小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
準音速にしては遅すぎるとの指摘をいただいたので。
爆豪少年や轟少年率いる先頭集団が最終関門の終わりに差し掛かり、そろそろラストスパートをかけるのかなってところで、私はようやくストレッチを止めて動き出した。
今回の体育祭。
私は本気でやると宣言した。
宣言したからには個性を使わずに縛りプレイなんてマネはできない。
全力で取り組まねばならない。
だが、しかし。
私が全力を出したら確実にワンサイドゲームになって、体育祭の盛り上がりも熱い勝負も全てを台無しにしてしまう可能性が大だ。
特に障害物競争はアカン!
推薦入試の時みたく私が翼使ってぶっちぎりの一位を勝ち取り、その後いまいち盛り上がりに欠ける二位争いが勃発するのが目に見えてる。
この手の戦いはトップ争いが一番燃えるんだ!
二位争いとかいう微妙なやつはお呼びでないんだ!
そんな事になるのは私としても本意じゃない。
じゃあどうするか?
本気を出した上でトップ争いという熱い戦いに交ぜてもらうにはどうしたら良いか?
簡単な事だ。
ハンデを付ければ良い。
たまにテレビで天才小学生とプロヒーローが対決するみたいな番組がやってるけど、その時プロヒーローは多大なハンデを付けている。
その中に100メートル走対決とかもあって、プロヒーローはハンデとして、天才小学生が50メートルを走りきった時点でスタートするっていうルールの企画だった。
それと同じだよ。
あの番組の中では天才小学生もプロヒーローも本気だった。
つまりハンデありきでも本気の勝負は成立するんだ!
だから私は待った。
スタート地点から全速力で飛んでギリギリ追いつけるかなぁ?って所まで先頭集団が進むのを待った。
そして時は来た!
先頭集団はもうラストスパートに入る直前。
ここまで距離が開いていれば、いくら私でも確実に追いつける自信はない。
ハンデありきとはいえ、これで
さあ!
今こそスタートの時!!
競い合おうぜライバル共!!
私は体操服の上着を脱いで腰に巻き、上半身スク水姿となる。
そして、悪魔の翼を解放し、飛び立った。
既に無人となったスタートゲートを低空飛行で駆け抜ける。
そして、これまた私以外の参加者が通り過ぎ、無人となった第一関門「ロボ・インフェルノ」こと巨大ロボ軍団と相対した。
右腕の個性を解放する。
そして入試の時と同じく巨大ロボ目掛けて振り抜いた。
「デビル・スマッシュ!!!」
翼によって加速した分、入試の時とは比べ物にならない威力を発揮したデビル・スマッシュの一撃は衝撃波となり、直接殴り壊した巨大ロボだけでなく、他の巨大ロボをも余波だけで破壊していく。
最っ高に気持ち良い!!!
続いて第二関門の「ザ・フォール」。
地上何十メートルという高さで行われる綱渡りだ。
ここにはまだ結構な数の参加者諸君が残っていた。
でも、まあ空飛べる私には一切関係ないよね!
速攻でクリア。
そして最終関門「怒りのアフガン」こと地雷エリア。
だから飛べる私には関係ねぇ!!
これも速攻クリアして先頭集団の背中を捉えた。
驚いた事に先頭は緑谷少年になっていた。
私がちょっと目を離した隙にあの二人を抜いたらしい。
さっすが次代のオールマイト!
そうでなくっちゃね!
成長著しいようでお姉さんは嬉しいです。
だが、今回は私の勝ちみたいだな!
緑谷少年がスタート兼ゴールであるゲートに入る寸前。
タッチの差で私の方が早くゲートを通過した。
そして、加速しまくったスピードを止める為に両脚の個性を解放し、地面に突き立ててブレーキ代わりにする。
砂塵を巻き上げ地面を抉りながら滑走する私。
結果、私はスタジアムの地面に大きな傷痕を残しながら減速、停止した。
静まり返るスタジアム。
その中心に立った私は素早く観客席からパパの姿を見つけ出し、パパに向かって満面の笑顔でVサインを送った。
「「「「「「「「ワアアアアアアアアアアアアア!!!」」」」」」」」
途端に大歓声に包まれるスタジアム。
やっぱり美少女の笑顔は正義か。
『や、八木だああああ!!!! ハア!? 何が起きた!? あいつ、ずっとスタート地点でストレッチやってたんじゃねぇのかよ!?』
ム!
