小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
これ、一喜一憂しすぎてめっちゃ疲れるなぁ……。
不良少年、改め、爆豪少年との青春の一ページを刻んだ日の翌日。
私はマスコミの群れに囲まれていた。
いや、間違えた。
マス
あの粘着質に付きまとってくる性質はヘドロよりもたちが悪いのだ。
そのヘドロの時に散々付きまとわれた恐怖!
そして鬱陶しさ!
私は欠片たりとも忘れていないぞ!!
そんなマスゴミ連中は、どうやらパパが雄英教師になったという特ダネを聞き付けて学校に押し寄せたらしい。
なんて迷惑!
私も校門の前で捕まりかけたよ。
個性使わない状態での全力疾走で振り切ってやったけどな!
一瞬、制服をオシャカにしてでも翼使って空から行くべきかと考えてしまうくらいに、奴らの勢いは凄まじかった。
これだからゴミは困る。
こんなのに常時囲まれるトップヒーローになんて絶対なりたくないな!
私は一生パパの事務所の
そんなアクシデントに襲われながらも、普通に授業は始まった。
「──昨日の戦闘訓練お疲れ。Vと成績見させてもらった」
我らが担任、相澤先生が話しはじめる。
「爆豪。お前ガキみてえなマネするな。能力あるんだから」
「………………わかってる」
名指しで怒られた爆豪少年!
でも反省はしてるみたいで、不機嫌そうに眉間に皺が寄ってるけど、凄くおとなしかった。
その姿は犬を彷彿とさせるね。
いっつも吠えててうるさいけど、飼い主に叱られるとしゅんとなる犬を。
そんな事考えてたら、凄い視線で爆豪少年に睨まれた。
馬鹿な!!
口には出していなかったというのに!!
貴様エスパーか!?
「で、緑谷は爆豪と一緒にビルをブッ壊して終了か。個性も使ってまた怪我したらしいな」
緑谷少年がビクッと震えた。
わかる。
わかるよ。
お説教の恐怖はよくわかる。
「個性の制御……いつまでも『できないから仕方ない』じゃとおさねえぞ。俺は同じ事言うのが嫌いだ。それさえクリアすればやれる事は多い。焦れよ緑谷」
「っ! はい!」
緑谷少年は良い返事をした。
まあ、個性の制御は緑谷少年の目下最大の問題だもんね。
それができなきゃ前に進めないと言っても過言じゃない。
そりゃ、やる気になるのは当たり前か。
「そして八木」
「……へ?」
何故か今度は私に矛先が向いた。
なにゆえ?
私、何も悪い事してないぞ!?
「見たぞ。飯田を必要以上に痛めつけてたのをな。まあ、多分理由があったんだろうが、ああいうのは今後控えるように。良いな」
「……はーい」
あの程度で痛めつけたなんて言われるのは心外だけど、私は素直に頷いておいた。
口振り的に相澤先生は私がわざと勝負を長引かせてた理由を察してくれてるみたいだし、これはいつもの厳重注意ではなくお小言として受け取っておこう。
ようするに、あんまりクラスメイト諸君をいじめなければ良いんでしょ?
OK、わかった、把握した。
「──さて、ホームルームの本題だ。急で悪いが今日は君らに……学級委員長を決めてもらう」
「「「「「「「学校っぽいの来たーーーー!!!」」」」」」」
相澤先生のその一言にクラス中が色めき立った。
何故に?
私には皆の思考がわからない。
皆そんなに委員長やりたいんか?
委員長って漫画の中ならカッコいいけど、実際はただの雑務でしょ。
私にはそこまでの魅力があるとは思えないんだけど……。
なんだ?
私がおかしいのか?
気になって近くの席の緑谷少年に話を聞いてみたところ。
なんでもヒーロー科の学級委員長とは集団を導くというトップヒーローの素地を鍛えられる役……という事らしい。
あー。
だったら私はパスだな。
トップヒーローになんてなったら、毎日マスゴミに追われながら仕事しなくちゃいけなくなるじゃん。
私の望むヒーロー活動とは、とにかくヴィランをぶん殴る事だ。
断じてマスゴミに煩わされる事ではない!
