小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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体育祭!!! パート7

『一回戦!! 成績の割になんだその顔! ヒーロー科! 緑谷出久!!

 

 (バーサス)!!!

 

 ごめんまだ目立つ活躍なし! 普通科! 心操(しんそう)人使(ひとし)!!』

 

 私達が入場ゲートで見守る中、ついに試合が始まろうとしていた。

 

『ルールは簡単! 相手を場外に落とすか行動不能にする。あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!! ケガ上等!! こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから! 道徳倫理は一旦捨ておけ!』

 

 今日のおばあちゃんは大変そうだ。

 障害物競争の時から負傷者は大量にいただろうし、ついさっきも轟少年を保健室送りにしちゃったしね。

 過労死しなければいいけど。

 

『だがまぁもちろん命に関わるよーなのはクソだぜ!! アウト! ヒーローはヴィランを捕まえる為(・・・・・)に拳を振るうのだ!』

 

 それに関しては窮屈なルールだなーって毎度思う。

 これのせいで、私は気軽にディザスターモードとかを使えない。

 アレはこの間の脳無みたいな特殊な例でもない限り、ほぼ確実に相手を殺しちゃうから。

 あんな極度の興奮状態で手加減なんてできないからね。

 だからこそアレは奥の手であり、禁じ手でもある訳だ。

 

 それにこれが必要なルールだって事はちゃんとわかってるし、これくらいきつい縛りがなかったら私はとっくの昔に暴走してるって事も理解してる。

 でも、やっぱり気持ちの問題かね。

 世の中には刑務所にぶち込むより殺しちゃった方がいいヴィランだっていると思うんだ。

 

 ……おっと。試合と関係ない事考えちゃってたぜ。

 今は緑谷少年の試合の観戦に集中しよう。

 隣のパパなんか何故か当人以上に緊張しながら見てるしね。

 

「『まいった』か。わかるかい緑谷出久。これは心の強さを問われる戦い。強く思う将来(ビジョン)があるなら、なりふり構っててちゃダメなんだ」

 

『そんじゃ早速始めようか!!』

 

 なんか心操少年がぼそぼそ言ってるけど、マイク先生の声とスタジアムの熱狂に紛れてよく聞こえないな。

 何言ってんだろ?

 

「あの()はプライドがどうこうとか言ってたけど……」

 

『レディイイイイーーー!!!』

 

「チャンスをドブに捨てるなんて、バカだと思わないか?」

 

『スターーート!!!』

 

「!!」

 

 ん?

 なんだろう?

 緑谷少年の雰囲気が変わった。

 怒ってる?

 

「何てこと言うんだ!!」

 

 緑谷少年がそう叫んで駆け出した瞬間、──その動きが完全に止まった。

 

 

 

「俺の勝ちだ」

 

 

 

 騒がしいスタジアムの中。

 そんな心操少年の声だけが、不思議と私の耳に届いた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──緑谷視点

 

 

 

『オイオイどうした!? 大事な初戦だ盛り上げてくれよ!? 緑谷、開始早々完全停止!? アホ面でビクともしねえ!! 心操の個性か!?』

 

 プレゼントマイクの実況が耳を素通りする。

 体が動かないし、頭の方もまるでモヤがかかったみたいに上手く働かない。

 

『全っっっっ然目立ってなかったけど彼、ひょっとしてやべえ奴なのか!!!』

 

「お前は……。恵まれてて良いよなァ。緑谷出久」 

 

 心操くんが感情の籠った声でそう言っていた。

 僕はそれを黙って聞いている事しかできない。

 

「振り向いてそのまま場外まで歩いていけ」

 

 その言葉を聞いて体が勝手に動き出した。

 言うとおりに後ろを向いて勝手に場外に向けて足が動いく。

 

『ああーーー!! 緑谷! ジュージュン!!』

 

 進む先の入場ゲートにオールマイトの心配そうな顔が見えた。

 八木さんの考察するような目が心操くんに向けられているのが見えた。

 

 ダメだ!

 行くな!

