達がフェリスとセレスティアの胸を見る。

 

「(にしても……)」

 

「「「「「何て抜群な「巨桃」なんだ…」」」」」

 

彼女達がそう思ってる時、フェリスがある事を思い出す。

 

「あ!そうだった!」

 

「私…出来ちゃったみたい///」

 

「何が出来た……え!?まさか!!」

 

「そのまさかです!」

 

「《……》」

 

まさかの事に皆は驚く。

 

「《ええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!????》」

 

「私!“妊娠”しました!“双子”も♪」

 

「ぎょええええええぇぇぇぇぇぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!????」

 

思わぬ朗報に固まっていたアーサーがようやく天高くまで聞こえるほどの叫び声を上げるのであった。

 

アーサーがフェリスと再会してから一時間が経過していた頃、ヴィルキス、コックピット内。アンジュが顔を突っ伏して操縦桿にもたれるように前のめりになって気絶していた。そんなアンジュに横から何かが這い寄ってくる。細長くピンク色のそれは、蛇のようにうねりながらアンジュの顔に張り付いてさわさわとその顔を撫でた。

 

「ん…」

 

その、得体の知れない感触に異変を感じたアンジュがゆっくりと目を覚ます。そして、得体の知れない感触を感じた方向…横に顔を向けた。

 

「ウェ?」

 

そこにいたのは、こちらを覗き込んでいるスクーナー級のドラゴンの姿だった。心配そうな様子で、アンジュを見ている。

 

「! はああっ!」

 

起き抜けにドラゴンの姿を目の当たりにして思わずアンジュが驚いて仰け反った。が、ドラゴンはアンジュに襲い掛かろうとはしない。それどころか、高音で咽喉を鳴らしながら器用に自分自身をちょいちょいと指差した。と、

 

(あたし、あたし)

 

アンジュにはドラゴンがいなないているようにしか聞こえないだろうが、ドラゴンは必死に意思表示したのだ。

 

「…ヴィヴィアン?」

 

(そう!)

 

頷くと、理解してもらえたことを喜ぶかのようにウオオオオッ…と高音で長い咆哮を上げた。

 

「また、なっちゃったんだ」

 

呆れとも驚きともつかない様子でアンジュがそう呟くと、ドラゴン状態のヴィヴィアンがアンジュに顔を寄せる。アンジュはそんな彼女の顔を抱え込むと、慈しむように撫でた。と、

 

「どこも痛くないかい?」

 

不意に、違う方向から声をかけられる。

 

「タスク…」

 

そこにいたのは念のためだろうか、ライフルなどで武装してアンジュに歩み寄ってくるタスクの姿とクリストバルとギルバート、キーラ、ヨハネス、メアであった。その姿を見て先程の…気を失う前のことが頭に次々と思い出される。

 

「私たち、海の上にいたはず!?」

 

しかし…

 

「……」

 

バイザーを外しながら立ち上がると、周囲を見回す。そこにあったのは海ではなく、見渡す限りの廃墟だった。それも廃墟となってから随分経っているのだろう、建物の全面がビッシリと緑で覆われている。360°そういう光景だったのだ。

 

「ここ…どこ?」

 

呆然としながら、アンジュはそう呟くことしか出来なかった。

 

「こちらアンジュ。アルゼナル、応答せよ」

 

アンジュが通信機を使用し、アルゼナルへの通信を試みている。あの後、呆けていても仕方ないという結論に達したのだろう。とりあえず出来ることとして、アンジュは何度も通信を試みていた。しかし…

 

「アルゼナル、誰か生きているなら応答して!」

 

通信が返ってくる様子は全くみられない。その間、ヴィヴィアンは周囲に興味を惹かれたのだろうか、少し離れたところで何かを突いている。

 

(つんつん)

 

それは尋常でないぐらい年月を重ね、信じられないくらい劣化したドリンクの自販機だった。ヴィヴィアンは興味津々といった感じでそれのボタンやレバーをカチャカチャといじり始めた。

 

「モモカ! ヒルダ! 誰でも良いから返事しなさい!」

 

と、アンジュのその剣幕に驚いたのだろうか、ヴィヴィアンがビックリした様子で尻餅をついた。そしてその拍子に自販機にもたれかかってしまい、その衝撃で廃棄同然の自販機から数個の缶ジュースが吐き出されたのだった。無論、外側の自販機と同じく中身のジュースも缶が腐食し、もはや飲めるような状態ではないのだが。

 

「…もう! どうなってるの!?」

 

一向に通信の繋がらない現状に、いらいらした表情と口調でアンジュが吐き捨てた。

 

「俺の方もダメだ」

 

タスクも同調する。こちらもこちらで、通信を試みていたのだろう。が、結果は今の発言でわかるように、何の成果も得られなかった。

 

「全周波数に応答なし。半径5キロに動体反応なし。位置センサーも機能せず…」

 

どうしたものかといった感じでタスクが顔を上げて周囲を見上げる。そして。

 

 

「…こんな場所、俺の知る限り、アルゼナルの近くにはない」

 

自機を降りながら、そう続けた。

 

「大昔の廃墟なんじゃないの? 人類がまだ戦争していた頃の」

 

アンジュが思いついたことをそのまま口に出してみる。

 

「そんな場所が残っているなんて話、聞いたことがないよ」

 

しかし、タスクから返ってきたのはつれない返答だった。

 

「…じゃあ、私たちは誰も知らない未知の世界に飛ばされたってこと!?」

 

アンジュのその言葉を聞き、タスクが少しの間俯いて考え込む。だが、すぐに顔を上げると、

 

「ヴィルキスなら、可能性はある」

 

そう、発言したのだった。

 

「ええっ?」

 

タスクにそう言われ、アンジュは表情を強張らせた。

 

「あの時、奴が放った光。、俺達の機体を護るために、ヴィルキスが何かしたのかも…」

 

そう推論するタスクの脳裏には、ここに来る直前のエンブリヲの攻撃や、自分に向かってくるアンジュの姿が思い出されていた。

 

「ヴィルキスは特別な機体だ。何を起こしても不思議じゃない」

 

「!…そうね…特別、よね…」

 

アンジュは視線を逸らすと息を呑んで呟いた。恐らくは、風呂場でジルから聞いたことを思い出していたのだろう。

 

「ん?」

 

目敏くそれに気づいたタスクが怪訝そうな表情を浮かべる。

 

