クロスアンジュ トライブブラザーズ   作:マシンクーガー

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チャプター36 決別の海・後編 

 

翌日、ブリーフィングルームにてアンジュとタスク、ジル、ジャスミン、マギー、メイが集まった。

 

「よく眠れたか?」

 

「えぇ…」

 

「それは結構。では、お前に任務を与える。」

 

「「……」」

 

「ドラゴンと接触、交渉し、共同戦線の構築を要請せよ。」

 

「「!!」」

 

その言葉に二人は驚く。

 

「どうした?お前の提案通り、一緒に戦うと言うんだ…ドラゴン共と。」

 

「本気なの?」

 

「リベルタスに終止符を打つのはドラゴンとの共闘、それが最も合理的で効率的な判断だと確信した。」

 

「アンジュ!」

 

タスクはアンジュを見て更なる希望が出た事に歓喜する。

 

「では、作戦の概要を説明する。」

 

ジルはそう言うと、デスク表面に地形図が表示される。

 

「これは?」

 

「以前、サリア達との戦闘でラグナメイルに打ち込んだマーカーだ。」

 

「私が作ったんだよ!」

 

メイがそう言うと、ジルからの作戦が伝えられる。

 

ドラゴン達を【緑】連邦を【紫】、アウローラ を【青】、ラグナメイルやアルザード帝国を【ピンク】と【赤】として表示する。

先ず、アンジュ達と合同を共にするドラゴンと連邦艦隊が先行し、ラグナメイルとアルザード帝国艦隊と交戦、帝国艦隊が激減した後、アウローラが浮上、艦隊の背後から奇襲を仕掛け、敵勢力の完全排除。いわゆる陽動作戦でもあった。排除した後、残存勢力を持ってアケノミハシラへ突撃、アウラの奪還という事になる。

 

「でもこれじゃ、ドラゴンや連邦に多大な負担を強いる事になるぞ。」

 

「陽動と言うのはそう言う役割だ。」

 

「サリア達とフェリスはどうするの?」

 

「……どうすると?」

 

「え?助けないの!?」

 

「フンッ…持ち主を裏切る“道具”や敵側に寝返った人間は要らん。」

 

「道具って!?だってサリアよ!」

 

「全てはリベルタスの為の“道具”に過ぎない。ドラゴン共も連邦もお前も私もね…。」

 

ジルからの【道具】という言葉に、アンジュはこの作戦の違和感を察知する。

 

「道具っ!ドラゴンも!?……ねぇ、何を企んでるの!?本当はドラゴンや連邦軍に何をするつもり!?」

 

「……」

 

「答えないと命令は聞かないわ!」

 

「フン…ドラゴン共と強撃?アッハハハハハ!アウローラの浮上ポイントは此処だ!」

 

デスクに表示されたアウローラのマーカーの位置が変わる。

 

「ドラゴンと連邦軍がラグナメイルとアルザード帝国と交戦している間に、アンジュ…お前はパラメイル隊と共にアケノミハシラへ突入、エンブリヲを抹殺しろ!」

 

「はぁ!!?」

 

「ドラゴンと連邦艦隊は捨て駒か!」

 

「切り札であるヴィルキスを危険に晒す様な事は出来んからな。」

 

「冗談じゃないわ!こんな最低な作戦、協力できるわけないでしょ!」

 

「ならば、協力する気にさせてやる。」

 

「モモカ!」

 

「ランス!」

 

「減圧室のハッチを開けば、侍女と小僧は一瞬で水圧に押し潰される。」

 

「ジル!あんたの仕業か!?」

 

「聞いてないよこんな事!」

 

「アンジュは命令違反の常習犯だ。予防策を取っておいた。」

 

「アレクトラ…!」

 

「救いたければ、作戦を全て受け入れ、行動しろ!」

 

「自分が何をしているのか分かってるの!?」

 

「リベルタスの前では全てが駒であり道具だ。あの侍女もお前を動かす道具、お前はヴィルキスを動かす道具、そしてヴィルキスはエンブリヲを抹殺する究極の武器。」

 

「ふざけるな!モモカを解放しなさい!今すぐ!」

 

「ぐっ!!」

 

「上官への反抗罪だ!」

 

「やめろ!アレクトラ!」

 

「ゔっ!!」

 

「さて、お前の答えを聞こうか?」

 

「思ってた通りだ…。」

 

「さぁ、答えは?」

 

「くっクタばれ…プッ!」

 

「痛い目に遭わないといけないようだな。」

 

「っ!?」

 

「ガスか!?」

 

「アンジュ!」

 

「おぉ!これは!オリオリおじちゃんが言ってたプランB!パクッとな!」

 