 ちくしょう!! 止まれ!! 止まれって!!

 

 折角、折角尾白くんが忠告してくれたのに!

 わかってたのに!

 心操くんの個性の事! 

 問いかけに答えるのが発動条件だって事!

 衝撃によって解けるって弱点までわかってたのに!

 

 くそう!

 ちくしょう!

 こんな!! あっけなく!!

 皆、託してくれたのに!!

 

 轟くんに勝つって言ったのに!!

 八木さんに準決勝で会おうって言ったのに!!

 こんな、ところで────

 

 

 

 

 

 ──その時。入場ゲートの中。オールマイトと八木さんがいる筈の場所に、無数の人影のような幻覚が見えた。

 

 

 

 

 

「!?」

 

 

 

 

 

 何っっっっっだこれ!!!!!

 何が起こったのかはわからない。

 でもその時……

 

「わかんないだろうけど……。こんな個性でも夢見ちゃうんだよ。さぁ、負けてくれ」

 

 指先が、少しだけ、動いた。

 

「ッ!!!」

 

 動いた指に全力で個性(ワン・フォー・オール)を発動させ、暴発させた。

 激痛が走る。

 でもその代わりに……

 

 心操くんの洗脳が解けた。

 

「っ………!!! ハァ! ハァ……!」

 

『これは……。緑谷!! とどまったああ!!!』

 

「何で……!? 体の自由はきかない筈だ! 何したんだ!」

 

 指は僕だ……。

 でも動かせたのは違う!

 何だ!?

 知らない人達が浮かんで……一瞬、頭が晴れた。

 

 ワン・フォー・オール。

 聖火の如く引き継がれてきたもの。

 

 人……?

 この力を紡いできた人の……気配……!?

 助けてくれたのか!?

 あるのか!?

 そんな事!?

 

 ……今考えても答えは出ない! 後でいい! 今考えるのは……!

 

「……何とか言えよ」

 

 心操くんが語りかけてくる。

 それに答える事はできない。

 また洗脳される。

 

「……! 指動かすだけでそんな威力か!! 羨ましいよ!!」

 

 僕もソレ。昔思ってた。

 かっちゃんにいじめられてた時も……。八木さんの力を初めて見た時も……。

 

「俺はこんな個性のおかげで登竜門すらくぐらせてもらえなかったよ! 恵まれた人間にはわかんないだろ!」

 

 わかるよ。

 でも、そうだ。

 僕は、恵まれた。

 

「誂え向きの個性に生まれて!! 望む場所へ行ける奴らにはよ!!!」

 

 人に!! 恵まれた!!

 だからこそ!!

 僕だって!!!

 負けられないんだ!!!

 

 心操くんの肩を掴んで、腹を押して、場外まで押し出そうとする。

 

「何とか言えよ!!」

 

 心操くんの拳が飛んでくる。

 この至近距離じゃ避けられない。

 あえて食らう。

 

「ぁああ!!!」

 

 それでも力は緩めない。

 心操くんを掴んだまま、押し込んでいく!

 

「押し出す気か……!? ふざけた事を……!」

 

 体の向きを変えて、力を受け流される。

 僕と心操くんの位置関係は逆転し、僕の方が場外に近づく。

 

「お前が出ろよ!!」

 

 ここだ!!

 僕を押し出す為に顔に伸ばされた腕を掴む!

 

「んぬあああああ!!!!!」

 

 そのまま押し出す勢いを利用して、投げた。

 戦闘訓練の時、かっちゃんにも使った背負い投げ。

 上手く決まってくれたそれは心操くんを転がし、その足を場外にまで出させるのに成功した。

 

「心操くん場外!! 緑谷くん! 二回戦進出!!」

 

「ハァッ……!」

 

 ミッドナイト先生の宣言を聞いて、自分が勝てたって事を実感できた。

 終わった……。

 そう思った途端に、疲労と意識の外に追い出していた激痛が襲ってきた。

 

「ッ!!」

 

