小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
体育祭の翌日、翌々日は休校となった。
その間に雄英体育祭の事は当然の如くニュースになり、さらに私の事を「オールマイト
ジュニアって男の子の事でしょ。
私、女の子なんだけど。
いやまあ、それはもういいんだけどさぁ。
どうせ私がパパの娘だというのは変えられない事実なんだし。
マスゴミの鼻の良さを考えればいずれはバレていた事だ。
そう思っておとなしく有名人としての道を歩もう。
今度ショッピングとかに出かける時は変装とかしよう。
もうそれでいいや。
でも、いつもの電車通学で注目を浴びるのもマスゴミに集られるのも嫌だったから、これからはパパの車で通学する事にした。
授業開始までの間と放課後でちょっと時間が余っちゃうけど、それは必要経費ということで。
マスゴミの餌食になるより百倍いいよ。
そんな感じでお休みの二日間は過ぎ去り、今日から雄英は通常通りの授業に戻る。
私は早速車通学を始め、パパを足として使う事に。
考えてみるとこうして一緒に通勤通学すればUSJの時の朝みたいに通勤中にパパが無茶しようとしても止められるし、意外と合理的な選択だったかもしれない。
そうして余った時間を適当に校舎内の人気が少ない場所をぶらついて潰し、授業開始前に教室へ戻った。
そこではクラスメイト諸君が体育祭の影響の話で盛り上がっていた。
「超声かけられたよ来る途中!!」
「私もジロジロ見られて恥ずかしかった!」
「俺も!」
「俺なんか小学生にいきなりドンマイコールされたぜ……」
「ドンマイ」
「おはよー」
そんな話題に花を咲かせてる所に私が登場。
クラスメイト諸君の興味は当然の如く私に移った。
「ねえねえ! 八木は来る途中とかどれだけ注目された?」
「おう! それは俺も気になるぜ! なんせ世間に露見しちまったからな。オールマイトとの親子関係」
「今までは限られた範囲しか知らなかったから噂になっても信憑性の低いデマ扱いしかされなかったものね」
「それが公衆の面前で熱い抱擁とパパ呼び、名前呼びのコンボだもんな! これはもう言い逃れできねぇって!」
怒涛の質問攻め。
私は聖徳太子ではない!
でも、聞きたい事はわかったから返事しておく。
「無駄に注目浴びるのが嫌だったからこの二日間は引きこもってたよ。あと、登校はパパに送ってもらった。車で」
「マジかよ……。なんか八木ってそういうところあるよな。目立つような事するわりに目立つのを嫌う的な」
「あ~わかる! 委員長決めの時とかね!」
「ケロ。不思議ね。ちょっと矛盾してる気がするわ」
「ていうかオールマイト車乗るのか……。想像できねぇ」
なんか色々言われたよ。
一応言っとくと、私は目立つのが嫌いな訳じゃないんだ。
継続的に注目の的になるのが嫌なだけで。
だって、うっかりヴィラン殺しちゃった時とかに顔が割れてると色々やばいじゃん。
まあ、もう手遅れなんだけどさー。
でも忌避感はまだ残ってるんだ。
だから、ヒーローになってからもパパみたいにプライベートも経歴も非公開でいこうと思う。
特に経歴はまずい。
そこにはとんでもない地雷が埋まってるから放置するのが正解だ。
「おはよう」
そしてわいわいガヤガヤ騒いでたクラスメイト諸君も相澤先生の登場と同時に静まり返った。
調きょ……教育が進んでるようでなによりです。
「相澤先生、包帯取れたのね。良かったわ」
「婆さんの処置が大げさなんだよ。んなもんより今日のヒーロー情報学。ちょっと特別だぞ」
そう言う相澤先生は蛙吹少女の指摘通り、身体中に巻かれていた包帯が取れてる。
USJの時の怪我がようやく治ったらしい。
良かった良かった。
それは良いとして特別な授業ね。
小テストでもやるのか、特別講師でも来てるのかね?
「『コードネーム』。ヒーロー名の考案だ」
「「「「「「「「胸膨らむヤツきたああああ!!!」」」」」」」
違った。
胸膨らむヤツだった。
これは普通に楽しみにしてたヤツだ!
特に私は昔からヒーローになる事が半ば確定してたから、自分のヒーロー名に関してはかなり昔から考えて決めてあるのだ!
