無事アルゼナルの皆と合流したアンジュ達、そして轟天号と連邦艦隊はアルゼナルの旗艦であるアウローラと共に海底へと進んでいた。
アウローラのブリッジに居るオリビエが提示報告をする。
「第一警戒ライン通過」
「まさか生きてたなんて…」
ヒカルが別の部屋で話し合っているアンジュ達の方を見ながら言い、それにはオリビエも同意しかねる。
「ヴィヴィアンもてっきりロストしたかと思ってました」
「今まで何処に行ってたんだ…?」
「“シンギュラーの向こう”…だって」
っとパメラが言った言葉にヒカルとオリビエが思わず驚きを隠せない。
「「うっそ~!?」」
「本当よ。それにしても…」
パメラが共に付いて来ている轟天号とエクレール、火龍、ランブリング、ザグザケル級巡洋艦を見て、あり得なさそうな表情をしながら呟く。
「人間が人間と戦う地球連邦、連れて来たのは前の戦闘でアンジュを助けたアルトリウスって言う男の人の親族と仲間達だって言ってたけど…」
「今だに信じられません。人間が私達を助けるだなんて…。」
そうオリビエはつぶやく。
そして別の部屋でアンジュ達がジル達と自分達が行っていた並行世界の事を話していた。
「並行宇宙ともう一つの地球…、ドラゴン、いや…遺伝子改造した本来あるべきの人間の世界…そしてこの世界で暗躍するアルザード帝国とアルトリスの一族を絶滅し、彼らの背後で支援する巨大異次元集団ゼノム…か。」
そうジルは呟きながら煙草を取り出す。
「彼女達は話し合いが出来るわ。この世界の腐った人間達とは違って。手を組むべきじゃないかしら。ドラゴンと地球連邦と…。」
「何?」
「ドラゴン達と連邦政府の目的はアウラの奪還、アウラと取り戻せば全てのエネルギーが立たれ、人間のマナも世界も停止するとう話。そして世界の均衡を改善するって。」
それにヒルダ達は驚く。
「シンギュラーも開けなくなるし、パラメイルも必要なくなる。何よりマナのエネルギーを得るためにノーマがドラゴンを狩る、そんな人間同士食い合う馬鹿げた戦いを終わらせる事が出来るわ。だけど、サラ子達や地球連邦軍の進攻作戦は失敗した、被害は尋常じゃない…互いの目的の為も共同作戦を持つべきだと私は思う。」
「敵の敵は味方か、成程…」
っとジャスミンがアンジュ達の会話を聞いて納得し、それにロザリーが思わず抗議する。
「じょ!冗談だろ!?人間は兎も角!あいつ等は今まで沢山の仲間を殺してきた化け物なんだぞ!! その地球連邦って言う軍隊ならまだしも、ドラゴンと協力~!?在りあねっつーの!!」
そんな中でヴィヴィアンが思わず頬を膨らませてロザリーを睨む。
「話して見れば分かるわ。」
「無駄だ、奴らは信じるに値しない…。」
ジルはそう言いながら、タバコを灰皿に捨てる。
「アウラなんだか知らないがドラゴン一匹助けただけでリベルタスが終わると思っているのか? 神気取りの支配者エンブリヲと神の頂点と名乗るケーニヒス、さらにはそのゼノムの完全に抹殺し、この世界を壊す…それ以外にノーマを解放するすべはない。忘れたわけあるまい、アンジュ。祖国、兄妹、民衆に裏切られてきた過去、人間共への怒りを。」
「っ!!」
「差別と偏見なこの世界を打ち壊す。それがお前の意思ではなかったのか?」
「それは!」
「腑抜けた者だな…ドラゴンに取り込まれ、洗脳でもされたか?それとも、女になったか?」
「「っ!?」」
アンジュとタスクはさらに驚くも、ジルは言う。
「ピンクの花園で男と乳繰り合いたいなら、全て終わらせてからにしろ!」
「くっ!」
「しかしジル… わたし等の戦力が心持たないのも事実だ。」
「サリア達が寝返っちまったからねぇ。」
「「「!?」」」
「アンジュ、ドラゴン達とのコンタクトはとれるのかい?」
「ヴィルキスなら、シンギュラーを開かなくてもあっちまで飛べるわ。」