マイク先生見てなかったのか!?
この私の華麗なる追い上げを!!
『どうもこうもない。後ろから全員ごぼう抜きしたってだけだろ』
『どんだけだよ!!!?』
どうやら相澤先生は見てくれてたらしい。
この私の華麗なる活躍を。
そして、マイク先生と相澤先生の小粋なトークが続く中、他の参加者諸君も続々とゴールしてきた。
2位の緑谷少年は私とほぼ同着。
3位の轟少年と4位の爆豪少年もほぼ同着。
その後に続くのもほとんどがクラスメイト諸君だ。
さすがヒーロー科。
優秀やね。
『さあ続々とゴールインだ! 順位等は後でまとめるから、とりあえずお疲れ!!』
お疲れか。
私は全然疲れてないな。
全力飛行して欠片も疲れないとか、やっぱり私の個性はチートだ。
でも、他の皆は普通にお疲れみたいだし、とりあえず緑谷少年辺りに労いの言葉でもかけに行くかね。
トコトコと歩いて緑谷少年の所に行く。
「お疲れ緑谷少年。良い勝負だったぜ」
「八木さん……。八木さんも1位おめでとう。やっぱりとんでもないね。なんか全部持っていかれた気分だよ」
「まあ、私はチートだからねー。でも君にはいずれ私を超えてもらわないと困るのだよ?」
「…………努力します」
緑谷少年はそう言って項垂れてしまった。
いや、これに関しては本気で頑張ってもらわないと困るんだけどなー。
パパの後継者って事は、私が暴走した時に取り押さえるという仕事も引き継ぐ事になる筈だし。
マジでしっかりしてくれ。
と、そこで麗日少女と飯田少年がこっちに来た。
「デクくん、魔美ちゃん、凄いねぇ! ワンツーフィニッシュだよ! 悔しいよちくしょー!」
「この個性で遅れをとるとは……! やはりまだまだだ僕……俺は……!」
「麗日さん。飯田くん」
なんか飯田少年が暗いぞ。
青い顔で小刻みに震えてるんだけど。
まあ、「エンジン」なんて走る事に特化した個性持っててトップ取れなかったのはショックか。
アイデンティティー崩壊の危機ってやつかね。
でも、飯田少年はわりとすぐに立ち直った。
「それはそうと八木くん!! 本気を出すと言っておきながらスタートを大幅に遅らせるなんてマネをしたのはどうかと思うが!!」
そして、攻撃の矛先が私に向いたよ。
「いやいや飯田少年。私は本気だったよ。実際、緑谷少年とはタッチの差だった。後コンマ数秒遅れてたらトップは緑谷少年だっただろうね」
「だが、しかし……」
「飯田少年……。私は気が変わったんだ。体育祭を楽しみたいんだよ。
「そ、それは……」
私のその言葉で飯田少年は動かなくなった。
私が言いたい事を理解してくれたらしい。
この一見舐めてるとしか思えないような言葉の真意を察してくれたようでなによりだ。
飯田少年は一回、戦闘訓練の授業の時に私にボッコボコにされてる。
しかも個性を使ってない私に。
だからこそ、私と他の参加者諸君の間にある絶対的な力の差をいくらかは理解してるんだと思う。
その上で私は
熱い勝負とは、それすなわち本気の戦いだ。
そして私が本気を出したら勝負として成立しない。
だからハンデがいる。
この思考ロジックを飯田少年はしっかりと理解してくれたみたいだ。
全力を出して勝ちにきてる他の参加者諸君に
けど、想像する事くらいはできる。
それで私の言葉にも一応の筋が通ってるとわかって、否定の言葉が出てこなくなったんじゃないかな。
なまじ体育祭前に「もっと熱くなれよぉ!!」的な発言を私にしちゃったから、その責任を感じている可能性もある。
ちなみに、麗日少女はわかってんのかわかってないのかよくわかんないような顔で首を傾げていた。
ややこしいな。
そして可愛いな。
緑谷少年?
