小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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ちょいオリジナル描写が入ってます。


戦闘訓練!! パート2

「侵入成功! 死角が多いから気をつけよう……」

 

 戦闘訓練が始まり、私達は一階の窓からビルの中に侵入した。

 ……なんだかパパに内緒で謎の自警団(ヴィジランテ)活動をやってた頃を思い出してドキドキしてきた。

 あれは何気に命懸かってたから、ドキドキはこんな訓練の比ではなかったけども。

 

 さて。

 侵入から僅か一分弱。

 早速、お迎えが来たようだ。

 

 廊下の死角から不良少年が飛び出して来た。

 

「うわ!!」

 

 不良少年の個性が発動し、廊下の一角が爆発する。

 どうやら二人まとめて爆破するつもりだったみたいだけど、私は足音で不良少年の接近を感知していたので余裕をもって回避した。

 緑谷少年はちょっと攻撃がかすったっぽいけど、コスチュームの一部が破損しただけで体の方は無傷だった。

 なら問題ない。

 

「てめぇらコラ、避けてんじゃねぇよ」

 

 不良少年がそんな理不尽な事を言い出した。

 避けずにどうしろと?

 全部被弾しろってか?

 まあ、君の攻撃力なら避けなくても大したダメージにはならないけどさぁ。

 

「緑谷少年。これはどっち狙いだと思う? 」

「分からない……。かっちゃんが敵ならまず僕を殴りに来ると思ったけど……八木さんもかなりかっちゃんの恨みを買ってるから」

 

 そうだねー。

 入学初日にアイアンクロー食らわせたり、授業中に殴って気絶させたりしたもんねー。

 そりゃ怒るわ。

 

「じゃあ、不良少年が突撃して来たって事で……予定通りで良いかい?」

「うん。八木さんは核と飯田くんを探して。僕はここで──かっちゃんと戦う」

 

 おう。

 頑張れ、緑谷少年。

 

「じゃあ、先行ってるよー」

「俺を無視してんじゃねぇ!!!」

 

 そうして私がこの場を去ろうとしたら、不良少年がなんか爆発の威力で加速しながらこっちに向かって来た。

 個性把握テストの時も見たなその技。

 楽しそうな技だ。

 

 でも、その突撃が私に届く事はなかった。

 緑谷少年が私と不良少年の間に割って入る事によって。

 

「邪魔だぁ!!! デクぅぅぅ!!!」

 

 そう叫びながら、不良少年は緑谷少年に拳を振り上げる。

 緑谷少年はその動きを読んでいたかのように不良少年の懐に入り、腕を取って背負い投げを決めた。

 

「ああ!!!!!」

「ガハッ……!!」

 

 一本!

 綺麗な投げですねー。

 十点!

 ……いや、茶化すのはやめておこうか。

 そんな雰囲気じゃないし。

 

 私は不良少年が倒れてる間に、先に進む事にした。

 

「かっちゃんは大抵最初に右の大振りなんだ。どれだけ見てきたと思ってる……! 凄いと思ったヒーローの分析は全部ノートにまとめてあるんだ! 君が爆破して捨てたノートに……!」

 

 その場から遠ざかるにつれて聞こえる声は小さくなっていく。

 でも、確かに聞こえた。

 

「いつまでも『雑魚で出来損ないのデク』じゃないぞ……! かっちゃん、僕は──『頑張れ!』って感じのデクだ!!」

 

 中々にかっこいい緑谷少年の声が。

 良いねぇ!

 熱いねぇ!

 それを間近で見れないのが残念だよ!

 

「ビビりながらよぉ……そういうとこが。ムカツクなあ!!!!!」

 

 戦いの気配を背後に感じながら、私は自分の仕事を果たす為にその場から離れた。

 勝てよ。

 緑谷少年。

 できれば私が飯田少年を倒してしまうよりも早くな。

 

 そんな事を思いながら、私はビルの中を駆け抜けて行った。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──爆豪視点

 

 

 

 俺は昔から天才だった。

 やろうと思ってできない事はなかったし、やりたいと思ってできない事もなかった。

 ずっと俺が一番だった。

 だから、テレビでオールマイトの活躍を見て、ヒーローに憧れた時も、その夢が叶うと信じて疑わなかった。

 

 実際、俺は強い個性に生まれた。

 鍛えれば鍛えるほど自分が強くなっていくのを感じた。

 客観的に見ても俺にはヒーローとしての才能があって。

 このまま鍛え続ければいずれ憧れのオールマイトすら超えて、俺がナンバーワンになれると思ってた。

 

 なのに……。

 

「ッ!?」

 

 なんで俺は、こんな所で路傍の石ころに躓いてんだ?

