小悪魔系美少女ヒーロー候補生、チャーミーデビル見参!!   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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職場体験終了!

「短い間でしたが、お世話になりました」

「またねー! おじいちゃん!」

 

 職場体験最終日。

 私と無事退院できた緑谷少年は玄関先でおじいちゃんとお別れをしていた。

 この後は電車に乗って学校に帰るのだ。

 

 ちなみに、今の私は髪型をポニーテールにした上で緑谷少年をパシらせて買わせてきた伊達眼鏡を装着して一応の変装をしている。

 

 ここ数日でヒーロー殺しの動画、及びヒーロー殺しと私の戦闘シーンを映した動画がネットに流れ、さらにニュースでも私の事が取り上げられまくったせいで私の知名度が本気でレッドゾーンに突入した為にとった対策だ。

 これだけでも大分印象が変わるし、服装もこれまた緑谷少年をパシらせて買わせてきた地味な感じの服に着替えてるから一目で私だとは気づかないと思う。

 変装もしないで電車とかの公共機関を利用したら大変な事になりそうだからね。

 必要な措置だ。

 

「……何も世話してねぇ気がするぜ。職場体験もあれだったしな」

「いえ! 発想のご教授と組手ぶっ続けのおかげでヒーロー殺し相手にも何とか動けました!」

「そうそう。私も為になる話とかいっぱい聞けたし。連携の訓練とかもできたから充実した一週間だったよ!」

「……」

 

 私達の言葉を聞いたおじいちゃんは、何を思ったのか杖で緑谷少年の足を叩いた。

 

「痛!!」

本気じゃないヒーロー殺し相手(・・・・・・・・・・・・・・・)にだ。まあ、100%の一撃必殺を狙って外しちまうなんて事にならずに良かったとは言うべきか。だが、まだフルカウルの精度は安定しねぇ! 焦りで力む! 油断で力のコントロールがブレる! 常に冷静と緊張を保て! オールマイトのような最高のヒーローになりてぇっつうなら、まだまだ学ぶ事は多いぞ」

「っ! はい!!」

 

 緑谷少年は別れ際にも小言を言われまくっていた。

 成長するって大変だよね。

 私も通った道だからよくわかるぜ。

 

「小娘! なに他人事みたいな顔してやがる!! お前も至らぬ点は多いぞ! 連携の基礎は叩き込んでやったがまだまだ酷ぇもんだ! 話だって一回聞いただけでわかった気になるな! そういうのは実践してみて初めてわかるもんなんだよ! 精進を欠かすんじゃねぇ! わかったか!?」

「はーい……」

 

 わぁ……。

 そうだったよ。

 私もまだ道半ばだったよ。

 おじいちゃんから見ればまだまだ未熟者か。

 頑張らないとなぁ。

 

「ん! それじゃ……」

「あの!! 最後に一つ! い、良いですか!?」

 

 玄関の中に消えて行こうとしたおじいちゃんを緑谷少年が引き留めた。

 なんぞ聞きたい事があるらしい。

 

「失礼と思ってずっと聞きそびれてて……タイミング見つからなかったんですけど……」

「早よしろ! たい焼き食べたいんだ!」

 

 またたい焼きか。

 おじいちゃん本当にたい焼き好きね。

 

「そんなに強くてオールマイトを鍛えたなんて実績まであるのに、グラントリノ、世間じゃ殆ど無、無名です。何か理由(ワケ)あっての事なんでしょうか……?」

「なんだ? 小娘から聞いてないのか?」

「私は人のプライベートをポンポン話すような人間じゃないよ!」

 

 私自身、話されて困る秘密がたくさんあるからね!

 だから、人のプライベートは聞かれてもなるべく話さないようにしてるのだ!

 

「あー。そういやそうだったな。まあ、隠す事でもねぇし普通に教えてやる。俺は元来ヒーロー活動に興味ないってだけの話だ」

「へ!?」

 

 そんなに意外か緑谷少年?

 そういうヒーローだっているところにはいるぞ。

 

「かつて、目的の為に個性の自由使用が必要だった。資格を取った理由はそんだけさ。これ以上は俺からより俊っ……オールマイトが話してくれるのを期待してな」

 

 おじいちゃんはそこから先をパパにぶん投げた。

 いや、これは元々パパの仕事だったか。

 おじいちゃんは手伝い程度だもんね。

 

「じゃあ以上! 達者でな」

「あっはい! ありがとうございました!」

「またねー」

 

 そうして私達はおじいちゃんと別れた。

 でも去り際に。

 

「小僧!」

 

 おじいちゃんが最後に緑谷少年を呼んだ。

 

「誰だ君は!?」

「ここで!?」

 

 ついにきたか……!

