Another:01【復活の火ノ鳥】
黒い空間…その奥に広がるのは、煮えたぎった溶岩、火を噴く山々、熱さに苦しむ亡霊、そこは正に【地獄】であった。その中に最後までやり遂げようとして、最愛の人を奪われ、地に落ちた者ーーー【アルトリウス・コールブランド】は禍々しい熱を帯びた無数の手によって地獄よりもさらに下へと下ろされていた。
「自惚れた者が…さっさと地獄に落ちろ」
「お前とマイラだけ助かりおって!村の疫病神が!!」
「返せ!私の子供を返せ!!バケモノ!!」
彼へ暴言を吐く者達…それは12年前にインゴ達によって殺されたトリト村の人達が亡者として彼を責めていた。するとそこに現れたのは彼の愛する妻…『フェリシア・朱鷺・ミスルギ』であった。
「アル…お願い、目を開けて!」
「……」
「お願い…アル!助けて!」
すると次に現れたのは、彼の育て親……サヨリとマイラの父 『ディーン・コールブランド』であった。彼は引き摺り込まれているアーサーの頭に触れる。
「アーサー…俺はお前を恨んでもいない。お前はサヨリ達を呪縛から救ってくれた。マイラも生きている!お前は私の…私の誇りある息子だ!!」
その言葉にアーサーは目覚める。
「そうだ…俺はまだ!!!死ねるかぁぁぁぁぁっ!!!」
穢れボスキートを発動させ、禍々しい腕を逆に焼き払うと、悪魔へと姿へと変わる。アーサーは燃え盛る地獄から抜け出そうとよじ登って行きく。それから何時間経過したのか、過酷な崖登りも終わりが見えて来る物であった。目の前から光が見えたアーサーは一気に登り、ついに地獄から地上へと這い上がり、復活したのであった。地獄の熱さのせいだったのか、全身汗まみれで身体が物凄くやつれていた。アーサーは這い出た穴を方を向くが、そこに穴は無く、ただの地面になっていた。取り敢えず一件落着なもののここが何処なのか把握できていない彼は森の中にあった川で全身に浸かり、汗を流し、体を冷やし、洗い流す。ふと川の水面に自分の姿が写る。先の戦闘で右目に大きな傷が付いており、髪も白く染まり、背まで長く、毛先が赤く染まっていた。右目は既に失明しており、左目で目の前の状況を確認するしかなかったアーサーはバインダーから霊符を取り出し、眼帯として右目に貼り付ける。そして後髪を侍の様な髪型へと変える。その時気付いたことに、彼の身長や年齢が前よりも若返っており、17歳半の歳と若さであった。
「2年半も若返ってやがるし…アイツらよりも。」
アーサーはそう呟くと、ある事に気付く。彼の額から角が生えていた。アーサーは角に触れていると、その横に大きな箱があった。
「さっきまでなかった筈?」
アーサーはそう言い、箱の中を見る。中に入っていたのは弓胴着とそして手の平サイズの紫に光るキューブであった。そしてキューブにある紙が上に置かれており、紙に書いてある文字を読む。
「“私を取り込んで”……悪い冗談を。」
アーサーは疑心暗鬼になりながらも、キューブを身体に近付ける。するとキューブが強く光だし、アーサーの身体に吸い込まれた。すると彼の身体の中の細胞の遺伝子情報が変異と言うより、進化し始める。すると彼の右耳に三角型の装置が現れ、彼の視界からホログラフが映し出される。そして彼の足元にある物を見ると、二つの武器があり、武器のそれぞれの武器に【beam saber】【composite bow】と表示される。
「ビームセイバーとコンポジットボウ…」
アーサーは試しに、ビームセイバーのスイッチを起動させる。鍔から長さ1メートルほどの尖形状の光刃が形成される。持ってみると軽い物だが、プラズマの熱エネルギーを持った光刃に触れたら、一瞬で溶断してしまう事は間違いなかった。次は木をベースにし、鉄とワイヤー、そして赤い羽飾りが付いたコンポジットボウを取り出す。アーサーにとっては得意戦術の一つであり、試しにリンゴの木から生えているリンゴの実に狙う。弓矢を構え、弓弦を引き絞り、指から引き離した。矢は見事にリンゴに突き刺さり、木から遠方へ飛ばされた。アーサーは矢が刺さったリンゴを拾い上げ、実を齧る。
すると何処からか、悲鳴が聞こえ、アーサーはその方向へ向く。
「何かに襲われてるのか?行ってみないと!!」
アーサーは悲鳴の聞こえた方へと走っていく。生死の境の世界…一度死んだ彼の…彼が体験した物語…後の仲間達の悲劇へ誘った元凶としての始まりでもあった。