小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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かなりオリジナル描写があります。


USJ パート7

 脳みそヴィランを仕留めた私は唖然として見守る事しかできなかったパパ達の所へと戻った。

 いや、戻ったっていっても目で見える範囲にいるから100メートルも離れてないんだけどね。

 脳みそヴィランとの戦闘開始から僅か十秒弱。

 パパですら介入できない超短期決戦という私の目的は見事に果たせた訳だ。

 危険をおかしてまでディザスター・モードを使って良かった。

 

 まあ、もちろん御しきれる自信があったからこそ使った訳だけども。

 さすがに自信もなしに使えるほど軽い技じゃないよこれは。

 危険すぎるしリスクも高い。

 けど、緊急時に呑み込めない程のリスクじゃない。

 あんまり使いたくはないけど、いざという時には充分切り札になりえる。

 それが、私のディザスター・モードに対する評価だ。

 最悪の場合でも暴走する前に解除する事くらいはできると踏んでたし、実際そうだったしね。

 

「ふざけんな……!」

 

 と、帰る途中でそんな声が聞こえた。

 見てみれば、手のヴィランが凄まじい形相で私の事を睨み付けていた。

 あれは人を殺っちゃてる奴の眼だわ。

 爆豪少年みたいなそれっぽいだけの偽物とは違う。

 ガチで人を殺っちゃってる奴の眼だよ。

 もう見ただけでドロドロと眼が濁ってるのがわかる。

 

「ふざけんな……! ふざけんなよ!! 脳無が瞬殺だと? このチートが!!! 脳無一体で充分足止めできるレベルじゃなかったのかよ!!? あいつ(・・・)俺に嘘教えやがったのか!!?」

 

 首筋をガリガリと掻きむしりながら、まるで癇癪を起こした子供みたいに叫ぶ手のヴィラン。

 精神が幼い。

 

「死柄木弔!! 撤退しましょう!! もう本当に勝ち目はありません!!」

「うるさい!!」

 

 保護者みたいな黒モヤのヴィランがそう言って説得するけど、手のヴィランは憤怒の眼差しで私を見つめてくるばかりで全然聞く耳持ってない。

 敵地でそれはいかんでしょ。

 そんなんじゃ撤退する前にやられるぞ。

 

 でも、実はもう私は動けなかったりする。

 いや、動こうと思えば動けるんだけど、個性を使った戦闘は難しいって感じだ。

 私は今ディザスター・モードの反動で興奮状態にある。

 表面上は冷静さを保ててるけど、頭の中では脳内物質がどばどばと溢れてるのを感じる。

 そんな状態で個性を使ったら適切な手加減ができる自信がない。

 十中八九、あのヴィラン達をミンチにしてしまうだろう。

 クラスメイト諸君が見ている前でそれはさすがにマズい。

 

 でも、もう私が動く必要はない。

 あいつら私にばかり気をとられて大事な事を忘れてる。

 この場にはいくら衰えたとはいえ、いくら弱ってるとはいえ、ヒーロー界の不動の頂点に君臨するナンバーワンヒーローがいるって事を。

 

「スマッシュ!!!」

 

「がッ!?」

「ぐぅ……!」

 

 パパが手のヴィランと黒モヤのヴィランを殴って制圧した。

 そう。

 私はパパが無理してるなら怒るけど、ヒーロー活動自体をするなと言ってる訳じゃない。

 だったら、この状況でパパが動かない理由などないのだ。

 ……もっとも、私が何を言ったところでパパがヒーローを辞めるとは思えないけどね。

 伝家の宝刀「パパ大っ嫌い!!」を使っても無理だろう。

 無駄にパパの心を抉るだけだ。

 

 まあ、何にせよこれで一件落着かな。

 

「……魔美ちゃんのやった事については言いたい事が多分にある。しかし、それを言うのは後にしよう。今は君達の事だ。……おいたが過ぎたなヴィラン達よ!! ここで終わりだ!!」

「くそ!! ふざけるな!! こんな……!! こんな呆気なく……!!!」

 

