小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
轟少年の重い話を聞いてたせいで時間を食い、お弁当を食べ終わる頃には昼休憩が終わっていた。
元々昼休憩は一時間しかなかったからね。
轟少年の一件を抜きにしても、パパを探し回ってたせいであんまり時間は残されていなかったんだ。
急いでお弁当を食べましたとも。
そうしてスタジアムに戻った時、珍妙な光景が私の目に飛び込んできた。
『最終種目発表の前に予選落ちの皆へ朗報だ! あくまで体育祭! 全員参加のレクリエーション種目も用意してんのさ! 本場アメリカからチアリーダーも呼んで一層盛り上げ……ん? アリャ?』
『なーにやってんだ?』
マイク先生と相澤先生も気づいたか。
あの不可思議な光景に。
『どーしたA組!!?』
何故かクラスメイトの女子諸君がチアリーダーの格好をしてボンボンを持っていた。
え? マジで何やってんだろうか?
しかも私抜きで。
……ひょっとしてハブられた?
いや、決めつけは良くないな。良くないよ。
話を聞けばわかる事だ。
「何やってんの? 君らは?」
「あ! 魔美ちゃん探したんだよ! どこ行ってたの!?」
「ちょっとパパを探しててね。……で、これはどうした?」
「あー……。うん。ちょっとね」
麗日少女が煮え切らない。
しかもちょっと恥ずかしそうだ。
なんだ?
望んでその格好してる訳じゃないのか?
「峰田さん!! 上鳴さん!! 騙しましたわね!?」
と、その時、同じくチア姿の八百万少女が怒りの声を上げた。
視線の先を見れば、汚らわしきブドウ頭と電気使いの少年がサムズアップしていた。
電気使いの少年……。
友達は選んだ方がいいぞ。
「何故こうも峰田さんの策略にハマってしまうの私……」
「アホだろ、アイツら……」
なるほど。
読めた。
この子達はあのブドウ頭の策略にハマってこうなったのか。
それはなんとも御愁傷様。
巻き込まれなくて良かったぜ。
私はこのままそっとフェードアウトさせてもらおう。
「逃がさないよ……!」
「一人だけ逃げるなんて許されないよ……!」
気配を消しながら後ろ歩きで退散しようとしてたら、ピンクの肌の少女と透明少女に後ろからがっつりホールドされていた。
いつの間に!?
ていうか、この私の後ろを取るとは!?
「八木~。ここはA組女子一同、一蓮托生だと思わない?」
「そうそう! 八木ちゃんもやろうよ! チアリーダー!」
拘束する力が地味に強い。
絶対に逃がさないという強い意志を感じるぜ……!
そんなにか!?
そんなに道連れがほしいのか!?
「わ、私、下はスク水着てるから、へそ出しルックはちょっと……」
「下着なら私が出しますわ! だから、八木さんも是非!」
「八百万少女……! 貴様もか……!?」
君も道連れがほしいのか!?
結局女子全員に押し切られ、この後更衣室に直行する事が決定してしまった。
私のパワーなら振り払おうと思えば振り払えたんだけど、不思議とそんな気にもならなかったよ。
まあ、これもお祭りの一環と思うしかないか。
『なんか一部で謎の攻防が巻き起こったが、それはさておくぜ!! さぁさぁ皆楽しく競えよレクリエーション!! それが終われば最終種目!! 進出総勢16名からなるトーナメント形式!! 一対一のガチバトルだ!!』
「トーナメントか……! 毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ……!」
「去年トーナメントだったっけ?」
「形式は違ったりするけど、例年サシで競ってるよ。去年はスポーツチャンバラしてたハズ」
私のチアガール強制事件はマイク先生に軽く流され、イベントは進行していく。
参加者諸君(もうほとんどがクラスメイト諸君)もそっちに興味が集中してるみたいで、私の処遇に同情してくれる人はいない。
おとなしくチアやれって事ですかそうですか。
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります! レクに関しては進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね」
レクかー。
私は強制参加だろうなー。
チア姿で。
「んじゃ1位のチームから順に……」
「あの……! すみません。俺、辞退します」
くじを引く為にミッドナイト先生の所にいこうとしてたら、なんか尻尾の生えた少年がそんな事を言い出した。
辞退?
なんだろう? お腹でも痛いのかな?
