小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
『ああ麗日……うん。爆豪一回戦とっぱ』
『ちゃんとやれよ。やるなら』
『さあ気を取り直して!!』
『私情すげぇな。最初からだが……』
『一回戦が一通り終わった!! 少休憩挟んだら早速次行くぞー!』
マイク先生と相澤先生の小粋なトークが終わってから少しして、爆豪少年が観客席に戻って来た。
代わりに緑谷少年がどっか行った。
十中八九、麗日少女のお見舞いでしょ。
「おーう。何か大変だったな悪人面!」
「組み合わせの妙とはいえ、とんでもないヒールっぷりだったわ爆撃ちゃん」
「うぅるっせえんだよ!! 黙れ!!」
「まぁ、しかしか弱い女の子によくあんな思い切りの良い爆破できるな」
「上鳴ちゃんも八百万ちゃんに向かって思いっきり放電してたわ」
「いや、梅雨ちゃんアレはね……」
「フンッ!!」
クラスメイト諸君がやんややんやと出迎える中、爆豪少年は不機嫌そうな雰囲気で乱暴に席に着いた。
そして、
「どこがか弱ぇんだよ……」
ボソリと呟くようにそう言った。
私はそんな爆豪少年の肩をどんどんと叩いた。
「爆豪少年!」
「鬱陶しいわ!! なんだ!! クソ女!!」
案の定さらに不機嫌になったけど、これだけは言っておきたかったから私は口を開いた。
「初戦突破おめでとう。良い勝負だったぜ」
「ハァ? 何のマネだ……?」
「別にー。ただ祝福してあげただけだよ」
「ケッ!! 舐めてんじゃねぇ!!」
思った事を正直に言っただけなんたけどなー。
ついでに誰にも祝福してもらえない哀れな悪人面への施しでもあるんけど、それは言わなくてもいいよね。
麗日少女は緑谷少年が慰めに行ったし。
敗者が慰められるなら、勝者は祝福されても良いと思うんだ。
それからちょっとしてから引き分けだった第七試合、ツンツン頭の少年と鉄っぽい少年の戦いが始まった。
腕相撲という名の。
「んんんんんんんんん!!!」
「んんんんんんんんん!!!」
「ガァ!!!」
あ。ツンツン頭の少年が勝った。
『引き分けの末キップを勝ち取ったのは切島!! これで二回戦目進出者が揃った! つーわけでそろそろ始めようかぁ!』
やっと始まるよ二回戦。
なんかここまで長かったような気がする。
轟少年が出した氷の撤去に時間がかかったり、私がステージ全壊させて作り直しが必要になったりして、地味に時間かかったからなぁ。
なんだかんだで爆豪少年もそれなりに破壊してたしね。
で、次の試合は緑谷少年対轟少年か。
因縁の対決だね。
ステージぶっ壊れる予感しかしねぇな!
そして二人がステージに現れる。
そのタイミングで麗日少女が観客席に戻って来た。
「二人まだ始まっとらん?」
「うら……」
「見ねば」
「目を潰されたのか!! 早くリカバリーガールの元へ!!」
戻って来た麗日少女の目はめっちゃ腫れていた。
どう見ても泣き腫らした的なアレだろう。
飯田少年にはわからないのか?
「行ったよ。コレはアレ。違う」
「違うのか! それはそうと悔しかったな……」
「今は悔恨よりこの戦いを己の糧とすべきだ」
「うん……!」
飯田少年と鳥頭の少年が慰めた。
なら、私は慰めじゃなくて労いの言葉をかけるべきかな。
「麗日少女」
「うん? 何、魔美ちゃん?」
「おつかれ。良い勝負だった」
「……うん」
爆豪少年にかけたのと似たような言葉。
これは私の本心だ。
本当に良い勝負だったと思うよ。
そして麗日少女は敗北の悔しさを乗り越えたのか、これから始まる試合に集中し始めた。
「あの氷結、デクくんどうするんだ?」
麗日少女の疑問の声。
まあ、始まってみればわかる事だけど。
緑谷少年に選べる選択肢はほとんどないわな。
「それはやっぱり──」
『今回の体育祭、両者トップクラスの成績!! まさしく両雄並び立ち今!! 緑谷
試合が始まった。
そして開幕と同時に緑谷少年に迫る氷の壁。
ここで私は麗日少女の疑問に答えた。
「──自損覚悟で打ち消すしかないんじゃない?」
氷の壁が粉砕された。
緑谷少年が指で放った一撃によって。
その代償として攻撃に使用した指はバッキバキになってもう使えない。
予想通りの展開。
ここからどうなっていくのか。
さて。
お手並み拝見といこうかね。ライバル共。
◆◆◆
──緑谷視点
迫る氷結を指犠牲のデラウェア・スマッシュで打ち消した。
右の中指はもう使えない。
『おオオオ!! 破ったあああ!!』
発射台の親指を除いて、無事な指は後7本。
つまり、今のを撃てる回数は残り7回。
余裕はない。
再び氷結が迫る。
右の人差し指を使って相殺する。
残り6発。
『まーた破ったあ!!』
轟くんの個性の弱点は騎馬戦の時にわかった。
氷結は強力だけど、反面持久力がない。
使えば使うほど冷気で自分の体が冷えていって、動きも氷の勢いも鈍る。
だったら使わせるしかない。
避けて無駄撃ちさせられればそれがベストなんだろうけど、僕にそんな機動力はない。
相殺して、消耗を待つしかない。
「お前は……」
また氷結が迫る。
右の薬指で打ち消す。
残り5発。
腕を犠牲にした最大威力は駄目だ。
さっき轟くんは自分の後ろに氷壁を発生させて衝撃に備えてた。
考えなしに撃っても無駄撃ちに終わる。
「耐久戦か。すぐ終わらせてやるよ」
また氷結が迫る。
右の小指で打ち消す。
残り4発。
もう右手全滅。
凄く痛い……!
