小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
短い夢だった(T^T)
緑谷少年と不良少年による熱い戦いを邪魔しないように、核兵器(ハリボテ)の置いてある部屋で飯田少年をサンドバッグにして遊んでいた時。
突然、その声は聞こえてきた。
『双方!!! 中止!!!』
通信機越しに発せられたパパの焦ったような声。
間違って一斉送信しちゃったのかな?
そう思う間もなく、次の瞬間、ビル全体が大きく揺れた。
「な、なんだ!?」
そのあまりの衝撃に、私との戦いですっかり体力を消耗し、ヘルメットの中で何回かゲロを吐いてぐったりしていた飯田少年ですら過敏に反応した。
緑谷少年と組手やってた時の感覚でボコボコにしちゃった飯田少年だけど、意外と元気そうだな。
やっぱり、当時の緑谷少年がそれだけもやしだったって事やね。
そんな事を考えていたら、なんと本格的にビルが倒壊を始めた。
これ、緑谷少年達の戦いの影響か?
熱い戦いにも限度があるだろ!
どんだけ激しくやり合ったんだよ。
『いかん!!!』
再びのパパの焦った声。
これはさすがにのんびりしてる場合じゃないなと思った私は、とりあえず勝利条件である核兵器(ハリボテ)にタッチしてから、このままだと生き埋めになりそうな飯田少年を抱え、翼を使ってビルの外に飛び出した。
そして特に激しく損壊している箇所を発見し、そこが緑谷少年達の決戦場だったのだろうと当たりをつけて、躊躇なくその中に飛び込んだ。
私は生き埋めになった程度じゃ死なないからね。
腕に抱えた飯田少年は死ぬかもしれないけど。
そうしてまずは目についた不良少年を回収し、最後に緑谷少年も回収。
なんと驚いた事に、緑谷少年はどう見ても重症な傷を負いながらも、這いずって不良少年が倒れていた辺りに向かおうとしていたのだ。
多分、なんとか不良少年を助けようとしたんだと思う。
凄まじい根性だ。
いや執念と言うべきか?
その必死そうな顔を見てたら思わず声をかけてしまったよ。
「もう大丈夫。よく頑張ったね。お疲れ様」
私の顔を見た緑谷少年は安心したのか、そのまま気を失ってしてしまった。
まあ、元々限界だったんだから当たり前かね。
今はゆっくり休むと良いよ。
そのまま男三人を抱えた私は、倒壊するビルの外へと飛行。
そこでモニター室から飛び出して来たらしいパパと合流。
その後、搬送用のロボに重体二人組を預け、飯田少年と共に他のクラスメイト諸君の居るモニター室へと向かって、今に至る。
そして、講評が始まった、
「まあつっても……今戦のベストは飯田少年だけどな!!」
いきなりパパがとんでもない事を言い出した。
なんでや!?
私が最強だったじゃん!!
救助活動までしたんだぞ!?
「勝った八木ちゃんや緑谷ちゃんじゃないの?」
良いこと言ったカエルっぽい少女!
もっと言ってやってくれ!
「何故だろうなぁ~~わかる人!!?」
「ハイ。オールマイト先生」
パパが出した問題に推薦入試の時に見た少女が手を上げて答えた。
優等生かッ!
「それは飯田さんが一番状況設定に順応していたから。
爆豪さんの行動は戦闘を見た限り私怨丸出しの独断。そして先程先生も仰っていた通り屋内での大規模攻撃は愚策。最終的にビルが倒壊してしまいましたしね。緑谷さんも同様の理由ですね」
優等生だった!
解答がめっちゃ正論だ!
そして、その目が今度は私をロックオンする。
やめて!
酷評しないで!
「そして八木さんは中盤で遊びすぎですわ。見たところいつでも飯田さんを倒せたのでしょうに無駄にいたぶるような真似をして戦闘を長引かせた。一刻も早い核の回収が求められるという試験内容でそれは如何がなものかと思います。
最後の救助活動は素晴らしかったですが、それはオールマイト先生が試験の中止を宣言した後の事なので、評価には加えていませんわ。
消去法で最優秀は最もミスの少なかった飯田さんです」
正論ッ!!