 

 

 

 確保証明のテープが俺の足に巻かれかけていやがる。

 爆破を警戒されたから蹴りで攻撃して、そうして攻撃の為に伸びた足を狙われた。

 今回の訓練だと、このテープを巻き付けられた時点で「確保」された事になる。

 そうなったら俺の負けだ。

 意地でもこのままやらせる訳にはいかねぇ!

 

「くそが!!」

 

 振り払いながら仕留めるつもりで撃った右手の爆破。

 その行動をまた読んでやがったのか、デクは爆破を掻い潜って避けやがった。

 そして態勢を立て直そうとでも思ったのか、そのまま通路の先へと逃げて行った。

 

「待てコラ!! デク!!!」

 

 俺はあいつを追いかけながら、叫ぶ。

 

「なァオイ!! 俺を騙してたんだろうォ!? 楽しかったかずっとぉ!!」

 

 無個性のデクだった筈なのに。

 

「あ!? ずいぶんと派手な個性じゃねぇか!? 使ってこいや!! 俺の方が上だからよぉ!!!」

 

 路傍の石ころだった筈なのに。

 

 なんでてめぇは今、俺と張り合ってる?

 

 

 

 最近は上手くいかねぇ事ばっかだ。

 デクは急に個性を使って反抗してきやがるし、その前にはクソヴィランに襲われて死にかけるしよぉ。

 その時最初に助けに来たのが、よりにもよって俺よりずっと弱ぇ筈のデク。

 最終的に助けられたのは、どうしても気にくわねぇあのクソ女だった。

 

 今まで、ずっと俺が一番だった。

 だが、あのクソ女は俺より強ぇ。

 俺が殺されかけたクソヴィランをパンチ一発でブッ飛ばすくらいに強ぇ。

 まるでオールマイトみてぇだった。

 同年代で、明確に自分よりも優れた相手に会ったのは初めてだ。

 恩人だっつうのは分かってる。

 礼を言わなきゃならねぇ相手だって事も分かってる。

 でも、どうしても気にくわなかった。

 

 それだけじゃねぇ。

 クソ女と入学初日に会った時、頭を握り潰されそうになった。

 その後の個性テストの時はぶん殴られて気絶した。

 そんな屈辱初めての事で、アホみてぇに怒りが沸いた。

 だが、頭ん中の冷静な部分で理解しちまったんだ。

 

 あん時、クソ女は個性なんざ使ってなかった。

 個性なんざ使わずに俺を完封した。

 これで個性まで使われたらどうなる?

 

 ──俺は何してもこいつには勝てねぇんじゃねぇか?

 

 そう考えちまった時、言葉にできねぇ感情が俺を襲った。

 敗北感? 劣等感? 屈辱? 怒り?

 どれも正しいような気もするし、全部違ぇような気もした。

 ただ一つ確実な事は、こいつが、この感情がとてつもなく不快だって事だけだ。

 

 それを払拭する為に今回の訓練であのクソ女に奇襲をかけた。

 ついでに隣に居たデクにもな。

 だが、クソ女には案の定簡単に避けられて、デクにすら当たらねぇ始末。

 それどころか、クソ女は俺なんざ相手にするまでもねぇとばかりに立ち去り、残ったのはどこまでも俺をムカつかせるデクだけ。

 そのデクにすら俺は……勝ちきれねぇ。

 

 個性を使ってこねぇデクの姿が、個性を使わねぇクソ女と重なって見える。

 ふざけんな。

 デク。

 てめぇまで俺を下に見るんじゃねぇ!!!

 てめえより俺の方が上だ!!!

