小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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体育祭!!! パート2

 ──相澤視点

 

 

 

「第一種目は障害物競争!! この特設スタジアムの外周を一周してゴールだぜ!!」

「おい」

 

 俺は不機嫌な声で隣で実況をしているマイクに話しかけた。

 重傷の俺を無理矢理解説席に座らせてくれた野郎に。

 

「ルールはコースアウトさえしなきゃ何でもアリの残虐チキンレースだ!!! 各所に設置されたカメラロボが興奮をお届けするぜ!」

「俺いらないだろ」

 

 しかし、マイクはまるで聞く耳持たない。

 これ以上文句を言っても無駄だと判断した俺は、諦めて競技の様子を見守る事にした。

 馬の耳に念仏ってのは合理的じゃない。

 

 ふと目についたのは轟が倒したロボ・インフェルノの下。

 その一部分が盛り上がっていくのが見えた。

 そして、そこから切島が現れた。

 

「1ーA、切島潰されてたー!!」

 

 どうやら轟が倒したロボの下敷きになっていたらしい。

 潰されても大丈夫な個性にかまけて油断したか。

 減点だな。

 

 すると、切島の隣のロボの下からまた一人の生徒が現れるのが見えた。

 

「B組、鉄哲も潰されてたー!! ウケる!!」

 

 B組の生徒か。

 たしか切島と似たような個性を持ってる奴だったな。

 切島と同じ理由で減点だな。

 もっとも、他のクラスの生徒の採点をするのは俺の仕事じゃないが。

  

 次に目についたのは爆豪。

 個性の爆風を利用して飛び上がり、上からロボ・インフェルノをかわしていた。

 

「1ーA、爆豪!! 下がダメなら頭上からかよー!! クレバー!!」

 

 こいつは本当に優秀だな。

 これで性格がもう少しマシなら文句なしなんだが。

 

 そして、爆豪と同じく三次元的な機動力のある瀬呂と常闇が、爆豪の後を追って上から行っていた。

 他のA組連中も他のクラスに比べると速い。

 

 立ち止まる時間が短い。

 上の世界を肌で感じた者。

 恐怖を植えつけられた者。

 対処し、凌いだ者。

 各々が経験を糧とし、迷いを打ち消している。

 

「一足先行く連中A組が多いなやっぱ!! だが、そんな中にあって約一名全く動かない!! 八木アレ何やってんだ!!? ストレッチ!? あのすげぇ立派な選手宣誓は一体なんだったんだ!!? ヘイ! イレイザー! どういうこった!?」

「俺に聞くな」

 

 八木が何を考えているかはわからないが……まあ、想像くらいはできる。

 あいつはあいつなりに真剣な勝負(・・)をしようとしてんだろ。

 だが、どんな考え方を経てその結論に行き着いたのやら……。

 あれじゃ舐めてるととられても仕方ないぞ。

 

 そうこうしている内に第一関門は突破され、先頭は第二関門にたどり着いた。

 

「オイオイ! 第一関門チョロいってよ!! んじゃ第二はどうさ!? 落ちればアウト!! それが嫌なら這いずりな!! 『ザ・フォール』!!!」

 

 第二関門は少々大げさな綱渡りってだけだ。

 見上げる程に高い岩の柱の間をロープで繋いである。

 そのロープの上を渡って行くだけだ。

 だが、足場の不安定な場所で妨害でも受けたらただでは済まない。

 そもそも地上何十メートルという高さで綱渡りをやる事自体、それなりの恐怖だろう。

 中にはその高さに怖じ気づいたのか足を止める連中までいる始末だ。

 ……情けない。

 あのサポート科の奴なんて何の躊躇もなく飛び出しているというのに。

 

「実に色々な方がチャンスを掴もうと励んでますねイレイザーヘッドさん」

「何、足止めてんだあのバカ共……!」

 

 思わず苛立ちが口に出てしまった。

 あいつらは大幅に減点だな。

 

「さあ先頭は難なくイチ抜けしてんぞ!!」

 

 マイクの言葉につられて先頭を見れば、轟が当たり前のようにトップを走っていた。

 まあ、あいつはあの程度の高さに怯むような奴じゃねぇだろ。

 轟の他にも足を止めてない奴は何人もいる。

 中でも爆豪は第一関門の時と同じく、爆風で空を飛びながら猛追している。

 あのペースなら轟に最終関門の時には追いつくかもな。

 

 後、目に留まるのは飯田か。

 両足を揃えて直立し、腕を広げた奇っ怪なポーズでロープを渡っている。

 見た目はともかく、あいつの個性を考えれば合理的な選択だ。

 

「カッコ悪ィィーーー!!!」

 

 マイクには不評だったようだがな。

 いや、笑いどころではあったみたいだが。

 

 

 

 だが、客の関心は轟に集中してるようだ。

 

 

 