「というのも、先日話したプロからのドラフト指名に関係してくる。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力として判断される二、三年から。つまり今回来た指名は将来性に対する興味に近い。卒業までにその興味が削がれたら一方的にキャンセルなんて事はよくある」
「大人は勝手だ!」
ブドウ頭がほざいてたけど無視。
プロの指名ね。
そういえば言ってたわ。体育祭が終わった後に。
そもそも体育祭自体がプロから注目してもらうのが目的の催しって話だったしね。
私みたいなエンジョイ勢をはじめとした一部例外を除いて。
「頂いた指名がそのまま自身へのハードルになるんですね!」
「そ。で、その指名の集計結果がこうだ」
そう言って相澤先生は黒板に指名数を映し出した。
「例年はもっとバラけるんだが、三人に注目が偏った。特に八木」
集計結果は私の指名数が7000くらい。
その下が轟少年の約2000。
爆豪少年の約1500と続き、そのさらに下は数百票から数十票が数人って感じだった。
「だーーー! 白黒ついた!」
「見る目ないよねプロ」
「でもまあ、八木はしょうがない」
「圧倒的だったもんね」
「つーか、2位3位逆転してんじゃん」
「表彰台で拘束された奴とかビビるもんな……」
「ビビってんじゃねーよプロが!!」
「てか、同じ3位なのに俺と轟のこの差は一体……」
「そりゃ、アホになるからでしょ」
「耳郎、お前なー!!」
クラスメイト諸君が再びのわいわいガヤガヤ。
やっぱりこういうのは気になるもんかね。
私は将来パパのサイドキックになる予定だから、ぶっちゃけ指名数とか0でも良かったくらいなんだけど……。
今それを言ったら袋叩きにされそうだ。
「八木さん。おめでとう」
「ああ。うん。君は残念だったね緑谷少年」
そう言ってきた緑谷少年の指名数は0だった。
でも、君もいざとなったらパパのサイドキックから始めたらいいんだし、そんな気にする事もないと思うぜ。
「これを踏まえ、指名の有無に関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう。お前らは一足先に経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」
なるほど。
だからこのタイミングでヒーロー名を決めるのか。
職場体験に行くって事はヒーローの卵として活動するって事だ。
その時にヒーロー名がないっていうのはちょっとアレだしね。
「まあ、仮ではあるが適当なもんは……」
「付けたら地獄を見ちゃうよ!!」
相澤先生の言葉を遮りながら、教室にミッドナイト先生が入って来た。
相澤先生の補佐かね?
「この時の名が! 世に認知されそのままプロ名になってる人多いからね!!」
「まあ、そういう事だ。その辺のセンスをミッドナイトさんに査定してもらう。俺はそういうのできん」
相澤先生が仕事を投げた。
珍しい。
やっぱり誰にでも苦手な事ってあるのね。
「将来自分がどうなるのか。名を付ける事でイメージが固まりそこに近づいてく。それが『名は体を表す』って事だ。『オールマイト』とかな」
なるほど確かに。
パパはそういう感じで決めたって聞いた事あるな。
たしか『全てを救う万能のヒーロー』になりたいって意味だったかな?
そんな感じだった気がする。
それからシンキングタイムが始まった。
クラスメイト諸君は悩みながら、あるいは即決でボードにヒーロー名を書き込んでいく。
私ももう決めてあるけど、一応本当にこれでいいのかなって感じで最終確認をしておく。
結果、問題なし。
このままの名前で行く事にした。
そうして十五分くらいが経過。
「じゃあそろそろ出来た人から発表してね!」
まさかの発売形式だった。
なかなかに度胸がいるわこれ。
下手に思春期全開な名前とか発表したら笑い者にされる気がする。
……一応、他の諸君のを聞いてから発表しよう。
そして勇気ある一番手が発表の為に教壇に上がって行った。
おへそからレーザービームが出る少年だ。
君、意外と度胸があるね。
「行くよ」
そしておへそレーザーの少年は自分のヒーロー名を発表した。
「輝きヒーロー『
「短文!!」
まさかの長文をチョイスしてきやがった。
呼びにくいわ!
ヒーロー名としては駄目じゃね?
「そこはIを取ってcantに省略した方が呼びやすい」
「それね。マドモアゼル☆」
ミッドナイト先生……。
こういうのにも適切にアドバイスしてくれるのか。
なんて頼もしい。
「じゃあ次アタシね! 『エイリアンクイーン』!!」
「2!! 血が強酸性のアレを目指してるの!? やめときな!!」
「ちぇー」
次に行ったのはピンクの肌の少女、芦戸少女だった。
ヒーローってよりヴィランに近いイメージの名前を出して却下されてた。
いや、ヴィランってより危険生物か。
ヒーロー名には向かないわそりゃ。
そして変な名前が二連続で来たせいで、なんか大喜利っぽい雰囲気になってしまった。
どうしようかこれ……。
「じゃあ次、私いいかしら」
「梅雨ちゃん!!」
ここでかなり真面目な部類の生徒である蛙吹少女が行った!
果たしてこの空気を変える事ができるのか!?
「小学生の時から決めてたの。『フロッピー』」
「カワイイ!! 親しみやすくて良いわ!! 皆から愛されるお手本のようなネーミングね!」
おお!
ありがとうフロッピー!
空気が変わった!
これはそろそろ私が行ってもいいんじゃなかろうか!