彼は私の強さを嫌ってほど知ってるから終始無言だったよ。
「ようやく終了ね! それじゃあ結果をご覧なさい!」
そこでミッドナイト先生の声が聞こえてきて、障害物競争のランキングがモニターに映し出された。
私が1位で2位が緑谷少年。
3位が轟少年で4位は爆豪少年。
飯田少年は7位で、麗日少女は16位だった。
他のクラスメイト諸君の名前もわりと上位の方にある。
さっきも思ったけど、さすがヒーロー科。
「予選通過は上位42名!! 残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい! まだ見せ場は用意されてるわ!」
「そして次からいよいよ本選よ!! ここからは取材陣も白熱してくるよ! キバリなさい!!」
取材陣白熱してくるのかー。
つまりマスゴミが活性化するのかー。
テンション下がるぜ……。
「さーて! 第二種目よ!! 私はもう知ってるけど~~~~~何かしら!? 言ってるそばから! コレよ!!!」
そして例によってドラムロールと共にモニターの中で文字が回転して止まり、今回は「騎馬戦」という文字が映し出された。
騎馬戦かぁ……。
まさかのチームプレーか?
だとしたら苦手分野だわ。
「参加者は2~4人のチームを自由に組んで作ってもらうわ! 基本は普通の騎馬戦と同じだけど一つ違うのが……先程の結果に従い、各自にポイントが振り分けられる事!」
ふむふむ。
ポイント形式か。
一般入試を思い出すね。
「つまり組み合わせによって騎馬のポイントが違ってくる!! そして与えられるポイントは下から5ずつ! 42位が5ポイント。41位が10ポイントといった具合よ! そして……」
ミッドナイト先生が一瞬溜めを作った。
これは何かあるな(確信)。
「1位に与えられるポイントは、1000万!!!」
ほら来た。
なんか私だけポイントの桁が違うよ。
……でも、このポイントを戦闘力に換算したら妥当な数字のような気がする。
不思議だ。
「上位の奴ほど狙われちゃう!! 下克上サバイバルよ!!」
皆の視線が私に集中する。
か弱い乙女に獲物を狙うような視線が突き刺さっ……てないね。
めっちゃ警戒するような視線だわ。
「上を行く者には更なる受難を! 雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ! これぞ
なるほど。
現時点で頂点に立つ私にはとびっきりの受難をプレゼントって事か。
たしかに、1000万ポイント目当てで全員が敵になったら私でも苦戦するかもしれない。
苦戦かぁ……。
久しく味わってないなぁ。
これは楽しみだ。
「制限時間は15分。振り当てられたポイントの合計が騎馬のポイントとなり、騎手はそのポイント数が表示されたハチマキを装着! 終了までにハチマキを奪い合い保持ポイントを競うのよ!」
ミッドナイト先生がルールの説明を続ける。
私のポイントならガン逃げも戦略の一つかね。
「取ったハチマキは首から上に巻く事! とりまくればとりまくる程管理が大変になるわよ! そして重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れてもアウトにはならないってところ!」
つまり脱落や途中退場はなしか。
全ての騎馬がずっとフィールド上にいる事になる。
その状況でずっとハチマキ保持してるのは大変そうだ。
「個性発動ありの残虐ファイト! でも、あくまで騎馬戦!! 悪質な崩し目的での攻撃などはレッドカード! 一発退場とします!」
マジか。
これは気軽に個性使えないかもなー。
私の個性はいくら発動部位を少なくしても多少の興奮状態にはなる。
しかも出力が高い。
相手の騎馬を崩さないように、なんて気を使うような攻撃は難しいかもしれない。
いや……それも使い方次第か。
「それじゃ今から15分! チーム決めの交渉タイムスタートよ!」
「「「「15分!?」」」」
意外と短い交渉タイムに参加者諸君が慌てて交渉を始めた。
私はどうするかなー。
って、もう決めてるんだけどね。
「緑谷少年、麗日少女、飯田少年、組もうぜ!」
私はちょうど近くにいた三人に声をかけた。
そう。
私にとって重要なのはポイント数でも個性の強さでもない。
そんなものは自前のだけで充分だ。
なにより重視するのは仲の良さ。
個性の仕様上ずっと一人で戦ってきた私にとって、連携プレーはほとんど経験のない未知の分野。
だったら、少しでも連携しやすそうな仲の良い人達と組む。
これが私の選択だ!
「で、どうよ?」
「……その提案、僕は受けさせてもらうよ。今の僕はポイントと実力が釣り合ってない。単体だと良い鴨だ。だから正直、誘ってくれるのはありがたい」
「あ、私も! やっぱり仲良い人とやった方が良いから!」
「お! ありがとー」
よし!