「話はインカムで聞かせて貰った!思ってた通りだ!」

 

「あの男…何か盛り上がったな、アンジュ…ライド…。」

 

「すまん、ヒルダ…訳はちゃんと話す。」

 

「タスク…貴様!」

 

「出来れば、こんな事したくなかったよ。」

 

「ヴィルキスの騎士が…リベルタスの邪魔をするのか!」

 

「俺はヴィルキスの騎士じゃない。アンジュの騎士だ!」

 

「色気付いたか、ガキがっ!」

 

「モモカ!」

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「ごめんね、君達。時期に目が覚めるから。」

 

「アウローラ、浮上開始。」

 

「ソナーに反応あり!」

 

「多分あの船だわ…」

 

「了解、急行する。」

 

「海面に出たら、直ぐにパラメイルで脱出するわ!準備を!」

 

「あぁ!」

 

「了解!」

 

「分かった!」

 

「OK!」

 

「姉ちゃん!ぐあっ!」

 

「トウジ!ミクモ!」

 

「また敵前逃亡か…!」

 

「ジル!」

 

「あいつ、自分の足にナイフを!」

 

「何と言う執念…!」

 

「逃がさんぞ…アンジュ!リベルタスを成功させるまではな!!」

 

「リベルタスって私がいないと出来ないんでしょ!なのに、私の意思は無視するの!?」

 

「道具に意思など要らん!」

 

「私の意思を無視して、戦いを強要するって…人間達がノーマにさせている事と一緒じゃない!」

 

「命令に従え!司令官は私だ!」

 

「人間としては屑よ!」

 

「退け!アンジュ!コイツをぶっ飛ばす!!」

 

「待って、ライド!」

 

「!?」

 

「ここは私に任せて。」

 

「良いんだな…」

 

「……勝負しましょう。サラ子はやアーサーは人質なんて卑怯な真似しなかったわ!」

 

アンジュはそう言い、懐からナイフを取り出し、構える。

 

「貴女が勝ったら聞いてあげる。」

 

「アンジュリーゼ様!」

 

「タスク、モモカと下がって。皆んなも、邪魔しないで。」

 

「分かった…。」

 

「気をつけて、アンジュ。」

 

「御武運を、アンジュリーゼ様!」

 

タスク達は下がると同時に、負傷したトウジとミクモも救出するエクエス達。アンジュとジルは互いを睨み合い、互いにナイフの刃を向ける。

 

「この期に及んで、まだ我儘とはな!」

 

「傲慢なのはあなたの方でしょ!」

 

「エンブリヲがいる限り、リベルタスは終わらん!」

 

「囚われて操られているフェリスのお腹には何も罪のないアーサーの子供が宿っているのに!その為ならどんな犠牲も許されるって言いたいの!?」

 

「その通りだ!」

 

「そんなの!そんな戦い!何の意味があるの!?」

 

「お前なら分かるはずだ!皇女アンジュリーゼ!」

 

「世界に全てを奪われ!地の底叩き落とされたお前なら!私の怒りが!!そして!皇女と名乗る怪物坊っちゃんの忌子を孕んだ偽りの姫も倒す!!アイツのせいで、10年前のリベルタスは失敗したんだ!」

 

「え!?」

 

「10年前、あの坊や…アルトリウスがやってきて、彼の力を見た!凄かった!エンブリヲをやケーニヒスを絶望の淵まで追い詰めていた!だが!先走ったある“身勝手な仲間”と幼少期の偽りの姫とあの娘の親を身を挺して庇い、古の民や仲間は死んだ!だから、あの娘も殺さなければ、アルトリウスの思いや無念も晴らせない!その為、敵であるあの女を!エンブリヲを!倒せる!」

 

「ぐっ!!フェリスは…敵じゃない!!」

 

「お前は私だ!お前がエンブリヲと偽りの姫を殺し!リベルタスを成功させるのだ!全てを取り戻す為に!」

 

「私は…私は!」

 

「誰かを自分に託すなんて、空っぽなのね、あなた!」

 

「何が正しいのかって誰にも分からない!けど、あなたのやり方は大嫌いよ!こんな事、絶対にアーサーは喜びもしないし、認めないわ!アレクトラ・マリア・フォン・レーベンヘルツ!!」

 

「黙れぇぇええっ!!」

 

「何故!?…何故分からんのだ!!?」

 

「あなたのやり方じゃ…フェリスと一緒に“喫茶アンジュ”は作れないし、働けないからよ!」

 

「何…!?」

 

「もうやめな…ジル。」

 

「アンタの負けだよ。最近の若いもん達はアンタよりも意思が強すぎだ。」

 

「ジャスミン元司令。」

 

「元司令か…何だ?」

 

