小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
『瞬殺!! あえてもう一度言おう! 瞬・殺!! ここまで無差別放電だけで勝ち上がって来た男、上鳴!! そのツケが回ってきたか!? 爆豪に瞬殺されたァ!!! 同じ準決勝でもさっきの試合とはえらい違いだぜぇ!!!』
マイク先生の酷評が会場に響く。
これは中々に酷い試合だった。
開始直後に電気使いの少年、上鳴少年がこれまでの試合と全く同じ無差別放電で決めようとしたところを、爆豪少年が大爆発でドーン。
爆風に飛ばされた上鳴少年は一瞬で場外になりましたとさ。
今は救護ロボに運ばれながらウェイウェイ言ってるよ。
どうやら許容量も超えちゃったらしい。
上鳴少年の個性は電気を使いすぎると一時的に脳がショートして著しくアホになるからね。
結果ウェイとしか言わなくなる。
『さーて!! ちょっとばかし味気ない結果となったが決着はついた!! よって決勝は!! 八木
ステージ上の爆豪少年が観客席の私を睨み付けてきた。
超不機嫌そうな顔だ。
威嚇してるのかね?
ハハハ。まるで犬のようだな。
そんな事を考えてたら爆豪少年の顔が更に歪んだ。
歯を剥き出しにして唸り始める。
だからなんで考えてる事がわかる!?
そして犬っぽさが増したぞ!
「八木さんとかっちゃんか……。かっちゃんがどこまで八木さんに食らいついてくるか……」
「しっかり見てリベンジだな!」
「「うん!」」
私がそんなどうでもいい事を考えてる間に、一緒に観戦してた緑谷少年達は真剣に話し合っていた。
飯田少年は私に負け、麗日少女は爆豪少年に負けた。
決勝戦はこの二人にとってリベンジの為にも目の離せない一戦になる筈だ。
緑谷少年は違うけど、上に行かれたって意味では私達に負けたとも取れるし。
なんにせよ体育祭は来年もあるし、授業でも戦う機会はやってくるだろう。
ライバル関係は依然として続いていく。
ならば、真剣に見ない理由はない訳だ。
と、そこで唐突に飯田少年が震えだした。
怯えとか武者震いとかじゃなくてもっと機械的に、バイブレーション機能でも搭載してんのかって感じで。
「うわあ!? なんだ!?」
「電話だ」
「なんだ。電話か」
電話だったのか。
今頃になって来た個性の反動かと思ったぞ。
そんな訳で飯田は電話の為に席を離れた。
じゃあ、私もそろそろ行くかね。
「じゃあ、飯田少年も行っちゃったし、私もそろそろ控え室に行くよ」
「あ、うん。頑張って」
「油断しないでね」
「任せなさい! 麗日少女の仇は取ってくるぜ!」
そうして私は控え室へGO。
暇だなーと思いつつも決勝戦までの時間をおとなしく過ごしていた。
そんな時、控え室のドアが蹴り開けられた。
「あ?」
そしてドアの向こうには常時眉間に皺のよった不良が居た。
間違えた。
爆豪少年が居た。
「やぁ、爆豪少年。私に何か用かい?」
「あれ!? 何でてめぇがここに……! 控え室……あ! ここ2の方かクソが!!」
ふむ。
どうやら爆豪少年は部屋を間違えてしまったらしい。
てっきり宣戦布告にでも来たのかと思ったよ。
それにしても。
「爆豪少年って意外とおっちょこちょいだな~! あ! もしかして柄にもなく緊張してるとか?」
「誰がおっちょこちょいだ!!! 緊張もしてねぇわボケ!!!」
わー。よく吠えるなー。
弱い犬ほど……いや、この考えは止めとこう。
爆豪少年は別に弱くはないしね。
むしろ強い部類だし。
「まあ、なんにせよ。決勝はお互い頑張ろうぜ! 良い試合をしよう!」
「……ケッ」
む?
なんだよー。
その一気に白けたみたいな顔は。
「何が良い試合だコラ。選手宣誓でかましてたくせに結局本気なんて出してねぇじゃねぇか。それで良い試合だ? ふざけんな」
なんか爆豪少年が一気に冷静になった。
どうした?
吠えないなんて君らしくないぞ。
それはそれとして聞き捨てならない事を言ったな。
「失礼な! 私はちゃんと本気だったぞ! 手加減なんて一切してないとパパに誓ってやろう!」
これは本当の事だぞ。
実際、この体育祭において私は大人げないくらいに個性を使った。
その気になれば個性なしでどうとでもなったような場面でも手を抜かずに個性を使って圧倒した。
私は本気だったよ。
「ケッ。
USJの時のアレ?