 手のヴィランがなにやらぼやいてるけど、ヴィランの逮捕なんて総じてこんなモンでしょう。

 基本的に暴れてやられて逮捕されるまでがヴィランのお約束だ。

 ヒーローアニメはヒーローがヴィランをかっこよく倒して終わる。

 そんな中で数少ない例外となるのは、「ネームド」と呼ばれる強力なヴィランのみ。

 そのネームドだって逃亡できるのは運が良かっただけで、悪運尽きれば最後には捕まるのが宿命だ。

 

 今回襲撃してきた連中は結構用意周到だったし、脳みそヴィランというやたら強い手駒もいた。

 アレに関しては並みのネームドよりよっぽど強かったというのは認めよう。

 だからといって、絶対に捕まらないなんて話がある訳がない。

 どんなに強いヴィランでも、それよりも強いヒーローとぶつかればやられてしまう。

 当たり前の事でしょ。

 

 それに、

 

「お待たせしました!! 1―Aクラス委員長飯田天哉!! ただいま戻りました!!!」

 

 これで完全に詰みだ。

 なにやら飯田少年が色んな格好をした人達を引き連れて現れた。

 あの人達の顔は雄英の教育リストで知ってる。

 つまりアレは全員雄英の教師達。

 そして雄英教師は全員がプロのヒーロー。

 脳みそヴィランなき今、パパに制圧された二人のヴィランを囲むには過剰すぎる戦力だよ。

 

「チィッ!! 黒霧ッ!!!」

「おっと!!」

「ぐはっ……!」

 

 黒モヤのヴィランがパパに殴られて気絶した。

 終わったな。

 ワープ個性の黒モヤが使えなくなった今、もう完全に逃げられる可能性はゼロになった訳だ。

 

 さーて。

 後はあいつらが連行されて、私が怒られて、パパを怒り返して、それで今回の事件は完全に終わりだな。

 早く帰って家にある巨大なぬいぐるみ(特注サンドバッグ)を殴ってこの興奮を静めたい。

 

 

 

 もしかしたらその呑気な考えがフラグだったのかもしれない。

 

 

 

 往生際の悪い手のヴィラン以外、誰もがもう終わったと認識していた。

 家に帰るまでが遠足。

 完全に逮捕するまでがヴィラン退治だから、皆最後まで油断はしていなかった。

 でも、やっぱり少しは気が抜けてたんだと思う。

 

 その瞬間を狙い澄ましたかのように、奴が動いた。

 

 戦いの舞台となったこの場所に出来上がった不自然なクレーター。

 その中心で延びてた筈のもう一体の脳みそヴィラン。

 私が確実にトドメを刺した筈のそいつが高速で動き出した。

 

「「「「「「!!?」」」」」」

 

 その場の全員がそれに驚愕した。

 特に直接トドメを刺した筈の私の驚愕は激しかった。

 あれだけしこたま殴って完全にトドメまで刺したのにまだ動けるのか!?

 何というタフネス!!

 何という回復力!!

 やっばい!! まだあいつの事侮ってた!!

 あいつマジで人間じゃないよ!!

 

 そして、脳みそヴィランはパパに押さえつけられている手のヴィランを救出するかのように、パパに襲いかかった。

 

「テキサス・スマッシュ!!!」

 

 だが、そこはさすがにナンバーワンヒーロー。

 パパは予想外の事態にも冷静に対応し、脳みそヴィランを殴って迎撃した。

 凄い!

 普段のポンコツっぷりが信じられない程の対応力だ!

 

 でも!!

 

「パパ!! それだけじゃ駄目!!」

 

 私はとっさにパパに忠告を発した。

 直接戦った私にはわかる。

 あいつはやたらと防御力が高い。

 いくら私が弱らせたとはいえ、まだ動いてる以上パンチ一発じゃ倒せない!

 

「ム!!」

 

 そして、脳みそヴィランは妙な行動を開始した。

 殴る為に突き出したパパの腕を掴み、凄い勢いで体を膨らませていく。

 これって、もしかしなくても……!?

