小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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体育祭!!! パート5

 現れた轟少年は見るからに体調が悪そうだった。

 顔が青いし、息も白いし、なんか体の右側に霜が降りてるし。

 氷使いの体に霜か……。

 これは個性の反動って事かね?

 

「緑谷少年。轟少年のあの弱りっぷりをどう見るよ?」

 

 こんな時は教えて緑谷先生!

 頼んでなくても勝手に分析を始めてくれる便利な存在が足元にいるんだから、存分に使うべきでしょ。

 

「……やっぱり個性の反動と見るべきだと思うよ。使い魔との戦いで結構個性を酷使してたし、体が冷えるっていう症状は轟くんの個性と類似性があるからまず間違いないと思う」

 

 ふむ。

 やっぱり君もそう思うか。

 

「でも、それなら左側の炎を使えば体温調節くらいできるんじゃないかとも思うんだけど……。使えない事情でもあるのか、それとも何かの作戦なのか。こっちの油断を誘う為にあえて弱ったふりをしている可能性も否定できない。そもそも相手は轟くんだけじゃないし。上鳴くんはアホになる寸前みたいに見えるけど、それって逆に言えば後一発は撃てるって事で。八百万さんも消耗はしてても戦闘不能って程じゃないだろうし。飯田くんに至ってはまだ余力が…─」

「はいストップ」

「ふがッ!?」

 

 出しっぱなしにしてた尻尾で緑谷少年の口を塞ぐ。

 

「今は細かい考察より戦闘優先ね。はい構えて」

「う、うん。ごめん」

 

 緑谷少年が気を引き締める。

 かくいう私も尻尾の他に翼も出しっぱなしにして既に臨戦態勢に入ってる。

 翼も尻尾も出しっぱなしになんてしてたら破壊衝動と興奮が脳を侵食しちゃうけど、この程度だったらもう慣れた。

 今の私にとっては軽い興奮剤程度の効果しかない。

 

 その程度のリスクに対して得られるリターンは豊富。

 翼は移動の他にも攻撃を防ぐ盾にもなるし、尻尾は単純に手数が増える。

 尻尾なんて個性解放時の手足に比べれば非力もいいところだから普段使ってなかったけど、こういう時は便利ね。

 

「……一気に決めるぞ。上鳴! 八百万!」

「わかりましたわ!!」

「いくぜ!! 無差別放電!!」

 

 轟少年が動いた!

 八百万少女が「創造」の個性で布(多分、絶縁体)を作り出し、電気使いの少年の体がバチバチと放電を始める。

 攻撃が来るね!

 

「八木さん!!」

「わかってる!!」

 

 来るとわかってる攻撃を放置する私じゃない。

 普段なら技を使われる前に接近して殴るか、超速で効果範囲外にまで逃げるか、翼を盾にして防ぐかするところだけど、今はどれもできない。

 騎馬という足枷がある状態で殴りに行くのは無理だし、同じ理由で逃走も不可能。

 翼による防御は自分しか守れない。

 だがしかし!

 チームプレイにはチームプレイなりのやり方ってものがあるのだよ!

 

「130万ボルト!!」

 

「発目少女作! アンブレラ!!」

「突然のヴィランの襲撃にも安心のベイビーです!!」

 

 電気使いの少年の放電を発目少女のサポートアイテムで防ぐ。

 スイッチを押すと大きな傘みたいに展開して盾になるアイテムだ。

 盾の大きさはチーム全員を余裕で守れるくらいデカいので安心。

 でもこれは……。

 

「発目少女」

「なんですか!?」

「これって何を想定して作られてるんだっけ?」

「当然、対衝撃防御ですよ!! 突然の襲撃にも安心というコンセプトですから!!」

「あー。なるほど」

 

 だからか。

 

「これ電撃にまでは対応してないっぽいよ。通電してきてめっちゃ痺れるわ」

「なんと!? これまた改善の余地アリですね!!」

 

 発目少女やっぱりポジティブだな。

 ショック受けた様子が全然ないわ。

 

「え!? 通電て!? 魔美ちゃん大丈夫なの!?」

 

 おっと。

 麗日少女に心配をかけてしまった。

 安心させてやらねば。

 