 それもそうか。

 轟はナンバー2ヒーロー「エンデヴァー」の息子。

 それにプライベートが謎で八木という娘がいる事を公表していないオールマイトと違って、轟がエンデヴァーの息子である事はそれなりに世間に知れている。

 注目されるのも当然か。

 

 ……さて、次は。

 

「先頭が一足抜けて下はダンゴ状態! 上位何名が通過するかは公表してねぇから安心せずにつき進め!! そして早くも最終関門!! かくしてその実態は────」

 

「────一面地雷原!!! 怒りのアフガンだ!! 地雷の位置はよく見りゃわかる仕様になってんぞ!! 目と脚、酷使しろ!!」

 

 最終関門は地雷エリア。

 先頭を行く奴ほど未発動の地雷とより多く向き合わねばならない、そういう仕様だ。

 八木や爆豪のように空を飛べる奴にはあまり関係ないがな。

 ……第二関門といい。よくよく考えてみれば今回の障害物競争は空を飛べる奴に有利すぎたな。

 これは改善の余地ありと見るべきか。

 

「ちなみに地雷! 威力は大した事ねぇが、音と見た目は派手だから失禁必至だぜ!」

「人によるだろ」

 

 マイクに突っ込みを入れている内に、先頭集団で動きがあった。

 空飛んで地雷を無視できる爆豪が轟に追いつき、ついに先頭が変わった。

 

「ここで先頭が変わったーーー!! 喜べマスメディア!! お前ら好みの展開だああ!!」

 

 ついに終盤戦といったところか。

 だが、八木はまだ動かない。

 スタート地点からまんじりとも動いていない。

 ずっとストレッチばかりしている。

 

「後続もスパートかけてきた!!! だが、引っ張り合いながらも、先頭二人がリードかぁ!!?」

 

 八木の動向に注視しながらも、先頭集団を眺める。

 爆豪と轟が激闘という名の足の引っ張り合いをしながらも先頭を維持している。

 だが、その後ろで妙な動きをしている奴を発見した。

 

 緑谷だ。

 どこで拾ったのかずっと持ったまま走っている序盤のロボの装甲板で地面を掘り、地雷を掘り起こしている。

 何を、と思った次の瞬間。

 緑谷が装甲板を乗り物兼盾代わりにして掘り出した地雷の上に自ら飛び乗り、大爆発を起こした。

 

「後方で大爆発!!? なんだあの威力!? 偶然か故意かーーーー!! A組、緑谷!! 爆風で猛追ーーーー!!!? っつーか!! 抜いたあああああ!!!」

 

 予想外の一手で緑谷が先頭に躍り出た。

 これまで全く注目されていなかったダークホースの出現に会場中が沸き立つ中、俺は見た。

 

 

 

 ついに八木(最強)がアップを終え、スタジアムから飛び立ったのを。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──轟視点

 

 

 

 順調に一位をキープしながら最終関門に行き着いた。

 正直、予選は八木の独壇場になると思って半分諦めてたんだが、その八木の姿が見当たらない。

 不気味だ。

 だが、あいつがどれだけ不気味でも、どれだけ強くても、俺はあいつに勝つ。

 勝って優勝する……!

 

 俺にはこの体育祭でやらなきゃなんねぇ事がある。

 この右の力だけで。お母さんの力だけで一位になる。

 そして(親父)を完全否定する。

 現実的に考えて八木に勝つのは難しいだろう。

 USJの時に見せたあの力を使われたら瞬殺されると思う。

 それでもやらなきゃいけねぇ……!

 勝たなきゃいけねぇんだ……!

 

 幸いというべきか、八木のあの力には相応のデメリットがある感じに見えた。

 ならヴィラン相手でもないこの体育祭で使ってくるとは思えない。

 しかし、八木は素の力だけでも勝ち目の薄い強敵だ。

 真っ向勝負では不利だろう。

 だが、これは体育祭。

 ルールありきの試合形式なら、それを利用すれば何とかなるかもしれねぇ。

 いや、何とかする。

 

 だが、今は競技に集中するべきだろう。

 

 最終関門は地雷エリア。

 先頭の俺は他の連中が作動させて地雷が少なくなったところを突くようなマネができねぇ。

 全ての地雷と対峙する事になる。

 ……なるほどな。こりゃ先頭ほど不利な障害だ。

 

「エンターテイメントしてやがる」

「はっはぁ!! 俺には関係ねーーー!!」

 

 思わず皮肉が口から出たが、その後に続いて爆発音と見知った声が聞こえてきた。

 爆豪だ。

 ……たしかにこの地雷エリアに対して、爆風使って限定的な飛行ができる爆豪は相性が良い。

 チッ……!

 追いつかれたか……!