「別に。直せる?」

 

「何とか。飛べるぐらいには」

 

「じゃあ、お願い」

 

そう告げると、アンジュはヴィルキスのシートから立ち上がった。

 

「君は?」

 

シートから腰を浮かせたアンジュにタスクが尋ねる。

 

「偵察。敵がまだいるかもしれない」

「わかった」

 

その返答を聞くと、タスクは肩から掛けてあったライフルを外すと、それをアンジュに手渡した。

 

「気を付けて」

 

「うん」

 

小さく頷くと、アンジュはそのライフルを手に取った。と、

 

(アンジュ、アンジュ♪ あたしに乗って)

 

いつの間にか側にやってきていたヴィヴィアンが背中を向けた。

 

「乗れ…ってこと?」

 

「ヴィヴィアンがそう言ってるって…」

 

(そうそう♪)

 

肯定するかのようにヴィヴィアンがコクコクと首を上下させた。

 

「君が、ドラゴンだったなんてね。」

 

(内緒だよ)

 

ヴィヴィアンはしーっとジェスチャーする。アンジュの方はどうも納得できない様子を漂わせながらもヴィヴィアンに乗って周囲の状況を確認しに行った。そしてクリストバル達はタスクに自己紹介する。

 

「アーサーのお兄さんとお姉さん!?」

 

「ビックリだろ?当の本人もビックリしてた。実はこの世界にも、アーサーも迷い込んでいる。念の為、アーサーの方にシグナルを送信させておいた。」

 

「アーサーもここに…。」

 

「……お前の言葉、少し違う事があったぞ。」

 

「え?」

 

「ヴィルキスが力に覚醒していたと同時に、アーサーの力が共鳴しあって、本来の力に覚醒しつつあるのだ。」

 

クリストバルはタスクにあの事を説明する。アルゼナル襲撃の際、ヴィルキスが青い装甲『アリエル・モード』へと変わった瞬間、アーサーの左手の紋章も輝き、タスク達をこの世界に飛ばしたとの事。そして…。

 

「ヴィルキスを作ったのは……アーサーの祖父だ。」

 

「えぇ!?」

 

「それに。この世界の背景を見るのも……“何百年ぶり”であろうか。」

 

「何百年ぶり…?それって…。」

 

「タスク!」

 

アンジュが戻って来てとんでもない事を言う。

 

「ミスルギ皇国!!?ここが?」

 

ミスルギと言う言葉に驚き、タスクがあり得ない表情で言う。

 

「ええ、宮殿も街も綺麗さっぱり無くたっていたけど。あれはアケノミハシラだった、見間違えるはずがないわ」

 

アンジュは此処がミスルギだと言う証言にタスクはただ唖然とする。

 

「でもおかしいの、ミハシラも街もずっとずっと大昔の前に壊れたって感じだった」

 

そうアンジュは言う。っがその時にグレイスが戻って来る。

 

「アンジュ、その証言だが。ここはミスルギ皇国じゃねぇ。」

 

「えっ!? どういう事よ!」

 

「俺が持っているミスルギ皇国の地図と此処の地図を合わせてみたんだが…」

 

ギルバートは持っている地図と先ほど道端の見つけた地図を広げる。

 

「ミスルギはこれ……そしてこの地図は、東京都って言う街だ。タスク、ミスルギ皇国に東京都って言う街はあったか?」

 

「いや、ミスルギにそんな街なんて聞いたことがない…と言うか、あなた達はこの文字が読めるの!?」

 

「読める。この話は長くなるから言えない…。」

 

ギルバートが何故か落ち込んだ様な表情をする。。アンジュは信じられない事に拳を握りしめる。っとそこにある物が聞こえて来る。

皆はそれを聞いて隠れて武器を構える。

 

すると謎の小型ロボットがある放送を流しながら横を通り過ぎて行く。

 

『こちらは首都防衛機構です、生存者の方はいらっしゃいますか? 首都第3シェルターは今でも稼働中、避難民の方を収容ーーー』

 

「タスクさん、聞きましたか?」

 

「ああ、第3シェルター…行って見よう」

 

タスク達はその小型ロボットが言った首都第3シェルターへと向かった。

そしてその場所である一つの事実を知る。

 

「あれか…?」

 

街看板や道路標識を参考に、アナウンスロボがアナウンスしていた施設…首都第三シェルターを目指したアンジュとタスク、クリストバル達。道路状態や土地勘に悩まされながら、ようやくそれらしいドーム状の建物の前に辿り着き、タスクがそう呟いていた。そしてそのまま、四人は肩を並べてその建物に走り寄る。

 

「ここに、生存者が?」

 

アンジュが周囲の様子を窺った。と、不意に上空から人工的な光に照らされ、四人の身体が一瞬で包み込まれる。

 

『生体反応を確認。収容を開始します』

 

その光が消え去ると、先程のアナウンスロボと同じような機械的な合成音声が流れ、ゆっくりと建物の口が開いた。

 

『ようこそ、首都第三シェルターへ。首都防衛機構は、あなたたちを歓迎いたします』

 

アナウンスが流れ終わる前に四人は互いに顔を見合わせ頷きあう。そしてライフルを構えると、慎重に内部に入っていったのだった。

 

『ようこそ、首都第三シェルターへ。首都防衛機構は、あなたたちを歓迎いたします』

 

再び同じアナウンスが流れ、それが合図のようにまた隔壁が上がる。その向こうにある大きなウインドウモニターの中に、このアナウンスの主であろう、何かの制服に身を包んだ若い女性の姿があった。

 

『現在、当シェルターには1コンマ7%の余剰スペースがあります。お好きなエリアをお選び下さい』

 

そのアナウンスが終わるのとほぼ同時に、また左右の壁沿いに沿って無数にある隔壁が次々と開いた。

 

『どうぞ快適な生活を』

 

そのアナウンスに促されるように、アンジュとタスクはとりあえず一番手近な避難シェルターへと足を向ける。が、

 

「っ!」

 

クリストバル達は何かを知っている様な表情を表し、アンジュが口元を押さえ、タスクも呆然と立ち尽くしていた。何故なら、その開いたシェルターの中には、白骨化した死体が無数に転がっていたからだ。

 

「何よ…これ…」

 

あまりの惨状にアンジュは絶句すると、踵を返して先程のところ…ウインドウモニターのところまで戻る。

 

「さっきの貴方!どこ!?出てきて説明して!」

 