 

「パパ!! 早くそいつ引き剥がして!! 多分、自爆する気だ!!」

「見ればわかるさ魔美ちゃん!! マジで正気の沙汰じゃないな!! オクラホマ・スマッシュ!!!」

 

 パパが高速で体を回転させて、脳みそヴィランを空高く放り投げた。

 そして、空の上で脳みそヴィランは予想に違わず大爆発を起こした。

 その肉片が地面に落ちてくる。

 へっ! 汚ねえ花火だ!

 

 なんて言ってる場合じゃなかった!

 地面に落ちた肉片の一つ、脳みそヴィランの腕がもぞもぞと動いている!!

 信じられん!!

 絶対真っ当な生物じゃないだろこいつ!!

 

「!?」

 

 そして、私が見ている前で脳みそヴィランの腕は赤黒い爪を伸ばした。

 すわ! 攻撃か!?

 と思って身構えた私だけど、爪は何故か私じゃなくて黒モヤのヴィランの方に向かって行った。

 もう訳がわからん。

 こいつの生態の何一つとして理解できなくなってきた!

 

 でも、ここからさらに驚くべき事が起こる。

 脳みそヴィランの腕から伸びた赤黒い爪が気絶してる黒モヤヴィランの胸に突き刺さる。

 すると、ワープの個性である黒いモヤが発動して大きなゲートを作り出した。

 何が起きた!?

 

 しかしこれはマズい!

 パパはさっき自爆しそうなだった脳みそヴィランを引き剥がす為に、手のヴィランの拘束を解いて奴から離れてしまっている!

 つまり、今、手のヴィランは完全フリー!

 手のヴィランが黒いモヤの中に消えて行くのが見えた。

 

 マジか!?

 マジでか!!?

 あの詰みの状況からの大どんでん返しがきたよ!!!

 信じられない……!

 あの手のヴィラン、何か持ってるのかもしれない。

 こう……天運的なモノを!

 主人公補正的なモノを!

 

 

 

「今度は殺すぞ平和の象徴……!! そして、あのクソガキ……!!」

 

 

 

 手のヴィランは去り際に恨みに満ちた声でそう言っていた。

 

 ヤバい!

 ヤバイぞ!!

 なんか凄い嫌な予感がする!

 アレを逃がしたら、なんか大変な事が起こるような、そんな予感が!

 

 ここは殺してでも奴を止める!!

 

「ダークネス・スマッシュ!!!」

 

 私は個性を解放し、闇のレーザービームによって奴を仕留めようとした。

 でも、それが命中するよりも一瞬早く黒いモヤはかき消え、もうそこには何もなかった。

 

 逃がしたか……。

 

「なんてこった……。こんだけ派手に侵入されて逃がしてしまうとは……!」

 

 先生の一人がそう言ってぼやいた。

 

「完全に虚をつかれたね……。それより今は生徒らの安否さ」

 

 そんな立派な事を言ったネズミっぽい生物の指示で、教師達はUSJの各エリアに散って行った。

 

 

 

 

 

 その後、クラスメイト諸君は全員の生存が確認された。

 どうも私の使い魔が各エリアに散ってクラスメイト諸君の手助けをしていたらしく、全員ほぼ無傷との事だ。

 私、そんな事全然知らなかったわ。

 ていうか、クラスメイト諸君が各エリアに散らされたという事すら知らなかったわ。

 いつの間にかそんな事になってたんだ。

 

 今回一番重傷だったのは相澤先生。

 私やパパが到着する前に使い魔と一緒にあの脳みそヴィランと戦っていたらしく、ボコボコにされて両腕と顔面の骨を骨折。

 その他にも細かい傷が盛りだくさんだそうだ。

 かわいそうに。

 

 次に酷いのが13号先生。

 黒モヤのヴィランとの戦いで、ワープ使って自分の個性を跳ね返されたらしく、背中から上腕にかけての裂傷が酷いそうだ。

 でも命に別状はなし。

 なら問題ないな。

 

 あと怪我したのはパパと緑谷少年。

 パパはあの脳みそヴィランの攻撃を一回もろに受けただけだから、そこまで酷い怪我じゃない。

 でも、私の忠告を無視して作った傷だ。

 パパとは後でオハナシが必要だな。

 私も私でパパの言う事無視して戦った訳だし、一度じっくり話し合う必要があると思う。

 

 緑谷少年?