 

「溜まった」

 

 逃げたデクを見つけた。

 同時に試験開始から準備してたもんが完成した。

 

「なんで使わねぇ? 舐めてんのか? デク…」

「かっちゃん!」

 

 俺の方を向いたデクは、少しビビった後、覚悟決めたみてぇに反抗的な目になりやがった。

 

「もう……君を怖がるもんか!!」

 

 ハッ……ムカツクなぁ。

 

「てめぇのストーキングならもう知ってんだろうがよぉ。俺の爆破は掌の汗腺からニトロみてぇなもん出して爆発させてる。『要望』通りの設計なら──」

 

 そう言って俺はコスチュームの籠手を弄った。

 

「この籠手はそいつを内部に溜めて……」

 

『爆豪少年!! ストップだ!! 殺す気か!!?』

 

 通信機越しのオールマイトの忠告。

 それも分かった上で俺はこいつを使ってる。

 

 だから、止まらねえ。

 

「当たんなきゃ死なねぇよ!!!」

 

 俺は、籠手に付いたピンを抜いた。

 その瞬間、籠手の内部に溜め込まれていた俺の個性、爆発する汗の全てが起爆。

 特大の大爆発となって放出された。

 

 本当はあのクソ女に向けて使うつもりだった必殺技。

 それをてめぇに使ってやったんだ。

 光栄に思いやがれ。

 

「個性使えよ、デク」

 

「全力のてめぇをねじ伏せる」

 

 殺さねぇように直撃はさせてねぇんだ。

 まだ動けんだろうがよぉ。

 

 さあ。

 

 立って。

 

 戦えや。

 

 デク。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──緑谷視点

 

 

 

『緑谷少年。なんか凄い爆発音が聞こえたんだけど大丈夫か?』

「うん……。なんとか」

 

 かっちゃんの使った大爆発はビル全体を大きく揺らす程の威力があった。

 そうなれば当然、上階に居る八木さんも気づく。

 それで通信機で連絡を入れてくれたみたいだ。

 ありがたい。

 この状況で一人だったら心が折れてたかもしれない。

 

 そのかっちゃんは今、通信機で誰かと話してる。

 飯田くんとの通信……あるいは試験を監視してるオールマイトに注意でもされてるのかもしれない。

 今の大爆発はどう考えてもやり過ぎだ。

 注意くらいされても不思議じゃない。

 むしろ、中止されてもおかしくないくらいだ。

 

 でも、何にせよ、かっちゃんが一時的に止まってる今が、八木さんと通信できる唯一のタイミング。 

 

「八木さん。そっちの状況は?」

『飯田少年と交戦中ー。いつでも終わらせられるけど、どうする? 続ける?』

 

 その言葉に対して、一瞬返答に詰まる。

 八木さんはさすがだ。

 個性使用禁止という縛りがあっても飯田くんを相手にいつでも勝てると言ってる。

 事実、通信している声からは余裕が窺える事から、その話が嘘でも何でもないという事が分かる。

 

 つまり、この勝負自体はその気になればいつでも勝てるという事。

 それでも八木さんが「続けるか?」と聞いてきたのは、僕の意思を汲んでくれてるからだろう。

 ここから先は僕の意地の問題。

 目先の勝利を確実に得るか。

 意地を通してかっちゃんとの決着をつけるか。

 八木さんは僕にどちらかを選ばせてくれている。

 

「…………ごめん。八木さん。僕は続けるよ。続けさせてほしい」

『……そっか。熱いね。分かった。じゃあ、もうしばらく飯田少年()遊んでるから、その間に決着つけちゃいな』

「うん。ありがとう。それじゃあ」

 

 そう言って通信を切る。

 最後に何か不穏な事を言っていたような気がするけど、今は考えないようにして目の前を見据える。

 そこでは通信を終えたかっちゃんが、不機嫌そうな顔で頭をかきむしっていた。

 

「ああぁぁーーー!! じゃあ、もう殴り合いだ!!!」

 

 そう怒鳴りながら、かっちゃんは腕を後ろに向けて爆発を起こし、その力を推進力に変えて向かって来た。

 速い!

 ダメだ避けれない!

 反撃のタイミング……!

 

 ここ!!

 

 そうして突き出した拳は虚しく空を切った。

 目の前ではまた爆発。

 爆煙でかっちゃんの姿が見えない。

 どこに!?

 

「ぎ!?」

 

 すると突然背後からの爆発音。

 同時に鋭い痛みが背中に走る。

 あの一瞬で背後に……!?