すると、それに呼応したかのように再びウインドウモニターが開いた。

 

『管理コンピューター、ひまわりです。ご質問をどうぞ』

 

「コンピューター…だったのか…」

 

タスクは驚きを禁じえなかった。

 

「これってどういうこと!? 誰か生きてる人はいないの!? 何が起きたの!? どうしちゃったのよ!?」

 

多少なりとも混乱しているのだろう。アンジュらしくなく要領を得ない様子で次から次へと矢継ぎ早に質問を浴びせた。が、相手がコンピューターである以上、取り乱すわけはない。

 

『質問を受け付けました。回答シークエンスに入ります』

 

当然のように淡々とそう答えると、直後、ホログラフであろうか上下左右360°がスクリーンのようなビジョンに変わる。そして、次々と四人の予想を超えた事実が伝えられたのであった。まずは戦闘機や戦車や戦艦が飛び交い走り回り航行し、砲撃やミサイルを発射する場面が流れる。

 

「何これ…映画?」

 

『実際の記録映像です』

 

思わず呟いたアンジュに答えるように、コンピューター…ひまわりが続けた。

 

『統合経済連合と反大陸同盟機構による大規模国家間戦争。【第七次大戦“ラグナレク、D war”】などと呼ばれるこの戦争により、地球の人口は11%までに減少。膠着状態を打破すべく、連合側は絶対兵器ラグナメイルを投入』

 

「っ!!あれって!!」

 

目を見開く。新たにそこに映し出されたのは確かに先ほど見たパラメイル…エンブリヲが乗っていたヴィルキスに似た機体とそして…。

 

「黒い…ヴィルキス!?」

 

ヴィルキスが六機も映像に映っていることに驚くアンジュ。

 

「何…するの?」

 

すると、その答えを見せるかのように漆黒のパラメイル…ラグナメイルがギミックを展開させ、ディスコード・フェイザーを次々と街や軍隊に向けて発射する映像に切り替わった。

 

『こうして戦争は終結。しかし、ラグナメイルの次元共鳴兵器により、地球上の全ドラグニウム反応炉が共鳴爆発』

 

そのアナウンスを裏付けるかのように、そして黒いヴィルキス達は光学兵器を発射し、アケノミハシラを壊す映像が映し出される。しかし、アケノミハシラから核爆発でも起こったかのような映像が次々と映し出された。

 

『地球は全域に渡って生存困難な汚染環境となり、全ての文明は崩壊しました。以上です。他にご質問は?』

 

「世界が…滅んだ?」

 

その幕切れに、思わずタスクが呟く。

 

「何なのこれ…? 何の冗談よ…」

 

その幕切れに、思わずタスクが呟く。

 

「何なのこれ…? 何の冗談よ…」

 

そしてまたアンジュも、呆然としながら呟いた。が、彼女は信じたくはないのだろう。

 

「バッカみたい! いつの話よ、それ!」

 

鼻で笑って吐き捨てた。しかし、それが強がりと紙一重なのは冷静に見れば誰にでもわかることだった。

 

『538年前』

 

そして、ひまわりは己の職務を忠実に実行して、いつの話かを回答する。

 

『えっ!?』

 

その回答にアンジュとタスクの戸惑いが重なったのも、当然と言えた。

 

『538年193日前です』

 

ひまわりがニッコリと微笑みながら続ける。

 

『世界各地、20976箇所のシェルターに熱・動体・生命反応無し。現在地球上に存在する人間は、貴方が七人だけです』

 

そして、それが止めになった。そして収穫…といえば収穫を得ると、アンジュとタスク、クリストバル達は元の場所へと戻ってきたのだった。

 

 

「ふふっ、500年…か」

 

夜。椅子に座って焚き火に当たりながら、タスクが思わず乾いた笑いを上げた。その手には、腐食した甘酒の缶が握られている。

 

「…500年も経てば、文字も変わるか」

 

印刷されたその“甘酒”の文字が読めないのだろう。その言葉に力はないが、ヨハネスが翻訳してくれていた。

 

「…あんな紙芝居、信じてるの?」

 

対面に同じように椅子に座っているアンジュは逆に、その言葉は力強かった。認めたくない現実を否定したいがためのものなのだろうが。

 

「あの白骨を見れば…ね」

 

タスクがその手に握った甘酒の缶を地面に置く。

 

「…全部造り物かもしれないでしょう?」

 

「ですがアンジュさん…あれは確かに」

 

しかしアンジュの声はほんの僅かだが震えているように聞いて取れた。

 

「何のためにそんなことを?」

 

頭の後ろで手を組みながら、タスクが呆れたように呟く。これまでの状況から考えても、タスクの意見の方が正しい。が、アンジュはやはり認めたくないのだろう。

 

「知らないわよ、そんなこと!」

 

表情を険しくさせながら勢い良く立ち上がって、タスクに食って掛かった。

 

「私は、この目で見たものしか信じない!」

 

自身の不安を打ち消すためだろうかそう力強く宣言すると、すぐ側で休んでいるヴィヴィアンに近づいた。

 

「ヴィヴィアン、乗せて!」

 

(ほい来た!)

 

了承のいななきを上げると、ヴィヴィアンはアンジュを乗せる。そして、夜の闇へと空高く舞い上がっていった。

 

「……」

 

そんなアンジュを見送ったタスクとクリストバル、ギルバート、ヨハネス、キーラ、メアは、なんとも形容しがたい複雑な表情を夜の闇に浮かべていたのであった。

 

 

 

(あるわけないわ…)

 

タスクと別れ、ヴィヴィアンの背に乗りながらアンジュは一人険しい表情で考え込んでいた。

 

(ここが500年後の、未来だなんて…)

 

そして、ギリッと唇を噛む。

 

(そんな、馬鹿げた話…!)