「そりゃ凄い。ドラゴン達と地球連邦、並びにクラウドブルースの共闘。考えてみる価値はあるんじゃないのかい」
ジャスミンの提案に聞いたヴィヴィアンは思わず嬉しがる。
しかし、ジルは黙ったまま返答せず、それにオリヴァルトは厳しい表情で見ていた。
「ジル…」
ジャスミンが再び問いかけ、それにジルはようやく口を開く。
「………よかろう」
そう言ってジルは扉の方に向かう。
「情報の精査の後、こん後の作戦を通達する。以上だ」
そう言ってジルは出て行く。
「なんだか、冷たい感じだな」
「アンジュたちが戻って来た事に嬉しがっているのさ。そこはあたしが保障するよ」
ジャスミンがそういうが、オリヴァルトはどうにもジルの事が気になる。オリヴァルトはテレパシーでクリストバルとギル、ヨハネ、キーラ、メナに伝える。
「(クリストバル、キーラ…ジルの狙いと目的を探れ。ギル、ヨハネ、メナは向こうにいる格納庫にあるあの機体…邪星神マスラオを渡してやれ。)」
「「「「「(は!)」」」」」
ギルとヨハネ、メナは首をコクリ縦に動かし、行動を開始する。
「(ジル…まさかと思うが。)」
オリヴァルトはジルに企みに警戒するのであった。
アウローラの食堂ーーー
「はむ!もぐもぐ…美味~い! いや~!やっぱりリュミエールの食事は美味い!まずいノーマ飯を思い出す〜〜!」
「ヴィヴィちゃん相変わらず食べるね〜…」
ヴィヴィアンの様子を見てセシルは苦笑いしながら見ていて、その様子にココ達も呆れかえるしかなかった。
するとマギーがヴィヴィアンの身体をあちこち触りまくり、それに擽られて笑ってしまうヴィヴィアン。
「ぷははははっ!く!くすぐったい!」
「本当に…キャンディーなしでもドラゴン化しなくなったのかい?」
「そう…らしい!」
「大した科学力だね~」
マギーはサラ達の世界の科学力に感心する。
「あ!そうだ! 向こうの皆は羽と尻尾があったんだけど、アタシなんでないの?」
「バレるから切ったよ」
「うわっ!!ひでぇ~!!」
ヴィヴィアンの様子にオリヴァルト達は呆れかえってしまい、聞いているクリストバルとキーラもそれに呆れてしまう。
それに……
「全く、あの時の皇女様がここまで強くなるとはね〜」
そう、元隊長のゾーラだ。
アルゼナルから脱出した後、マギーに治療続けて遂に意識が戻ったのだ。日常生活に支障はなく、復帰できるとの事であった。
「それに復帰する理由はあの時助けてくれたアルトリスの坊やに助けられた借りを返す為だからな。新兵二人や皇女さんを助けてくれたおかげで、また“しっとりと遊べる”からなぁ〜♡」
ゾーラの性格は相変わらずであった。するとタスクがアウローラの食堂内を見渡す。
「アウローラ…まだ動いてたんだ。」
「知ってるの?」
「古の民が造ったリベルタスの旗艦。俺達はこの船でエンブリヲと戦ってきたんだ。」
「ベッドは少し狭いですが、とっても快適です。」
「そう、良かった。」
「な〜にも良くねぇよ。戦場からロストして、帰ってきたら変な奴ら連れてくるわ。しかも男のノーマって何だよ!全く!」
「ハハハ…厳密に言うとノーマじゃ。」
「どんだけ自分勝手なんだよ、アンタは!」
「ごめんヒルダ♪」
「…ふんっ」
「何イライラしてんだよ?」
「別に!アンタがいなくなってからこっちは大変だったよ!」
「そうそう…アルゼナルは壊滅するわ、仲間を大勢殺されるわ…トリト村がある島に避難したと思ったらクリス達が敵になるわ。」
「どうして?どうしてサリア達がエンブリヲに?」
「こっちが知りてぇよ!避難した先にケーニヒスって言う爺ィが現れたら、サリアとエルシャとクリスが急にボコボコに撃ってきやがったんだ!」
「恐らく、ケーニヒスの能力だ。」
「《え!?》」
「奴は透き通った心や不安を抱く者の心に闇で囁き、勧誘させる事ができる。そう言った心は騙し易いと分かってだ。」
「汚ねぇ奴だ!」
「待って…と言うことはこの船を守ってるのはあなた達だけなの?」