 

「ホラ行くぞ!! てめぇの大好きな右の大振り!!!」

 

 その言葉を聞いて反射的に体が動いた。

 片足を軸に体を回転させて向きを変え、かっちゃんにとっての右、僕から見れば左側からくる打撃を左腕を盾にしてとっさに防ぐ。

 

「痛ッ!」

「ああ!!?」

 

 防がれた事が予想外なのか、かっちゃん苛立たしげな声を上げた。

 今のは危なかった。

 オールマイトとの修行中に何度も八木さんに組手でボコボコにされてたおかげだ。

 あの恐怖のおかげで体が動いて、反射的にガードが間に合った。

 

 でも、素手で硬い籠手を装着した打撃を受ければ、いくらガードしたところで防ぎきれずにダメージを負う。

 かっちゃんは僕が痛みで硬直した隙を見逃さず、空いていた左手で僕の右腕を掴むと、右手を爆破させて推進力を得ながら回転し始めた。

 

「デク。てめぇは俺より下だ!!!」

 

 そして、その衝撃のまま僕は背負い投げのような形で地面に叩きつけられた。

 

「う"!!」

 

 口から変な声が出た。

 でも立たないと追撃がくる。

 八木さんとの組手は倒れこんでも追撃が止まなかった。

 

 その恐怖が再び僕の体を反射的に動かした。

 即座に立ち上がり、後ろに跳躍して距離を取る。

 かっちゃんはその距離を、ゆっくりと詰めて来た。

 

「何で個性使わねぇんだ!! 俺を舐めてんのか!? ガキの頃からそうやって!!!」

 

 違う。

 違うよかっちゃん。

 

「俺を舐めてたんかてめぇは!!!」

 

「違うよ」

 

 否定の言葉が口から出た。 

 

 そして、今の僕の本心も。

 

「君が凄い人だから、勝ちたいんじゃないか!!!」

 

 勝手に口から出た。

 そうなるともう止まらない。

 

「勝って!! 超えたいんじゃないかバカヤロー!!!」

 

「その面やめろやクソナード!!!」

 

 そして最後の攻防が始まる。

 ここまで来たらもう、個性を使うしかない!

 悔しいけど、借り物の個性に頼らなければ、今の僕ではかっちゃんには勝てない。

 だったら持ってるもの全部使って、君を超える!!!

 

 僕は自分で考えうる最善の態勢を取った。

 左手で右手の手首を掴んで押さえ、右手の中指を親指で押さえた発射態勢。

 そして「ワン・フォー・オール」の力を右手の中指だけに集中させる。

 

 腕を使った攻撃は駄目だ。

 あの威力だとかっちゃんを殺してしまう。

 だったら指を使えば良い!

 個性把握テストの時やったように。

 これが、今の僕にできる最善!!!

 

「デラウェアぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「あああああああああああああ!!!!」

 

『双方!!! 中止!!!!』

 

 オールマイトの中止宣言。

 でもそれは、コンマ一秒だけ遅かった。

 もう止まらない。

 止められない。

 僕とかっちゃんの攻撃はもう、ぶつかり合う寸前だった。

 

「スマァァァァッシュ!!!」

「オラぁぁぁぁぁぁあ!!!」

 

 そうして放たれた風圧と爆発は、互いにぶつかり合い、凄まじい衝撃波となって周囲の全てを破壊しつくした。

 

「うぐぅぅぅ……!!!」

「がはぁぁぁ……!!!」

 

 衝撃波の一番近くに居た僕とかっちゃんは当然その破壊の渦に巻き込まれ、お互いにビルの壁に体を打ち付けられて大ダメージを受けていた。

 今にも痛みで気絶しそうになる中、──僕は確かにその音を聞いた。

 

 ガラガラと、ビルが崩れていく音を。

 

「ッ!?」

 

『いかん!!!』

 

 通信機越しにオールマイトの焦ったような声が聞こえた。

 それに気づいた僕は、動かない体を引きずって、何とかかっちゃんの所へ行こうとしていた。

 

 ビルが崩れて生き埋めになったら、皆助からないかもしれない。

 まさか、こんな事になるなんて!!?

 どうしよう!!

 僕が意固地になったばっかりに!!

 せめて、近くに居るかっちゃんだけでも!!

 

 そんな思いで後悔を噛み締めながら体を引きずっていると、ふと体が浮き上がるような感覚を覚えた。

 そして、とても耳に残っている聞き覚えのある声が聞こえた。

 

「もう大丈夫」

 

 顔を上げると、そこには天使のような笑顔を浮かべた八木さんが居た。

 その背中からは翼が生えていて、腕には飯田くんと気絶したかっちゃんを抱えている。

 

「よく頑張ったね。お疲れ様」

 

 そんな優しい声を聞いている内に僕は安心してしまい、とっくに限界だった意識がプツリと途切れて気を失ってしまった。

 

 

 

 そして目が覚めた時には、全てが終わっていた。

 

 




悪魔なのに天使とは、これ如何に?
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