 彼は良いんだよ。

 いつも通り個性の反動でバッキバキになっただけだから。

 むしろ、今回は指二本だけで済んだ分、いつもより軽傷と言えるんじゃないかな。

 

 

 

 

 

 そうして、あの手のヴィランを取り逃がすというちょっと消化不良な結果になりつつも、私にとってのUSJ事件は終わりを迎えた。

 

 疲れたなあ。

 なんだかんだで奥の手まで使っちゃったしね。

 とりあえず、保険室に運び込まれたパパに小言でも言って、今日は帰ろうっと。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───???視点

 

 

 

 モニターを繋いだ先の場所。

 アジトの一つである隠れたバーに黒いモヤ、ワープゲートが発生する。

 そしてその中から僕の大切な教え子、死柄木弔が現れた。

 

「いてぇ……。最後、あのクソガキの攻撃がちょっと当たった……。腕が動かない……。完敗だ……」

 

 弔はどうやら結構な手傷を負ってしまったらしい。

 困ったな。

 今は回復系の個性はストックがない。

 どうしようか。

 

「手下共は役に立たなかった。脳無もやられた。しかも片方は瞬殺だ。それもオールマイトじゃなくてあのガキに。……話が違うぞ先生」

「違わないよ」

 

 弔の詰問に答える。

 どうやら今回は完全な失敗だったようだ。

 黒霧も気絶してしまっているようだしね。

 

「ただ見透しが甘かったね。その様子だとオールマイトを戦わせる事すらできなかったみたいだし。ちょっとあの子を舐めすぎていたかな」

 

 さすがは僕の最高傑作というべきかな。

 同時に最悪の失敗作でもあるけれどね。

 脳無を瞬殺という事は、出力60%~70%程度を自発的に御せるようになったという事かな?

 驚異的な数字だ。

 正直、衰えたオールマイトよりも厄介かもしれないなぁ。

 もっとも、弔の話を聞く限りではもう片方の脳無はある程度仕事をしてくれたようだし、常にそれだけの出力を出せる訳ではないという事だろう。

 そこだけは救いかな。

 

「……あれだけ強力な脳無を二体も作るのはかなり苦労したんだがな。それがまさかの成果ゼロか……」

 

 僕の後ろでドクターが疲れたように項垂れてしまった。

 彼には今回かなり無理をさせてしまったからねぇ。

 あの子の足止めとオールマイト抹殺の為に、強力な脳無が最低でも二体は必要だった。

 その上、不測の事態に備えていろいろと仕込んでいたからね。

 彼は過労死するんじゃないかというくらいに頑張ってくれた。

 その結果がこれでは気落ちするのも無理はないかな。

 

「悔やんでも仕方ない。今回だって決して無駄ではなかった筈だ。精鋭を集めよう。じっくり時間をかけて」

 

 僕は弔に向けてそう言った。

 たとえ精鋭が集まったとしてもあの子の撃破はほぼ不可能だろうし、中途半端に追い詰めるのは一番危ない。

 ただ、あの子の撃破は決して必須条件ではない。

 狙いはあくまでもオールマイト。

 そして、その先だ。

 それを成す為に精鋭が必要なのは確かな事実。

 

「我々は自由に動けない。だから君のようなシンボルが必要なんだ。──死柄木弔! 次こそ君という恐怖を世に知らしめろ!」

 

 そう言って僕は弔に発破をかける。

 君ならば次の僕になれる。

 オールマイトとあの子によって奪われてしまった、僕という悪の支配者にね。

 

 そして僕は通信を切った。

 




長かったぜUSJ……。
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