「そうだけど?」
「よく沈まなかったね、この船。ケーニヒスの大艦隊相手だとまさかと思って。」
「喧嘩売ってんのかテメェは!コイツ等が頑張ってくれたからなぁ。」
ロザリーが親指で三人の若い少女たちの方を指差す。
ノンナ、マリカ、メアリー。戦力不足でライダーに格上げされた新米たちさ」
「私達の後輩です!」
「先輩の意地が燃えます!」
っとココとミランダが思わず立ち上がってアンジュ達に言い、それにはアンジュ達は苦笑いをしていた。
「まあともあれ、このアタシがみっちり扱いたお蔭で何とか一著前に…え?」
するとメアリー達が一斉にヴィヴィアンの方に向かって行き、それにはロザリーも流石に突然過ぎて戸惑った。
「あの!お会いできて光栄です!」
「えっ?アタシ???」
ヴィヴィアンは自分の事を言われて、何が何やら分からなかった。
「第一中隊のエース、ヴィヴィアンお姉様ですよね!」
「ずっと憧れていました!」
「大ファンです!」
「そっかそっか♪ よし喰え喰え~!」
ヴィヴィアンは自分の食器の具をメアリー達にも分け、その様子にロザリーはやや悔しがる。
「ちょっとあんた等!!アタシにはそんな事一言も!?」
「ハハハ!流石は尊敬する人物を分かってるな!」
「……」
「どうしたの?」
「いや、アレクトラ…じゃなかった。ジルの様子が気になってね。」
「アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ」
「「え?」」
「皆んな知ってるよ。司令がぶち撒けたから。自分の正体も…リベルタスの大義ってやつも。」
ーーー《回想》ーーー
アルゼナルが崩壊し、生き残ったノーマ達はアウローラ に避難。そしてジルはアンジュと同じ、元皇女であった事を話し、目的、そしてノーマ解放作戦であるリベルタスの大義を言っていた。
「諸君!人間の残虐さ、冷酷さは嫌というほど知ったはずだ!私は、必ずや元凶であるエンブリヲを倒し、ノーマをこの呪われた運命から解放する!その日まで、諸君の生命、私が預かる!」
ーーー《回想終了》ーーー
「アレクトラがそんな事を?」
「あぁ、最初に会ったのは10年前、お前がリベルタスへコッソリ乗り込んで行く前だったからな。生きててビックリしたよ。それにアレクトラの言った言葉…。」
「意気込みは分かるけど、ガチ過ぎてちょっと引くわ。」
「あなたにあの人の何がわかるのよ〜!」
「か、監察官!?」
「エマさんでええよ!エマさんで!」
「うっ!酒臭っ!」
「この船に乗られてからずぅっとこうなんです。」
「しょうがないでしょ〜!殺されかけたのよ〜!私!同じ人間なのに!なのに…なのにね、司令ってば、あたしをこの船に乗せてくれたのよ、今までノーマにひどい事してきた私を……あの人だけよ〜!この世界で信じられるのはノーマだよね〜?ペロリーナ〜!」
「はいはい、それくらいにしときな。」
「でも、監察官の言う通りだ。」
「え?」
「私等にとっちゃ、信じられるのは司令だけだからな。この世界で…。」
ロザリーの言葉に皆は考え込む。するとオリヴァルトのインカムに通信が入る。
「もしもし…」
「ーーー俺だ、お義父さん。」
「っ…」
オリヴァルトはタスク達に聞こえないように、小声で話しかける。その内容はこちらの世界と時間跳躍によって棄てられし邪星神マスラオが来たことであった。
「そうか…“邪星神マスラオ”が。」
「そうなんだ。それに今のマスラオではケーニヒスを直接倒すことは出来ない。何か考えがあるならーーー」
「……ある。」
「あるの?」
「マスラオ専用として開発した近接武器と外装品なのだが……。」
「だが?」
「その近接武器は…大昔、兄上がゼノムから奪った物なのだ。その武器はとてつもなく恐ろしい物なのだ。」
「どんな?」