ぐうの音も出ないぜ!!
あまりの正論と容赦のない酷評っぷりに部屋の中が静まり返っている。
パパも、言いたい事全部言われた! みたいな顔で固まっている。
恐ろしい……!
なんて恐ろしい少女なんだ……!
推薦入学者の少女……たしか、
名前を覚えておこう。
優秀な生徒としても、これからブドウ頭と組まされる哀れな犠牲者としてもな……。
「ま……まあ、飯田少年もまだ固すぎる節はあったりする訳だが……まあ……正解だよ。くう……!」
パパがやっと再起動したけど、なんかダメージが残ってそう。
やっぱり言いたい事全部言われたんかね?
それとも自分が思ってた以上の事言われたんかね?
若干教師としての自信を失ってるように見えるよ……。
「常に下学上達! 一意専心に励まねばトップヒーローになどなれませんので!」
もう八百万少女の方が先生みたいだよ。
心なしかパパの体が小刻みに震えてるような気がする。
ビビったか。
「ドンマイ、パパ」
「いや、それはこっちの台詞なんだが……でも、ありがとう魔美ちゃん」
どういたしまして。
まあ、パパは新米教師だし、私も入学二日目のピッカピカの一年生だしね。
お互い、これから頑張っていこう。
さあ、気を取り直して2戦目を……ってどうしたクラスメイト諸君?
そんな口を半開きにして固まっちゃって。
何かあったのん?
「「「「「「「パパ!!!?」」」」」」」
「あっ……!」
クラスメイト諸君が一斉に驚愕の声を上げた。
それで気がついた。
そういえば今私、ナチュラルに「パパ」って呼んじゃったわ。
プライベートが謎に包まれたナンバーワンヒーローに娘がいたら、そりゃ驚くよね。
いやー。
失敗失敗。
その直後、質問攻めの嵐が到来し、パパの初めての授業は早くも崩壊の危機を迎えた。
しかし、早々にテンパったパパに代わって優秀な八百万少女と真面目な飯田少年が皆をとりなし、なんとか事態は収束して授業の続きができた。
あの二人には感謝だね。
委員長とかやるべきだと思うよ。
そんな事を思いながら、私は他のクラスメイト諸君の訓練をモニター室で観察し、パパの初めての授業は無事終了したのだった。
お疲れ。
◆◆◆
──爆豪視点
保健室で目が覚めた俺は、まだおとなしくしてろという看護教諭のババアの言葉を無視して、教室に戻った。
そして、そのまま鞄をひっっつかんで帰った。
教室でクソクラスメイト共の話を聞き流しながらも耳に入れて、あのクソ女がオールマイトの娘だって事を知った。
ようするにクソエリートだっつう話だろうが。
ますますイラつく。
「かっちゃん!!」
イラつく気持ちを抑えながら歩いていると、聞き覚えのある声が後ろから聞こえた。
振り返ってみれば、今一番ムカついてるクソナードの姿があった。
「ああ? 何しに来やがった?」
そう言ってやると、デクは下向いて辛気くさい面しやがった。
気に食わねぇ面だ。
ますますイラつく。
「……これだけは君には、言わなきゃいけないと思って。──人から授かった個性なんだ」
……ハア?
「誰からかは絶対言えない! 言わない……でも、コミックみたいな話だけど本当で……!」
「だから……使わず君に勝とうとした! けど結局勝てなくて、ソレに頼った! 僕はまだまだで……! だから──」
「──いつかちゃんと自分のモノにして、僕の力で君を超えるよ」
……意味わかんねぇ。
「なんだそりゃ? 借りモノ? 訳わかんねぇ事言って……これ以上コケにしてどうするつもりだ!!!」
ふざけんな!!!
「なあ!! 今日……俺はてめぇに負けた!!! そんだけだろが!!!」
クソ!!!
クソが!!!
「俺はあのクソ女の力見てっ! 敵わねえんじゃねぇかって思っちまった!!! クッソ!!! クソが!!!」
だがよぉ!!
俺はもう決めたんだよ!!!