でも、そんな事言ってられない!
『轟! 緑谷のパワーに怯むことなく近接へ!!』
轟くんが近づいて来る。
接近戦は駄目だ!
轟くんは増強系の個性じゃないけど、僕よりも遥かに運動能力が高い。
それは個性テストの時からわかってる。
近距離で戦うなら、轟くんの動きが鈍ってからじゃないと駄目だ!
「スマッシュ!!!」
左手の中指で迎撃する。
でも駄目だ! 避けられてる!
氷壁を足場にして上から……!?
「っぶなっ!」
上からの攻撃をなんとか避ける。
でもすぐに追撃が来た。
近距離からの氷結が襲って来る!
これは……駄目だ!
この氷結を相殺しても轟くんが近くにいる限り連撃が来る!
距離を取るしかない。
僕は今、攻撃を避ける為にステップして空中にいる。
足で距離を稼ぐのは無理!
だったら!
「うう"う"……!!」
左腕を犠牲にして撃った。
予想通り対応されて轟くんを場外まで飛ばす事はできなかったけど、距離は取れた。
「さっきよりずいぶん高威力だな。近づくなってか」
左腕が壊れた。
右手の指も全滅。
もうスマッシュは撃てない。
やばい……!
仕方なかったとはいえ、想定より遥かに早く撃ちきった……!
これじゃもうどうしようも……
「悪かったな。ありがとう緑谷。おかげで奴の顔が曇った」
……は?
「その両手じゃもう戦いにならないだろ。終わりにしよう」
『圧倒的に攻め続けた轟!! トドメの氷結を……』
「どこ見てるんだ……!!」
右手の人差し指で氷結を打ち消した。
壊れた指がさらに粉砕されていくのを感じる。
でも、撃てた。
「てめぇ……! 何でそこまで……!」
「震えてるよ。轟くん」
僕は轟くんの言葉を遮って続けた。
「騎馬戦の時から気づいてた。個性だって身体能力の一つだ。君自身、冷気に耐えられる限度があるんだろう……!?」
でも、
「で、それって、左側の熱を使えば解決できるもんなんじゃないのか……?」
騎馬戦の時からずっと抱いてた疑問。
あの時は戦闘優先で考察を打ち切ったけど、やっぱり気になって考え続けた。
その結論は、できない筈がない。
自分の熱で自分の氷が溶かせるなら、自分の熱で冷えた体を暖める事だってできる筈だ。
今、轟くんは、僕の当初の狙い通り冷気の使いすぎで消耗してる。
騎馬戦の時みたいに吐く息は白いし、体の右側に霜が降りてる。
なのにこの期に及んで左を使わない。
僕はまだ動ける。
まだ戦える。
そんな敵を前にして、舐めてるとしか思えない。
「皆、本気でやってる。勝って、目標に近づく為に……っ! 一番になる為に! 半分の力で勝つ!? まだ僕は君に傷一つつけられちゃいないぞ!」
君が左側を使わない理由はわかってる。
他ならない君から聞いた事だ。
でも……! それでも……!
全力も出さないで一番になるなんて……! 僕らを舐めるな!!
「全力でかかって来い!!!」
僕はまだ、負けてないぞ!!
「何のつもりだ……! 全力? クソ親父に金でも握らされたか……? イラつくな……!」
轟くんが接近してくる。
予想以上にこっちの消耗も激しいけど、狙い通りの展開にはなった。
凍えて鈍った轟くん相手なら、僕でも戦える!
