小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
かかって来いよ轟少年(キリッ)とか言ったは良いものの、準決勝はまだ先でありそれまで私の出番はない。
これは体育祭。そしてこの決勝トーナメントには私達以外の出場者がいるんだから当たり前だ。
で、今は二回戦第四試合。
ステージの上では爆豪少年とツンツン頭の少年、切島少年が激闘を繰り広げていた。
『カァウゥンタァーーー!!!』
「効かねーての! 爆発さん太郎がぁ!!」
切島少年の拳に合わせて、爆豪少年が切島少年の脇腹を爆破。
しかし、切島少年の個性は「硬化」。
読んで字の如く体を硬く頑丈にする個性。
そのせいで爆豪少年の爆破が全然効いてないね。
『切島の猛攻になかなか手が出せない爆豪!!』
「早よ倒れろ!!」
そして切島少年は防御力に任せてガンガン突撃して拳を振ってる。
爆豪少年はそれを全部避けてるね。
実力では爆豪少年が上だけど、相性差で切島少年がちょい有利ってところかな。
そんな感じで観戦してた時、手術が終わったらしい緑谷少年が帰って来た。
「おかえり緑谷少年」
「デクくん大丈夫!?」
「緑谷くん! 手術無事成功したそうだな! 良かった!」
「うん。ありがとう。八木さん。麗日さん。飯田くん。……飯田くんは残念だったね」
両腕吊って痛々しい姿の緑谷少年は、まず飯田少年の慰めから入った。
飯田少年は私との戦いで結構な傷を負ったけど、さすがに緑谷少年ほど酷くはなかったから、即行治癒されて戻って来たのだ。
「ああ。やはり八木くんは強い。またしても完膚なきまでにやられてしまった」
そんなに自分を卑下する事ないと思うけどなぁ。
前回と違って本気の私を相手に善戦したんだから誇って良いと思うけどね
「兄にも報告の電話をかけたんだが仕事中でね。情けない報告だから逆に良かったかもしれないが」
「飯田くん……」
「ああ、そんなに気にしないでくれ。確かに負けてしまったが全力を尽くした結果だ。悔しさはあるが落ち込んではいないさ。これから強くなれば良い」
「……うん。そうだね」
『ああーーー!!! 効いた!!?』
負け犬二人組が慰め合ってるところにマイク先生の実況が響いてきた。
ステージを見ると、爆豪少年の爆破を受けてよろめく切島少年の姿が。
「てめぇ全身ガチガチに気張り続けてんだろ! その状態で速攻仕掛けてちゃいずれどっか綻ぶわ!」
「くっ……!」
「死ねぇ!!!」
『爆豪!! エゲツない絨毯爆撃で三回戦進出!! これでベスト4が出揃った!!』
まあ、やっぱりこうなったか。
いくら防御系の個性って言っても耐えられる閾値ってもんがあるからね。
USJの時の脳無が良い例だ。
あれにだって耐えられる限界があり、しこたま殴ればその防御を突破できた。
タイプは違えど切島少年の個性にも似たような限界があり、爆豪少年の攻撃力がそれを無理矢理突破した訳だ。
エグい。
さて。
次はいよいよ準決勝第一試合。
私の出番だ。
「よーし! じゃあ行って来るぜ三人共!」
「うん! 頑張って!」
「魔美ちゃんファイト!!」
「俺の分まで楽しんできてくれ!!」
三者三様の励ましを受けてステージに向かう。
そして何やら思い悩んでいる様子の轟少年と向き合った。
「やあ。轟少年。どうやら悩み事が出来ちゃったみたいだけど大丈夫かい?」
緑谷少年との戦いで絶対使わないって言ってた炎を使ったんだ。
エンデヴァーの突然の激励(?)もあるし、あのクソ重たい家庭の事情にも轟少年の心境にも何かしらの変化があった筈。
私の知った事じゃないけど、この戦いでも炎を使ってくるのかこないのかっていうのかは若干気になる。
「……いや、大丈夫だ。お前が気にする事じゃない」
「そっか」
なら良いや。
普通に相手をしてあげるよ。
轟少年。
『サクサク行くぜ準決勝!! お互いにステージ崩壊の犯人同士!! 超火力対決だ!! 八木
『スターーート!!!』
開始と同時に迫る氷結。
私に対しても戦法を変えないか。
まあ、接近戦では勝ち目がないって事を考えると仕方ないっちゃ仕方ないかな。
でも、この程度の攻撃じゃ私には通用しないなぁ。
「ダークネス・スマッシュ!!」
闇の破壊光線で氷結を迎撃する。
さっき塩崎少女にわりとあっさり防がれたのを鑑みて、あの時よりは結構強めに撃った。
闇と氷がステージ中央でぶつかり合う。
『両者いきなりの大規模攻撃!! コレだよ!! これだからステージが崩壊すんだよ!!』
ぶつかり合った攻撃の威力は互角。
ふむ。
思ったより氷って頑丈なのね。
じゃあ、もう少し火力を上げるか。
『闇の勢いが増した!! 氷が砕けてくぜ!! なんつぅ破壊力だよ!! 八木Tueeee!!!』
さあ。
氷だけじゃこれは防げないぜ。
使ってくるかい?
