小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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体育祭!!! 表彰式

「それではこれより!! 表彰式に移ります!」

 

 見事体育祭で優勝し、表彰台の頂点に立つ権利を与えられた私だけど、そこからの眺めに浸るのを邪魔するように危険生物が隣で暴れていた。

 

「ん"ん"ん"ーーー!!!」

 

 コンクリートの柱にくくりつけられ、拘束具でガッチガチに固められた爆豪少年が2位の場所から私を食い殺さんばかりに睨み付けながら暴れているのだ。

 猿ぐつわも嵌められてるから声も出せずに唸り声が響くだけ。

 ……なんか犬から猛犬を通り越して狂犬になってしまった感があるよ。

 それに比べれば反対側の隣。3位の所は平和なもんだ。

 轟少年は静かだし、上鳴少年は思いっきり調子に乗った顔で観客席に手振ってるだけだし。

 

 ちなみに。

 観客席には飯田少年の姿がない。

 なんでもお兄さんがヴィランに襲われたという連絡を受けたらしくて帰っちゃったそうだ。

 ……ヴィランに身内が襲われるとか。

 ちょっと心がチクッとする話だ。

 

 まあ、それも今はいいや。

 今は表彰式だからね。

 楽しくいこう!

 

「それではメダル授与よ!! 今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

「ハーハッハッハッハ!!」

 

 ミッドナイト先生の声に合わせて聞き覚えのありすぎる笑い声がスタジアムの上から聞こえてきた。

 その声の主は「トウッ!」と言って回転しながら飛び降りて来る。

 

「私がメダルを持って……」

「我らがヒーロー! オールマイト!!」

「……来た」

 

 ミッドナイト先生の声と見事に被った。

 ちょっとグダグダな感じになっちゃったよ。

 でも気を取り直して、パパはメダルの贈呈を始めた。

 

「上鳴少年! おめでとう! 素晴らしい活躍だった!」

「ありがとうございます!!」

「だが、個性ぶっぱ以外の戦い方も覚えた方が良い。アレに頼り過ぎてはいけないぞ」

「はい……」

 

 上鳴少年は嬉しそうな顔から一転、現実に引き戻されてしまった。

 仕方ないね。

 だってあの子本当に無差別放電しかしてなかったんだもん。

 

「轟少年! おめでとう! 途中から炎を使うようになったのは訳があるのかな」

「……緑谷戦でキッカケをもらって、八木に正論叩きつけられて、少しだけ吹っ切れました。……でも、俺だけが吹っ切れてそれで終わりじゃ駄目なんです。精算しなきゃならないものがまだある」

「……顔が以前と全然違う。深くは聞くまいよ。今の君ならきっと精算できる」

 

 轟少年はちょっと複雑そうな顔だ。

 でも、あの恨み辛みに満ちた顔じゃなくて、こう普通の悩める少年みたいな顔になった。

 ただの思春期って感じだ。

 私が気まぐれで言った言葉が良い方向に転がったのなら良かった良かった。

 後は自分で頑張ってくれたまえ。

 私は知らん。

 

「さて爆豪少年!! っとこりゃあんまりだ」

 

 そう言ってパパは爆豪少年の猿ぐつわを外してしまった。

 外して、しまった。

 外しちゃったかー……。

 絶対うるさくなるよねこれ。

 

「オールマイトォ!!! 2位なんざ何の価値もねぇんだよ!!! しかも俺は舐めプされた上に何にもできねぇで負けたんだ!!! こんな結果、世間が認めても俺が認めてなきゃゴミなんだよ!!!」

 

 案の定、爆豪少年は異様なくらい目を吊り上げてうるさく吠えた。

 というか顔すげぇ。

 どうやったらあんな顔になるんだろう?

 

「うむ! 相対評価に晒され続けるこの世界で不変の絶対評価を持ち続けられる人間はそう多くない。受けとっとけよ! 傷として! 忘れぬよう!」

「要らねぇっつてんだろうが!!!」

「まぁまぁ」

 

 そうしてパパは暴れる爆豪少年の首にメダルをかける事を諦め、仕方がないから口に噛ませた。

 犬か!

 まるで骨を咥える犬のようだぞ爆豪少年!

 そう思って見てたら爆豪少年に例の凄い顔で睨まれた。

 だから何故考えてる事がわかる!?

 

「さあ、魔美……ゴホンッ! 八木少女! 優勝おめでとう!!」

 

 最後にパパは私に金メダルを持って話しかけてきた。

 ここでは親子ではなく一生徒として接するらしい。

 OK。わかった。了解した。

 

「ありがとうございますオールマイト。凄く光栄です」

「う、うむ」

 

 私の珍しい敬語とよそよそしい態度にパパが若干のけ反った。

 なんだよー。

 そんなに違和感があるのか?

 私だって敬語が使えない訳じゃないんだからな!