「大丈夫大丈夫。この程度の電圧なら私の行動に支障はないからね」

「そ、そうなの?」

「うん。問題ない」

 

 そう言っても麗日少女はまだ心配そうだ。

 優しさって美徳だよね。

 

「麗日さん。八木さんは大分人間やめてるから、この程度なら心配いらないよ」

「そ、そうなんだ……」

 

 最近の緑谷少年にも見習ってもらいたいよ。

 いや、別に優しさ自体を失った訳じゃなくて、戦闘の時に私を心配する事が極端に減ったってだけだけど。

 信頼されてるととるべきか、化物を見る目で見られてるととるべきか。

 悩みどころだ。

 

 などと思っていたら、今度はアンブレラが常人では耐えられない程に冷たくなった。

 これって金属でできてるからね。

 冷やされたらこうなるのは当たり前か。

 

 とりあえず邪魔になったアンブレラを横に放り投げて正面を見ると、辺り一面が銀世界になっていた。

 ちょうどアンブレラによって守られた場所以外が全部凍りついてる。

 見れば、何組かの騎馬が足を凍らされて止まってた。

 巻き込まれたらしい。

 かわいそうに。

 

「ちっ……。アレでも効かねえか」

 

 そう言う轟少年はなお一層弱っていた。

 遠目に見ても寒さでガタガタと震えてるし、右半身が凍りつきそうなくらいの霜で覆われている。

 苦肉の策と思われる、腕に張られた無数のカイロが痛々しい。

 

『さあさあ!! 残り20秒!! 終わりが近いぜ!! 最後の力振り絞れよ!!!』

 

「皆。警戒して。ラストアタックが来るよ」

 

 私はチームメイト達に警戒を促した。

 そして、油断なく轟少年達を見据える。

 もう轟少年は弱りきってるし、電気使いの少年は個性の反動で「ウェイ」としか言わないアホと化してる。

 八百万少女も余裕がないし、最後の切り札は飯田少年ってところか。

 

「三人共。特に飯田少年に気をつけて。彼は瞬間的に超加速する必殺技を持ってるから」

「え? そうなの!?」

「初耳だ……!」 

 

 いや、戦闘訓練の時に使ってたんだぞ。

 緑谷少年と爆豪少年がビルを破壊したから、相対的に目立たなくなっちゃっただけで。

 何にせよ、轟少年達が勝つにはもうそれにかけるしかないだろう。

 でも、アレは初見だとたしかに面食らう程のスピードだけど、私だったら普通に対処可能なレベルだ。

 加えて、こうして翼を盾にしておけばハチマキには手が届かない。

 油断さえしなければやられはしないさ。

 

 しかし、ここで予想外の乱入者が現れた。

 

「死ねぇ!!! クソ女!!!」

「かっちゃん!?」

 

 爆豪少年が空を飛んで現れた!

 騎馬を置き去りにしてるぞ!

 アリなのかアレ!?

 

「アリよ」

 

 アリらしい。

 審判のミッドナイト先生が言うならアリなんだろう。

 私もやれば良かった。

 

 とりあえず、爆豪少年の攻撃は翼でガードしておいた。

 

「邪魔だァ!!!」

 

 派手な大爆発が翼に叩きつけられたけど、その程度の火力じゃ悪魔の翼に傷一つ付けられんぞ!

 どうよ! この強度!

 そして、自ら起こした爆風に乗って爆豪少年はフェードアウトしていった。

 去り際に地味顔の少年の個性であるセロハンテープっぽい物が爆豪少年を回収してたよ。

 なるほど。

 そうやって騎馬に戻るのね。

 

『爆豪の渾身の特攻も防いだ!! マジで八木が強すぎる!! そして残り10秒!! カウントダウン始めるぜ!!』

 

『9!!』

 

「トルクオーバー!! レシプロ・バースト!!」

 

 マイク先生の声に合わせて隠すかのように飯田少年の声が聞こえた。

 そして、爆豪少年の置き土産である爆煙が晴れた時には、目と鼻の先まで轟少年が接近していた。

 どうやら例の必殺技を使ったらしい。

 凄い賭けに出たな!?

