小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
「今回は事情が事情だけに小言も言えないね……」
保健室に担ぎ込まれたパパに向かって看護教諭の先生、リカバリーガールことおばあちゃんが苦い顔でそう言った。
甘やかすのはいかんと思うのだよ!
「いや、駄目でしょおばあちゃん。小言くらい言わなきゃ。結局パパは私のお願いを無視して飛び出して来ちゃったんだから!」
そうだ。
いくら結果オーライとはいえ、今回のパパは戦う前から限界だったというのは変わらぬ事実。
だから休んでなさいって言ったのに、それを振り切って飛び出して来ちゃったのも変わらぬ事実。
それも嫌な予感がするなんて抽象的な理由で!
怒る権利が私にはある!
「黙りな小娘。プロの嫌な予感ってのはバカにできないモンなのさ。それが結果として死者0名という結果に繋がったんだから、口を挟むモンじゃないよ」
「えー!」
「えー! じゃないよ! それにあんたも結構な無茶したんだろ。父親を責められやしないさ」
「うっ!!」
それを言われると痛い!
確かに私もまたディザスターモードという無茶をやらかした。
一歩間違えば大災害に繋がるような無茶を。
その一歩を間違えない自信があったとはいえ、そりゃ責められるよなぁ……。
でも、それだってパパがノコノコと現れなければ使う必要はなかった訳で。
うーん……。
釈然としないなぁ。
「……まあ、それもオールマイトを助ける為の無茶だったんだからそこまで責めはしないさ。でも、もう二度とこんな事はしないように。いいね」
「はーい……。ごめんなさい」
「よろしい」
まあ、やるなと言われるとやりたくなるのが人のサガだし、またやると思うけどね。
パパのピンチとなったら躊躇わないよ私は。
でも、できるだけディザスターモードは使わずに解決するように努力はしよう。
そうしよう。
「ほら! 娘が謝ってるんだから、あんたも謝りな! 無茶の度合いで言えばあんたの方が酷いんだからね!!」
「は、はいぃ!! どうもすみませんでした!!」
「私に謝ってどうすんだい!! 娘に謝りな!!」
「は、はいぃ!! ……ごめんね魔美ちゃん」
パパがベッドで横になりながら、本当に申し訳なさそうにそう言ってくる。
ハア。
仕方がない。
許してやろう。
「もういいよ。パパも頑張ったみたいだし、今回だけは許してあげる」
「魔美ちゃん……!」
パパが感動したかのように私を見つめてきたので、プイッと顔を背けておいた。
実際、パパが乱入しなければ、相澤先生と緑谷少年辺りは死んでいたみたいだし。
パパの行動を頭ごなしに否定する事もできないんだよなぁ。
私としては他人の命よりもパパが心配だけど、パパは身を削ってでも他人を助けるのが仕事で、生き甲斐だ。
どうあってもそこが曲がらない以上、こっちが妥協するしかない。
その代わり、後でしこたま貢がせてやる!!
覚悟しておけ!!
「失礼します」
私が脳内で散財リストを作っていると、突然保健室の扉が開いて、そこからスーツの上にコートを羽織って紳士的な帽子をかぶった、ザ☆刑事って感じの外見の人が現れた。
あー。塚内さんだー。
「オールマイト! 久しぶり!」
「塚内くん!! 君もこっちに来ていたのか!!」
パパがベッドからガバッって感じで起き上がってきたので、肩を掴んで無理矢理ベッドの中に押し倒した。
そして一言。
「寝てろ」
「……はい」
私の威圧感溢れるお言葉に、パパは黙して従う他ない。
これが家庭内ヒエラルキーというやつだよ。
「……魔美子ちゃん。君も変わらないね」
「お互い様です。あなたも変わりませんね塚内さん。久しぶりです」
「うん。久しぶり」
塚内さんと軽く挨拶を交わす。
この人は良い人だ。
私も嫌いじゃない。
「オールマイト……! え……良いんですか!? 姿が……」
と、そこで今まで保健室の空気となっていた緑谷少年がベッドからガバッって感じで起き上がって、そんな声を上げた。
彼はせいぜい左指の骨折程度だから、心配する必要はないのだ。
そして、緑谷少年の言葉にパパが答えた。
「ああ! 大丈夫さ! 何故って? 彼は最も仲良しの警察、
「ハハッ。なんだその紹介」
塚内さんがあんまり表情の変わらない顔で笑った。
そう。
この人はパパの事情を全て知っている。
怪我の後遺症による衰弱も「ワン・フォー・オール」の秘密も。
私がワン・フォー・オールの秘密を知ったのは、家に招かれた塚内さんとパパの会話を盗み聞きしたからだしね。
ちなみに、私の秘密も知っている。
パパは塚内さんに全部ぶっちゃけた。
まあ、その前から警察上層部に聞かされて知っていたようではあったけど。
「早速で悪いがオールマイト。ヴィランについて詳しく……」
「待った。待ってくれ。それより、生徒の皆は無事か!? 相澤……イレイザーヘッドと13号は!!」
あれ?
