小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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遅くなりました。



体育祭!!! パート11

 ──轟視点

 

 

 

「邪魔だ。とは言わんのか」

 

 ゲートを潜って退場すると、そこには入場の時と同じく親父が待ち構えていた。

 

炎熱(ひだり)のコントロール。ベタ踏みでまだまだ危なっかしいもんだが、子供じみた駄々を捨ててようやくお前は、完璧な『俺の上位互換』となった!」

 

 そう言って親父が手を差し出てくる。

 

「卒業後は俺の元へ来い!! 俺が覇道を歩ませてやる!」

「捨てられる訳ねぇだろ。そんな簡単に覆る訳ねぇよ」

 

 そんな親父を無視して、俺は一人で喋り始める。

 

「ただ、あの時あの一瞬は、───お前を忘れた」

 

 あの時、俺の頭の中からこいつの存在は消えていた。

 ただ、お母さんの言葉と忘れてた憧れだけが蘇ってきて、こいつの事が頭から追い出されただけだった。

 

「それが良いのか悪ィのか、正しい事なのか、少し考える」

 

 それに、次の相手は多分あいつだ。

 今のままだと勝ち目は薄い。

 その時に左を使うべきか、使わないべきか。

 考えとかなきゃならねぇ。

 

 そう思いながら、俺は親父を無視して歩き出した。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 緑谷少年と轟少年の激闘を見届けた私達は今、緑谷少年のお見舞いをする為に保健室に向かっていた。

 私としては死んでないんだから心配無用だと思うんだけど、まあ、お見舞いくらい行ってもいいかなって感じだ。

 他の皆がお見舞い行くぜムードだったから空気を読んだとも言う。

 

「緑谷くん!!!」

「デクくん!!!」

 

 そうして勢いよく保健室のドアを開けた飯田少年と麗日少女に続いて部屋に入る。

 トゥルーフォームのパパが部屋に居たけど、ここでパパと呼び掛けるほど私は間抜けじゃない。

 初対面で通す。

 

「みんな……。次の試合は……?」

「ステージ大崩壊の為、しばらく補修タイムだそうだ」

「今日は本当に良くステージがぶっ壊れるよねー」

「だから、ぶっ壊した本人がそれ言うかなぁ……」

 

 私だけじゃないんだからいいじゃん。

 それに、本気で戦えばステージくらい壊れるさ。

 

「怖かったぜ緑谷ぁ。あれじゃプロも欲しがらねーよ」

「塩塗り込んでいくスタイル感心しないわ」

「でもそうじゃんか」

 

 一緒に付いてきたブドウ頭がカエルっぽい少女、蛙吹少女に突っ込まれても意見を変えない。

 こいつのやる事なす事は全部否定したくなってくるけど、今回だけは同意見かね。

 たしかにプロが欲しがるような感じではなかった。

 私は熱い勝負の末の名誉の負傷だと思ってるけど、それは私個人の感想でしかないからなぁ。

 

「うるさいよホラ! 心配するのは良いがこれから手術さね」

「「「シュジュツー!!?」」」

 

 おばあちゃんの言葉に皆が騒ぎ出す。

 そして保健室から追い出されそうになる。

 

「すみません……。果たせなかった……」

 

 その時、ベッドの上の緑谷少年の声を聞いた。

 

「黙っていれば……。轟くんにあんな事言っておいて……僕は」

 

 後悔してそうな声だった。

 まあ、私と彼じゃ目的も見ている景色も違う。

 私の目には熱い勝負に見えても、本人からすればわざわざ相手を覚醒させてしまった上での敗北だ。

 納得はいかないかね。

 

 私は他の皆が保健室の外に追い出される中、気配を消して室内に残った。

 

「君は、彼に何かもたらそうとしていた」

 

 パパの問いかけ、というより確認するような言葉。

 

「確かに……轟くん、悲しすぎて……余計なお世話を考えてしまった……。でも違うんです。それ以上にあの時、僕はただ……悔しかった……。周りも先も見えなくなってた。ごめんなさい……」

 

 緑谷少年は懺悔するようにそう言った。

 先を見据えるなら、確かにこれは駄目か。

 燃え尽きるように力を振り絞り、相手の全力を受け止めたと言えば聞こえは良いけど、裏を返せば破滅的だった。

 これは叱られても仕方ないかな。

 

