小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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USJ パート2

 常人の目では追えない程のスピードで迫る脳みそヴィラン。

 そいつは右手を腰だめに構え、空中でパンチの発射体勢をとっていた。

 個性によって強化された私の動体視力はそれをはっきりと捉え、迎撃の為に右腕の個性を解放。

 悪魔の右腕と脳みそヴィランの右腕がぶつかり合った。

 

 周囲にその衝撃による暴風が吹き荒れる。

 

 そして、気がついたら私は吹き飛ばされていた。

 

「八木!!」

 

 相澤先生の焦ったような声を遠くに聞きながら、私の体はUSJの外壁にまで吹き飛ばされ、壁に激突してめり込んだ。

 

「……久しぶりに痛いわー」

 

 まさかこの私が押し負けるとは。

 ちょっとまだあの脳みそヴィランの事を舐めてたかもしれない。

 これは本気でやらないとマジで敗北もあり得るぞ。

 

 私はめり込んだ壁から即座に抜け出す。

 あのまま止まってたら確実に追撃がくると思ったからね。

 壁にぶつかった時に受けたダメージは軽い打撲程度。

 右腕の攻撃がクッションになったみたいで、この程度のダメージで済んだ。

 そのダメージも悪魔の個性に含まれる超再生で既に完治。

 やっぱりこの個性はチートすぎるな。

 

 そうして私が壁から抜け出した直後、再び脳みそヴィランが現れ、私に突撃パンチをかましてきたので、今度は両脚の個性も解放してしっかりと受け止める。

 そのまま脳みそヴィランの拳を右腕で掴み、左腕の個性を解放しておもいっきりぶん殴った。

 そうして今度は脳みそヴィランの方がふっ飛んでいく。

 私が押さえてた右腕を引きちぎられるというオマケ付きで。

 

 あー!

 テンション上がってきた!

 両手脚の個性を同時に解放するなんていつぶりだろう?

 そしてそれを振るえる強敵と出会ったのもいつぶりだろうか?

 

 私の個性は発動部位が多ければ多い程に破壊衝動が強まり、強い興奮状態になって理性が薄くなる。

 例えるなら、麻薬でハイになってる状態だろうか?

 麻薬なんて使った事ないからわからないけど。

 

 だから、この衝動をぶつけられる強敵と対峙してる時にしか、個性のフルパワーは使えないのだ。

 まあ、今は両手脚だけだからフルパワーじゃないけど。

 ていうか、フルパワーなんて使ったらマジで洒落にならない事になるから使わないけど。

 それでも手加減しなくて良い敵を相手に暴れられるのは、めちゃくちゃ気持ち良い!!

 

 そして、脳みそヴィランは腕をちぎられても欠片の痛みすら感じていないかのように、再び私の前に現れた。

 驚いた事にあっちも超再生を持ってるのか、ちぎった右腕も元に戻ってるし。

 そして、安易に突撃パンチしてももう通用しないと判断したのか、今度は武術の構えみたいなポーズをとりながら感情の窺えない目で私を見つめていた。

 

 良いねぇ。

 タフな男は大好きだよ。

 これは最高のサンドバッグだ。

 楽しくなってきたぁ!!

 

 行くぜぇ!!

 簡単に壊れてくれるなよぉ!!!

 

 そうして今度はこっちから仕掛けようとしたところで、ふとこいつと似たようなのがもう一体いたな、と思い出し。

 あれ? このままだと相澤先生とか死ぬんじゃね? という事に思い至って少し冷静になった私は、とりあえず使い魔を召喚して相澤先生の所に向かわせておいた。

 

 今回召喚したのは十体。

 私の使い魔は出せば出すほど一体一体が弱くなっちゃうから、今回みたいに私の手が届かない所の強敵相手に派遣するなら必然的に少数精鋭を使う事になる。

 十体までなら性能は劣化しない。

 個々が個性使ってない時の私くらいの強さで生み出される。

 

 それでも、あっちの脳みそヴィランがこっちのと同格なんだったら盾くらいにしかならないだろうけどね。

 でも応援を呼ぶまでの時間稼ぎくらいにはなるんじゃないかな。

 

 ……さて。

 待たせたな脳みそヴィランよ。

 これで心置きなく戦えるぜ。

 

 今度こそ行くぞぉ!!!