「んじゃ俺!! 『
タイミングを逸した。
切島少年に先を越されてしまったぜ。
「赤の狂騒! これはアレね!? 漢気ヒーロー『
「そっス! だいぶ古いけど、俺の目指すヒーロー像は
「フフ……。憧れの名を背負うってからには相応の重圧がついてまわるわよ」
「覚悟の上っス!!」
ほほう。
切島少年、なかなかにかっこいいじゃないか。
私もどうせならパパをモチーフにした名前にしようかな。
……いや、別にパパは憧れのヒーローじゃなかったわ。
尊敬はしてるけど、ああ成りたいとは微塵も思わない存在だったわ。
やっぱり初期案で行こう。
と、私が無駄な思考を挟んでいる間にクラスメイト諸君はどんどん名前を決めて行った。
「『イヤホン=ジャック』!」
「『テンタコル』」
「『セロファン』!」
「テ、『テイルマン』」
「『ピンキー』!!」
「『チャージズマ』!!」
「『インビジブル・ガール』!!」
「良いじゃん良いよ!! さあどんどん行きましょー!!」
やぺぇ。
出遅れた。
こうなったらいっそ大トリで発表してやろうかな。
体育祭優勝者だし、それくらいしても許される気がする。
「『クリエティ』。この名に恥じぬ行いを」
「クリエイティブ!!」
「『ショート』」
「名前!? いいの!?」
「ああ」
「『ツクヨミ』」
「夜の神様!」
「『グレープジュース』!」
「ポップ&キッチュ!!」
「『アニマ』……」
「うん!!」
「『爆殺王』」
「そういうのはやめた方が良いわね」
一部変なのが混ざりつつも、順調にヒーロー名が決まって行く。
最初のグダグダが嘘のようだ。
残りは既に数人。
これは私の出番も近いな!
「じゃ、私も……」
と、ここで麗日少女が動いた。
恥ずかしそうに自分のヒーロー名を発表する。
「考えてありました……。『ウラビティ』」
「シャレてる!」
おお。かわいいな。
麗日少女らしい名前だ。
「思ったよりずっとスムーズ! 残ってるのは再考の爆豪くんと飯田くん、緑谷くん、そして八木さんね」
私を除いて残り三人か。
なんか三人共悩んでるみたいだし、もう私行っちゃうか?
大トリは逃しちゃうけど元々そんなに拘ってた訳じゃないし。
よし。
行くか。
と、思ったところで飯田少年が動いた。
つくづくタイミングを逃す日だな今日は。
「あなたも名前ね」
悩んだ末に飯田少年が発表した名前は『天哉』。
飯田少年の下の名前。本名だ。
……なんかこれに関しては深く突っ込んじゃいけない気がする。
私の嫌いな重い話の匂いがするぜ。
まあ、何はともあれ飯田少年の発表も終わった。
残り二人。
この二人がまだ悩むようだったら行こうと思ってたけど、先に緑谷少年が動いた。
私はやっぱり大トリかね?
「ええ!? 緑谷いいのかそれぇ!?」
そうして緑谷少年が発表した名前は、良い意味で捉える事が難しいような名前だった。
「うん。今まで好きじゃなかった。けどある人に意味を変えられて、僕には結構な衝撃で、嬉しかったんだ」
ああ。
そういえば言われてたし言ってたな。
そんな感じの事。
「だから、これが僕のヒーロー名です」
緑谷少年が発表した名前は『デク』。
良い意味で捉えるのが難しい名前。
でも、君にとっては特別な名前なんだね。
それが、未来の平和の象徴の名前か。
そう考えるとちょっと締まらないなー。
そして残るは私と爆豪少年の二人だけ。
その爆豪少年といえば……
「『爆殺卿』!!!」
「違う。そうじゃない」
こんな感じで決まりそうになかったので、次は私が行く事にした。
やっとだよ。
「それじゃあ発表しようか! これが私のヒーロー名だ!」
そう言って私はボードに書いたヒーロー名を発表した。
その名も!!
「小悪魔系ヒーロー『チャーミーデビル』!!」
ずっと昔から考えていた名前。
色々考えた中で一番気に入った名前。
自分の
これが私のヒーロー名だ。
「うん。とってもチャーミングで良いわ!! ……でも、オールマイト要素が全くないけどそれはいいの? あなた、巷でオールマイトJr.の呼称が定着しかけてるみたいだけど」
ミッドナイト先生がそう聞いてくる。
そうだよ。定着しかけてるんだよ……。
早くこっちの名前で上書きせねば。
「いいんですよ。私はパパみたいになりたいとは思ってないし、パパの後を継ぐ気もありませんから。私は私らしいヒーローになりたいんです」
「……そう。自分らしくある。それはそれでとっても大事な事だと思うわ。結論!! とっても良い名前よ!!」
「ありがとうございます!」
ミッドナイト先生のお墨付きを貰ったぞ!
今日から私は、チャーミーデビルだ!!
そんな感じでヒーロー名の考案は終わった。
「『爆殺帝』!!!」
「だからそうじゃないっての」
一人の問題児を残して。
やっとタイトルの回収ができた……!!
ついにやり遂げたぞォ!!!
もう思い残す事はない!!!