「尾白くん!? 何で!? せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」
「……騎馬戦の記憶。終盤ギリギリまでほぼないんだ。多分、奴の個性で……」
ム。
記憶がない?
騎馬戦の最中にあの少年を見た覚えがないから、消去法であの少年が組んでいた相手は、あの茨使いの少女をいつの間にか破っていた少年。たしか心操少年だったか。彼だった筈だ。
精神に作用するタイプの個性か……?
そういう搦め手の相手は苦手だなー。
予想外に苦戦するかもしれん。
「チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするのが愚かな事だってのも……! でもさ! 皆が力を出し合い争ってきた座なんだ。こんな……こんな訳わかんないままそこに並ぶなんて……俺はできない」
尻尾の生えた少年は拳を握りしめながらそんな事を言ってた。
真面目だねー。
この体育祭に真剣に取り組んだがゆえの辞退宣言か。
難儀な性格してる。
「気にしすぎだよ! 本戦でちゃんと結果を出せばいいんだよ!」
「そんなん言ったら私だって全然だよ!?」
「違うんだ……! 俺のプライドの話さ……。俺が嫌なんだ。あと何で君らチアの格好してるんだ……!」
ピンク肌の少女と透明少女が引き留めるも尻尾の少年は断固として譲らない。
そして最後に凄いまともな突っ込みしたな。
「僕も記憶がなく、棄権したい! 実力如何以前に何もしていない者が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではなかろうか!」
なんかこれまた見覚えのない少年が似たような事言い出した。
難儀な性格の奴多いな。
「なんだこいつら……!! 男らしいな!」
『何か妙な事になってるが……』
『ここは主審ミッドナイトの采配がどうなるか』
どうやら決定権はミッドナイトが握ってるらしい。
主審て意外に権力あるのかね。
「そういう青臭い話はさァ……。好み!!! 庄田、尾白の棄権を認めます!」
好みで決めたよ。
さすが雄英。
自由だ。
ちなみに、心操少年とチームを組んでいたもう一人の少年は棄権しないらしい。
それはそれで良いんじゃないかな。
別に、空気読めよKY野郎!! とか言って非難するつもりはないよ。
「さて、空いた枠をどうしようかしら? 八木さんチームが暴れ回っちゃったから5位っていないし。繰り上がりをどうするか悩むわね」
考えなしに棄権を認めたんだ。
さすが雄英。
自由だ。
「発言いいですか? ミッドナイト先生」
「ん? どうぞ拳藤さん」
ここでサイドテールの少女が手を上げて話し出した。
「そういう話なら、最後まで頑張って上位キープしてた鉄哲チームを推薦したいんですけど」
「ふむ……。なるほどね」
「お……おめぇらぁ!!!」
ああ。あの茨使いの少女がいたチームね。
たしかに妥当かもしれない。
上位チーム以外では唯一私の使い魔物量作戦を耐えきったチームだし、実績的には頭一つ抜けてそう。
「わかったわ! では異論がなければ鉄哲チームを繰り上がりとします! 異論は!?」
なかった。
さすがに皆空気を読んだ。
で、どうやらチーム内で相談した結果、鉄っぽい肌の少年と茨使いの少女が繰り上がって決勝トーナメントに出場するらしい。
その後、改めて組み合わせ決めのくじを引いた。
「という訳で、鉄哲と塩崎が繰り上がって16名!! 組はこうなりました!」
そしてモニターにトーナメント表が表示される。
その内容は。
第一試合 緑谷VS心操
第二試合 轟VS瀬呂
第三試合 八木VS塩崎
第四試合 飯田VS発目
第五試合 芦戸VS青山
第六試合 上鳴VS八百万
第七試合 鉄哲VS切島
第八試合 麗日VS爆豪
となった。
私は一回戦目でいきなりあの茨使いの少女、塩崎少女とだよ。
騎馬戦でハチマキを奪えなかった雪辱を果たすとしよう。
そんな思いで塩崎少女に視線を送ったら、ビクッとされた。
怯えさせちゃったかな?