 

 そうして私と脳みそヴィランの、戦いのゴングが鳴った。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──相澤視点

 

 

 

「八木!!」

 

 突如現れたヴィランの集団。

 そして開始早々、その中の一人に八木が襲われた。

 辛うじて目で追うのがやっとの速度で行われた、一瞬の攻防。

 その結果、八木は入口からやや左側方面に凄まじい勢いで殴り飛ばされ、その場に残ったヴィランは即座に追撃を開始した。

 

 ……あれほどのスピードとパワー。

 狙われたのが八木でなければ確実に誰か死んでいただろう。

 それは俺も例外じゃない。

 その事を運が良かったと思うべきか、それとも最初から八木狙いの必然と考えるべきか。

 判断はつけられないが、今はそんな事を考えている場合ではない。

 ヴィランの集団は未だ目の前に居て、その中には八木を吹き飛ばした奴とよく似た特徴を持った奴まで居る始末。

 依然として脅威はそこにある。

 

 対してこちらは守るべき生徒を庇いながら戦わなければならない。

 生徒の避難が最優先だ。

 だが、ここに居るプロは俺と13号の二人だけ。

 片方が連中の足止め。

 もう片方が生徒の護衛兼誘導と考えても戦力が足りない。

 八木を助けに行く余裕がない。

 あいつの戦闘力なら大丈夫かもしれないが今回の敵は強い。

 万が一は普通にあり得る。

 それを抜きにしても、俺は教師であいつは生徒だ。

 俺にはあいつを助ける義務と責任がある。

 

 ……だが、今はその責任を果たす事ができない。

 二兎を追う者は一兎も得ず。

 両方を救おうとすれば片方すら救えない。

 両方救えるのはそれだけの力を持つ者だけだ。

 そうでないのならば、片方ずつ確実にやっていくしかない。

 力を持たぬ者が無謀にも両方を救おうともがいても、却って被害を拡大させるだけ。

 合理的じゃない。

 ……もっとも、今回に関しては片方すら救える保証はないがな。

 それでも救わねばならない。

 それがプロの仕事だ。

 

「13号! 避難開始! 学校に連絡試せ! センサーの対策も頭にあるヴィランだ。電波系の奴が妨害している可能性もある。上鳴、お前も個性で連絡試せ!」

 

 焦る頭を努めて冷静に保ち、指示を出す。

 雄英の浸入者用センサーは反応していない。

 そこまでできるヴィラン相手には撤退ですら容易じゃないだろうが、やるしかないだろう。

 

 俺の指示を聞いて、八木が吹き飛ばされた混乱からようやく抜け始めた生徒達が動き出す。

 だが、その中には当然俺の指示に反発する奴もいた。

 

「先生待ってください! 八木さんを助けには行かないんですか!!?」

 

 そう言ったのは八木と仲の良い緑谷だ。

 その反応はヒーローを目指す者としては当然だろう。

 俺の指示は、ある意味八木を見捨てると言っている訳だからな。

 

「……現状の戦力ではその余裕がない。撤退と連絡が最優先だ。増援が到着すれば戦況は一気に覆る」

 

 それまでは八木を信じるしかない。

 俺は己の無力さを噛みしめながら緑谷に言い放った。

 

「そんな……! って先生は!? まさか一人で戦うんですか!?」

 

 当然だろう。

 撤退の為に奴らの足止めは必須。

 13号に生徒の事を任せた以上、足止めは俺の仕事だ。

 俺は何も言わずにヴィランの集団に向かって相対した。

 

「無茶だ!! あの数じゃいくら個性を消すって言っても!! イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ。正面戦闘は……」

「緑谷」

 

 引き留める緑谷に対して、俺は一言だけ言った。

 

「一芸だけじゃヒーローは務まらん。……13号! 生徒を任せたぞ!」

 

 そして俺はヴィランの集団に向かって突撃を開始した。

 まず出迎えてくれたのは、射撃系の個性を持つと思われる一団。

 個性を消して射撃を封じ、武器の捕縛布を使って戦闘不能にする。

 

「ばかやろう!! あいつは見ただけで個性を消すっつうイレイザーヘッドだ!!」

「消すう~~? 俺らみてえな異形型のも消してくれるのかぁ!?」

 

「いや無理だ。発動系や変形系に限る」

 

 次に来たのは、生まれつき個性が身体を変質させているタイプ、異形型の個性の一団。

 俺の個性ではこいつらの個性は消せない。

 事実、八木の個性も消せなかった。

 

「が、お前らみたいな奴の旨みは統計的に近接戦闘で発揮される事が多い」

 

 事実、異形型最強と思われる八木の個性もパワー、スピード、耐久力と近接戦闘向きの傾向がある。

 あいつに関しては例外的にそれ以外の引き出しも多いが、こいつらは違う。

 

「だから、その辺の対策はしてる」

 

 近接戦闘用に鍛え上げたフィジカルと武器の捕縛布を使った動きでヴィラン共を倒していく。

 どうもこいつら、一人一人はそんなに強くない。

 そこら辺の街中に居るチンピラレベルだ。

 本当にやばそうなのは、八木を吹き飛ばした奴を含めて三、四人といったところか。

 

 だが、いかんせん数が多い。

 集団との長期決戦は俺の苦手分野だ。

 果たして、増援が来るまで持ちこたえられるかどうか。

 