 一秒でも早ければ爆煙でハチマキの位置が見えない。

 一秒でも遅ければ私の反射神経で対応される。

 そしてその二つをクリアしても、爆煙が晴れた瞬間にハチマキの位置を正確に把握し、取らなくてはならない。

 飯田少年の必殺技発動中の超スピードの中で。

 

 そんな分の悪い賭けに轟少年達は勝った。

 これはベストなタイミング。

 そして轟少年の腕は、私が頭に巻いていた1000万ポイントのハチマキに向かって正確に伸びていた。

 翼による防御は爆豪少年の爆破を防ぐ為に使っちゃったから、今はない!

 

 土壇場でこんな奇跡を引き寄せるか!!

 主人公か君は!?

 

 だが、甘い!

 どれだけベストなタイミングを突こうとも、油断していない私をそう簡単に出し抜けると思うなよ!!

 

 現在、体の中で最も速く動かせる場所となっている尻尾を使う。

 悪魔の尻尾は鞭のようにしなって轟少年の腕を打ち付け、1000万のハチマキを狙う腕を上に向かって弾い……あ!?

 やばい!! 力加減ミスった!!

 普段使いなれてない尻尾をできるだけ速く動かそうとした事による弊害か。

 尻尾の一撃は轟少年の腕を弾くどころか叩き折ってしまった。

 骨を砕く鈍い感触が尻尾から伝わり、轟少年の左腕がくの字に折れ曲がる。

 ……やっちゃった?

 

 しかし、ここで更なる奇跡が起きた。

 

 くの字に曲がった轟少年の腕の指先が私の首元に迫る。

 そして、指がハチマキの一本に引っ掛かり、そのままそのハチマキを持って行った。

 

 マジか!?

 奇しくも私が力加減をミスって轟少年の腕を折っちゃったからこそ、届く筈のないハチマキに手が届いた。

 なんという怪我の巧妙!!

 こんな事もあるのか!?

 

「ッ!?」

 

 轟少年が痛そうに顔を歪ませる。

 でも、奇跡的に手に入れたハチマキだけは意地でも離さず、残った右腕で首に巻いた。

 凄い執念。

 

『8!!』

 

「え!? 今何が!?」

「ごめん皆。ハチマキ一本持ってかれた。轟少年に」

「ッ!? 例の飯田くんの必殺技か……!」

「魔美ちゃん、どうする!? 取り返しに行く!?」

 

『7!!』

 

「当然!! 今回の私は本気なんだ!! 手加減も手心も加えない!! 情け容赦なしで行く!!」

「……わかった!! とことん付き合うよ!!」

「私も!! 真剣勝負だもんね!!」

「やるなら是非ともベイビーを使ってください!! 遠距離攻撃用のベイビーももちろんありますよ!!」

「ぶれないな発目さん!?」

 

『6!!』

 

「てめぇらの相手は俺だ!!! クソ女!!! クソナード!!!」

 

 ここで再びの爆豪少年。

 でも今度は単騎じゃなくてちゃんと騎馬を引き連れてる。

 ちょうど良い。

 君のハチマキから奪ってやろう!

 

『5!!』

 

「捕縛ネット二号!!」

「ベイビー!!」

 

 二発目の捕縛ネットを爆豪少年目掛けて発射する。

 さっきは六本腕の少年に避けられたけど、この至近距離なら避けられまい!

 

「しゃらくせぇ!!!」

「ベイビー!?」

 

 だが残念。

 捕縛ネットは爆豪少年に爆破され、あえなく撃墜された。

 ていうか、爆破の衝撃で逆にこっちに向かって飛んで来てるわ。

 私は役目を果たせなかった哀れな捕縛ネットを尻尾で振り払った。

 

『4!!』

 

「死ねぇ!!!」

「なんの!!」

 

 爆豪少年の爆破を個性を発動した右腕で防ぎ、そのままハチマキに手を伸ばした。

 爆豪少年はそれを予想していたらしく、攻撃が防がれた瞬間には下に向けて爆破を使い、爆風で空に逃げていた。

 やるな!!