 

しかし、そのアンジュの思いを否定するかのように、どれだけ飛んでもアンジュを喜ばせるようなものは何一つ出てこなかった。

 

 

「ちょっと、ヴィヴィアン!」

 

ヴィルキスを修理していたタスクが振り返った。散々飛び回ったアンジュたちだったが、収穫はなく、戻ってきていたのだ。

 

「まだ北の方に行ってないじゃない。ほら、起きて。頑張って」

 

アンジュが促すが、ヴィヴィアンはか細い咆哮を上げるだけでアンジュに従う素振りは見せない。だが、それは仕方ないとも言えた。何せ、背中に乗ってるだけのアンジュと違い、ヴィヴィアンは自分の身体に人を一人乗せながら空を飛んでいるのだ。エネルギー消費の激しさはアンジュと比べるまでもないだろう。要するに、疲労困憊なのである。

 

「ヴィヴィアン、ほら、起きて」

 

が、アンジュは納得できないために再びヴィヴィアンをけしかける。その様子に、流石にタスクやクリストバル達も黙っていられなくなった。

 

「アンジュ、その子に無理させちゃダメだ」

 

ヨハネスがたしなめるものの、今のアンジュはその言葉に耳を傾けられるほど精神的な余裕はなかった。それは、その目の下にクマが出来ていることでも十分に窺い知ることが出来た。

 

「起きなさいよ! この役立たず!」

 

アンジュは一度タスクをキッと睨んだ後、ヴィヴィアンに向かって怒鳴る。その剣幕か、それとも言葉の内容にかはわからないが、ヴィヴィアンは怯えて逃げてしまった。

 

「っ!何てことを言うんだ!」

 

その態度や物言いにタスクは思わずアンジュの腕を掴む。だがすぐに、

 

「放して!」

 

鋭く叫ぶと、アンジュは強引にその腕を振り解いた。タスクは困惑したものの、アンジュを諭すように努めて冷静に話しかける。

 

「少し休んだほうがいい」

 

「休んでどうなるの? こんなわけのわからないところに居ろって言うの?」

 

だが、アンジュは聞く耳持たない。そして、

 

「確かめたいのよ! アルゼナルがどうなったか! モモカや皆が無事なのか! …あいつが、本当に死んだのか……」

 

噛み付いた。が、強がっていてもやはり不安を感じているのだろう、最後には勢いなくなってしまったが。

 

そんなアンジュにこれ以上何と言って声をかければ良いかわからず、タスクも戸惑ってしまう。

 

「…貴方だって、早く帰らないと困るんでしょう? あの女が待ってるんだし…ね、ヴィルキスの騎士さん?」

 

イライラした様子でタスクの脇をすり抜けると、アンジュはついタスクに当たってしまうのだった。

 

「そうだ…」

 

振り返り、思わず皮肉めいた口調でアンジュがタスクに顔を向ける。対照的に、タスクはアンジュを揶揄することもなく表情を引き締めて答えを返した。

 

「俺は生命に代えても、君とヴィルキスを護る」

 

「リベルタスのために…ね。サリアと一緒」

 

アンジュの不機嫌は未だ収まらず、そう吐き捨てるとそのまま少し歩き、あらかじめおこしておいた焚き火の前で佇んだ。

 

「私を利用することしか考えてない、あの女の犬。」

 

「違う! 俺は本当に君を…」

 

しかし、今のアンジュにそれ以上何と声をかけて良いかわからず、タスクは言葉に詰まってしまった。

 

「帰れないなら…それでも良いんじゃない?」

 

そのまま、アンジュはやってられないといった態度で焚き火の前に腰を下ろした。

 

「ええ…?」

 

まさかそんな言葉がアンジュの口から出てくるとは思わなかったのだろう、タスクが戸惑うのも無理はなかった。そんなタスクを置き去りにしたまま、アンジュが言葉を重ねる。

 

「だって、あんな最低最悪のゴミ作戦、どうせ上手くいかないし」

 

「…ゴミ?」

 

アンジュが言った不用意な一言に、タスクがそれまでとはまるで違う、底冷えのするような怜悧な呟きを呟いた。その事にメアがアンジュに注意する。

 

「アンジュ!いい加減にしなさい!それとその言葉、今すぐ撤回してタスクに謝りなさい!」

 

「そうでしょう? 世界を壊してノーマを解放する。そのためなら、何人犠牲を出したって構わないなんて…。それで何が解放できるんだか。笑っちゃうわ」

 

「……もう良いです、メアさん…。」

 

怒りからか、タスクはぎゅっと拳を握り締めた。グローブが衣擦れの音を立てる。

 

「…じゃあ俺の両親も、ゴミに参加して無駄死にした…そういうことか?」

 

アンジュに背を向けたタスクが、底冷えする口調のまま淡々と呟く。

 

「!?…えっ…?」

 

アンジュが今までの傲慢な物言いからうって変わって不安げな表情になって振り返る。

 

「…俺たち古の民は、エンブリヲから世界を開放するためにずっと闘ってきた。父さんと母さんは、マナが使えない俺たちやノーマが生きていける世界を創ろうとして闘い、死んだ」

 

口調は抑えようとはしているが、どうしても激情に駆られてきつくなっていく。そして、

 

「死んでいった仲間も…両親の想いも…全部ゴミだというんだな、君は!」

 

やはり激情は抑えきれず、タスクはきつい眼差しを向けて振り返り、初めてアンジュに怒鳴ったのだった。

 

「それ…は…」

 

紅い瞳が不安げに揺れる。ここにきて初めて、アンジュは自分が言いすぎたと理解したのだった。が、覆水は盆に返らず。タスクはそのまま顔を背けてその場を立ち去った。アンジュも何も言うことは出来ず、ただ俯くことしかできなかった。

 

「アンジュ…タスクは複雑な事情がある。俺はそういう人達を色々見てきた。けど、俺達はその人達を励ます言葉をくれるだけしか出来ない。だからこそ、正しい判断を決めるのだ。」

 

クリストバルはそう呟き、タスクを追うのであった。

 

「判断を…決める…」

 

アンジュはそう考えながら、知らずにタスクの心を傷つけ仕舞った事に後悔をしていたのであった。

 

 

その翌日、クリストバル達はタスクと一緒にヴィルキスの修理をしていて、二人の心模様を表すかのように静かな雨も降りしきっている。この日もタスクはヴィルキスの修理に勤しんでいたそんな中、アンジュはただ一人でどこか謝るタイミングを計っていたが、どうにも見つけられずにいた。

 

「(どうしよう…、タスクにどう言えば)」

 

っとアンジュは地下の店にある物を見つけ、それは何処にでもありそうな、色々なアクセサリーを吊るしてある業務用のアクセサリースタンドだった。

 

「わあっ…」

 

嬉しそうな声を上げ、思わずアンジュはそこに近寄った。

 

「これ、可愛い…」

 