『イヤハ! 初戦にしちゃ地味な戦いだったが、とりあえず両者の健闘を称えてクラップユアハンズ!!』

 

 暴発させた指と殴られた顔が痛い。

 でも、その痛みを我慢して、僕は心操くんに話しかけていた。

 

「心操くんは……。なんでヒーローに……?」

「……憧れちまったもんは仕方ないだろ」

「……!!」

 

 その気持ちはワン・フォー・オールを継ぐ前の僕と同じだ。

 でも今の僕が。

 力を授かった僕が何を言ったって……。

 

 

「かっこよかったぞ心操!」

 

 

 客席からそんな声が聞こえた。

 普通科の客席から、心操くんを称える声が。

 

「正直ビビったよ!」

「俺ら普通科の星だな!」

「障害物競争2位の奴と良い勝負してんじゃねーよ!!」

 

 客席を見上げる心操くんの顔は、僕の位置からじゃ見えない。

 

「この個性。対ヴィランに関しちゃかなり有用だぜ。ほしいな……!」

「雄英もバカだなー。あれ普通科か」

「まぁ受験人数ハンパないから仕方ない部分はあるけどな」

「戦闘経験の差はなー……。どうしても出ちまうもんなぁ……。もったいねぇ」

 

 今度はプロヒーロー達が座る客席から、そんな声が聞こえてきた。

 

 

「聞こえるか心操。お前、すげぇぞ!」

 

 

「…………!」

 

 その声を聞いた心操くんは、背中越しに僕に語りかけてきた。

 

「結果によっちゃヒーロー科編入も検討してもらえる。覚えとけよ?」

 

 そう言う心操くんの声は、決意に満ちていた。

 

「今回はダメだったとしても、絶対諦めない。ヒーロー科入って。資格取得して。絶対にお前らより立派にヒーローやってやる」

「……! うん!」

 

 心操くんの言葉に返事をしたその時。

 体の自由がきかなくなった。

 あ。やられた……。

 試合終わったのに何を……?

 

「フツー構えるんだけどな。俺と話す人は。そんなんじゃすぐ足元掬われるぞ? せめて……みっともない負け方はしないでくれ」

 

 心操くん……。

 

「うん……!」

 

 あ……。

 またやられた。

 

 いまいち締まらない終わり方だったけど、僕はこうして一回戦を突破した。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 無事? 一回戦を突破したものの、例によって怪我してしまった緑谷少年は保健室直行となった。

 正確には「リカバリーガール出張保健所」とやたらラブリーな文字で書かれた看板の出た、スタジアムから近い臨時の保健室だけど。

 

「全然……笑えなかったです」

「うーむ……」

 

 そこで現在、緑谷少年はおばあちゃんの治癒を受けながら、ちょっと苦い顔で報告を行っていた。

 余談だけど、私はこの治癒にお世話になった事がない。

 自前の超再生があるからね。

 

「まあ……心操少年の叫び、君には(・・・)心苦しい戦いだったね」

 

 そうだねー。

 私は心操少年の心からの叫びを聞いても「君も大変だねぇ」くらいの感想しか出なかったけど、緑谷少年はヒーローになる事を望んでも力がなくて諦めかけてた過去がある。

 今の心操少年と昔の自分を重ねてナイーブになるのも無理ないわな。

 私とは逆の意味で個性に悩まされた二人だったよ。

 

「……でも。だから負けていいとはならない。一番を目指すってそういう事なんですよね……」

 

 緑谷少年は浮かない顔だ。

 悩んでる訳じゃなさそうだけど、どうしようもない現実にちょっとだけ打ちひしがれてるって感じかな?

 でも頑張ってほしい。

 だって自分で決めた道なのだから。

 

「可哀想に。あんたまた変にプレッシャーかけたろ」

「ひっ、必要な事なのです! 痛い!」

 

 おばあちゃんの謂れのない暴力がパパを襲った!

 何をするだぁ!?