ディザスターモードの事か。
あんなモンを体育祭で使える訳ないじゃん。
「いやいや爆豪少年。アレは使えないよ。アレを使ったら冗談抜きで死人が出るから。よっぽど切羽詰まった状況じゃなければヴィラン相手にすら使わない禁じ手だよアレは」
「……だとしてもだ。なりふり構わなけりゃてめぇはもっと強ぇだろうが。勝負にすらならないくらい圧倒する事もできた筈だろ」
まあ、それはできたね。
ぶっちゃけ、ただ勝利だけを求めるならまともに戦う必要すらなかった。
上空を飛びながらダークネス・スマッシュの雨でも降らせれば一方的に勝てただろうね。
でもさ。
「それじゃあ楽しくないじゃん。これはお祭りだぜ。楽しくなければ意味がない」
それにさ。
「最初に宣言したでしょ。私はこの体育祭を本気で、そして
障害物競争の時はトップ争いがしたくて全速力を出した。
騎馬戦は盛り上がらせようとして大量の使い魔を使った。
決勝トーナメントでは相手の全力を受け止めて勝った。
初めて参加する事ができた学校行事のお祭り。
私は凄く楽しい。
「……それが舐めてるっつうんだボケ。これは雄英体育祭だ。勝ち進んでプロにアピールする為の場だ。遊びじゃねぇ。どいつもこいつも必死こいて勝利だけを目指してやがった。────舐めてんじゃねぇぞクソ女」
しかし、爆豪少年はそんな私を否定してくれやがった。
確かに爆豪少年の言葉にも一理あるけど、それは個人によって違うと思うぞ。
発目少女とか絶対勝利以外を目的にしてただろ。
「決勝戦。全力で来やがれ。じゃねぇと後悔させてやる」
超不機嫌そうな威嚇するような声でそう言い捨てて、爆豪少年は控え室から出て行った。
彼の気持ちもわからんでもない。
彼は本当の意味で全力を出した私と戦いたくて、全力を出さずに勝ってる私が気にくわないんだろうね。
でも、君じゃ私の全力を受け止められない。
悲しいかな。
それが現実さ。
それに私が全力を、文字通り全ての力を出し切っちゃったら大災害になる。
11年前の悲劇再びだ。
そこからして既に破綻してるんだよ。
そうじゃなくても、私が勝利だけを求めて本気を出したら試合として成立しない。
ただの蹂躙になる。
今だって結構ギリギリのラインなんだ。
これ以上の力は出せないよ。
だからこそ、私は楽しめるところを全力で楽しんだんだ。
それは後悔してないし誰にも否定させない。
だから爆豪少年。
君との試合もせいぜい楽しませてもらうとするよ。
……さて、そろそろ時間だ。
行きますか。
『さぁいよいよラスト!! 雄英一年の頂点がここで決まる!! 決勝戦!! 八木
『今!! スタート!!!』
「爆速ターボ!!!」
開始と同時に爆豪少年が私に向かって突っ込んで来た。
ちょっと意外だ。
準決勝で見せた特大の大爆発を使ってくるかと思ってた。
私がダークネス・スマッシュで迎撃したら押し負けると判断したのかな?
確かにそれは正解だよ。
でも、
「私相手に接近戦は無謀だと思うよ」
私は上着を脱いで翼を出し、構えをとって迎え撃つ準備をした。
爆発は翼を盾にすればほとんど怖くない。
いや、個性を使わなくても私の体は結構頑丈だし、怪我したところで超再生ですぐ治るけども。
でも、ちょうどいい盾があるんだから使った方が便利だと思って。
「オラァ!!!」
そうして構えていた私だけど、爆豪少年は途中で突撃を止めて両手を私に突き出してきた。
なるほど。
接近すると見せかけての。
大爆発。
爆風が吹き荒れる。
私はそれを翼を盾にして防ぎ、両足に力を込めて踏ん張った。
結果、私の体は一メートルくらいしか後退せず、場外まで吹き飛ぶ事はなかった。
しかし、爆豪少年の本当の狙いは。
「爆煙を目眩ましにしてからの接近戦か。悪くない判断だね」
「!!?」
爆煙の中、後ろから伸びてきた爆豪少年の腕を掴んでギリギリと締め上げる。
そして突然離してからのパンチ。
爆豪少年は煙の中に消えて行った。
本来なら自分より素早い上に空も飛べる私を相手に自分から視界を塞いじゃうのは悪手だけど、私があえて爆豪少年の策に乗ってその場で迎え撃つ選択をすると予想したんだろうね。
実際、その予想は当たってた。
そうして私の位置を覚えておいて、後ろをとって奇襲したと。