その情報なら私も知ってるけど?
なんで私に聞かなかったんだろ?
……私がプリプリ怒ってたからか。
OK。理解した。
「……生徒はそこの彼を含めて軽傷数名。教師二人はとりあえず命に別状なしだ」
塚内さんが、「まっくもう。オールマイトは相変わらずだなぁ」って感じで説明してくれた。
家のパパがご迷惑をかけてすみません。
「3人のヒーローが身を挺していなければ、生徒らも無事じゃあいられなかっただろうな」
まあ、そうだろうね。
状況を軽く聞いた感じ、パパがいなければ緑谷少年辺りは死んでただろし、相澤先生がいなければクラスメイト諸君は脳みそヴィランの餌食になってた。
13号先生?
知らん。
あの人の活躍についてはまだ聞いてないよ。
「そうか……。しかし一つ違うぜ塚内くん。生徒らもまた戦い、身を挺した!!」
はいはーい!
私がその筆頭です!
「こんなにも早く実戦を経験し、生き残り、大人の世界を、恐怖を知った一年生など今まであっただろうか!?」
はいはーい!
私は小学一年生くらいの頃からパパに内緒で謎の
もちろんそんな事は言わないけど。
でも、バレるところにはバレてそうだな、この秘密。
「ヴィランも馬鹿な事をした!! このクラスは、強いヒーローになるぞ!! 私はそう確信しているよ」
パパがそう力強く宣言してサムズアップした。
確かに私という例に当てはめて考えれば、早くから実戦経験を積む程に強くなるだろうね。
絶対に私は例外だと思うけど、そこには触れちゃいけない。
その後、私はいい加減帰って寝たかったので、おばあちゃんにいつものお薬(鎮静剤)よりちょっと強いやつを処方されて帰った。
そして帰ってお薬を飲んで、巨大ぬいぐるみ(サンドバッグ)を殴る日課をして、寝た。
それでいろいろあった一日がようやく終わった。
疲れたぁ。
今日はもうぐっすり寝よう。
お休みなさい……。
◆◆◆
──オールマイト視点
雄英襲撃事件の翌日。
臨時休校となり、生徒達のいなくなった雄英校舎にて、私は緊急で開かれた職員会議に参加していた。
魔美ちゃんが知っていればまた「寝てろ」と言って止めらていたかもしれないが、昨日私は保健室で寝泊まりし、あの子は家に帰った。
つまり、私がこうして起き出している事をあの子は知らない。
……なんだか悪い事をしている気分になるな。
「──死柄木という名前、触れたモノを粉々にする個性、20代~30代の個性登録を洗ってみましたが該当なしです。ワープゲートの黒霧という者も同様です。無戸籍かつ偽名ですね。個性提出をしていない、いわゆる裏の人間……」
と、いけない。
今は会議に集中しなければ。
塚内くんが今回のヴィランについての捜査情報を話してくれた。
「何もわかってねぇって事だな……。死柄木とかいう主犯を取り逃がしちまったのはマズかったな」
ウッ!
心が痛い!
取り逃がしてしまった張本人として申し訳ない限りだ。
「すまない……。あそこまで追い詰めておきながら取り逃がしてしまった……」
「え? いや、その、オールマイトのせいと言っている訳では!!」
「そうだよ。あれだけプロが雁首揃えて取り逃がしたんだ。責任というなら全員の責任さ」
スナイプくんと校長が慰めてくれるが、やはり私は責任を感じてしまう。
それに彼らをあそこまで追い詰めたのは魔美ちゃんのお手柄だ。
その行動がいくら問題のあるものだったとはいえ、その成果は間違いなく称えられるべきもの。
それを最後の最後で私が台無しにしてしまったと考えるとな……。
「君の考えている事はなんとなくわかるよ。自責の念以外にも、君の娘の活躍を台無しにしてしまったとか考えているんだろう?」
さすが校長。
お見通しでいらっしゃる。
いや、私が顔に出やすいのか……?