……それに世間さまの目がある前で、うっかりヴィランを殺しちゃったら大騒ぎになっちゃうでしょ。
それを避ける為にも、プロになった後はできるだけひっそりと暮らしたい。
仕事の半分くらいは世間に公表しないで好きに暴れたい。
そうじゃないと、ヴィラン相手とはいえやりすぎとか言われかねないからね。
でもそう思ってるのはどうやら私だけ(いや、氷使いの少年も興味なさそうだな)みたいだけど、他の諸君は皆が皆立候補して収集がつかない。
どうすんの、これ?
「静粛にしたまえ!!」
そんな飯田少年の声で皆が静止した。
おお。
リーダーシップの才能あるね。
もう、君が委員長で良いんじゃないかな。
「多を牽引する責任重大な仕事だぞ……! やりたい者がやれるモノではないだろう!! 周囲からの信頼あってこそ務まる聖務……! 民主主義に則り真のリーダーを皆で決めるというのなら──これは投票で決めるべき議案!!!」
そう言う飯田少年の手は、俺が委員長だと言わんばかりにピンと挙げられていた。
委員長やりたいのが丸わかりだ。
「そびえ立ってんじゃねぇか!! 何故発案した!!」
案の定、鋭い突っ込みが飯田少年を襲う!
「日も浅いのに信頼もクソもないわ飯田ちゃん」
「そんなん皆自分に入れらぁ!」
「だからこそ、ここで複数票を獲った者こそが真にふさわしい人間という事にならないか!? どうですか先生!!」
「時間内に決めりゃ何でも良いよ」
しかし、飯田少年はぶれなかった。
そして最終的には相澤先生の許可までもぎ取った。
まあ、相澤先生からは私並みにやる気が感じられず、早々に寝袋の中に入って芋虫になっちゃたけど。
そうして始まった投票のお時間。
私は最初八百万少女に入れようかと思ってたんだけど、さっきの演説を思い出して飯田少年に入れておいた。
ぶっちゃけどっちでも良いんだけど、強いて理由を付けるなら飯田少年が眼鏡だったからかな。
だが、しかし。
投票は予想外の結果となった。
なってしまった。
「私、三票だと!!?」
何故か私に三票も入っていた。
他は八百万少女が二票で、その他は一票。
誰だ!
私に入れた奴らは!?
怒らないから出てこい!!
「あー。八木かー。確かに良いかもな! 強えし、オールマイトの娘だし!」
「まあ、妥当と言えば妥当かしら」
「ちぇー。委員長やりたかったなぁー」
やりたいなら代わってやるよぉ!!
そう言おうとしたのに、相澤先生が「じゃあ委員長、八木。副委員長、八百万だ」って宣言してしまった。
私は辞退する!!
やりたくない!!
そう言ったのに、相澤先生が「時間がない。文句があるなら後にしろ」と言ってくれやがったせいで、暫定的とはいえ私が委員長になってしまった。
ふざけんなあ!!!
そんなこんなで、修正ができないまま昼休みに突入。
私は食堂でご飯を食べていた。
「なんで私が委員長なんだよー……やりたくないよー……」
「…─なんか、ごめんね」
ご飯を食べながらぶうたれていたら、突然麗日少女が謝ってきた。
まさか……!