 

「さて、今回の体育祭。君はちゃんと楽しめたかな?」

「……はい。楽しかったし満足してます。でも、ちょっとだけやり過ぎちゃったような気もするし。逆にもっと貪欲になるべきだったかもしれないとも思っちゃいますけど」

 

 チラリと横目で爆豪少年を見ながら少しだけ心に引っ掛かっていたものを吐き出す。

 実はちょっとだけ不安なのだ。

 私の選択は本当にあれで良かったのかと。

 

 本気でやらなければ楽しくないから本気を出した。

 全力を出したら体育祭が崩壊するから全力は出さなかった。

 代わりに全力で楽しんだ。

 初めての学校行事。

 ずっとテレビや漫画の中の出来事でしかなかったものに参加できて、私は本当に楽しかった。

 でも、爆豪少年の狂犬っぷりを見てるとやっぱり考えてしまう。

 

 そんな感じで少しだけ悩んでいると、パパに抱き締められた。

 他の受賞者諸君にもやった軽い抱擁だ。

 でも、それが凄く優しく感じた。

 

「ハハハ。後になってから選ばなかった未来の事を考えてしまうのは人間のサガだが、それはナンセンスさ。これはお祭り。なら君が楽しかったのならそれで良いじゃないか。今はただ自分が掴んだ栄光を誇りなさい。────頑張ったね。魔美ちゃん」

 

 抱き締められながらそう言われて、なんか涙が出てきた。

 私は自分でもかなりドライな人間だと自覚してるから正直意外だ。

 小学校、中学校と学校とは名ばかりの施設に入れられて、私は自分で思ってたよりも学校行事に憧れてたのかもしれない。

 そこで掴んだ最高の結果。

 尊敬する父親からの肯定と称賛の言葉。

 それを受けて私は、───柄にもなく感動して泣いてしまった。

 

 気づけばパパに抱きついていた。

 そして、口が勝手に動いていた。

 

「うん……! ありがとうパパ!!」

「ハハハ。よしよし」

 

 パパは優しく私の頭を撫でてくれた。

 私は珍しく素直に甘えた。

 そんな親子の心温まるやり取りを終え、涙をふきながら金メダルを受け取った時には、何故か会場が静まりかえっていた。

 なんぞ? と思っていると、突然示し会わせたかのように会場中の観客達が異口同音の叫び声を上げた。

 

「「「「「「「「パパ!!!?」」」」」」」」

 

「「あ! やば……!?」」

 

 しまった!

 感動でうっかり口が滑った!

 私にとってパパの娘という秘密は秘密としての優先度が低いけど、こんな大衆の面前で言っていい事じゃなかったよ!

 

 オタオタとするパパ。

 やっちまったという心境で固まる私。

 急速に活性化しだしたマスゴミ共。

 このカオスな空気を無理矢理終わらせるべく、パパが一気にまくし立てた。

 

「さぁ!! 今回は彼らだった!! しかし皆さん! この場の誰にもここに立つ可能性はあった!! ご覧頂いた通りだ! 競い! 高め合い! さらに先へと登っていくその姿!! 次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!!」

 

 パパの言葉を聞いて会場も少しだけ落ち着いてきた。

 あくまでも私達の関係を探るよりも先に体育祭の終わりを見届け方向に一時的にシフトしただけだけど。

 

「てな感じで最後に一言!! 皆さんご唱和下さい!! せーの……」

 

「「「「「「「「プルス・ウルト……」」」」」」」」

 

「おつかれさまでした!!!」

 

 駄目だった。

 最後までグダグダだった。

 パパの強烈な「おつかれさまでした!!!」が全てを打ち消してしまったよ。

 

「そこはプルス・ウルトラでしょオールマイト!!」

「ああいや、疲れたろうなと思って……」

 

 そんな締まらないラストでありながらも雄英体育祭は終わりを告げた。

 私とパパはハイエナの如く襲って来るであろうマスゴミを振り切る為に全速力で校舎まで逃げた。

 頼むぞ雄英バリア!

 今度こそマスゴミの群れを追い返してくれ!

 

 そして私の手には光輝く金メダルが残り、体育祭の日は過ぎて行った。

 

 

 

 

 

 その裏側で新たな戦いの火種を生み出しながら。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 ──飯田視点

 

 

 

 兄さんがヴィランに襲われたという知らせを受け、体育祭を途中で抜け出して兄さんの居る病院に駆けつけた。

 恐怖と焦燥に駆られながら病室のドアを勢いよく開けた。

 

「兄さん!!!」

 

 そこには、兄の変わり果てた姿があった。

 力なくベッドに横たわり、酸素マスクを付けられ、全身に管を刺して辛うじて命を繋いでいるような、そんな痛ましい姿の兄がいた。

 

「……天哉……ごめんな……お前みてぇな……優秀な弟が……せっかく憧れて……くれてんのに…………兄ちゃん……負け……ちまった……」

 

 かすれるような弱々しい声でそう告げる兄を見て、僕はただ取り乱して涙する事しかできなかった。

 

 そして病室から追い出され、廊下の椅子に座って深く項垂れながら、兄さんをあんな姿にしたヴィランの事を思う。

 

 兄さんを襲ったヴィランの名は「ステイン」。

 通称「ヒーロー殺し」。

 これまでにも何人ものヒーローを殺害、あるいは再起不能にしてきた凶悪犯だ。

 

 許せない。

 絶対に許さない。

 許せる訳がない。

 

 兄さんは、ターボヒーロー「インゲニウム」は立派なヒーローだった。

 多くの人々を助け、多くの後輩達を導いてきた、全ヒーローの模範のような素晴らしいヒーローだった。

 ヴィランなんかに傷つけられていい人じゃない。

 

「殺してやる……!!!」

 

 ヒーロー殺しステイン……!

 必ずこの手でお前を殺す……!!

 首を洗って待っていろ……!!!

 

 輝かしい体育祭の裏で、僕はただひたすらに怒りと殺意を蓄え続けた。

 

 




ついに体育祭編終了!!
本当に長い戦いだった……。
そしてまた新たなる戦いが始まるのだ(キリッ)!
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