「なあ!! てめぇもだ、デク!!!」
俺は……
「こっからだ!! 俺はこっから!!! ここで一番に
いつも俺が一番だった。
でもここではそうじゃねえ。
だったらこれから強くなって、勝ち取ってやる!!
デクも!! あのクソ女も超えて!!!
敵わねえかもしれねぇ?
馬鹿か!!!
一回や二回負けた程度で諦めてどうするよぉ!!!
勝てねぇんだったら、勝てるまでやりゃあ良いんだ!!!
簡単な事だろうがよぉ!!!
「デク!!! てめぇが俺に勝つなんて二度とねえからな!!! クソが!!!」
超えられるもんなら超えてみやがれ!!!
その度に突き放してやるからよぉ!!!
そう言い放って、俺はその場を去った。
その直後に、今度はオールマイトが来やがった。
「爆! 豪! 少年!! 言っとくけど、自尊心ってのは大事なもんだ!! 君は間違いなくプロになれる能力を持っている!! 君はまだまだこれから──」
「離してくれよオールマイト。歩けねえ」
そんな事は言われなくてもわかってんだよ。
いや、気づいたんだよ。
一回寝て、冷静になって、そんな簡単な事にすら気づいてなかった自分によ。
「言われなくても!! 俺はあんたをも超えるヒーローになる!!!」
憧れのナンバーワンヒーローに向かって、そう宣言した。
もう挫けたりしねえ。
もう弱気になんてならねえ。
俺は……強くなる!!!
そう決意を固めて歩く俺の前に、あのクソ女が現れた。
「やあ。不良少年」
「……何しに来やがった」
「いんや別に~。ただ大怪我した緑谷少年が君を追って教室を飛び出しちゃったから。せっかくだし熱い青春物語を見物できればな~て思ってね」
そう言うクソ女の目はニヤニヤと笑っていやがった。
クソうぜぇ。
それにあの口振りだと、さっきのを見てやがったのか?
「中々良い決意表明だったよ。一番になるんだってね?」
見てやがったらしい。
ますます気に食わねぇ。
クソ女を無視して校門に向かった。
「頑張れよ。不良少年」
後ろからそんな声が聞こえた。
それは今までの茶化した声じゃねえ、真剣な響きだった。
そのままクソ女が立ち去る足音が聞こえる。
「待てや」
俺は振り向かないまま、クソ女を呼び止めていた。
「ん? どうした不良少年? 何か用かい?」
「……………………礼を言っとく」
そして俺は今まで先延ばしにしてきた、言わなきゃならねえ言葉を口にした。
「……ヘドロの時、助かった」
それが俺にできる精一杯の礼だった。
それだけ言って、今度こそ立ち去ろうとした。
「待った」
だが、今度はクソ女の方から話しかけてきやがった。
「……なんだよ」
いい加減帰らせろ。
「ふふふ。やっとお礼を言えたね。偉い偉い。そして困ったな~。君はもうちゃんとお礼が言える子だ。そんな子をもう不良少年とは呼べないな~」
「馬鹿にしてんのか!!!」
こいつ!!
どこまでも!!!
「だからさあ、君の名前を教えてほしいんだよ」
……なんだそりゃ?
名前が知りたいんだったらクソ担任にでも聞きゃ良いだろ。
頭ではそう考えてた。
だが、俺の口は勝手に動いていやがった。
「……
「ふっふっふ。覚えておこう。爆豪少年」
まるでオールマイトみてぇな、偉そうな名前の呼び方。
気に食わねぇ筈なのに、何故かその時だけは悪い気分じゃなかった。
初めてこのクソ女に認められたような気がしたからかもしれねぇ。
そんなクソみてぇな考え、一生口には出さねぇけどな。
そう固く誓いながら、俺は帰り道を歩いて行った。
◆◆◆
──???視点
「見たかコレ? オールマイトが教師だってさ」
俺は持っていた新聞をバーのカウンターに置きながらそう言った。
「なぁ? どうなると思う? 平和の象徴が──」
「──ヴィランに殺されたら」
俺は嗤った。
不様に崩れ落ちる平和の象徴を思って。
慌てふためく民衆達の姿を想像して。
俺は嗤った。
どこまでも濁り切った目で、その暗い未来を見据えながら。