「うん。魔美ちゃんに投票しちゃった……」
「君かぁ!!!」
「あっ! ちょ! 揺らさないで! 世界が揺れるぅ!!!」
「お、落ち着いて八木さん!!」
「そうだぞ!! これはもう暴力の領域だ!! 止めたまえ!!」
麗日少女の肩を掴んで高速で揺さぶっていると、緑谷少年と飯田少年が止めに入ってきた。
なんだよぅ。
止めるなよぅ。
そう思いつつも、このままだと麗日少女が昇天してしまいそうだったので、渋々手を離す。
「し、新世界に行くところやった。まだ世界が揺れとる……」
「だ、大丈夫? 麗日さん」
「平衡感覚がやられているのかもしれない!! すぐに保健室へ連れて行こう!!」
「だ、大丈夫だよ飯田くん……。こんなの個性の反動に比べればなんでも……なんでも……うっ!」
「麗日さん!?」
「麗日くん!?」
麗日少女がリバースしそうになっていたので、仕方なく背中をさすってあげた。
さすがにこんな姿見せられたら恨めない。
大丈夫。
たとえ吐いても、その黒歴史は記憶から抹消しておいてあげるから。
そんな優しい気持ちで背中をさすり続けたけど、麗日少女はなんとか耐えきったらしく、吐き出す寸前で胃の中に押し戻していた。
命拾いしたらしい。
「あ、危なかった……」
「はい麗日さん、水」
「ありがとう。デクくん」
「ううん。……それに八木さんもごめん。実は僕も八木さんに投票したんだ。こんなに嫌がられるとは思わなくて……」
なんだと?
「すまん八木くん。実は僕もなんだ。君の力は多を牽引するのに値すると……思って……」
緑谷少年……。
飯田少年……。
貴様らもかぁ!!!
というか、友達三人揃って裏切り者かぁ!!!
許せん!!!
一発殴らせろ!!!
そう思ったけど、既に罰を受けている麗日少女による必死の懇願によって、私は矛を納めた。
命拾いしたな男衆。
「……ていうか、三人共なんで私に投票したのさ?」
疑問に思ったから一応聞いてみた。
まあ、想像はつくけど。
「えっと……魔美ちゃん強いし、オールマイトの娘さんだし。こういうの得意かなぁって思って……」
「うん。八木さんの強さは骨身に染みてるし、実力的に考えると必然的に……」
「うむ。直接対峙した俺としては悪夢のような強さだったからな。しかもあれで個性をまだ使っていない。その圧倒的な力は多を牽引するに値すると思ったのだが……」
ま、予想通りの答えかな。
私の強さが半分、ナンバーワンヒーローの娘だという肩書き効果が半分ってところか。
力を持ってるとこういう時にめんどくさいなぁ。
「私は別に望んでないのにねぇ」
「ごめん……」
「ごめんなさい……」
「すまなかった……! 君の気持ちも考えずに……!」
……なんか三人共思ったより思い詰めてるな。
ちょっと空気が重いぞ。
ご飯は楽しく食べなければいけないのに。
……ハア。
仕方ない。許してやるか。
彼らにも悪気があった訳じゃないしな。
「……もう良いよ。もうそんなに怒ってないから。委員長の仕事は適当に理由付けて誰かに投げれば良いしさ。あれだけ希望者がいたんだから、誰かしら食い付くでしょ」
ちょっと冗談めかしてそう言うと、私が本当にもう怒ってないとわかったのか、三人がホッとしたような顔に変わった。
ふう。
私もちょっと大人げなくキレすぎたな。
反省反省。
その後は普通に楽しい食事に戻った。
そして話題は飯田少年の事に。
飯田少年の一人称がちょいちょい「僕」に変わってる事を目ざとく見抜いた麗日少女の言葉が、
「ちょっと思ったけど飯田くんて、坊っちゃん?」
これである。
「……そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが……」
そう言いつつも、飯田少年は自分の家について語ってくれた。
「俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。俺はその次男だよ。だから正直、八木くんがオールマイトの娘さんだと知った時、ちょっとした共感を覚えた。
──ターボヒーロー『インゲニウム』は知っているかい?」
「もちろんだよ!! 東京の事務所に65人ものサイドキックを雇ってる大人気のヒーローじゃないか!!」
詳しい。
さすがヒーローオタクだな緑谷少年。
「それが俺の兄さ!!」
「あからさま!! 凄いや!!」
成る程ね。
飯田少年はヒーローの弟だった訳か。
まあ、私と飯田少年では、同じヒーローの身内でも大きく違うとは思うけど。
「規律を重んじ、人を導く愛すべきヒーロー!! 俺はそんな兄に憧れヒーローを志した。
人を導く立場は俺にはまだ早いのだと思う。だから上手の八木くんが就任するのが正しい……と思ったのだが、相手の事情を考えないようではまだまだ未熟だな」
飯田少年はまたちょっと申し訳なさそうだな顔をしたけど、それ以上に「自分は未熟だから成長したい」っていう向上心を感じる。
昨日の爆豪少年と似たようなもんだ。
そう思えるのは立派な事だと思うよ。
そうして楽しく談笑している時、それは起こった。
ウウーーーーーーー!!!