「兄上が言うには…“生命の健全なる純粋な御霊の精神である【魂】と穢れた御霊の肉体である【魄】を喰らい、力を倍増させてしまう妖刀”だと言う事。我々エクシリアの王族や戦士達はその妖刀を【破魔ノ光剣“ムラクモ”】と名付けた。多くの戦士達はその妖刀を扱えぬ事は出来なかった…何故ならーーー。」
オリヴァルトが語る【破魔ノ光剣ムラクモ】にまつわる恐ろしい事実にアーサーは深く考え込む。
「それだったら…使う。」
「良いのか!?ヤバイ妖刀なのだぞ!?それを使ったらお前!」
「何言ってるの?元より俺はそのつもり。それに俺のこの身体は既にボスキートに侵食・汚染されつつある。ドラグニウム・エタニティがあるから…耐えれる。」
「自信満々に勇気と覚悟の心理が知りたいぞ…兎に角、妖刀の力に呑まれ掛けたら、絶対直ぐに報告しろ…あの剣は“呪われた怪物”だ。」
オリヴァルトはそう言うと、格納庫にある破魔ノ光剣ムラクモの事を気にし始める。
轟天号の格納庫、使われていないハンガーに装着されている大太刀、鞘から柄、柄頭全てにエクリシア文字の呪符や包帯で撒かれており、さらにそのハンガーやデッキの立ち入りを禁止する程の電磁バリアや呪符での結界の厳重にして強固に守られていた。
その頃、アウローラの司令室にて、アレクトラがタバコを吸っていた。だが彼の脳内ではあの忌まわしきエンブリヲの事を常に憎悪していた。
《そう…可笑しくなっても良いんだよ。アレクトラ…。》
っと吸っていた煙草を握りしめて潰し、恐ろしい表情をする。
「エンブリヲ……!」
そしてその後ジルは思いついた作戦を考え付く。
しかしそれは、後に重大な結果へと招いてしまう事を彼女はまだ知らなかった。
まさにその頃、偽りの地球上空に謎の特異点が開く。現れたのはケーニヒスよりも禍々しい闇の大聖堂であった。そして大聖堂内部の王座の間では巨大なモニターに映るエンブリヲとケーニヒスが映っていた。二人は映像を見ている女性に膝まづく。
「「ザリマン殿下…」」
その女性の名前を言うエンブリヲとケーニヒス。二人が見る映像に映し出される女性【ザリマン】……王座の間…と言うより、女皇の間にて、至高の玉座にて座り、青白い触手と月光のように輝き、高貴なドレスで身を包んだ“絶世の美女”であった。髪の色が純白に満ち、側頭部に生えた青白く輝く半透明な翼、そして猫のような縦長の瞳孔と血のように真っ赤な瞳、神託の杖を常に携え、映像の筈なのにザリマンからでる威圧感がとてつもないものでもあった。
『…収穫祭の期限までもう暫く掛かるの?』
「は…はい!ですが御安心を!準備速度は何事もなく、奴等に計画は漏れず、全てが順調です!」
「……ホントウニ?」
その言葉と共に、とてつもない覇気が放たれる。
「「!!」」
二人はザリマンの覇気に怯え、無言のまま動かなくなる。すると、映像からザリマンがこの世とは思えない形相で首を伸ばして出てきて、ビクビク怯えるケーニヒスの頭上を見下ろし、見下す。
「……ソウ、ナラヨカッタ。」
ザリマンの言葉と共に、ケーニヒスとエンブリヲは顔を上げる。ザリマンは映像として戻っており、穏やかな表情をしていた。
「トコロデ……例ノ“試作品”ワ完成シタノ?」
「は!はい!後は彼らの頭脳に駆逐システムをプログラミング、並びにマインドコントロールが済めば、いつでも戦場に出せます!」
「ソレワ、ソレワ…タノシミダネェ♪」
「「……」」
「ソレトモウヒトツ…【アークエンジェル】達ガハヤク遊ビタガッテイルノ。ケーニヒス、エンブリヲ、アノ子達ノ面倒ヲオ願イネ。」
「「は…はい!仰せの通りに。」」
ビクビクするケーニヒスとエンブリヲ、ザリマンの覇気に怯えながらも、通信が切られた。
「予定通り…アンジュを引っ捕えるぞ、エンブリヲ。」
「言われなくても、手筈はザリマン殿下の言った通りだ…。」
互いの意見が一致する中、エンブリヲは心の奥に密かに隠していたある作戦を実行しようとするのであった。