 

『3!!』

 

「追撃!!」

「ちィ!!!」

 

 空に逃げた爆豪少年を追いかけて私も飛び立つ。

 しかし、空中における小回りにおいては爆豪少年に分があるようで、器用に逃げ回られる。

 でも反撃する余裕はないみたいで逃げるばっかりだ。

 

『2!!』

 

「ダークシャドウ!!!」

「な!?」

「ム!」

 

 このタイミングで私と爆豪少年との戦いに第三者の妨害が入った。

 黒い影みたいな大きな腕が私と爆豪少年に迫っている。

 たしか、クラスメイト諸君の一人にこんな感じの個性持った子がいたな。

 でも、ここまで大きかったっけ?

 

 不思議に思いつつも、ここで避けたら爆豪少年を取り逃がすと瞬時に判断した私は迎撃を選択した。

 ノーモーションで掌から発射されたダークネス・スマッシュが影の腕に直撃する。

 

「ふぁ!?」

 

 だが、どういう訳か私のダークネス・スマッシュを受けた影の腕は消え去るどころか更に巨大化し、私は慌てて回避行動を取った。

 迎撃できなかった以上仕方がない!

 

『1!!』

 

 巨大な影の腕が地面に叩きつけられ、大きく地面を抉った。

 ……凄いパワーだ。

 個性を解放した私ほどじゃないけど、並みの増強系個性を遥かに上回る圧倒的パワー。

 振り下ろされた場所がちょうど誰もいない場所で良かったけど、誰かに当たってたら死人が出たかもね。

 それにあれだけの力だ。

 もっと序盤から攻めて来られたら、もっと苦戦したかもしれない。

 

 ──でも、これで終わりだ。

 

『0!! タイムアップ!!!』

 

 マイク先生の声が騎馬戦の終了を告げる。

 まあ、なんだかんだで結構楽しかったなぁ。

 私はとりあえずチームメイトの所に戻った。

 

『あのまま八木の圧勝かと思ったら、ラスト10秒で凄ぇ激戦が巻き起こったぜ!!! これぞ体育祭!!! 燃えた!!! 良い勝負だったぜ!!!』

『途中、八木を非難しまくってた奴のセリフとは思えないな』

『さーて!! 早速上位4チーム見てみようか!!』

『また無視か』

 

『1位! 八木チーム!!』

 

「八木さん!! ごめん。最後フォローできなかった……」

「いやいや、飛び出したのは私の独断だったんだし、謝る事ないさ」

 

 緑谷少年は気にしすぎだなぁ。

 いや、麗日少女も若干気にしてるか。

 発目少女は麗日少女から回収したアイテムを弄るのに忙しそうだ。

 

『2位! 鉄て……アレェ!? 心操チーム!!? いつの間に逆転してたんだよオイオイ!!』

 

 なぬ!?

 私達以外でハチマキ持ってたチームっていうと、爆豪少年チームと轟少年チーム、あとはあの茨使いの少女のチームだけだった筈。

 爆豪少年と轟少年は最後までハチマキ持ってたの確認したから、やられたのは茨使いの少女チームか。

 ……アレからハチマキ奪えるような猛者がいたのか。

 心操少年か。

 覚えておこう。

 

『3位! 爆豪チーム!!』

 

「クソがァアアアアアアアア!!!!」

 

 爆豪少年は荒ぶっていた。

 それをチームメイト達が必死で宥めてる。

 どうやら私からハチマキを奪えなかったのが相当悔しかったらしい。

 

『4位! 轟チーム!!』

 

 逆に轟少年は静かだ。

 元々騒がしい性格でもなかったけど、今は騒ぐ元気もないって感じだろう。

 個性の反動でさんざん弱ってた上に、私が腕折っちゃったからね。

 この後は保健室直行でしょう。

 なんか、ごめんね。

 

『以上4組が最終種目へ進出だああーーーー!!!! 一時間ほど昼休憩挟んでから午後の部だぜ! じゃあな!! おいイレイザーヘッド、飯行こうぜ』

『寝る』

『ヒュー』

 

 相澤先生はようやく眠れるらしい。

 お疲れ様でした。

 安らかにお眠りください。

 

 こうして、第二種目騎馬戦は終わりを迎えた。

 

 

 




執筆速度が落ちてきました……。
そろそろ一日二話投稿は厳しいかもしれない……。
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