そんな音が食堂中に鳴り響いた。
「警報!?」
緑谷少年の驚いたような声。
次いで校内放送が流れる。
『セキュリティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』
「セキュリティ3て何ですか!?」
飯田少年が近くにいた生徒の少年に尋ねた。
「校舎内に誰か侵入してきたって事だよ!! 三年間でこんなの初めてだ!! 君らも早く!!」
その言葉を聞き終わらない内に私はジャンプしてその場を離脱した。
直後、そこには大量の生徒諸君が津波のような勢いで押し寄せ、食堂はすし詰め状態に。
私はあれに巻き込まれるのは嫌だったので、天井を蹴って移動し、部屋の角の所で天井と壁に体を張り付け、まるで忍者のような体勢でその嵐が過ぎるのを待った。
この体勢だと、下に居る何人かにスカートの中身を覗かれるかもしれないけど、私は常に特注のスク水を下着の代わりに着ているので、そこまで大きな問題じゃない。
緑谷少年達三人は見捨てた形になるけど、まあ、大丈夫でしょう。
人波にさらわれたくらいで死にはしないさ。
そうして静観しながら何とはなしに窓の外を見ると、そこには校舎の外に押し寄せるマスゴミの姿が。
あいつらついに学校の敷地内まで入り込んで来たのか。
本当にゴミだな。
まるで、どこにでも湧く台所の黒い悪魔のようだ。
同じ悪魔でも、私にはアレに仲間意識を持つようなおぞましい事できないよ。
そんな時、人混みから飛び出す飯田少年の姿が見えた。
飯田少年はそのまま出口の上の非常口に張り付き、こう言った。
「大丈ー夫!!! ただのマスコミです! 何もパニックになる事はありません。
大丈ー夫!!! ここは雄英!! 最高峰の人間に相応しい行動をとりましょう!!」
その演説が効いたのか、人混みは沈静化。
生徒諸君は徐々にどこかへと去って行き、私もようやく下に降りられた。
マスゴミはこの後すぐに警察が到着し、撤退。
せいぜいお巡りさんにしばかれればと良いと思うよ。
その後、私は他の委員決めの時に、委員長の座を飯田少年に押し付けた。
あの非常口での演説。
カッコ悪いポーズだったけど、やった事自体はちゃんと人をまとめる行為だった。
そこは誇って良い。
感情論抜きにしても、即行で撤退を決め込んだ私よりは飯田少年の方がよっぽど委員長に相応しいさ。
飯田少年もまんざらでもない様子だったしね。
という訳で、私は晴れて委員長という呪縛から解放され、代わりに飯田少年が委員長になったって話だ。
めでたしめでたし。
……でも、まあ。
マスゴミの行動に関しては解せないと思ったけどね。
◆◆◆
──校長視点
「……ただのマスコミが
学校を護るゲート、その無残に破壊された姿を見ながら、私は誰にともなく独り言のようにそう言った。
「そそのかした者がいるね……。邪な者が入り込んだか、もしくは──」
そうであってほしくない。
だが、まず間違いなくそうであろう懸念を口に出した。
「──宣戦布告の腹積もりか」
警戒しなければならない。
悪意からこの
私達は静かに、気を引き締めた。