その中の一つを手に取るとしみじみと呟いた。可愛いものが好きなのはやはり女性だからか。そして又、アンジュの脳裏に一つの記憶が蘇ってきた。それは、ヴィヴィアンがぺロリーナのマスコットを自分に渡そうとしてくれたときのことだった。

 

「……」

 

それを思い出したアンジュはアクセサリースタンドの一つを手に取ると歩き出す。その表情は、今までのものとは違って晴れやかなものであり、美しい自然な笑みが浮かんでいたのだった。

アンジュがそうしている頃、いつの間にか雲は過ぎ去り、顔を現した太陽は随分傾いてもうすぐ日の入りになろうかとしていた。そんな中、タスクとキーラが額に汗しながらヴィルキスの修理を懸命に続けている。と、不意にその耳に微かだが金属音が聞こえてきた。

 

「?」

 

空耳かと思って顔を上げてみると、修理用に組んだ足場のパイプに、日の光を反射させて輝くネックレスが引っ掛けてあった。キーラはタスクを呼び、引っ掛けてあるネックレスを見る。

 

「アンジュ?」

 

タスクが、見つからないように音を立てないようにその場から立ち去ろうとしていたアンジュに声をかける。タスクから顔は見えないが、思わず立ち止まってしまったアンジュは何ともバツの悪い表情をしていたのだった。

 

「…に、似合うかなって。それだけ…」

 

思うところがあって態度を改めたものの、それでもやはりどんな顔をすればいいのかわからないのだろう、アンジュはタスクに背を向けたままぶっきらぼうにそう答えることしか出来なかった。

そんなアンジュにタスクは少し戸惑っていたが、すぐに笑顔になるとそれを手にしてアンジュに近づく。

 

「どう?」

 

そして、ネックレスをかけながらアンジュに尋ねる。アンジュが振り返ると、そこにはネックレスを首から提げたタスクの姿があった。

 

「いいん…じゃない?」

 

言葉こそ素っ気ないものの、日の光でわかりにくかったが確かにアンジュは頬を染めていた。そして視線を逸らす。

 

「ありがとう」

 

タスクは柔らかく微笑むとアンジュに礼を言った。

 

「疲れただろう? ご飯にしよう」

 

そして食事に誘う。が、

 

「あのっ!」

 

アンジュがそのタスクの足を止めた。

 

「ん?」

 

「あの…ごめん…なさい…」

 

「「「!?ええっ!?」」」

 

小さな声だが確かに謝ったアンジュに、タスクとクリストバル達が驚きを隠せなかった表情をする。

 

「君って…謝れたんだ!?」

 

「これは……驚いた。」

 

「驚きですわ…」

 

「なっ、何よそれ!」

 

思わずアンジュが不満げな口調になる。もっとも、こっちのほうが彼女らしいといえば彼女らしいのだが。

そんなアンジュへとタスクは歩み寄る。そして、ゆっくりと右手を差し出した。

 

「あ…」

 

「俺こそ、きつく当たってごめん」

 

「う、うん…」

 

顔を上げてタスクの顔に視線を合わせると、ぎこちないながらもしっかりとその手を握り返すアンジュ。そこにヴィヴィアンが帰ってきた。

 

「ヴィヴィアン!」

 

アンジュにふぉえ? っという感じで咽喉を鳴らして答えるヴィヴィアン。

 

「昨夜はゴメン。私、言い過ぎたわ」

 

そのまま、ヴィヴィアンの首を包むように優しくアンジュは腕を回した。

 

「ありがとう、ヴィヴィアン」

 

ヴィヴィアンはただ不思議そうに咽喉を鳴らすだけだった。

 

 

翌日、また雲が空を覆う中、タスクとクリストバルが昨日と同じようにヴィルキスの修理に勤しんでいる。ギルバートとヨハネス、キーラとメアは食糧調達に。

 

「ヘックシュッ!」

 

タスクは不意にくしゃみが出し、思わず顔を上げる。今度は雨ではなく雪が空から舞い降り始めていた。

 

「雪……冬が近いか。」

 

「道理で寒いわけだ…」

 

身を震わせながら思わず呟く。そんなタスクの耳に、

 

「タスクーっ!皆んなーっ!」

 

聞きなれた声が届いた。

 

「凄いもの見つけたわ!」

 

ヴィヴィアンに乗って戻ってきたアンジュが興奮気味に話しかけたのだ。どうしたのだろうと呆気に取られたタスク達だったが、誘導された先にあるものを見て成る程これはと納得した。

タスクのマシンのバッテリーからケーブルを繋げて電源として、エンジンを入れる。するとそれは生き返った。

ケバケバしいピンク色のネオンが屋上に設置された建物…いわゆるラブホテルがアンジュの見つけた凄いものだったのだ。(クリストバル達はこの建物が何なのか二人と一匹に何も言わずにしていた。)

 

「屋根もある! ベッドもある! お風呂もある!」

 

「奇跡的な保存状態ですね」

 

内部の一室に足を踏み入れたアンジュはその状況に興奮している。タスクやクリストバル、ギルバート、ヨハネス、キーラ、メア、アンジュとほどではないが、それでも喜んでいるのが窺えた。

 

「きっと名のある貴族のお城だったの違いないわ!」

 

…まあ、確かに城っぽい外観のそれもあるのだが、それでもここが本来何のための施設か知らないというのは幸せである。無邪気に喜ぶアンジュに横から水が注される可能性がないのは喜ぶべきことだろう、うん。

 

「見つけたヴィヴィアンに感謝しなきゃね」

 

アンジュが嬉しそうにそう言うと、ヴィヴィアンもまた嬉しそうに咽喉を鳴らしたのであった。

 

「お風呂入ってくる! タスク、掃除お願いね!」

 

「…はいはい、お姫様」

 

「フフッ。」

 

ウキウキしながらアンジュはヴィヴィアンを伴って浴場へ向かい、タスクとクリストバルは少々呆れながらもにこやかに答えた。

こうして、七人と一匹は久々にゆっくりと休める場所を確保したのであった。

それぞれの部屋を掃除しているタスクとクリストバル、ギルバート、ヨハネスはそれぞれ使う部屋を掃除をする。キーラとメアはクリストバルに先に風呂に入れと言われ、お言葉に甘えてアンジュとヴィヴィアンとの三人と一匹でお風呂を満喫していた。そんな中、アンジュはキーラとメアにアーサーの事を質問する。

 

「アーサーについて?」

 