伊達に八木さんにボコボコにされてきた訳じゃないぞ!!
逆にこっちから距離を詰める。
轟くんの隙を目掛けて、拳を振るう!
「電子レンジ……卵の……爆発しないイメージ……!」
僕の拳が轟くんに届いた。
ワン・フォー・オール。制御できた……!
『モロだぁーーー!! 生々しいの入ったあ!!』
「ぐぅう!!」
でも、殴りつけたのは指が壊れきった右手。
反動でこっちも痛い。
でも、轟くんにダメージが入った!
反撃の氷結が来る。
でも、
「氷の勢いも弱まってる……!」
轟くんは確実に消耗してる。
でも、こっちの消耗はそれ以上だ。
拳が握れない!
相殺する為の一撃が撃てない!
「ううっ!!」
ここまで来て、そんな事で負けられない!
反射的に体が動いた。
拳を握れないなら、別の方法で撃てば良い。
親指を口に咥える。
そして、口を発射台にしてデラウェア・スマッシュを撃った。
氷結の相殺に成功する。
「何で、そこまで……!」
「期待に応えたいんだ……!!」
轟くんの言葉に、答える。
「笑って、応えられるような、かっこいいヒーローに……なりたいんだ!!」
その為に!!
「だから全力でやってんだ! 皆!」
あの圧倒的な八木さんですら本気で挑んでる!
なのに! 君は!
「全力も出さないで完全否定なんてフザけるなって、今は思ってる!」
「……うるせぇ」
轟くんはもう氷結を使えないほどに弱ってる。
そこに勝ち目がある!
「だから、僕が勝つ!! 君を超えてっ!!」
轟くんを殴り飛ばす。
今の僕にできる、渾身の力で!!
「俺は……親父を……」
「君の!!! 力じゃないか!!!」
口が勝手に動いていた。
でも、後悔はしない。していない。
心の底からそう思ったんだから。
『これは……!?』
炎が、ステージの上に現れた。
「勝ちてぇくせに……。ちくしょう……。敵に塩送るなんて、どっちがフザけてるって話だ……!」
轟くんは泣いていた。
涙を流しながら、無理矢理笑顔を作っていた。
氷と、炎を、同時に使いながら。
「俺だって……! ヒーローに……!!」
轟くんが炎を解放した。
それは、僕の勝ち目を潰す悲劇の筈なのに。
「凄……!」
それは、笑ってしまう程の試練だった。
◆◆◆
──轟視点
(いいのよ。お前は────)
かつての母の言葉。
その先を、いつの間にか忘れてしまった。
「期待に応えたいんだ! 笑って応えられるような、かっこいいヒーローに……なりたいんだ!!」
(でも、ヒーローにはなりたいんでしょ)
緑谷の言葉を聞いているうちに、昔の記憶を思い出した。
そうだ。
あの時、お母さんは。
(いいのよ。お前は。血に囚われることなんかない)
そう言っていた。
(なりたい自分に、なっていいんだよ)
なりたい自分に。
俺だって……! 俺だって……!
「俺だって……! ヒーローに……!!」
気づけば、左の炎を使っていた。
戦闘において絶対に使わないと決めた力を。
「焦凍ォォオオ!!!」
そんな声が聞こえた気がした。
「ようやく己を受け入れたか!! そうだ!! 良いぞ!! ここからがお前の始まり!! 俺の血を持って俺を超えて行き!! 俺の野望をお前が果たせ!!」
その声が、耳に入らなかった。
今、俺の頭にあるのは、過去の母の言葉。ずっと忘れていた憧れ。
そして、それを思い出させてくれた、対戦相手の事だけだった。
「凄……!」
「何笑ってんだよ」
緑谷は何故か笑っていた。
「その怪我で、この状況でお前……。イカレてるよ。────どうなっても知らねえぞ」
氷結と炎熱を同時に使う。
最初に氷結が緑谷に襲いかかった。
それを、やけに速い踏み込みでかわされた。
緑谷が接近してくる。
「緑谷……。ありがとな」
緑谷の放った拳と、俺の炎がぶつかり合う。
それは八木が見せた攻撃を彷彿とさせる破壊力を持った衝撃となって、ステージを破壊した。
煙が晴れた時、────緑谷は場外で倒れていた。
「緑谷くん……場外」
ミッドナイトの判定が下される。
「轟くん!! 三回戦進出!!」
歓声がスタジアムを包み込んだ。
それを聞きながら、少しの間、俺はその場から動けなかった。
ほとんど原作通りになってしまった……。
でも、ここ変えると後に響きそうだからなぁ……。