 ジトっとした目でおばあちゃんを睨み付けるも軽く流された。

 まあ、スキンシップの範疇だし、とやかくは言わないけどさ。

 

「そうだ。オールマイト。僕、幻覚が見えたんです」

「んん!?」

 

 幻覚?

 

「心操少年の個性で頭でもやられた?」

「いや、そういう感じじゃ……ないとも言い切れないけど。と、とにかく、8……9人? 人数は定かじゃないんですけど、洗脳で頭にモヤがかかったような感じになった時、そのモヤを払うかのように幻覚が浮かんで……。瞬間的に辛うじて指先だけ動いたって感じで……」

 

 なにそれ?

 オカルトの類いかな?

 それともワン・フォー・オール特有の何かだろうか?

 

「オールマイトのような髪型の人もいました。あれは……ワン・フォー・オールを紡いできた人の意思のようなものなのでしょうか?」

「怖ぁ……。何それ……」

「ええ!? ご存知かと!!」

 

 パパが露骨に顔を青くするけど、これは冗談だな。

 長年の付き合いでなんとなくわかる。

 でも、ただの冗談にしてはちょっと違和感があるかな……?

 

「いや、私も若かりし頃見た事はあるよ。ワン・フォー・オールを掴んできたって言うわかりやすい進歩だね」

「?」

 

 緑谷少年はよくわかってない感じだ。

 私もよくわからないよ。

 

「ワン・フォー・オールに染みついた面影のようなものだと思う。そこに意思どうこうは介在せず双方干渉できる類いのものじゃない」

 

 それは、なんとも不思議な個性だなぁ。

 ワン・フォー・オールは私の悪魔よりも不可思議な個性だ。

 

「つまりその幻覚が洗脳を解いたのではなく、君の強い想いは面影を見るに至り、心操少年の洗脳に対し、一瞬! 指先だけでも打ち勝ったって事なんじゃないか!?」

 

 うーん……。

 なんかこじつけくさいな。

 

「なんか全然釈然としませんけど……」

「私も同意見かな。パパ、何か隠してない?」

「食い下がるな!! それより次の対戦相手見なくて良いのか!?」

「あ!!」

 

 次の試合の勝者が緑谷少年の二回戦の相手になる。

 その事を今思い出したのか、緑谷少年は慌てて保健室を出て行った。

 

「お二人とも、ありがとうございました!! あと八木さんも!!」

「あいよ」

「私にお礼はいらないぞ」

 

 そうして緑谷少年は去って行った。

 私は保健室にまだ残った。

 

「パパ……。本当に隠してる事とかない?」

 

 なんか今回の一件は妙に引っ掛かるんだよね。

 その引っ掛かりの正体をできれば確認しておきたい。

 

「……ないさ。そこまで重要な隠し事はね。さあ、もう行きなさい。轟少年達の試合が始まってしまうよ」

「……ハァ。まあ、今はそういう事にしておいてあげよう」

 

 私はそれだけ行って保健室を出た。

 パパはごまかす事は多くても嘘はあんまり吐かない。

 だから、今回はそれを信頼して引き下がる事にした。

 

 さて、次は轟少年の試合か。

 見といた方が良いだろうな。

 

 そうして私は観客席に向けて歩いて行った。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──オールマイト視点

 

 

 

「あんたもいた(・・)ってね」

 

 魔美ちゃんと緑谷少年が去った保健室で、リカバリーガールがそう言った。

 

「良い事です……」

 

 私はそうとしか返せなかった。

 実際に悪い事ではないのだ。

 ただ、順調に世代交代が進んでいるという、それだけの事なのだから。

 

「……あの子が心配してたのはあんたの安否だよ。あまり心配させてやるもんじゃないよ」

「……はい」

 

 その言葉に対しても、私はただ頷く事しかできなかった。

 心配させるな、か……。

 無茶ばかりしてきた、そしてこれからもするだろう私にはとても難しい事だ。

 

 それでも、できるだけ善処しよう。

 

 そう思いながら、私もまた観客席へと戻って行った。

 

 




最後のところは独自解釈入ってます。
真相が明らかになったら修正するかもしれません。
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