小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!! 作:カゲムチャ(虎馬チキン)
──オールマイト視点
「DNA検査? 脳無の?」
突然話がしたいと言ってやって来た塚内くんから語られた言葉。
私はそれに聞き入った。
「ああ。捜査協力を依頼してるでもないし情報漏洩になるが……君には伝えなくちゃと思ってね。黒幕への手掛かりだ」
黒幕。
ヴィラン連合を陰で操る存在。
雄英のセキュリティを突破し、あれほど強力なヴィランを送り込んできた輩だ。
必ず捕まえなければならない。
「あれから色々試したんだが、奴は口がきけないとかじゃない。何をしても無反応。文字通り思考停止状態。素性を調べる為DNA検査をしたところ、傷害、恐喝の前科持ち。まあ、チンピラだ。───そして奴の身体には、全くの別人のDNAが少なくとも四つ以上混在している事がわかった」
「!? …………人間かそれ……?」
そんな者が自然に生まれたとは思えない。
確実に人工的に造られたのだろう。
おぞましい事をするものだ……。
「全身薬物等でいじくり回されているそうだ。安っぽい言い方をすれば、複数の個性に見合う身体にされた改造人間。脳の著しい機能低下はその負荷によるものだそうだ。……どこかで聞いた話だと思わないか?」
「!!? ああ……!! 聞き覚えがあるどころの話じゃない……!!」
複数の個性持ち。
薬物等による人体改造。
脳への負荷。
これだけ並べられれば嫌でもわかる……!!
これは……! まるで……!
「そう。あの子の症状と合致する点が多いんだ」
あの子の個性の能力は多岐にわたる。
ワン・フォー・オールに匹敵する怪力。
音速を超える飛行能力。
闇の破壊光線。
使い魔の作成。
無尽蔵の体力。
圧倒的な防御力。
そして、脳無と同じ超再生。
これらを一つの個性と言うのは無理がある。
推測でしかないが、あの個性はまず間違いなく
極めつけは脳への負荷だ。
あの子の人生を歪めている破壊衝動は個性の副作用。
すなわち、
脳無との類似点が多すぎる。
つまり、同一犯による犯行の可能性が極めて高い……!!
「……ここまで言えばわかるだろ。ワン・フォー・オールを持った君ならば特に。DNAを取り入れたって馴染み浸透する特性でもない限り個性の複数持ちなんて事になりはしない」
わかるさ。
ヴィラン連合の黒幕が……!
その正体が……!
「恐らく……個性を与える個性がいる」
「あの怪我でよもや生きていたとは……!! 『オール・フォー・ワン』……!!」
私にとって、ワン・フォー・オールにとっての因縁の相手。
奴が生きているならば再び戦いになる。
6年前は取り逃がし、腹に穴を空けられたが。
今度こそ……! 今度こそは……!
「必ず貴様を……刑務所にぶち込む!!」
これ以上、奴による犠牲者を増やさない為にも。
ワン・フォー・オール八代目継承者として。
師の仇である貴様を。
娘を弄んでくれた貴様を。
必ず打ち倒す……!!
学校の一室で、私は静かに闘志を燃やした。
◆◆◆
「体育祭での力の使い方。あの正義バカオールマイトは教育に関しちゃ素人以下だぁな。見てらんねぇから俺が見てやろうってんだ。さあ着ろや。コスチューム」
相変わらずおじいちゃんは口が悪いなぁ。
そんなおじいちゃんの迫力に気圧されたのか、緑谷少年は言われた通りに着替えるべく、いそいそとアタッシュケースを持って隣の部屋に行った。
うん。
君はそういうキャラだったね。
予想外に時間が開いたので、私はおじいちゃんに話しかける事にした。
「そういえばおじいちゃん。私には指導してくれないの?」
「あ? お前は戦闘に関しちゃほぼ完成してんだろうが。もう免許皆伝だ。教える事なんかねぇよ」
「えー……。じゃあ、なんで私を指名したのさ?」
「なんとなくだ!!」
なんとなくかー。
いや、別にいいんだけどね。
おじいちゃん相手なら気楽にやれるし。
でも、なんか釈然としない。
「……心配せんでも戦闘面以外の事をちゃんと教えてやるから安心せい。ソロのヒーローとしての立ち回り方のコツとかな」
「おお!」
そんな私の気持ちが顔に出てたのか、おじいちゃんはちゃんと職場体験先のヒーローっぽい事を言ってくれた。
実にありがたいね。
ソロで適当にダラダラやってるおじいちゃんのヒーロー活動は私の理想に限りなく近いから、色々と為になる話が聞けそうだぜ!