「確かに残念な結果だった。馬鹿をしたと言われても仕方のない結果だ……。でもな、余計なお世話ってのは、ヒーローの本質でもある」

 

 パパは叱らなかった。

 いや、聞きようによっては叱ってるようにも聞こえるけど、それ以上に慰めて諭してる感じがする。

 

 なんにせよ。

 緑谷少年の体育祭はここで終わってしまった訳だ。

 だったら、かける言葉は決まっている。

 

「緑谷少年」

「八木さん……。ごめん。準決勝で会おうって言ったのに、果たせなかった」

「それは仕方ないさ。それよりも、───おつかれ」

「……うん」

 

 そうして緑谷少年はうつむき、悔しさで枕を濡らした。

 両腕が壊れてるから涙を拭う事すらできない。

 

 そんな彼に背を向けて、私は会場に戻った。

 次は私の試合だ。

 君の分まで頑張って来るさ。

 そんな事を心の中で思いながら。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

『ヘイ!! 今日はステージが壊れまくる日だが、ステージが壊れた程度で体育祭は止まらねぇ!! てことで次の試合行くぜ!!』

 

『ステージ崩壊の犯人の一人!! 八木!! (バーサス)!! 初戦ではサポート科の広告塔に使われた男!! 飯田!!』

 

 二回戦第二試合。

 私の出番だ。

 迎え撃つは飯田少年。

 これはこれで、ある意味因縁の対決だ。

 

「八木くん……。宣言通り、今こそ君に再挑戦させてもらおう!!」

 

 飯田少年には戦闘訓練の時私に個性なしでボコボコにされたという因縁がある。

 そこからどれだけ強くなれたか。

 あの時とは違って本気の私を相手にどれだけ戦えるか。

 飯田少年にとっては決勝戦以上にここが天王山かもしれない。

 

「かかって来いよチャレンジャー。迎え撃ってやるぜ」

 

『スタート!!!』

 

「レシプロ・バースト!!!」

 

 開幕速攻。

 飯田少年はいきなり切り札を使ってきた。

 そう。それで正解だ。

 飯田少年と私の間には隔絶した力の差がある。

 そんな圧倒的格上を相手に切り札を温存して様子を見るなんて土台無理な話。

 故に、初手から最高出力で攻める。

 正解というより、飯田少年にはそれ以外の選択肢がない。

 

 そして、切り札を使えば互角の戦いになるという訳でもない。

 

「ッ!?」

 

 加速した飯田少年の蹴りを右腕一本で受け止める。

 当然、個性を解放した悪魔の右腕で。

 圧倒的な膂力の差により、蹴りを受けた私の体は小揺るぎもしなかった。

 

「おかえしだ!!」

「グハッ!!」

 

 右腕で受け止めると同時に左腕で飯田少年を殴る。

 その衝撃で飯田少年はステージの端まで飛んで行った。

 こっち(左腕)は個性を使っていない。

 これは手加減云々の話ではなく、悪魔の腕で殴ったりしたら普通に命に関わるからだ。

 ルールで禁止された攻撃を行わない事を手加減とは言わない。

 

『八木!! 飯田の超加速を真っ正面から叩き潰した!! やっぱこいつおかしいわ!!』

 

「ぐ……! あ……!」 

 

 それに、私の力は個性なしでも並みの増強系個性を上回る。

 そんなパンチをモロに受けてしまった飯田少年は苦痛に顔を歪めて呻いている。

 そして、そんな隙を見逃す私ではない。

 踏み込んで飯田少年との距離を詰め、今度はこっちから蹴りを放つ。

 

「!!」

 

 左脚で繰り出した私の蹴りを右腕で受け止める飯田少年。

 まるでさっきの光景を配役を逆にして繰り返しているようだが、その結果は大きく異なる。

 小揺るぎもしなかった私と違って、パワーで劣る飯田少年は蹴りの衝撃を受け止めきれず、再び吹き飛ばされた。

 縦に飛ばされたあと横に飛ばされ、現在位置はステージの隅だ。

 ボクシングで言うところのコーナー。

 もう後がないぞ。

 

「はああああ!!!」

 

 だが、飯田少年は諦めなかった。

 おそらくヒビの一つも入っているであろう右腕を庇う事すらせず、大きく両手を振って加速。

 再び私に突撃してきた。

 

 レシプロとかいう飯田少年の必殺技のタイムリミットはひどく短い。

 ここで攻めなきゃ勝機がないという事をちゃんと理解してるんだろう。

 それにしたって良い根性だ!