 

「てめぇ! 宣戦布告する相手を間違えてんじゃねぇよ!!」

 

 爆豪が怒りに満ちた顔と声でそう言ってくる。

 別にお前の事も警戒してなかった訳じゃねぇ。

 ただ、あの二人が特別だっただけだ。

 クソ親父が外道になってまで背中を追ったナンバー1ヒーロー、オールマイト。

 その娘である八木と関係者と思われる緑谷に、(奴の力)を使わずに勝利する。

 奴を否定する為にそれが必要だったってだけだ。

 

 爆豪の足を引っ張りながら、爆豪に足を引っ張られながらゴールを目指す。

 爆豪の妨害がうぜぇ。

 後続の奴らも近くにまで来てるのがわかる。

 だが、このまま行けば勝てる。

 爆豪は地雷エリア抜けた所で大氷壁使って対処する。

 大丈夫だ。

 勝てる。

 

 そう思った時、後方で凄まじい爆発音が聞こえてきた。

 

『後方で大爆発!!? なんだあの威力!? 偶然か故意かーーー!! A組、緑谷!! 爆風で猛追ーーーー!!!? っつーか!! 抜いたあああああ!!!』

 

 プレゼントマイクの実況で、今爆風に乗って俺の上を通り越して行ったのが緑谷だとわかった。

 

「デクぁ!!! 俺の前を行くんじゃねぇ!!!」

 

 爆豪も緑谷目掛けて飛び出した。

 俺も爆豪に構ってる場合じゃねぇ。

 地面を凍らせて地雷を無効化し、緑谷を追う。

 後続に道作っちまったが……。

 

「後ろ気にしてる場合じゃねぇ……!」

 

 今は緑谷を抜く事が先決だ!

 

『元先頭の二人、足の引っ張り合いを止め緑谷を追う!! 共通の敵が現れれば人は争いを止める!! 争いはなくならないがな!』

『何言ってんだお前』

 

 なりふり構わず走ったおかげで緑谷は抜いた。

 だが、まだ爆豪がいる。

 気は抜けねぇ。

 大氷壁を使って振り払おうとした時、少しだけ後ろにいた緑谷が板みてぇな物を振りかぶってきた。

 大氷壁の発動を止めてそれを避ける。

 そしたら今度は板が当たった場所の地雷が炸裂。

 いくつか同時に起爆したのか、爆発の大きさに思わず足を止めちまった。

 

『緑谷、間髪入れず後続妨害!! なんと地雷原即クリア!! イレイザーヘッド、お前のクラスすげぇな!! どういう教育してんだ!』

『俺は何もしてねぇよ。奴らが勝手に火ィ付け合ってんだろ』

 

 緑谷は再び爆風に乗って既にゴール付近に行っちまってる。

 ここからじゃ、全速力で走ってももう間に合わねぇ……。

 負けた……のか……。

 

『さあさあ序盤の展開から誰が予想できた!?』

『無視か』

『今一番にスタジアムに還って来たその男────緑谷出……なんだああああああああ!!!?』

 

 それでも予選落ちする訳にはいかねぇからゴール目指して走っていたその時、何か(・・)が凄まじいスピードで上空を飛んで行ったのがわかった。

 その何かは爆豪を追い越し、俺を追い越し、ゴール寸前だった緑谷さえも追い越して、一番にゴールへ飛び込んで行った。

 

『や、八木だああああ!!!! ハア!? 何が起きた!? あいつ、ずっとスタート地点でストレッチやってたんじゃねぇのかよ!?』

 

 遅れてゴールすれば、そこには息を切らす緑谷と、満面の笑みで客席に向かってVサインをする八木の姿があった。

 ああ……。

 結局こうなっちまったか……。

 

『どうもこうもない。後ろから全員ごぼう抜きにしたってだけだろ』

『どんだけだよ!!? てか、いつスタートした!? 俺見てなかったんだけど!! 記録何分だよ!?』

『18秒』

『まさかの秒単位!!? 宣言通り本気出したってか!!!? どんだけのスピードだよオイ!!!?』

『大体、音速一歩手前くらいだろ』

『音速!!! 八木、圧倒的すぎだろォ!!!』

 

 大歓声に包まれるスタジアムの中で、俺は一人歯をくいしばった。

 

 俺は負けた。

 勝つと宣言した二人に。

 完膚なきまでに負けた。

 

 あくまでもまだ予選だ。

 本選で挽回すれば問題ねぇ。

 そう自分に言い聞かせる。

 

 ふと席を見上げれば、クソ親父の姿が見えた。

 あいつが見てる。

 苛立ちが加速する。

 もうこれ以上、情けない姿は見せられねぇ。

 俺はあいつを否定する。

 右の力だけで、お母さんの力だけで一位になって、(あいつ)を完全否定する。

 

 負ける訳にはいかねぇ。

 

 俺は歯をくいしばりながら、決意を新たにした。

 




魔美ちゃん、早速やらかしたぁ!!
頑張れ轟少年!!
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