「うん…あのトリト村って言う場所で。何がどうなってるのか、分からなかった。穢れボスキートとか、12年前の事とか……。」

 

「無理もないよ。あの場にいた本人にとってはトラウマ以上の悪魔だから。アーサーね……“家族と慕ってくれた人達を殺してしまった事に、深い罪悪感”を持ってしまったのよ。」

 

「え……?」

 

「あなたの二番目のお兄さんが言っていたじゃない?『君の罪は真の強さの覚悟を持たなかった』と。その事で、もう誰も失わせない、もう誰も死なせはさせない…誰か守りたい力を持ちたいと言う物に目覚めてしまったのよ。」

 

「(私と同じだ……アイツも私の様な責任感を。)」

 

「ま、それにアーサーは……自分の奥さんや義弟妹を守ろうと力を付けようとしてる♪」

 

「奥さん!?アイツ結婚してたの!?」

 

「先週ね。クリストバル兄さんに続いて、あの子が嫁ゲットした事に私達も驚いたよ。これがその写真よ」

 

「へぇ〜、結構美人じゃない?」

 

「でしょう?」

 

「(なんてデカさなの…。)……ん!?」

 

「何で!?」

 

「え?あぁ〜そっか、アンジュには言ってなかったね。二人とも、アーサーに助けられたのよ。」

 

「アイツが…お父様とお母様を!?」

 

「あなたがアルゼナルに連行された日、ソフィア皇妃はあなたを庇って死にかけたらしいの。皇帝陛下は幽閉されていた所をアーサーは見ていて、二人とも助けてメディカルカプセルの中に入れて治療してたのよ。安心して、二人とも完治してクラウドブルースで保護されてるわ。」

 

「お父様とお母様が…生きている!」

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの風呂をたっぷりと満喫し、ガウンに着替えてゆっくりと寛いでいたアンジュが窓の外を眺めながらそう言った。降り出した雪はいつの間にか積もりだし、見えている光景を白く染め上げ始めている。ヴィヴィアンはその身体の大きさゆえ、アンジュたちとは別の部屋で、今はもうぐっすりと夢の中だった。

 

「ありがとう、タスク」

 

「ん?」

 

タスクは壊れてしまったのか、それとも元から使えないものを使えるようにしているのかはわからないが、床に座ってドライバーを片手にドライヤーを見ているタスクが顔を上げる。タスクも風呂を満喫したのだろう、アンジュと同じガウンに身を包んでいた。

 

「色々と。」

 

背を向けたまま、アンジュが続ける。向かい合わないのは照れ臭さの裏返しだろうか。

 

「沢山のこと知ってるし、いつも冷静だし、優しいし、頼りにしてる」

 

だがすぐにアンジュが振り返って、タスクに穏やかな視線を向けた。

 

「ははは…」

 

突然そう言われて戸惑っているのだろうか、はにかむように微笑むとドライヤーのスイッチを入れた。使えるようになったのか、排気音を上げながらドライヤーが動作する。

 

「私はダメね。すぐに感情的になって、意地になって、パニックになって…」

 

「仕方ないよ。こんな状況なら、誰だってそうなるさ…」

 

タスクがそう返す。二人の間に流れる穏やかな空気が、少し前までのわだかまりやぎこちなさを払拭しているのを感じさせた。

 

「皇女様がノーマになって、ドラゴンと戦う兵士になって、とんでもない兵器に乗せられて、気付いたら500年後…」

 

「そうよね…。ちょっと、色々ありすぎよね」

 

アンジュは窓際から移動して、ダブルベッドにゆっくりと腰を下ろす。

 

「でも、悪いことばかりじゃなかったわ。貴方や、ヴィヴィアンにも逢えたし。色んなこともわかった。…最期まで、わかりあえなかった人もいたけど」

 

そこで、少し表情が曇った。思い出していたのだ、自身の兄であるジュリオのことを。

 

「お兄さんかい…?」

 

タスクもそれを察したからだろう、アンジュと同じように表情が曇り、悲しそうな口調になっていた。

 

「ねえ?」

 

少し時間を置いた後、雰囲気を変えるためだろうかアンジュが問いかけた。

 

「ん?」

 

「あの、エンブリヲって何者?」

 

するとタスクは、床に座ったまま身体をアンジュの方へと向けた。

 

「…文明の全てを陰から掌握し、世界を束ねる最高指導者。俺たちが打倒すべき最強最大の敵…だった」

 

「?…だった?」

 

タスクの言葉が過去形になっていることに、アンジュが首を捻った。

 

「500年も前の話さ」

 

頭の後ろで手を組むと、タスクはおどけたようにそう言った。

 

「そうね」

 

アンジュも静かに微笑む。

 

二人は顔を合わせると、クスクスと笑い合った。

 

「随分遠くまで来ちゃったな…」

 

笑い終わった後、振り返るかのように横を向いておもむろにタスクが口を開いた。

 

「でも、生きてる」

 

タスクの呟きを受けてそう言ったアンジュに、タスクは又視線を戻した。

 

「生きてさえいれば、何とかなるでしょ?」

 

そして、柔らかく微笑んだ。

 

「強いね、アンジュは」

 

タスクが素直な気持ちを口に出した。

 

「バカにしてる?」

 

「褒めてるんだよ」

 

そう言われ、アンジュが嬉しそうに微笑んだ。

 

「さて、と」

 

話はここまでというつもりだろうか、タスクが立ち上がった。

 

「久しぶりのベッドだ。ゆっくりお休み」

 

「タスクは?」

 

そのまま部屋を去ろうとするタスクの背中に、アンジュが声をかけた。

 

「廊下で寝るよ」

 

振り返ってそう答える。まあ、至極当然といえば当然の答えではある。

 

「ここで良いじゃない」

 

が、アンジュはそう答えて同室で寝るように促した。意識しての発言かどうかはわからないが、何とも大胆である。

 

「い、いや、でも…」

 

案の定、タスクが戸惑っている。男として嬉しいシチュエーションには違いないが、かと言って素直に頷けるほどタスクは豪の者ではなかった。

 

「いいでしょ?」

 

そんなタスクにアンジュが追い打ちをかける。上目遣いになり、寂しげな表情をしたのだ。どれだけ男勝りでも、やはり心細いのだろうか。

 

「う…」

 

そんな表情を見せられ、タスクは言葉に詰まってしまう。結果、

 