私が有名になっちゃったから理想通りにはいかないかもしれないけど。
と、そんな会話をしてる内に緑谷少年が帰って来た。
「お待たせしました……。よろしくお願いします」
そう言う緑谷少年のコスチュームは、なんか前に戦闘訓練で見た時と変わってた。
基本のジャージっぽさは変わらないけど、肘のサポーターが付いたり、レッグパーツが付いたりとちょっとだけ豪華になってる。
「緑谷少年、コスチューム変えたのか。なかなかに似合ってるじゃん!」
「いや、これは、なんか勝手に改造されてて。……サポート界には発目さんみたいな自分勝手な人が多いのかも」
アレを基準に考えるならサポート界は奇人変人の巣窟という事になっちゃうぞ。
あんまり突っ込んじゃいけない分野なのかもしれないな。
「そ、それはともかく。こんな所でワン・フォー・オールを使っちゃって本当に良いんですか……? 正直まだ完全に使いこなせないし、もっと開けた屋外じゃないと……。もしうっかり100%で撃っちゃったりしたらグラントリノさんのお身体が……」
緑谷少年がまたナンセンスな事言い出したよ。
心配する事ないと思うけどなぁ。
だっておじいちゃんは───
「ウダウダとまあ、───じれったいな」
「え? ぎゃ!?」
───個性を制御できなかった頃の私を鍛えてくれた人だもん。
カクカクと跳び跳ねて三次元的な動きをしたおじいちゃんが緑谷少年を後ろから蹴り飛ばした。
早速訓練開始かー。
乗り気だねおじいちゃん。
「撃つだけじゃないんですか!? 実戦形式!?」
緑谷少年は混乱している!
早くおじいちゃんのノリに適応してくれる事を祈るよ。
さーて。
私はさっき言われた通りご飯でも作ってようかね?
ピョンピョン跳ね回ってるおじいちゃんを避けながら冷蔵庫に向かう。
「さっきので俺の実力が見えなかったか。九人目の継承者がこんな湿った男とは……。オールマイトはとことんド素人だぁな」
「……っ!!」
おじいちゃんは緑谷少年を煽るような事言って乗り気にさせようとしてる。
……ていうか、おじいちゃん今電子レンジ踏んだんだけど。
あーあー。ぶっ壊れちゃった。
これはもう叩いても直らないな。
粉々だよ。まったくもう。
「ぶっ!!?」
私が電子レンジに黙祷を捧げてから冷蔵庫の中を物色し、その中身があまりにも空っぽだった事に愕然としている間に緑谷少年はおじいちゃんにサンドバッグにされてた。
おじいちゃんの足の裏から空気を噴出して空中移動や高速移動を可能とする個性「ジェット」とそれを使いこなした動きに緑谷少年はついていけず翻弄されるばかり。
食材がないんじゃご飯は作れないと諦めた私は、おとなしくこの戦いを観戦する事にした。
おじいちゃんが再び緑谷少年の背後を取った。
しかし、今度はその動きを予測していたのか、緑谷少年が反撃に出る。
「! 分析と予測か。だが固いな。そして意識がチグハグだ。だからこうなる」
しかしおじいちゃんには通用せず、緑谷少年は取り押さえられて床に倒れた。
勝負ありだね。
「絶対捕まえたと思ったのに……!」
「それだよ。体育祭での利用法。自分でも理解はできてる筈なのに、オールマイトへの憧れや責任感が足枷になっとる」
「足……枷……?」
ふむ。足枷か。
確かに焦りは視野を狭めるっていうし、緑谷少年は「早く
「『早く力をつけなきゃ』。それは確かだが時間もヴィランもお前が力をつけるまで待ってくれはしない」
その通りだね。
時間は勝手に過ぎていくし、ヴィランはこっちの都合なんて考えてくれない。
私も個性が制御できなかった頃に何回か襲われたっけなー。
あの人達はどうなったんだっけ?