『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間! 楽しく遊ぶぞレクリエーション!』
そして私は更衣室に連行された。
そこで体操服もスク水も脱がされ、八百万少女が出したチア服と下着を着せられてレクに参加する事になってしまったよ。
「か、可愛い……!」
「お人形さんみたいですわ……!」
「黙ってればほんと美少女なのに……」
なんか褒められたから、そんなに悪い気もしなかったけどさ。
それにレクも結構楽しかった。
やっぱり何事も参加する事に意義があるのかね。
そうしてレクでも無双してる間に時は過ぎ、決勝トーナメントの時間がやってきた。
「オッケー。もうほぼ完成」
『サンキュー! セメントス! ヘイガイズアァユゥレディ!?』
コンクリートを操る個性を持つ先生が、スタジアムの中に巨大なステージを作り出した。
それで準備は整った。
スタジアムは熱狂の渦に巻き込まれ、マイク先生の実況が響き渡る。
『色々やってきましたが!! 結局これだぜガチンコ勝負!! 頼れるのは己のみ! ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ! わかるよな!! 心・技・体に知恵知識!! 総動員して駆け上がれ!!』
私はそれを選手入場ゲート付近で聞いていた。
観客席に向かう途中でパパを発見して、緑谷少年の激励に行くって言うからせっかくだしついて来たのだ。
そして、緊張でガッチガチになってる緑谷少年を発見した。
「HEY!」
「やっ! 緑谷少年」
「オールマイト……。八木さん……」
緑谷少年は知り合いの姿を見て少しだけ緊張が取れたのか、ちょっとだけ肩の力が抜けたみたいだ。
良かったね。
「調子はどうだい? 見たところ、まだワン・フォー・オールは使ってないみたいだけど」
「……はい。正直まだ不安で。ヴィランに撃った時のイメージを電子レンジにあてはめて頭に浮かべて、この二週間で練習したんですけど。……一応成功はしたけど、まだ気を抜くと今にも崩れそうな危うい感じで……。全然……」
緑谷少年がネガティブになっていく。
もうこれはアレだな。
生まれもった気質ってやつだな。
どうしようもないぜ。
ちなみに、電子レンジっていうのは、前に緑谷少年が海浜公園で話していたワン・フォー・オール暴発のイメージの事だ。
緑谷少年は個性の反動で体がぶっ壊れるのを、「電子レンジに入れられた卵みたい」と称した。
それに対してパパが言ったアドバイスが、「ワット数を下げる。タイマーを短くする。何でもいいから卵が爆発しないイメージを作れ」って感じだったのだ。
まさに感覚派だよね。
「それに、今の僕の身体だと、成功してもちょっとパワーが上がったくらいのものにしかならない」
「うむ。前に話した0か100かの出力で言えば、今の君の身体で出せるのは、せいぜい5くらいってところかな」
「5……」
5ですか。
それはまあ、なんと言うか。
「前途多難だね。緑谷少年」
「うん……。そう考えると本当僕って、皆と運に恵まれたってかんじですね」
ネガティブ!
やっぱりどことなく後ろ向きだなこの子は。
轟少年に宣言した時の君はどこに行ってしまったんだ……。
ほら、パパも微妙な顔して頭かいてるじゃないか。
「そこは『こなくそ頑張るぞー』でいいんだよナンセンスプリンスめ! 君の目指すヒーロー像はそんな儚げな顔か!?」
パパのダブルチョップが緑谷少年に炸裂!
ま、いい薬でしょ。
「いいかい? 怖い時、不安な時こそ笑っちまって臨むんだ!! ここまで来たんだ。虚勢でもいい胸は張っとけ! 私が見込んだってこと忘れるな!」
パパはマッスルフォームに変身していつもの笑顔でそう言った。
私が参考にしてる顔だ。
人を安心させる笑み。
この顔で激励されてるんだから、もっとポジティブになっても良いと思うよ緑谷少年。
「そうそう。ここまで来ちゃったらどうせもう後には引けないんだから。当たって砕けて来いよ! 砕けなかったら準決勝で会おうぜ!」
そう言って私も激励しておいた。
パパの真似してサムズアップしながら。
「……うん! 準決勝で会おう!!」
そう言って緑谷少年は入場して行った。
いまいち笑いきれてない変な顔で。
緑谷少年らしいっちゃらしいかな。
「パパ」
「うん? なんだい魔美ちゃん」
そして私はパパに言った。
「もし緑谷少年が私と当たったら、全力で叩き潰すからね」
たとえ大事な後継者相手でも手は抜かない。
その事を改めてパパに宣言した。
そしたらパパはふっと笑って。
「そうか。頑張りなさい」
「……うん」
実に父親らしい事を言ったのだった。