「大丈夫さ。彼女の活躍はここにいる全員が認めている。確かに問題はあるけど、君が苦戦するような強敵を倒したという実績がなくなる訳じゃない。彼女は良いヒーローになるよ」
そして、そう言って頂けた。
他の教師達もうんうんと頷いている。
確かに。
魔美ちゃんは今回、破壊衝動に呑まれるでもなく、それを解消する為でもなく、私を助ける為に戦ってくれた。
それは立派なヒーローの資質。
私が責任を感じるのは変わらないが、魔美ちゃんがそれを認めてもらえたのはとても喜ばしい事だ。
それだけでも私の心は軽くなる。
「ありがとうございます」
「良いって事さ」
気づかってくれた校長先生にお礼を言って頭を下げる。
やはりこの人は素晴らしい人物だ。
そして会議は元の議題、ヴィラン連合と名乗った者達についての話に戻る。
「主犯か……」
「なんだいオールマイト?」
そこで私は気になっていた事を告げた。
「……思いついても普通行動に移そうとは思わぬ大胆な襲撃。用意は周到にされていたにも関わらず」
それは主犯である死柄木と呼ばれた人物に関する事だ。
「突然それっぽい暴論をまくしたてたり、自身の個性は明かさないわりに脳無とやらの個性を自慢げに話したり……。そして、思い通りに事が運ばないと露骨に気分が悪くなる」
まるで小学生くらいの頃の魔美ちゃんのようだ。
玩具を自慢したり、屁理屈を捏ねて暴力を正当化しようとしたり、それで怒られると不機嫌になって最終的には泣く。
これぞ子供。
……いや、今回のヴィランは泣いてはいなかったか。
「……まあ、個性の件は私の行動を誘導する意味もあったろうが……」
脇腹を掴まれた時は痛かった。
「それにしたって対ヒーロー戦で『個性不明』というアドバンテージを放棄するのは愚かだね」
校長のおっしゃる通りだ。
あの脳無とやらの個性がわからなければ、いくら魔美ちゃんでももう少し苦戦しただろう。
事実、最後にはもう一体の脳無にしてやられた訳だしな。
……まさか自爆した上に肉片になった後が本命だったとは。
こんなもの予想できる訳がないだろう。
「『もっともらしい稚拙な暴論』、『自分の所有物を自慢する』、思い通りになると思っている単純な思考。襲撃決行も相まって見えてくる死柄木弔という人物像は……」
「幼児的万能感の抜け切らない『子ども大人』だ」
まさにそうとしか言い様がない。
アレに比べれば魔美ちゃんの方が余程大人びている。
最近は尻に敷かれてきたしな……。
「力を持った子供って訳か!!」
「小学生時の『一斉個性カウンセリング』受けてないのかしら……」
「で!? それが何か関係あんのか!?」
「先日のUSJで検挙したヴィランの数……72名」
「!!?」
塚内くんが告げた内容に衝撃が走った。
そんなにいたのか……!?
よく生徒達は無事だったものだ。
遅れて肝が冷えた……。
「どれも路地裏に潜んでいるような小物ばかりでしたが、問題はそういう人間がその『子ども大人』に賛同し、付いて来たという事。……ヒーローが飽和した現代。抑圧されてきた悪意達は、そういう無邪気な邪悪に
抑圧された悪意か……。
悪意とはまた違うが、魔美ちゃんもまた「破壊衝動」というモノを抑圧しながら生きている。
あの子は個性の副作用のせいでそれが特別強すぎるというだけだが……人間なら誰しもそういう衝動を持っているものだ。
それを律しきれず、暴れてしまう者達がヴィランと呼ばれる。
そしてこの社会、「個性という力」と「暴れたいという衝動」をもて余した人間はごまんといる。
それらが死柄木のような奴の下に集まれば……どうなる事か。
「まあ、ヒーローのおかげで我々も地道な捜査に専念できる。捜査網を拡大し、引き続き犯人逮捕に尽力して参ります」
塚内くんがそう言って締めくくる。
「『子ども大人』……逆に考えれば生徒らと同じだ。成長する余地がある。もし優秀な指導者でもついていたりしたら……」
校長がそんな懸念を仰られた。
ヴィランを惹き付ける者が成長し、優秀なリーダーとなる。
それでは、まるで……
「…………考えたくないですね」
まるで、
そんな事を考えながら、私はそう返すのが精一杯だった。
その後、細かい事を話し合い、職員会議は終了した。
この話もUSJ編と言うべきだろうか?
だとしたら、まだ終わってなかった……!
恐るべしUSJ!!