悪くはなかったけど私には通用しない。
私は気配を読むのは得意だ。
いくら爆煙と爆音で視角と聴覚を封じられても普通に捕捉できた。
私と爆豪少年の間には個性の性能以上の実力差があるって事だ。
個性の性能差だけでも絶望的なのにね。
でも、そんな事は爆豪少年だって百も承知でしょう。
爆煙が晴れて私の視界に飛び込んできたのは、空中で回転しながら爆破で加速していく爆豪少年の姿だった。
「ハウザーインパクト!!!」
そしてさっきの大爆発を回転の勢いに乗せて撃ってきた。
良い必殺技だ。
並みのヴィランならこれで戦闘不能になるくらいの威力があるよ。
『麗日戦で見せた特大火力を二連発!! しかも二回目は勢いと回転を加えてまさに人間榴弾!! これは勝負あったか!!?』
でも、まあ。
「それで終わり?」
私には効かないけどな。
『無傷!!? 八木!! あの超威力の攻撃を食らって全くの無傷だァ!!! どうなってんだあいつ!!! 本当に人間かよ!!?』
「いやいや。さすがに無傷ではなかったよ」
翼で受け止めたんだけど、その翼が根元から千切れるくらいのダメージを受けた。
それくらいの破壊力があった。
でも爆煙が晴れる頃には超再生で治りきってたってだけの話だよ。
げに恐ろしきは私の個性よ。
「ハァ……ハァ……クソが!!!」
「全力は出しきったかな?」
「まだだボケ!!! 爆速ターボ!!!」
爆豪少年が再び接近してくる。
再生した翼を盾に構えるも、爆豪少年は空中で器用に方向転換して私の上、翼の盾の死角を取った。
「死ねぇえええ!!!!」
そして放たれる大爆発の連続攻撃。
絶え間ない爆撃が私を襲う。
「ハァ……ハァ……ハァ……」
『な、なんちゅう破壊力……! 爆豪! 特大火力の連続攻撃で八木を仕留めにかかった!! つうかこれ八木生きてんのか!!? 死んでてもおかしくねぇぞ!!!』
爆煙が晴れる。
するとそこには────やっぱり無傷の私がいた。
「うん。凄い攻撃だったぜ! 結構痛かった」
『無傷ーーー!!! こいつ絶対人間やめてるぜーーー!!! 八木!! 恐ろしい奴!!!』
今回の攻撃は左腕で防いだ。
もちろん個性を解放した悪魔の左腕でだ。
今の連続爆撃はそれにすら傷をつける威力だったけど、左腕は翼よりも防御力が高いし、もげるよりも早い速度で再生したから問題なかった。
でも痛覚はちゃんとあるから普通に痛かったけどね。
「全力は出しきったかい?」
「クソがーーー!!!」
さっきと同じ問いかけ。
似たような反応。
でも、その結果は違った。
爆豪少年はもう、爆破を起こせなかった。
「!!?」
緑谷少年から聞いた話だけども、爆豪少年の爆破は掌の汗腺からニトロみたいな汗を出して爆破してるらしい。
なら、使い過ぎればそこが痛んでくるのは当然の話。
轟少年の氷結は使い過ぎると体が冷えて動かなくなる。
上鳴少年の電撃は使い過ぎると頭がショートしてアホになる。
それと同じで、爆豪少年の個性にも使用上限があり、それが今だった。
それだけの話だね。
強い個性ほど反動が強い。
「じゃあ、次は私の番だ」
爆豪少年のターンが終わったのなら次は私のターンが来る。
殺さないように個性を解除して踏み込む。
個性が使えなくなったとはいえ体力は残ってる様子の爆豪少年は迎撃しようとするけど、身体能力の差と格闘技術の差でどんどん追い詰められる。
そして最後に。
腹をパンチして踞ったところで、顎に鋭いアッパーを決めた。
「カ……ハ……」
「私の勝ちだな。爆豪少年」
爆豪少年はそのまま仰向けに倒れた。
動く様子も起き上がる様子もない。
ただの屍のようだ。
冗談はさておき。
ミッドナイト先生が爆豪少年に駆け寄って様態を確認し、判定を下した。
「爆豪くん戦闘不能!! よって八木さんの勝ち!!」
『決着!!! 以上で全ての競技が終了!! 今年度雄英体育祭一年優勝は────A組!! 八木魔美子!!!』
「「「「「「「「ワアアアアアアアアアアアアア!!!!」」」」」」」
歓声に包まれるスタジアム。
私はその中心で勝利のスタンディングを決めた。
充実感と満足感と、ほんの少しの寂寥感を感じながら。
体育祭。ついに決着!!
長かった……。