禁じられた炎を!
闇が晴れる。
果たしてそこには───ボロボロになった轟少年が横たわっていた。
使わなかったかー。
私は轟少年に向けて歩みを進める。
彼はまだリングオーバしていない。
背後に氷壁を出して無理矢理踏み留まったみたいだ。
そして、まだ立とうとしている。
立ち上がれるだけの力がまだ残っている。
私はゆっくりと歩いて轟少年の前に立ち、問いかけた。
「それで良いんだ。後悔しない?」
轟少年の右半身には霜が降りている。
私の攻撃を防ぐ為に大分冷気を酷使したんでしょ。
それに結構ダメージも酷い。
防ぎきれなかったと見た。
立ち上がりはしたものの、もう氷は使えず体も動かない。
炎を使わなければ勝機どころか戦闘継続すら不可能だ。
このまま負けても良いのかと私は問いかけた。
「…………」
轟少年からの返事はない。
ただの屍のようだ。
という冗談はさておき、私の問いに対する答えはyesと取るべきかね。
沈黙は肯定と捉えるぞってよく言うし。
「そっか」
私は動けない轟少年に右手をかざし、ダークネス・スマッシュの発射態勢に入る。
ミッドナイト先生がぎょっとした顔で見つめてきたけど問題ない。
大丈夫大丈夫。
軽く場外に押し出す為の攻撃だからそこまで強くは撃たないさ。
闇が私の右掌に集まっていく。
普段ならこんな発射準備一瞬で終わるんだけど、演出って大事だと思うんだ。
そんな普段ならなかった筈の時間を使って、私は轟少年に話しかけた。
「まあ、君にも色々と事情があるのは知ってるけどさ。ヒーロー目指してる君にナンバー1ヒーローをよく知る人間としてアドバイスしてあげるよ」
せっかく緑谷少年がボロ雑巾みたいになってまで説得しようとしたんだし、私も片手間にアドバイスくらいはしてあげよう。
「ヒーローってさ。絶対に負けちゃいけないんだって。ヒーローが倒れれば守るべき人々が危険に晒されるから」
私は人助けに興味がないし、私みたいな利益優先の似非ヒーローには響かない言葉かもしれないけど、正義の味方としてのヒーローに憧れた人には響くんじゃないかな。
「まだ戦える力があるのに自分の都合で敗北を受け入れるっていうのはさ。ヒーローとしてはどうかと思うよ」
まあ、これは命の懸かった実戦じゃなくて体育祭だからそれでも良いような気もするけどね。
でも、轟少年がこれからも炎を封じて戦うっていうのであれば、いずれぶつかる問題でもあると思うんだ。
そうして喋ってる間に発射準備は整った。
「じゃあね。バイバイ」
私は至近距離からダークネス・スマッシュを放った。
闇の破壊光線が轟少年を呑み込み、場外へと押し出す──
「……言ってくれるじゃねぇか」
──事はなかった。
燃え盛る炎が闇を押し返し、逆に私を焼き尽くさんと迫り来る。
私はそれをバックステップで避けて距離を取った。
「緑谷といい、お前といい。無茶苦茶やって
左半身に炎を纏いながら語る轟少年の瞳は澄んでいた。
覚悟を決めたような良い顔だ。
ようやく本気の君と戦えそうだね。
「緑谷少年はどうか知らないけど、私のはただの気まぐれだよ。あとは私が本気出してるんだし、どうせなら君にも全力で向かって来てほしいから発破をかけただけさ」
オンラインゲームとかでさ。
自分は本気でやってるのに、対戦相手がいきなり「やーめた」って感じで接続切ってくると嫌な気分になるじゃん?