「じゃ、じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

こうなるのも当然のことだった。タスクはそのまま反転すると、ソファーに腰を下ろす。が、その瞬間、ソファーは音を立てて壊れてしまった。やはり経年劣化は否めなかったのだろう。その姿にアンジュは楽しそうに笑い、タスクの悲鳴とソファーが壊れた音で近くの部屋で休んでいたヴィヴィアンや隣の部屋で休んでいたグレイスやティアが思わず目を覚ましてしまっていた。

 

「もう!何してるのよ♪」

 

「ははは…」

 

アンジュの突っ込みにタスクも苦笑するしかなかった。そしてひとしきり笑った後、アンジュは頬を染める。そして、

 

「こっち…来たら…?」

 

と、自分が座っているダブルベッドにタスクを誘ったのだった。

 

「いっ!?流石に、そこまでは…」

 

アンジュの大胆な誘いにタスクも当然のように頬を赤らめる。さて、それでは結果どうなったかというと…。

 

 

(何の音~?)

 

寝惚けた感じの口調でヴィヴィアンが音源であるアンジュの部屋を覗き込む。そしてその瞬間、ヴィヴィアンは固まってしまった。何故かと言うと、

 

『(わ、わ!)』

 

驚きでパニックになりながらそのまま更に顔を近づけて覗き込む。そこには、枕を並べてダブルベッドに入っているアンジュとタスクの姿があったからだ。

 

「ホント、静かね…」

 

「う、うん」

 

「世界には、私たちしか居ないんだ…」

 

「う、ぅん」

 

なんともぎこちない会話である。いや、この場合は初々しいと言ったほうが正しいかもしれない。身を硬くしたまま、タスクがロボットのようにアンジュに顔を向けた。

 

「こんな穏やかな気持ち、何時ぶりだろう…」

 

そして寝返りをうつと、アンジュはタスクに背を向けた。

 

「…私たちを逃がしてくれたのかも」

 

そしてそのまま、独り言のように口を開く。

 

「えっ?」

 

「ヴィルキスが戦いのない、世界に…」

 

そして、アンジュは目を閉じると寝息を立て始める。

 

「あ…」

 

タスクは上半身を起こすとアンジュの顔を覗き込んだ。気持ち良さそうに眠りに就いている。その顔を見たタスクはゆっくりゆっくりと、アンジュを起こさないように慎重にベッドから出て立ち上がる。が、

 

「…しないの?」

 

いきなりアンジュが呟いた。どうやら狸寝入りだったようだ。

 

「ええっ!?」

 

その言葉にタスクが顔を真っ赤にして驚いた。狸寝入りもそうだが、何より発言の内容に度肝を抜かれたのだ。

 

「いやいやいや!」

 

パニクりながら何とかタスクが言葉を続ける。

 

「俺は、ヴィルキスの騎士だ!君に手を出すなんて、そんな!」

 

「もしかして私のこと、嫌いなの?」

 

「そんなことあるわけないだろう!」

 

「じゃあ…」

 

「だから、えーと…」

 

一瞬口籠ったタスクだったが、顔を真っ赤にしたままアンジュから背けると、

 

「お、畏れ、多くて…」

 

蚊の鳴くような声でそう答えたのだった。

 

「はぁ?」

 

思わずアンジュが布団から跳ね起きた。

 

「10年前…」

 

そんなアンジュに、タスクが己の心境を吐露し始める。

 

「えっと…正確には548年前か、リベルタスが失敗した。右腕を失ったアレクトラは二度とヴィルキスに乗れなくなり、俺の両親も仲間も死んだ」

 

アンジュはタスクの言葉を邪魔することなく黙って聞いている。

 

「俺にはヴィルキスの騎士としての使命だけが残された。でも、俺は怖かった。見たことも会ったこともない誰かのために戦って死ぬ…その使命が……。俺は逃げた。あの深い森に。戦う理由、生きる理由も見当たらず、ただ逃げた。義兄弟であるアーサーやライド、エクエス、マイラの思いを投げ捨てて……そんなときに、君と出会った!」

 

アンジュがハッと息を呑んだ。

 

「君は、戦っていた。抗っていた! 小さな身体で……目が覚めたんだ。俺は何をやってるんだろうって…あの時、やっと騎士である意味を見つけたんだ。俺は歩き出せたんだ。押し付けられた使命じゃない、自分の意志で!…だから俺は、君を護れればそれで良いっていうか、その…」

 

「ヘタレ」

 

タスクの独白を、アンジュは容赦なく斬って捨てた。

 

「えっ!?」

 

振り向いたアンジュは不満そうな表情をしている。

 

「でも、純粋」

 

だがすぐにその表情は微笑みに変わった。そしてそのままベッドの上に立ち上がるとガウンを緩め、胸こそ手を交差させて隠していたものの、肩からすべり下ろす。

 

「あっ…あっ…」

 

あまりの展開に、思わずタスクは何も言えなくなってしまう。

 

「私は、血塗れ…」

 

今度はアンジュが独白する番だった。その表情は曇っているが。

 

「人間を殺し、ドラゴンを殺し、兄ですら死に追いやった。私は血と、罪と、死に塗れている。貴方に護ってもらう資格なんて…」

 

「そんなことない!」

 

自然とタスクはアンジュの側に駆け寄っていた。

 

「アンジュ、君は綺麗だ!」

 

その言葉にアンジュの瞳が揺れる。勢いそのままに、タスクはアンジュの両肩に手を置いた。素肌に触れられ、アンジュの身体が一瞬だけ震える。

 

「君がどれだけ血に塗れても、俺だけは君の側に居る!」

 

「暴力的で、気まぐれで、好き嫌いが激しいけど…それでも?」

 

「ああ、それでも」

 

不安げに揺れていたアンジュの瞳だったが、タスクのハッキリとした返事を聞いて救われたのか、諭された後は優しく微笑んでいた。そしてそのまま目を閉じる。

 

「……」

 

タスクも同じように目を閉じると、二人はそのまま唇を重ね合わせたのだった。

 

『(きゃあ~~~!!!)』

 

外からデバガメしていたヴィヴィアンがあまりの展開に叫ぶ。別の部屋の窓から見ていたクリストバルとギルバート、ヨハネス、キーラ、メアが微笑む。それが合図というわけでもないだろうが、予想だにしない来訪者が三人(二人と一匹?)の元に舞い降りてきた。突如、空をつんざくような咆哮が響き渡ったのだ。その直後、地面が振動してアンジュたちが泊まっているラブホも激しく揺れた。