 初日以降鳴りを潜めていたアルツハイマーが……!

 

「えっと、だから緑谷出……」

「違うだろ」

 

 と、冗談はさておき。

 緑谷少年は本気でわからないのかめっちゃ悩んでる。

 ほら!

 緑谷少年、アレだよアレ!

 

「…………あ!」

 

 ようやく気づいたか。

 

「『デク』です!!」

 

 緑谷少年のヒーロー名。

 本人曰く、「頑張ろうって感じのデク」という謎のコンセプト。

 私には普通に悪口にしか聞こえない。

 

 でも、これがパパの選んだ後継者の名前だ。

 私もおじいちゃんもそれを否定したりはしない。

 むしろ応援してる。

 

 緑谷少年の言葉を聞いて、おじいちゃんはため息を吐きながらも満足そうな顔をした。

 そして、きびすを返して軽く手を振りながら玄関の中に消えて行った。

 それを見届けてから私と緑谷少年も駅に向かって歩き始める。

 

 こうして。

 色々と濃かった職場体験は終わりを迎えた。

 

 

 

 

 

 ◆◆◆

 

 

 

 

 

 翌日。

 パパに職場体験での事を話しつつ今日も車で登校。

 保須で暴れ回った件について何か言われるかなと思ってたけど、パパは「無事で良かった」と言って頭を撫でるだけだった。

 拍子抜けしたけど、なんか安心した。

 

 そうして前と同じく授業開始前の時間を適当に潰してから教室へ。

 行ったら爆豪少年の髪型が8:2分けになっていた。

 何あれ?

 

「ぷっ!」

「笑うなクソ女ぁあああ!!!」

 

 爆豪少年の叫びと共に髪型が爆発して元のボンバーヘアに戻った。

 何あれ! どうなってんの!

 ますます笑える!

 

「アハハハハハハハハ!!!」

「死ねええええ!!!」

 

 怒り狂って個性を使ってきた爆豪少年を軽くいなしながら私と同じく腹を抱えて笑っていた切島少年と瀬呂少年に話を聞いたところ、爆豪少年は『ベストジーニスト』さんというヒーローの所に行って矯正されてしまったらしい。

 その一環として髪型を8:2にされたのだとか。

 でも、こうして一瞬で元の髪型に戻ってるのを見るに、ベストジーニストさんはこの猛犬の調教に失敗したみたいだ。

 残念!

 

 そして、面白い変貌を遂げた人物がもう一人いた。

 

「とても。有意義だったよ」

 

 コオオオという効果音がつきそうな謎の迫力を纏った麗日少女がそこにいた。

 確か麗日少女は武闘派ヒーローの所に行ってた筈。

 武に目覚めたか。

 

「たった一週間で変化すげぇな……」

「変化? 違うぜ上鳴。女ってのは……元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!!」

Mt.(マウント)レディのとこで何見た」

 

 なにやら精神に異常をきたしたようなブドウ頭を上鳴少年がいさめていた。

 いや、ブドウ頭は元々精神に異常があったな。

 なら何も問題ないか。

 

「俺は割とチヤホヤされて楽しかったけどなー。ま、一番変化というか大変だったのは、お前ら四人だな!」

 

 上鳴少年が私と緑谷少年、轟少年、飯田少年を交互に見ながらそう言った。

 

「そうそうヒーロー殺し! ニュース見たぜ!」

「……心配しましたわ」

「命あって何よりだぜマジで。……八木はアレだったけどな」

 

 アレとは何かね切島少年?

 

「化物……」

「やめい」

 

 余計な事を口走ったブドウ頭を上鳴少年が叩いて直した。

 直ってないけどな。

 

「俺もニュースとか見たけどさ。ヒーロー殺し、ヴィラン連合とも繋がってたんだろ? もしあんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ」

「ああ……。あの時は八木も他の奴の相手で手一杯だったしな。もしそうなってたらどうなってた事か……」

 

 クラスメイト諸君の一部が恐怖に身震いしてた。

 前まではその感覚が今一よくわからなかったけど、今なら少しわかるよ。

 恐怖を体験した事が私の成長に繋がってる気がする。

 

 ありがとうヒーロー殺し!