昔の事すぎて忘れたけど、全員ミンチになったような気がする。
「お前はワン・フォー・オールを特別に考えすぎなんだな」
「…………つまり、どうすれば?」
「答えは自分で考えろ。俺ぁ飯を買って来る。掃除よろしく」
「えぇ……!?」
私が昔の事に思いを馳せている間に、おじいちゃんは緑谷少年にアドバイスを残して行ってしまった。
私は慌てて後を追う。
「緑谷少年! おじいちゃんに任せたらろくな料理が出てきそうにないから私も買い出しについて行くよ! 掃除頼んだ!」
「八木さんまで……」
仕方ないじゃないか。
あの冷蔵庫の中身を見れば普段ろくな物食べてないのは明らかだ。
絶対に乱れた食生活を送ってると断言できる。
今回の買い出しだってお惣菜を買って来るのが関の山だろう。
ここは私の出番だ。
そんな訳でおじいちゃんを追って外に出ると、なんとおじいちゃんは買い物には行っておらず、玄関扉の裏で緑谷少年の動向に聞き耳を立てていた。
私もちょいちょいと手招きされたから、おじいちゃんと一緒に緑谷少年を観察する事にする。
「オールマイトへの憧れが足枷。使い方は理解してる。ワン・フォー・オールを特別に考えすぎ……」
悩んでおる。悩んでおる。
いつものようにブツブツ呟く声がここまで聞こえてくるよ。
「…………! そうか! そうだよ! 個性は体の一部……! もっと、もっとフラットにワン・フォー・オールを考える! そうだ! そうか! となると反復練習が……」
そうして少し見てる内にある程度の結論が出たのか、緑谷少年は猛然とした勢いで鞄からノートを出してなにやら書き始めた。
おじいちゃんはその様子を見て満足そうな顔してる。
どうやら思ったより緑谷少年の事を気に入ってくれたみたいだ。
良かった良かった。
その後は言った通り一緒に買い物に行き、案の定お惣菜と大好物のたい焼きだけ買って帰ろうとしたおじいちゃんを止めて食材を購入。
私が作った料理を三人で食べて、その日は終了となった。
私、料理しかしてねぇな。
そんな釈然としない思いを抱きながらも、職場体験初日は過ぎて行った。
◆◆◆
──ステイン視点
「なるほどなぁ……。お前達が雄英襲撃犯。その一団に俺も加われと」
「ああ頼むよ。悪党の大先輩」
黒いモヤのような男の話を聞き、連れて来られた場所。
そこで出会った死柄木と名乗る一人のヴィラン。
俺はそいつに少しだけ興味を持った。
「…………目的はなんだ?」
「とりあえずオールマイトをぶっ殺したい。気に入らないものは全部ぶっ壊したいな。……こういう糞餓鬼とかもさ。全部」
そう言って数枚の写真を見せる死柄木。
その言葉を聞いて、そのあり方を見て、俺のこいつに対する興味はすっかり失せていた。
「興味を持った俺が浅はかだった。お前は……ハァ……俺が最も嫌悪する人種だ」
「はあ?」
意味がわからないとばかりに首を傾げる死柄木。
雄英襲撃という大事を成したと聞いてどんな男かと思ってみれば……。
「子供の癇癪に付き合えと? ハァ……信念なき殺意に何の意義がある」
こいつはただの、いたずらに力を振り撒く犯罪者。
偽物と同じ粛清対象だ。
俺は今度もまた正しき社会の為に血に染まるべく、腰のナイフを抜いた。