 

「きゃあーっ!」

 

「アンジュ!」

 

足場が柔らかいベッドの上だったということもあり、アンジュはバランスを崩して床に投げ出されてしまう。そんなアンジュともつれるかのようにタスクも床に投げ出された。そしてその直後、窓が粉々に砕け散ったのだ。

 

「ちょっとタスク! あんたまた!」

 

「ごめん」

 

二人には何が起こったかというと、最早お約束のようにタスクがアンジュの股間に頭を突っ込んでいたのである。タスク本人は不意の衝撃からアンジュを護ろうとしたのだが、結果としてこうなってしまっては弁明の余地はない。そんな二人だったが、一体何がと思って先程の衝撃で亀裂が入って外を覗けるようになった外壁に視線を外に向ける。そこには

 

「救難信号を出していたのはお前たちか?」

 

ガレオン級の頭に乗っている人物に驚く、その上に乗っているのはアーサーと二人組の女性だったからだ。

 

「おぉ!タス…ク!?もしかして二人とも……お取り込み中だった?」

 

「アーサーって……!?」

 

「「ドラゴン!?」」

 

「ようこそ、偽りの民よ、我らの世界……【本当の地球】に。」

 

ようやく再会したアーサーとタスク、二人が待ち受ける運命とはーーー。

 

 

 

真実の地球の森林の中、小さな特異点が開き、中から白いローブを見に纏った青年が現れる。

 

「此方ファビアス、目標を発見しました。これより次元迷彩で隠密監視を開始する。」

 

『了解だファビアス。目標が《ソルの光》に覚醒した後、接触し我々の遺物を渡してやるのだ。』

 

「了解だグレファ。通信終了する。」

 

ファビアスと言う青年は双眼鏡である人物を覗く。それは飛行中のドラゴンの頭部に座っているアーサーであった。

 

「あれが【エクシリアの直系】アルトリウス・コールブランド…。我ら共和国の希望にして、平和の光を照らす導士…。」

 

果たしてこの青年は何者なのか。青年は双眼鏡をしまい、迷彩での隠密行動を開始する。

 

 

 

丁度同じ頃、偽りの地球のとある浜辺ーーーそこからプラズマが発し、現れたのは黒いスーツ、各部に銀色の球体が埋め込まれたムーバル・スーツの男性が現れる。男性は辺りを見渡し、インカムで誰かと通信する。

 

「……ここは?」

 

「大丈夫よ、元の世界……彼奴がまだ不完全な状態の世界よ。」

 

「そうか…アイツらがやっている間に、“あれ”を探し、“あれ”を見つけ、この世界に真実と闇をばら撒く。」

 

「そうすれば…farther・Xの履歴と他の一族、ジュリオ・飛鳥・ミスルギの野望も一気に、崩れる“砂の城”へと変わる……。」

 

「そうだ。その為にはこの世界にもいる…闇ブローカーと反政府団体、闇業者と手を組まなければならない。次の未来へ歩む為に!フォロー頼めるか?」

 

「ソルよ永遠に……全力で尽くすわ。」

 

「フッ♪」

 

「来い!『アルティメット・ガルーダ』!!」

 

すると彼の背後からプラズマが発せられ、黄金のアーマーを見に纏ったフラドーラに似た機体が現れる。

 

「待っていろ……今から俺が…“俺達”の戦いを優位にする様に進めてやる!」

 

謎の青年は機体に乗り込み、ミスルギ皇国へと向かうのであった。

 

 

一方、ある者の夢の中ーーー遠い遠い…遥かな場所、人類が未だに到達できない領域…『宇宙』無限に広がる星の海、静寂に満ちた光と闇が重なる場所、二つの力がぶつかり合っていた。一つは不気味な奇声を笑い声として上げる黒い球体、もう一つは光り輝く白い球体と全身機械に満ち、光の翼を噴出する赤き聖龍、小さな青、緑、灰の球体であった。すると聖龍が白い球体に問い掛ける。

 

『我が主よ!これ以上は無理です!無茶です!主は先の【死霊龍王】の戦いで傷は癒えていませぬ!その身体では奴の主である【常黄泉ノ神皇』に勝てませぬ!』

 

『何を言う!傷を癒している間、奴が次の星の生命を喰らうてしまう!』

 

『しかし!!』

 

『それに、後の事はエクシリアの王子であるアルファリオンと生き残った星の民に託しておる!私が見込んだ人間!私の愛する家族でもある!』

 

『主よ!!』

 

『常黄泉ノ神皇!』

 

『……ワタシと一体となれ。そうすれば怒り、悲しみ、ありとあらゆる負の感情もなくなり、幸福だけの存在となる。』

 

『誰がお前の一部など!彼らや民衆はお前を信仰し、微笑んでいた!!なのにリセットするなんて!お前は神でもなんでもない!人を操り人として扱う異形者だ!!』

 

『そうですか、ならば仕方ありませんね。』

 

『っ!!まさか!!?』

 

『そのまさかですよ、【太陽ノ神帝】あなたが救ったエクシリア人と星の民達に…私の刺客達を送りましたの。』

 

『常黄泉ノ神皇!貴様!!』

 

『話はこれくらいにして、あなたも彼等のようにワタシと一つになりなさい!!』

 

『滅びろ!陽光の象徴!!!!』

 

『(常黄泉ノ神皇の力が以前よりも膨れ上がっている!!くっ!信仰者を何だと思っているのだ!!かくなる上は!)』

 

『コロッサス、ヤトウ、リュウ、アケロン…お前達を遥かな未来へ送る。』

 

『『『『ッ!!??』』』』

 

『そこには既に奴がいない時代となるだろう。』

 

『何を言うのですか!?主よ!あなた様がいなくなれば、エクシリアはどうします!?』

 

『心配無用だ。その事は『超星獣万能宇宙戦闘母艦クラウドドラゴン』に任せてある!』

 

『アルファリオンを頼む!!』

 

『……分かりました!主よ!あなた様の無念!彼奴の刺客たる『ゼノム』に我らの裁きの鉄槌で晴らして見せます!!』

 

『さて……殺るか!』

 

白い球体はそう言い、黒い球体へと向かっていくのであった。

 

そしてその者の夢が消え、視界に映る何も無い闇へと戻っていくのであった。

 


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