 でも怖いから一生刑務所から出て来ないでね!

  

「でもさぁ、確かに怖えけどさ。ヒーロー殺しの動画見た? アレ見ると一本気っつーか執念っつーか。かっこよくね? とか思っちゃわない?」

「上鳴くん……!」

「え? あっ……飯……ワリ!」

「……いや、いいさ。確かに信念の男ではあった。クールだと思う人がいるのもわかる」

 

 ヒーロー殺しがかっこいい、か。

 ネットに上げられたヒーロー殺しの半生を映した動画は私も見た。

 対峙した時は一体何があいつをあそこまで駆り立てるのか不思議に思ってたけど、あの動画見て一応の理解はできたよ。

 あの根性論ですらちょっと説明のつかない底力は英雄回帰という思想にあいつが文字通り命を懸けていた証だと今は思ってる。

 

 自分が死んででも私を粛清する。

 

 多分、ヒーロー殺しはそういう覚悟で私に向かって来ていた。

 重い重い命を懸けた捨て身の覚悟と執念。

 それがあの底力の正体なんじゃないかな?

 その燃え尽きるような生き様を見てかっこいいと思うのはわからなくもない話だと思う。

 

「ただ奴は、信念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうとも、そこだけは間違いなんだ。俺のような者をもうこれ以上出さぬ為にも!! 改めてヒーローへの道を俺は歩む!!」

 

 飯田少年は変なポーズを決めながらもどこまでも真面目な顔でそう宣言していた。

 なかなかにかっこいいじゃないか。

 それこそヒーロー殺しよりもね。

 

「さあそろそろ始業だ!! 席につきたまえ!!」

「五月蝿い……」

「なんか……すいませんでした」

 

 そうして朝の時間は終わり、いつも通りの日常がまた始まっていく。

 

 ヒーロー殺しステイン。

 私を初めて恐怖させたヴィラン。

 ああいう思想犯と戦った事がない訳じゃない。

 それどころかあいつよりも遥かに強い巨悪と対峙した事すらある。

 それでも、ただの執念だけであそこまで動ける敵に出会ったのは初めてだった。

 私の知らなかった世界だ。

 

 今回の一件で強く思った事が一つある。

 いくら強すぎる個性を持ち、内緒で実戦経験を積んで強くなったと言っても、私は所詮15歳の小娘。

 まだまだ知らない事は多い。

 人生経験が足りない。

 今回だって自分は戦闘で恐怖するような人間じゃないという思い込みが足を引っ張った。

 そういうのは良くない。

 良くないよ。

 私はヒーローとしての知名度も高い(こころざし)もいらないけど、強さだけは必要なんだから。

 

 ヒーロー殺しとの戦いは、じきに過去のものになるだろう。

 でも、今回私はあいつから心の強さというものを教えてもらった。

 それを覚えておこう。

 そして私の糧にしよう。

 もっと強くなれるように。

 もっと強い敵と戦った時の為に。

 

 ありがとうヒーロー殺し。

 あんたの与えてくれた恐怖が私をもっと強くした。

 多分、もう一度あんたのような敵が現れても私はもう取り乱したりはしないだろう。

 私が大きな壁にぶち当たった時、あんたの事を思い出そう。

 私にはヒーローとしての立派な(こころざし)はないけれど、絶対に譲れない信念と呼べるものがたった一つだけある。

 それが大きな力になるという事をあんたに教えてもらった。

 本当にありがとう。

 

 ……さて。

 柄にもなくシリアスな事考えてしまったな。

 気を取り直して今日の授業も頑張るとしよう!

 確か今日はパパの授業があった筈だし、俄然やる気が湧いてきたァ!

 

 

 

 そうして私はいつもの日常に戻ったのだった。

 今度ヒーロー殺しにお見舞いの花束でも送り付けてやろうかなぁとか、そんな下らない事を考えながら。

 

 

 

 ……マジで送り付けてやろうかな?

 皮肉な花言葉をたっぷり添えて。

 

 

 

 そんなこんなで今日も授業が始まった。

 




これにて職場体験編完全終了!
学ぶ事の多い話でした。
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