それと似たようなもんだよ。
本気でやるなら相手にもそれを求めるのは当然の欲求だと思うんだ。
「……気まぐれであんな事言ったのか?」
「うん」
「……ふざけた奴だ」
そんな事を言いつつも轟少年は笑っていた。
なんか肩の力が抜けた感じの自然な笑顔。
良いね。
なんだか今の君は調子が良さそうだ。
「悪魔の翼。悪魔の右腕」
ようやく本気を出した轟少年に応えるように、私は上着を脱ぎ捨てて悪魔の翼と右腕を解放した。
なんだかんだ言っても私のメインウェポンはこの拳だ。
ダークネス・スマッシュも使い魔も便利で強力な技ではあるけど所詮はサブウェポン。
私の真骨頂はパワー、スピード、耐久力に任せた接近戦にある。
「行くよ」
「行くぞ」
お互いに宣言してから攻撃を開始する。
私は飛翔して轟少年に迫り、それを轟少年は巨大な氷の壁で迎え撃った。
初戦で見せた最大威力の大氷結。
私はそれに対して引き絞った右腕を温存し、左手でダークネス・スマッシュを放って迎撃した。
そして、闇の破壊光線の進行方向から今度は巨大な炎の壁が迫って来る。
炎が氷を溶かし、闇とかち合う。
そして冷えた空気が熱で一気に膨張する。
緑谷少年との戦いで発生した超爆風が吹き荒れ、荒れ狂う。
それを私は、悪魔の右腕で迎え撃った。
「デビル・スマッシュ!!!」
翼による加速も加えた超威力のデビル・スマッシュと爆風がぶつかり合う。
圧倒的な破壊と破壊の激突によってステージはまたも全壊した。
そして、勝負の結果───
───私は翼で空を飛びながら、悪魔の右腕を空に突き上げた。
「轟くん戦闘不能!! 八木さん決勝戦進出!!」
「「「「「「「「ワアアアアアアアアアアア!!!」」」」」」」」
観戦を浴びながら私はクレーターとなったステージの跡地に降り立ち、個性を解除した。
勝った……。
なんだか、この体育祭で初めて
『決着!!! 激闘を制したのは八木!!! そしてステージはまたも全壊だ!!! だが、それが必要経費に思えるすげぇ名勝負だったぜ!!! アメェージィング!!!』
マイク先生の実況と救護ロボに運び出される轟少年を背に、私は観客席へと戻った。
久しぶりに破壊以外での充実感を感じながら。
すると帰り道の途中に燃え上がるおじさんがいた。
燃え上がるおじさん、プロヒーロー「エンデヴァー」は腕を組んで仁王立ちしながら私を睨みつけていた。
燃えるような怒りに満ちた眼で。
私はとりあえず軽く会釈して素通りした。
「焦凍は貴様を超えるぞ」
エンデヴァーがなんか語り出した。
私はちょっとだけ立ち止まって耳を傾ける。
「焦凍は必ず貴様を超える。俺が超えさせる。貴様もオールマイトも超える最強のヒーローに育て上げてやる。首を洗って待っていろ」
それだけ言ってエンデヴァーは去って行った。
もっと色々言われるかなーと思ってたからちょっと意外だ。
あの眼は私を恨んでる眼だった。
それもかなり強く。
それだけであの人が私の過去を知っている側の人間だと一発でわかったよ。
もしかしなくても身内が被害に遭ってるパターンだと思う。
なのに久遠の仇敵を前にして言ったのが息子の事だけって。
恨み言も言わず、私に拳を振り上げるでもない。
轟少年の話ではただのクソ親父にしか聞こえなかったけど、あの人も「ヒーロー」なんだなぁと何とはなしに思った。
そして、今度こそ私は観客席へと戻った。
緑谷少年達が手放しで祝福してくれた。
気分が良かったぜ!
◆◆◆
──???視点
「名声……金……どいつもこいつもヒーロー名乗りやがって……。ハァ……」
血溜まりに沈む偽物を一瞥しながら、俺は一人ごちた。
こいつには確固たる信念がなかった。
悪に打ち勝つだけの強さもなかった。
ヒーローとして失格だ。
こいつはヒーローなんかじゃない。
ヒーローを語るただの偽物。
……いや、こいつだけじゃない。
「ハァ……。てめぇらはヒーローなんかじゃねぇ……」
自己犠牲の果てに得うる称号でなくてはならない。
ヒーローが人々を助けるのは何故だ?
名声の為? 金の為? 己の利益の為?
違う!! 純粋な善意だ!!
それを持たぬ者はヒーローじゃねぇ!!
そしてただの善人でもいけない。
ただの善人に人は救えない。
力なき正義は悪と変わらない。
ヒーローは決して悪に屈してはならない。
ヒーローが倒れれば守るべき人々が危険に晒される。
ならば必要なのだ。
どんな困難に直面しようと決して諦めない信念が。
その困難をぶち破っていく為の純粋な強さが。
そうして偉業を成した者のみがヒーローを名乗るに値する。
今の社会。
偽善と虚栄で覆われた歪な社会。
そこでヒーローと呼ばれる者共には足りない。
信念も。
強さも。
そんな奴らはヒーローを歪める社会の癌だ。
正さねばならない。
粛清しなければならない。
誰かが、血に染まらねばならない。
「彼だけだ……」
そんな社会で唯一の光。
本物のヒーロー。
「俺を殺っていいのは……ハァ……」
俺という必要悪を殺していいのは、本物のヒーローだけ。
「オールマイトだけだ」
俺はこれからも現れ続ける。
偽物を粛清する事によって社会が誤りに気づくまで。
俺は血に染まり続ける。