 

 私はそれを真っ向から再び迎え撃つ。

 ただの蹴りでは通用しないと見たのか、今度は蹴ると見せかけて体当たりしてきた。

 悪魔の腕で受け止める。

 そして、軽く振り払うようにして薙いだ。

 飯田少年は三度吹き飛ばされた。

 

 それでも飯田少年は攻撃を止めない。

 今度は蹴りと見せかけて拳、さらにそれをフェイントとして使って再びの蹴り。

 私はそれを体捌きで避けきって反撃のパンチを繰り出した。

 個性を解除した右腕で放ったパンチは、右フックの軌道を描いて飯田少年の顔面に当たり、眼鏡を粉砕してその体を大きくのけ反らせ、後退させる。

 

「レシプロ……エクステント!!!」

 

 だが、飯田少年はその体勢から脚のエンジンを稼働させ、渾身の蹴りを放ってきた。

 ここまでの攻防に約十秒。

 おそらくこれが最後の一撃。

 右脚で放たれたそれを私は──同じく右脚の蹴りで迎え撃った。

 

「おおおおおおおお!!!」

「やあああああああ!!!」

 

 お互いの右脚が空中でぶつかり合う。

 個性の最後の力を振り絞った飯田少年の蹴りと、個性を使っていない状態ながら最大限の力を籠めた私の蹴り。

 その威力は……まったくの互角だった。

 互いに互いの蹴りの威力で弾かれ、私達の間に少しの距離が空く。

 

 そこで飯田少年の脚からプスンという音が鳴った。

 

 飯田少年の必殺技「レシプロ・バースト」の反動。

 極短い時間だけ驚異的なスピードでの走行を可能とするが、タイムリミットが来ればエンストを起こし、しばらく個性が使えなくなる。

 昼休憩の時に本人から聞いた話だ。

 そして今、そのタイムリミットが来てしまった。

 

 それと同時に飯田少年が膝から崩れ落ちる。

 たった十秒の戦い。

 されど私の攻撃をモロに食らって、そのダメージを無視して動き続けたんだ。

 こうならない訳がない。

 骨の何本かは確実に折れてるだろう。

 そのくらいの手応えがあった。

 

 痛みを我慢して力を振り絞り燃え尽きた今、飯田少年に残っているのは怪我によるダメージだけだ。

 彼はもう動けなかった。

 

 倒れた飯田少年にミッドナイト先生が駆け寄り、そして判定を下した。

 

「飯田くん戦闘不能。八木さん! 三回戦進出!!」

 

「「「「「「「ワアアアアアアアアア!!!」」」」」」」」

 

 歓声に沸くスタジアム。

 その中で私は、気絶している飯田少年を密かに称えた。

 

「強くなったな。飯田少年」

 

『決っ着!! 飯田めちゃ頑張った!! 最後まで諦めないド根性に感動したぜ!! 良い試合だった!!』

 

 マイク先生の珍しくまともな実況を聞きながらステージを降りる。

 

 さて、これでベスト4。

 次は準決勝。轟少年との対決だ。

 飯田少年との戦いも因縁の対決だったけど、轟少年とはそれ以上の因縁が出来ちゃったんだよなぁ。

 

 ナンバー1ヒーローの娘とナンバー2ヒーローの息子。

 轟少年が抱える問題。

 緑谷少年との戦いで使わないって言ってた炎を使った以上、何かしら心境の変化があったんだろうけど、それを抜きにしても結構重要な戦いだ。

 

 まあ、私の知ったこっちゃないって言っちゃえばそれまでなんだけどね。

 でも、それを言ったら飯田少年との戦いも似たようなもんだし。

 結局、私がやる事は変わらない。

 誰であろうとどんな事情を抱えてようと、私の前に立ちふさがるならば全力を以て粉砕するのみだ。

 

 かかって来いよ轟少年。

 ボッコボコにしてやるぜ。

 

 次の戦いへの意気込みを新たに、私は観客席へと戻って行った。

 

 

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