緑谷少年と麗日少女は組んでくれた。
これでボッチルートだけは回避だ!
さて、最後の一人はっと、
「……すまないが、僕は断らせてもらうよ。先程の八木くんの言葉を聞いて僕にも火がついた。……八木くん。俺は君に再挑戦する! 熱い勝負をしよう!」
飯田少年はそう言って去って行った。
まるで「決勝で会おうぜ!!」と言って去っていくライバルキャラのようだ。
そういうの……嫌いじゃないぜ!!
まあ、それはそれとして。
「どうしよっか? 飯田少年が行っちゃったけど、使い魔とか使えば三人でも充分騎馬が組める。それでも四人目を探すべきかね?」
「僕は探すべきだと思うよ。見つかんなかったら仕方ないけど戦力はできるだけ多い方が良いと思う」
「麗日少女は?」
「うーん。私も賛成。やっぱりできる事は多い方が良いもんね」
という事で、四人目を探す事になった。
誰が良いだろか?
1位2位が揃ってるチームなんだから、勧誘すれば大多数の人は入ってくれる気がする。
とりあえず、あそこで皆に囲まれて大人気の爆豪少年に声をかけてみるか。
「おーい! 爆豪少年ー! 一緒に組まないかーい?」
「失せろ!! クソ女!!!」
フラれた。
どうやら私の考えは少々甘かったようだ。
「駄目だって」
「いや……そもそもなんでかっちゃんを誘ったの?」
「なんとなく。目についたから」
二人が頭を抱えた後、即座に二人だけで相談を始めた。
どうやら私に人選を任せたら大変な事になると判断したらしい。
失礼な!
そんな二人だけの世界を作ってないで私も交ぜてほしいなー。
「フフフ。良いですね。やっぱり目立ちますもん。私と組みましょ!! 1位の人!!」
「ム?」
「あ! あの時の妙な人!」
知り合いかい? 麗日少女?
「私はサポート科の
「あっ、あけすけ!!」
緑谷少年の突っ込み!
鋭さが足りない!
「あなたと組むと必然的に注目度がナンバー1になるじゃないですか!? そうすると必然的に私のドッ可愛いベイビー達がですね大企業の目に留まる訳ですよ! それってつまり大企業の目に私のベイビーが入るって事なんですよ!!」
なるほど。
さっぱりわからん。
ベイビーが何だって?
「ちょ、ちょっと待って……。ベイビーが大企業……? 何を……」
「それでですね! あなた方にもメリットはあると思うんですよー!」
麗日少女の渾身の突っ込み!
ミス! 発目少女はダメージを受けない!
でも、君の気持ちは私と同じさ麗日少女!
私も訳わかんないもん!
「サポート科はヒーローの個性をより扱いやすくする装備を開発します! 私ベイビーがたくさんいますので、きっとあなたに見合うものがあると思うんです!」
そう言って発目少女はいろいろなアイテムを地面に広げた。
なるほど。
この少女の言いたい事がようやく少しわかった。
要はこのアイテム達を大企業とやらにアピールしたいんだな。
この子はアイテムの事をベイビーと言っちゃうようなちょっと変わった子なんだね。
「これなんかお気に入りでして! とあるヒーローのバックパックを参考に独自解釈を加え……」
「それひょっとしてバスターヒーロー『エアジェット』!? 僕も好きだよ! 事務所が近所で昔ね……」
「本当ですか! ちなみに私の個性は……」
なんか緑谷少年が意気投合してくれたから、発目少女の相手は緑谷少年に任せておけば良いや。
私はそっとフェードアウトしよう。
そして同じく蚊帳の外となっていた麗日少女と合流した。
「魔美ちゃん。どうするの? アレ?」
「ん~。採用で良いんじゃないかな。できる事が多いって意味ではあの子以上の適任はいないと思うし」
実際、攻撃手段を私の個性じゃなくてあのアイテム達に任せれば、高すぎる威力でルール違反を気にする必要もなくなるだろうし。
意外とそんなに悪くない選択肢なんじゃなかろうか?
麗日少女は若干不満そうだけど。
その後、作戦会議をとりおこなって大まかな作戦を決めたところで交渉時間の15分が経過した。
第二種目、騎馬戦開始!
途中で切れなくて、ちょっと長くなっちゃった……。