「ジルの処遇は?」

 

「…取り敢えず、医務室へ運び、拘束してくれ。」

 

「了解した。」

 

《オリヴァルト中将!》

 

「もう中将と言うのはよせ。これからは”新生エクシリア公国連邦の大公”として君臨する。此奴を医務室に、そして拘束してくれ。」

 

《了解!》

 

「どうするんだい?これから…」

 

「私がやるわ。」

 

「え?」

 

「あの人のやり方は間違っていたけど、やっぱりノーマの解放は必要だもの!私がやるわ…リベルタスを。」

 

「っ!」

 

「私を信じてくれる人と…私が信じる人達と。」

 

「わぁ!綺麗な空!」

 

「さぁ、タスク!私を撃って!サラ子達の所へ行かなくちゃ!」

 

「え!?でも!」

 

「ピンチにならないと、ヴィルキスは跳べないんだから!ほら!早く!」

 

「って言われても!」

 

「じゃあ私やる〜!」

 

「《っ!?》」

 

「今のは!?」

 

「ここにいたのね…アンジュ。」

 

「サリア…っ!?」

 

サリアと同時に、天空の彼方からそれは現れた。

 

巨大にして神々しい、六基のスラスターウィングから放出する蝶の如く光の羽、両肩部分から左右に伸びたアームに接続されている巨大なニードル状の武装、外見を覆う羽衣の様な重装甲をしたアルテギアの強化体ーーー【アルテギア・ゼノムス】であった。アルテギア・ゼノムスに騎乗しているのは操られているフェリスであった。

 

さらにアルテギア・ゼノムスの真上…そして海面が突如暗くなる。それは神聖にして巨大、幾つもの甲板デッキ、無数の主砲タレットと対空兵器

 

闇の大聖堂から戦場を観賞するケーニヒス。だがケーニヒスの身体が変わっていた。それは…彼の身体に装着されていた呼吸器がなく、完全な健康体、白く透き通った髪、老化が消え、青年へと若返っていく。

 

『もうすぐだ…もうすぐ俺の忌まわしきあの悪夢……“10年前のあの日”を抹消する願望が完遂する。我の野望の為、あの忌まわしき存在、待っていろ……【アルトリウス・コールブランド】お前の運命は…既に決まっている。ジュリオとエンブリヲ直属の親衛隊には、立派に働いて貰うぞ。』

 

青年へと若返ったケーニヒスは喜びを上げると、彼の身体に異変が起き始める。若返ったのは良いが、彼の左眼は頭蓋骨ごと陥没、皮膚は火傷で爛れ、右目でアウローラ や轟天号を見下ろす。さらに彼の右肩と左横腹、左の額から側頭部にかけて、巨大な目が肉の中から現れる。闇の大聖堂内で悍しくたくさんの何かが蠢き、絶望の産ぶ声を上げる…それを見つめる五人の影。

 

「やれやれ、ケーニヒスの奴め。ザリマン陛下や私達を信用していないのか?」

 

「ケーニヒスは“怖い”のだ。10年前…彼はあの時、あの場にいたのだから。」

 

「何故分かるのだ?」

 

「俺の能力を甘く見るな……奴の大罪は変わらない。12年前…10年前…彼の苦痛は治らない。奴の…彼の血統因子に眠る“あの化物”が“10年前”の様の世界のように…ならなければ良いんだが。それに油断は禁物であり、無駄口を叩くなだったな。分かっているな?」

 

「ヘイヘイ」

 

「アルトリウスよ…お前は希望を齎す光?それとも絶望を齎す闇?それか……【全てを拒絶する無】?」

 

その者は微笑むと、フラッシュが起こり、彼の影だけ形が違った。そしてその者が立ち上がり、闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

 

正にその頃、海中を突き進む巨大な影、その大きさは1km以上もあった。そして完成したアーサー専用の超巨大戦艦…。

 

戦艦の格納庫内でアーサーはマスラオに内蔵されているVRシュミレーションシステムで訓練専用のパイロットスーツからある写真付きのペンダントを取り出し、その写真を見て呟き始める。

 

「皆んなへこたれていると思う。だから俺が…“皆んな”と出会う前の俺が喝を入れないとな!!」

 

アーサーはそう言い、ペンダント終う。発光する球体型の操縦桿を掴み、指で操作し始める。

 

「300年前に打ち捨てられたお前の怒りを…ケーニヒス達に絶望を運ぶ死で齎すぞ。マスラオ!」

 

その言葉にマスラオが反応する。エンジン音が起動し、マスラオから不気味な笑い声が轟かせる。さらにマスラオの背後に複数の機体が配備されており、黄緑色の発光するラインと赤く光るバイザーを輝かせる。

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