 そんな弱気な事を考えたせいか。

 一瞬のまばたきの隙に厄介そうな奴、ヴィラン共をここへ運んで来たと思われるワープみたいな個性を持った奴に、後ろへ抜けられた。

 

 俺の後ろ。

 すなわち生徒達の方へと。

 

「初めまして。我々はヴィラン連合。せんえつながら、この度ヒーローの巣窟雄英高校に入らせて頂いたのは──平和の象徴オールマイトに、息絶えて頂きたいと思っての事でして」

 

 黒い靄のような姿をしたワープヴィランが生徒達に何か話している。

 助けに行こうにも、こちらは戦闘の真っ最中だ。

 13号に任せるしかない。

 

 

 

「散らして。なぶり殺す」

 

 

 

 そんな声が聞こえた直後。

 生徒達をあの黒い靄が覆った。

 そして、それが晴れた時には何人かの姿がその場から消えていた。

 くそっ!!

 やられたか。

 だが、俺は目の前のヴィラン共の相手で手一杯だ。

 あの黒い靄がワープする個性だとして、どこに飛ばされたかもわからない生徒を助けに行く余裕はない。

 ……まずいな。

 本格的に詰みかけている。

 

 そう思った時、それらは現れた。

 のっぺりとした影法師に翼と角を付けたようなデザインをした人影。

 それが十体。

 人影は空を飛んで飛来し、俺の周囲に居たヴィラン共を蹴散らし、その後は俺を守るように俺を中心にした円形の陣形を組んだ。

 

 こいつらの正体を俺は知っている。

 八木が入試の時に使っていた能力。

 渡された資料では使い魔と呼ばれていた存在だ。

 

 こいつらがいるという事は、八木はまだ生きているという事の証拠だ。

 それだけでも朗報だが、入試の映像を見た限りこいつら自体の戦闘力もかなり高い。

 一体一体が並みの増強系個性を上回る力を持っている。

 

 これは予想外の頼れる援軍だ。

 自分自身も強敵と戦いながら他の場所への対処も同時に行える。

 やっぱりお前はヒーローに向いてるよ、八木。

 

 だが、今この援軍が必要なのは俺じゃない。

 

「……お前らに言ってもわからないかもしれないが聞いてくれ。生徒達の何人かがワープの個性でどこかに飛ばされた。俺の支援よりそっちの探索と救助に向かってもらいたい」

 

 この使い魔とやらをどういう仕組みで八木が操っているのかはわからない。

 もしかしたら八木本人の指示がなければ動かないのかもしれない。

 だが、俺はそれでも情報を伝えて助けを乞うた。

 生徒に助けを求めるなど、教師としてもヒーローとしても失格だが、それでも八木やこの使い魔が大きな戦力である事には変わりがない。

 

 ならば俺らしく合理的にいく。

 今大事なのは、俺のこだわりでもヒーローとしての矜持でも教師としての責任でもなく、全員を助ける事だ。

 その為に、使えるモノは生徒でも使おう。

 

 俺の言葉を聞いた使い魔達は、お互いに顔を見合わせるような仕草をした後、十体中七体がこの場を飛び去って行った。

 六体がそれぞれUSJの各エリアの方角に。

 残りの一体は入口付近、残った生徒達と13号が居る辺りに飛んで行った。

 こいつらにはある程度の自己判断能力があるのかもしれない。

 

 そうして俺の元に残った使い魔は三体。

 数は少ないが、さっきまでのチンピラ共を相手にするならば過剰なくらいの戦力だ。

 詰みかけていた盤面は、八木の送って来た戦力によって一気に覆った。

 

「おいおい。マジかよ」

 

 俺の見ている前で、全身に手のような装備を付けたリーダー格と思われるヴィランがそう呟いた。

 ガリガリと首筋をかきむしり、苛立たしげな視線をこちらに向けている。

 

「アレは脳無が足止めするんじゃなかったのかよ? 本体は止められても分身までは止められないってか? 使えねえなあの脳無」

 

 敵が眼前にいる状況で苛立ちを隠そうともしていない。

 その姿は隙だらけに見える。

 まるで、癇癪を起こす寸前の子供の様だ。

 なんなんだ、こいつは?

 

「もう良いや。さっさと終わらせよう。脳無。イレイザーヘッドとあのガラクタ共を殺れ。お前は役に立ってくれよ」

 

 そんな、飽きた玩具を捨てるような態度で手のヴィランが指示を出した直後。

 今まで不気味な沈黙を保っていた、八木を吹き飛ばしたのと似たヴィランが動き出した。

 

 

 

 俺の認識は甘かった。

 八木の使い魔の参戦によって戦況は好転したと錯覚してしまっていた。

 最初、この使い魔達は俺を守るようにして陣形を組んでいた。

 それにどんな意味があったのか。

 それを命じた八木がどんな判断を下したのか。

 

 その意味を、俺はわかっていなかった。

 

 

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